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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査27巻7号

1983年07月発行

雑誌目次

今月の主題 腎不全 カラーグラフ

腎不全と生検

著者: 谷澤隆邦 ,   岡田敏夫 ,   高田恒郎

ページ範囲:P.722 - P.724

 過去には末期腎不全(尿毒症)の剖検例でしかうかがい知れなかった腎組織が腎生検法の進歩,普及により,比較的早期から経時的に観察可能となってきている.その結果,各種腎疾患の病態,病因の究明に生検材料を対象に,高度に有機的な利用を計るために各種検索方法が駆使されている.本カラーグラフでは,自験例を中心に特殊染色を交えて供覧する.

技術解説

腎生検

著者: 谷澤隆邦 ,   岡田敏夫 ,   五十嵐勝美

ページ範囲:P.725 - P.731

 腎不全状態では腎生検の適応が限定されているので,進行性病変の推測される症例では診断,治療法の確立のためにより早期に生検を施行し,各種組織検索法,染色法を用いることにより診断精度の向上が得られる.
 採取した生検材料は検索方法に適合した固定,包埋を施行しておくことが肝要で,生検時の尿,血清の保存も同時に行われることが望ましい.

組織適合性検査

著者: 秋山暢夫 ,   首藤節子

ページ範囲:P.732 - P.738

 組織適合抗原系の解析は,1954年にDaussetが大量輸血患者血清の持つ,白血球凝集作用を発見したことが端緒となった.同年代に,van RoodやPayneも輸血患者や経産婦血清中に抗白血球抗体の存在することを知り,世界各地で研究が開始された.しかし,ごく最近成分輸血の全盛時代を迎えるまで,白血球抗原系に対する研究は輸血の分野ではなおざりにされ,腎移植の臨床と結び付いて,移植免疫反応を規定する抗原として盛んに研究され,発展を遂げてきた.
 ヒト主要組織適合抗原系は,末梢リンパ球について血清学的な方法で見いだされるHLA-A, B, Cの三種の抗原系と,Bリンパ球にのみ見いだされるHLA-DR抗原系があり,さらにリンパ球混合培養によって見いだされるHLA-D抗原系の存在が明らかにされている.

人工透析と体液管理

著者: 鈴木好夫 ,   原茂子 ,   葛原敬八郎 ,   二瓶宏 ,   三村信英

ページ範囲:P.739 - P.745

 長足の進歩を遂げてきた人工透析の医療で,患者の体液管理はつねにもっとも基本的な必要事項であると考える.体液管理は多くの人工透析の理論のように表だって討議されることは少なかったが,それは体液管理の重要性が少ないのでは決してない.体液管理は透析医療の中であまりにも基本的に必要な知識・技術であり,それなくして透析治療を行いえず,まして長期透析例あるいは完全社会復帰はありえなかったであろう.

血中・尿中グアニジノ化合物の検査

著者: 折田義正 ,   安東明夫 ,   三上裕司 ,   国場幸史

ページ範囲:P.746 - P.752

 尿毒症患者体液中にある種のグアニジノ化合物(GC)が増加していることは古くから知られており,GCはウレミックトキシン(uremic toxin;尿毒症惹起物質)として注目されてきた.しかし,GC測定が臨床分野に導入されたのはつい最近のことであり,GCの生体内動態,作用,臨床的意義については,まだ明らかでない点も多い.
 従来,GC測定はペーパークロマトグラフィー,カラムクロマトグラフィーの手法でGCを分離後,種々の呈色反応により定量化して行われてきたが,近年,目覚ましく発達した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の応用により,ようやく一般の検査室レベルでも行えるようになってきた.

総説

Uremic toxin

著者: 中尾俊之 ,   宮原正

ページ範囲:P.753 - P.761

はじめに
 尿毒症患者の体内に蓄積ないし代謝障害の結果産生される物質について古くから地道な検討が行われていたが,1975年,International Congressof Nephrologyで"uremic toxicity"のシンポジウムが行われ,同じころ,わが国の腎臓学会総会のシンポジウムでも初めて"uremic toxin"が取り上げられた.このシンポジウムの司会者の上田教授は司会のことばに,uremic toxinの意義の将来はなお不明確であると述べておられる.
 その後,この方面の研究は爆発的に進められuremic toxinの基礎的事項,臨床症状との関連性あるいは測定方法などについてみるべき業績が報告されているが,なお不明瞭な点も多く,特に臨床への利用という点では測定方法の煩雑なこともあって不満足な状態にある.

