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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査27巻8号

1983年08月発行

雑誌目次

今月の主題 血液凝固検査と合成基質 カラーグラフ

血液凝固と合成基質

著者: 佐野雅之 ,   斎藤英彦

ページ範囲:P.840 - P.842

カラーグラフ解説
 血液凝固因子または凝固阻止因子の活性は,従来もっぱら凝固法,すなわちフィブリン析出をエンドポイントとして凝固活性を調べる方法により測定されてきた.例えば,第Ⅷ因子活性を測定する際の,既知の先天性第Ⅷ因子欠乏血漿に検体を加えたときに,その部分トロンボプラスチン時間(PTT)がどれだけ補正されるかにより検体中の第Ⅷ因子活性を測定するやりかたである.この場合,フィブリン形成速度が第Ⅷ因子活性のみに依存するような測定条件を用いるわけである.しかし,フィブリン形成は多段階の反応が連鎖的に起こった総和であるため(図1),結果の解釈は複雑で再現性に乏しく,また手技に習熟を要するなどの欠点があった.
 近年,凝固反応の生化学的研究の進歩,特に凝固因子の構造およびその活性化機構の解明により,多くの凝固因子は蛋白分解酵素(プロテアーゼ)の前駆体(zymogen)であり,いったん活性化されると,基質特異性の高いプロテアーゼとして特定のポリペプチド結合を水解することが明らかとなった.それとともに,凝固因子の活性を合成の基質により簡単に,迅速に,再現性高く測定しようという試みが出てきたのは,当然と言えよう.

技術解説

トロンビンおよびアンチトロンビンⅢの測定

著者: 桜川信男 ,   近藤信一 ,   丹羽正弘

ページ範囲:P.843 - P.847

 凝固因子は凝固機序が活性化されるとセリン蛋白分解酵素(serine protease)となり,それぞれ特異的に基質を分解して活性型凝固酵素を形成する.例えば活性型凝固因子(第Xa因子)はプロトロンビンを限定分解してトロンビンとするが,トロンビンはこの基質となるプロトロンビンのC端における特異なアミノ酸配列の部位を分解することがわかっている.この特異性を利用して各凝固酵素のアミノ酸配列の関係から,アミノ酸にp-ニトロアニリン(pNA)を結合させた発色性合成ペプチド基質では,酵素活性度による分解されたp-ニトロアニリン量による黄色度で判定され,また蛍光合成基質では蛍光量で判定される.

XⅢ因子の測定

著者: 浦山功

ページ範囲:P.848 - P.853

 XⅢ因子はトランスグルタミナーゼの一種であり,生体内ではフィブリン分子間あるいはフィブリンと他の蛋白との間に架橋形成を起こさせ,線溶抵抗性の獲得と線維芽細胞の接着増殖担体形成を促進させる役割を担っている.反応はアミドボンドの形成であるから,カルボニルとアミンの二つの基質が必要である.フィブリンを基質とする場合は同一蛋白内に両者を含み,固層蛋白間のクロスリンク反応となるが,カゼインを用いることによりアミン基質側に種々の合成基質が使用可能となる.さらには,カルボニル側も合成基質が開発されつつあり,完全合成基質系も可能である.ただし現状ではそれぞれ一長一短があり,いまだ発展の余地が残されているのでカゼイン法と合成カルボニル法を併記することとし,測定法に関する今後の展望を試みた.また臨床的意義についても未確定の部分が多いと思うが,知るところを概説した.

合成ペプチド基質による血漿プレカリクレイン,血漿カリクレイン・インヒビターの測定

著者: 加藤正俊

ページ範囲:P.854 - P.862

 血漿プレカリクレイン(PKA)は陰荷電物質表面上において,XⅡ因子,XⅠ因子および高分子キニノゲン(HMWK)の存在下で血漿カリクレインに変換される.そして,この血漿カリクレインはプロテアーゼとしての活性を持つようになり,フィードバック機構としてXⅡ因子を活性化するとともに高分子キニノゲンに働いてブラジキニンを遊離させる.血漿プレカリクレインはこのように,血液凝固開始機構やキニン系開始機構と密接な開連を有することが知られている.また,血液中には血漿カリクレインに対する阻害因子としてC1-インアクチベーター(C1-INA),α2-マクログロブリン(α2-M),アンチトロンビンⅢ(AT-Ⅲ)などが存在し,血漿カリクレインは速やかに失活する.