主題を語る

腎不全と透析

著者: 吉利和 ,   平澤由平

ページ範囲:P.762 - P.773

 人工透析は普及が著しく各施設で行われているが,透析へ導入するに当たっての判断規準は,意見の違い,習慣の違いを反映してバラツキがみられる.また,透析が長期にわたって行われるようになり,そのため感染症や石灰沈着が起こるといった新しい問題も生じ,さらに,透析に使用する水も患者に与える影響は大きい.これら数々の問題の解決が待たれている.

検査と疾患—その動きと考え方・79

腎移植と拒絶反応

著者: 酒井糾

ページ範囲:P.774 - P.780

はじめに
 末期腎不全の救命手段としての腎移植治療も確実に一般臨床に定着したが,永遠の課題である拒絶反応への対応手段は依然として確実なものがなく,いまだに苦慮することが多い.
 わが国での腎移植生着症例も1,100例を超えたが,その中にも急性拒絶反応を繰り返す症例や慢性拒絶反応に悩まされている症例も決して少なくない.

分離分析の技術Ⅱ・7

高速液体クロマトグラフィー—(6)アミノ配糖体系薬剤の分析

著者: 久保博昭

ページ範囲:P.782 - P.789

はじめに
 アミノ配糖体系薬剤(aminoglycosides,以下AG)は,細菌感染の化学療法剤として重要な一端を担っており,ペニシリン系薬剤やセファロスポリン系薬剤とともに,繁用されている広域抗生物質の一群である.
 抗生物質AGの分類は化学構造,抗菌スペクトルまたは抗生物質産生菌株の属から分類することができるが,化学構造が類似し,構造と薬理活性もほぼ相関しているので,一般に化学構造から分類されている.AGの化学構造は名前が示すようにアミノ糖を含む2個以上の糖残基から成る塩基性オリゴ糖であり,水に溶けやすい物質である.

基礎科学からの提言・1【新連載】

人工腎臓開発研究に参加して

著者: 早野茂夫 ,   篠塚則子

ページ範囲:P.791 - P.796

はじめに
 筆者らに人工腎臓関係のセンサー(イオン電極)の開発について話があったのは1976年の春,東京大学工学部精密機械工学科の舟久保教授からであった.当時私たちは人工腎臓がどんなものかまったく知らず,ただ腎臓に形がよく似ている機械を漠然と想像したものである.いかなるものか見当もつかないので,舟久保教授の人工腎臓開発グループに参加しておられた医学部教授を病院にお訪ねして話をうかがい,また実際に患者さんが人工腎臓を使っているところを見せていただいて,人工腎臓と呼ばれているのが,大量の透析液を用いる大きな透析器であることを初めて知ったのである.ちょうど,まだあどけなさを残しているような少年が透析を受けており,これから一生,週に2〜3回,1日5〜8時間を透析のためにベッド上で過ごさねばならないと聞いたとき,人工腎臓改良の必要性を痛感させられたのであった.
 人工腎臓はすでにご存じのように,腎臓機能が低下した場合に腎臓に代わって血液を浄化する装置で,膜を隔てて血液と透析液とを接触させ,除かねばならない老廃物(主として尿素,尿酸,クレアチニン,ナトリウム,カリウム)と水分を除く働きをしている.透析を受ける患者数は年々増え続け,腎移植を受けない限り,生涯透析を続けなければならない人が多いため,患者の社会復帰という面からも,また病院の設備の面からも,携帯型人工腎臓の実用化が切望されている.

研究

肺拡散能力の予測式に関する検討

著者: 沖本二郎 ,   川根博司 ,   松島敏春 ,   副島林造 ,   小林節子 ,   犬飼康恵 ,   小島健次

ページ範囲:P.801 - P.804

はじめに
 肺拡散能力は,肺の基本的機能であるガス交換の良否をみる指標であり,今日では広く臨床に応用されている.肺拡散能力の測定にはCOガス一回呼吸法(息こらえ法)が一般的であり1,2),その評価は実測値を予測値で除した%DLcoで判定されることが多い.正常予測値を求めるための予測式は数多くの研究者によって発表されており,従来わが国ではBurrowsら3),金上ら4),あるいは西田ら5)の予測式が用いられてきた.しかし,どの予測式を使用するかによって予測値も非常に違ったものとなり,その評価に非常な混乱を生じる.そこで,われわれは独自のDLcoの正常値および予測式を導くことにした.そして,われわれの作成した予測式と他の予測式を比較検討したので報告する.

CoomassieブリリアントブルーG250を用いる血清蛋白定量法

著者: 村本良三 ,   櫛下町醇 ,   鈴木優治 ,   入野勤 ,   坂岸良克

ページ範囲:P.805 - P.808

 血清総蛋白定量法は,原理的にもっとも正統的なKjeldahl法,日常検査には自動化法に適用されているビウレット法,用手法には屈折計法が代表的な方法である.一方,メチルオレンジ1)などのアゾ系色素,ブロムクレゾールグリーン(以下BCG)2),ブロムクレゾールパープル3)などのフタレイン系色素が血清アルブミン定量法に用いられている.これらの色素は,アルブミンに特異性が高く,グロブリンには,ほとんど反応性がないことから3,4),アルブミン定量への応用に限定されていた.
 鈴木らは,アルブミン定量法に限定されている色素法が,総蛋白定量法に応用可能かどうかの一連の検討をブロムフェノールブルー(BPB)を用いて行ってきた.その結果,グロブリンとの反応性は,主に呈色試薬のpHを下げ,さらに水溶性有機溶媒の添加で高まることが認められた.この知見から,BPBにアセトンを加えた処方で尿中蛋白定量法5),BPBにメタノールを加えた処方で血清総蛋白定量法を設定し6),色素法が総蛋白定量法に応用できることを報告した.

グリセロールを含む脳圧降下剤が酵素を用いた血清中性脂肪測定に及ぼす影響

著者: 園田信五 ,   加藤淳子 ,   春日信司 ,   土屋富貴子 ,   木全恵理子 ,   影山信雄

ページ範囲:P.809 - P.811

まえがき
 中性脂肪の酵素的測定法は,1966年EggsteinとKrentz1)がアルコール性水酸化カリウムで中性脂肪をケン化してグリセロールを生じせしめ,このグリセロールを酵素によりUV法で測定する方法を報告したことが始まりであり,1972年高橋2)が細菌由来のリポプロテインリパーゼ(LPL)を用いた測定法を報告してから,各種の測定法が開発された.酵素を用いた中性脂肪測定法は,筆者ら3)がすでに報告しているように,血清盲検が必須の条件である.その一例として,LPL-2,4-DNPH法で中性脂肪を測定していると,時に非常に高い血清盲検値を示す血清に遭遇することがあり,その原因を調べたところ,いずれも脳圧降下剤としてグリセロールを含む補液が直接静脈内に点滴注入されている患者由来の血清であることがわかった.
 脳圧降下剤によるこの妨害はすでにいくつかの報告3〜6)があるが,時に生体に投与されたグリセロールの消長,測定方法による影響の差などについての具体的な報告に接しない.そこで,繁用されている酵素を用いた種々の血清中性脂肪測定法に,このような血清がどのような影響を与えるのか検討し,二,三の知見を得たので報告する.

資料

エンザバイルによる胆汁中胆汁酸の測定法の検討

著者: 桑野脩子 ,   柳沢次郎 ,   中山文夫

ページ範囲:P.813 - P.815

はじめに
 胆汁酸は肝細胞でコレステロールより合成され,胆汁中に排泄される.腸管に排泄された胆汁酸は消化吸収の重要な働きに関与した後,その多くは門脈を経て肝に至り,再び胆汁中に排泄される.このように,肝を中心にして行われている胆汁酸の代謝異常は肝胆道疾患を反映する.したがって,生体試料中胆汁酸を測定することはその病態を明らかにするうえで意義のあるところであり,種々の測定法が用いられてきたが,いずれもかなり煩雑なきらいがあった.最近,第一化学薬品より可視部比色定量による血清中胆汁酸測定用のキット(エンザバイル)が開発された.われわれはこれを胆道閉塞解除後の胆汁中に排泄される胆汁酸を経日的に測定し,その肝機能回復のモニターに用いるために従来の蛍光部測定法(3α-HSD)との比較検討を行った.