プラスミノゲン,プラスミンの測定

著者: 松田保

ページ範囲:P.863 - P.867

 プラスミノゲンは,フィブリンを溶解する酵素であるプラスミンの前段階物質である.その測定法としては,プラスミノゲンを含む検体にウロキナーゼまたは少量のストレプトキナーゼを加え,これをプラスミンに転化させるか,またはこれに大量のストレプトキナーゼを加えてプラスミノゲンとの複合体を生ぜしめ,そのいずれかの蛋白質分解作用を測定する方法(活性測定)と,抗原—抗体反応を応用してその濃度を測定する方法(一次元免疫拡散法;SRID法)とがある.活性測定法のうち,プラスミノゲンを含まないフィブリン平板上に検体を載せ,その溶解面積を測定する方法は,検体から抗プラスミンを除去する必要がある点が難点である.これに対し,ストレプトキナーゼとプラスミノゲンの複合体がフィブリンを分解しないが,ある種の合成基質を分解することを利用した発色合成基質法は,この複合体に対する強力な阻止物質が存在しない点が有利で,広く用いられつつある.

合成基質による血液凝固検査と自動化装置

著者: 鈴木弘文 ,   松尾純孝 ,   宇田川治男

ページ範囲:P.868 - P.872

 近年における血液凝固学の発展は実に目覚ましいものがあるが,中でも発色性合成基質の導入による血液凝固能関連物質の測定は,今後新しい方向に血液凝固学を進展せしむるものとして,多大の関心が寄せられ,大いなる期待が寄せられている.
 合成基質を用いた血液凝固能測定の原理,方法およびその臨床的意義などに関しては本号の他項においてそれぞれの専門の諸家により詳述されるので本項においては省略するが,その測定方法すなわち判定方法が,従来のフィブリン析出までの「時間」を主とした測定法とは異なり,「呈色」あるいは「透光」状態により判定するものである.したがって,測定装置も従来の機構とは異なったものとなり,測定機器においても大きな影響を被っている.

総説

血液凝固の新しい考えかた

著者: 名倉英一 ,   斎藤英彦

ページ範囲:P.873 - P.880

はじめに
 血液は生命維持にたいせつな酸素や栄養素を組織に運搬し,炭酸ガスや代謝産物を搬出するなど,われわれの生存にとって不可欠なものである.血液成分が血管外へ失われる出血は生体にとって不利な出来事であるので,出血を防ぐ巧妙な止血機構が備わっているのは当然である.なんらかの原因で血管の断裂が起こって出血すると,その部位の血管壁と血液成分に一連の反応が起こり,出血が止まる.この機序は二つの反応段階に分けて考えられており,最初は血小板と血管壁との相互反応により血小板血栓が形成され(一次止血),次いで凝固系の活性化により凝集した血小板を包む形でフィブリン線維の網が出現し,さらにこの血栓はトロンビンにより活性化されたフィブリン安定化因子(第XⅢ因子)により安定されて強固なものとなる(二次止血).
 血液凝固が止血に大きな役割を果たすことは血友病患者にみられる著しい出血症状からも明らかであるが,一方,血液は血管内では凝固せずに流動性を保っていなければならない.したがって,必要な時と場所でのみ凝固反応が起こることが肝要である.過去10年間における凝固の生化学的研究の発展は目覚ましく,凝固因子およびその阻害因子の精製,性質,活性化機構,一次構造の決定などまでも知られるようになった.

主題を語る

血液凝固線溶検査と合成基質

著者: 安部英 ,   中村克己

ページ範囲:P.882 - P.889

 現在の発色性合成基質の開発は,スウェーデンのBlombäckの研究に端を発する.それは多くの長所を持っているが,他方では,体内の再現性に疑問が残ること,値段が高いこと,などの短所がある.今回は,この方面の第一線の両氏に,これらの点を踏まえ,合成基質を用いた方法と従来法との比較,測定法の原理と形式,基準化,インヒビターの問題などについてお話し合いいただいた.

検査と疾患—その動きと考え方・80

血液凝固異常と肝疾患

著者: 前川正 ,   塚田裕幸

ページ範囲:P.891 - P.897

はじめに
 肝は多くの血液凝固因子の生成部位であるので,肝疾患では種々の凝固障害がみられることはよく知られている.その成因としては凝固因子の生成障害のほか,出血や腹水貯留などによる凝固因子の喪失,線溶亢進,さらに凝固活性を持つ肝組織の崩壊による凝固活性化が,活性型凝固因子や中間産物の処理障害および凝固抑制因子の生成障害を背景としてもたらす凝固因子の過剰消費などが推定されている.さらに消費の亢進や脾腫のある場合には,それへの分布による末梢血中の血小板数減少も加わり,顕在性あるいは潜在性出血傾向を招来することがある.これらの異常が顕著であるのは肝硬変症や劇症肝炎であるので,それぞれの症例を呈示したうえで,肝障害時の凝固障害につき総括したい.

学会印象記

第32回日本臨床衛生検査学会/第3回国際電気泳動学会

著者: 大久保康人

ページ範囲:P.898 - P.898

輸血の多様化と検査技師の立場
 第32回日本臨床検査学会が4月29日から3日間の日程で岡山市で開催された.周到な準備が行われたと聞いているが,12の会場に分かれての学会でたいへん盛会であり,各会場をバスで結び,バス停留所にはそれぞれ案内係を配置された心の配りようには,笠原会長の学会に対する情熱とともに参加者に対する配慮が感じられた.盛会を心からお祝い申し上げたい.学会は招待講演2,会長講演,シンポジウム5,特別集会4のほか一般演題869題と非常にたくさんの講演内容であったが,私は残念ながら全日程に参加できなかったので全体について語ることはできない.したがって,輸血部門に限って印象を述べたい.
 パネルディスカッションでは「不規則抗体検索の問題点」と題して,赤血球の不規則抗体と血小板抗体を取り上げ,赤血球不規則抗体については石田萌子氏(関西医大輸血部),西村要子氏(熊本大輸血部),内山英一氏(岡山県赤十字血液センター)の3名,血小板抗体については吉村敬次氏(大阪府赤十字血液センター),小林信昌氏(東海大輸血センター),追加発言として谷脇清助氏(兵庫医大輸血部)の3名がそれぞれの経験に基づく報告を行った.不規則抗体については従来から取り上げられてきているが,血小板抗体については今回が初めてである.血小板輸血についてはその輸注効果の点で血小板抗体が問題となる.しかし,血小板特異抗体は現在のところまだ明確ではない.

分離分析の技術Ⅱ・8

超遠心分離—リポ蛋白の分画定量

著者: 等々力徹 ,   横田厚彦

ページ範囲:P.900 - P.906

はじめに
 血清中のリポ蛋白は,脂質の体内における担体である.それらは血清中で代謝されながら,それ自身の持つ脂質を臓器から臓器へと運搬している.最近,このような血清中リポ蛋白代謝が詳しくわかってきている.それらの知見から考えると,血清中のリポ蛋白分画比は,まさにリポ蛋白代謝の動態を反映するはずである.したがって,臨床化学の脂質検査において,各症例につき,リポ蛋白の分画比や,さらに各リポ蛋白の脂質組成を知ることが,その症例の血清中リポ蛋白代謝の動態,ひいては高脂血症の成因の追究に必須となる.
 本稿では,超遠心分離を用いた血清リポ蛋白分画,ならびに各リポ蛋白の脂質組成の解析法を,得られた結果とともに紹介する.

基礎科学からの提言・2

マイクロ機械システムの医療への寄与

著者: 舟久保煕康

ページ範囲:P.908 - P.913

はじめに
 人体の診断技術は,X線CTにみられるように急速な進歩を遂げつつある.これは,血液の迅速成分分析のような検査技術についても同様である.また治療技術分野においても,各種の高度技術を利用した機器の実用化が進んでいる.
 しかし,人の身体は十人十色と言われるほど各人各人により異なり,どの指標がノーマルで,どこから先が異常であるかを,単に数値だけからは判定しえないことも事実である.

研究

Türk液または酸性クリスタルバイオレット液染色法による細胞数計測時にみられる誤差について

著者: 長田洋子 ,   伊藤利根太郎

ページ範囲:P.914 - P.916

はじめに
 Türk液または酸性クリスタルバイオレット液は,含有する酸で細胞質を溶解して細胞核だけを染色するので,試料に赤血球が混在している場合など有核細胞数を求めるのに有用である.昔から広く臨床検査室などで用いられていて,現在,その方法を記載した最初の文献はどれであるのかわからないほどである.私たちもマウスの脾臓細胞数を数えるのにこの方法を使用していたが,同一材料を二度,三度と数えると値がそのつど変化し,再現性が認められなかったので,その原因とそれを除く方法を検討した.

一元放射補体結合反応(SRCF)の検討—マイコプラズマ抗体検査における成績について

著者: 井村坦子 ,   伊藤賢次郎 ,   大崎加代子 ,   小林進 ,   小林良彦

ページ範囲:P.917 - P.919

はじめに
 Mycoplasma Pneumoniae (以下,MP)感染症の診断には,喀痰からMPを分離・同定するのがもっとも確実な方法であるが,その培養はきわめて難しく,陰性に終わることが多いため,主に寒冷凝集反応(以下,CHA),補体結合反応(以下,CF),間接血球凝集反応(以下,IHA),蛍光抗体法などの血清学的検査が利用されている.われわれはかつてこれらの方法について検討した成績を報告した5)が,このたび補体フィルム膜を用いた一元放射補体結合反応(single radial com-plement fixation;SRCF)を用いてMP抗体価を測定する方法について検討したので,結果を報告する.