レーザーフローサイトメトリーによるT細胞サブセットの自動解析

著者: 伊藤喜久 ,   原田弘智 ,   河合忠 ,   中野康平

ページ範囲:P.817 - P.820

 Schlossman, Reinkergらの一派により確立されたヒトT細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体(OKTシリーズ)の登場1)は,T細胞の機能,成熟分化の詳細な解析を可能にし,臨床医学においても免疫異常症の診断,予後,治療の判定などに広く応用されている.従来,これらのモノクローナル抗体を用いたT細胞表面抗原の解析は,全血より比重遠心法によりリンパ球を分離して,さらに間接蛍光抗体法や補体依存性細胞障害活性法などにより分析が行われてきた.しかしながらこれらの方法は採血量も多く,操作も煩雑で時間を要し,その判定においては再現性に乏しく,得られたデータの信頼性が低い場合も少なくない.
 最近Ortho社より,レーザーフローサイトメトリー法による新しい細胞自動解析装置(Spectrum Ⅲ)が開発された.この機器は,全血100μlで,きわめて簡単な操作法で短時間にT細胞サブセットの解析が可能な画期的なシステムである.著者らは,OKTシリーズの抗体を用いてこの装置の基礎測定条件の設定を行い,さらに臨床的応用を試みたので以下に報告する.

質疑応答

臨床化学 緩衝液の役割と反応系への影響

著者: 松村義寛 ,   K生

ページ範囲:P.821 - P.822

 〔問〕 希釈の際,一般には生食水を用いますが,緩衝液を用いるのは単にpHを保つためだけなのでしょうか.PBSにもリン酸塩緩衝食塩水とか生理的リン酸緩衝液などがあり,各成分(重量組成)などが異なっていますがこれではモル濃度も違っているのではないでしょうか.とすれば反応系に対して,モル濃度の違いは影響を及ぼさないのでしょうか.また,これらに含まれる塩化ナトリウムの量は生理的濃度にはなりませんが,これでよいのでしょうか.さらに,緩衝液を用いると不都合な検査がありましたらお教えください.

臨床化学 キット製品と尿酸の混濁

著者: 大澤進 ,   O生

ページ範囲:P.822 - P.823

 〔問〕 私の所ではN社の尿酸キットを使っていますが,時に反応液が混濁して比色計での測定の際濁りを読み込んで異常値を示します.そこで現在は盲検を立てて差し引き測定を行っています,『臨床検査』1981年2月号の質疑応答「試薬キットでの界面活性剤」も読みましたが,はっきりわかりません.界面活性剤のイオン強度に起因するのでしょうか,それとも患者の蛋白の異常なのでしょうか,お教えください.

臨床化学 ホルモン検査(妊娠反応)試薬の特徴

著者: 杉田長敏 ,   谷澤修 ,   A子

ページ範囲:P.823 - P.825

 〔問〕 私どもの病院では①ゴナビスライド(持田),②ハイゴナビス(同),③エストロテックスライド(同),④オールインテスト(オルガノ),⑤E3キット(帝国臓器)の各試薬を,単独あるいは組み合わせて検査を行っています.説明書どおりに行い結果を出しても,自分で納得のいかなかったときあるいは臨床からクレームがついたときには,確信を持った返事ができないでいます.それぞれの試薬の特徴,正常範囲などを詳しく知り,また臨床としては何を要求しているのかを知りたいと考えました.よろしくご教授ください.

血液 止血機構におけるカルモデュリンの役割

著者: 上林純一 ,   M子

ページ範囲:P.825 - P.826

 〔問〕 止血におけるカルモデュリンの意義とその測定法についてご教示ください.

血液 成人T細胞型白血病の発生状況

著者: 西村弘道 ,   I子

ページ範囲:P.826 - P.827

 〔問〕 成人T細胞型白血病は日本の特定の地区に多発しているそうですが,その出現頻度について,日本および外国における現状をお教えください.

臨床生理 エルゴメーターとトレッドミルの比較

著者: 名越秀樹 ,   T生

ページ範囲:P.827 - P.829

 〔問〕 負荷心電図検査として,エルゴメーターとトレッドミルのいずれかを採用したいのですが,それぞれの長所と短所をお教えください.

臨床生理 横隔神経伝導速度測定法

著者: 名取徳彦 ,   I生

ページ範囲:P.829 - P.830

 〔問〕横隔神経伝導速度の測定法と臨床的意義についてお教えください.

臨床生理 ローランド棘波(Rolandic spike)とは

著者: 西浦信博 ,   H生

ページ範囲:P.830 - P.832

 〔問〕脳波所見でローランド棘波とはどのような所見を言うのですか.また,その臨床的意義を教えてください.

臨床生理 妊婦の超音波画像

著者: 川名ふさ江 ,   K生

ページ範囲:P.832 - P.834

 〔問〕超音波画像において妊娠初期で子宮後屈の婦人の場合,胎嚢,心拍確認のコツを教えてください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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