二,三の腎疾患患者の尿中糖蛋白質の分析

著者: 増田博

ページ範囲:P.920 - P.922

はじめに
 尿中の複合糖質は,精神的なストレスおよび,ある種の泌尿器系疾患時に増量することが報告されている1,2).筆者らは前報で3),正常人の尿中Tamm-Hors-fall糖蛋白質は遠心沈殿よりも濾過によって著しく減少するが,尿中の酸性ムコ多糖および糖ペプチドは遠心沈殿によっても,濾過によっても減少しないことを報告した.したがって,本報では二,三の腎疾患患者の尿中Tamm-Horsfall糖蛋白質量が遠心沈殿および濾過によっていかなる影響を受けるかを検索した.

資料

沖縄県における尿沈渣標本作製のための器具および手技の現況について—各病院に対するアンケート調査から

著者: 知念清栄 ,   根路銘国政 ,   玉那覇秀雄 ,   松井克明 ,   外間政哲

ページ範囲:P.923 - P.927

はじめに
 1974年以来,全国的な規模で尿沈渣の基準化が検討されてきている.これは全国どこの医療施設で実施された検査データであっても,相互に比較したり利用したりできるように,検査方法や成績の報告などの統一化を図ろうとするものである.そのためには,使用する器具の統一化や操作法の画一化が望まれるところである.
 沖縄では日本復帰後10年が経過し,ようやく本土並みの医療水準に到達してきている.そこで,尿沈渣において使用する器具および操作法の全国的な統一化へ向けての参考に供するために,沖縄県の各医療施設における尿沈渣の実態調査を実施したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

エチジウムブロマイド蛍光法を用いたリンパ球幼若化反応試験の基礎的検討および臨床的応用

著者: 伊藤喜久 ,   河合忠

ページ範囲:P.928 - P.932

はじめに
 特異抗原やマイトジェンがリンパ球表面に結合すると,細胞内で一連の化学反応が起こって核酸合成量(DNA, RNA)は増大し,形態的に細胞核は拡大,クロマチンは細網化し,核小体も出現して,細胞質は強塩基性を示す.このような現象をリンパ球芽球化反応と呼び,臨床検査の分野では,悪性腫瘍,自己免疫性疾患などの免疫異常症の細胞性免疫能の検定に応用されている.
 リンパ球刺激試験において現在広く行われている成績評価法は,形態法および3H-チミジン取り込み法であるが,前者は再現性の低さから,後者は放射性物質使用に伴う種々の問題から,必ずしも一般検査室レベルに定着していないのが現状である.そこで広くこの検査の普及を図ることを目的に,エチジウムブロマイド(ethidium bromide:EB.化学名:2,7-ジアミノ-10-エチル-9-フェニルフェナントリジニウムブロマイド)を用いてリンパ球中のDNAを直接測定し,リンパ球芽球化能を検定する新しい検査法を開発したので,測定法の検討成績について報告する.

α2-プラスミン・インヒビター測定用改良キットの検討

著者: 浅井正樹 ,   遠藤武 ,   佐藤久美子 ,   児玉隆成 ,   中島正三 ,   中野茂 ,   高木明 ,   浅井紀一

ページ範囲:P.933 - P.937

はじめに
 1958年,Normanら1)により唱えられた即時反応型抗プラスミン(immediate antiplasmin)は,その後,Mullertz2),Collen3),青木ら4)によりα2-プラスミン・インヒビター(α2-plasmin inhibitor:α2-PI)として同定され,先天性α2-PI欠乏血症の発見5,6)により確定的となった.
 他方,測定には,線維素やカゼイン溶解による方法や免疫学的な方法が行われているが,煩雑であったり,時間を要するなどの欠点がある.しかし,プラスミンに特異性の高い発色性ペプチド基質(S−2251)の合成,開発7)は,その迅速な測定を容易に実施しうるところから,しだいに研究室や検査室に利用されるに至った8〜12).この方法は多くの優れた特長を持つが,血漿中のα2-マクログロブリン(α2-M)やその他のインヒビターが測定値に影響を及ぼすことが知られている13)

全血血小板凝集計の持つ問題点—電極洗浄と感度について

著者: 松尾理 ,   酒井鉄博 ,   松尾睦美 ,   村上典子 ,   鈴木有朋

ページ範囲:P.939 - P.941

はじめに
 血小板の機能は,血栓の形成あるいは出血傾向などにみられるように,その正常範囲を逸脱すると,速やかに病的な状態が惹起される.日本における生活習慣の変化などによって,最近,血栓関連疾患が増加しているようにみえる.すなわち,厚生省の「死因統計」1)によると,死因順位の第1位に悪性腫瘍がなった(16.6万人)ものの,第2位は脳血管障害であり(15.7万人),その約6割は脳梗塞である.また,第3位は心臓疾患(12.6万人)で,そのうち約4割は虚血性疾患となっている.この中から血栓塞栓性疾患を合計すると,おそらく悪性腫瘍を抜いて死因統計の第1位になると思われる.このように,わが国においても欧米に類似して,血栓塞栓性疾患が増加していると思われ,そのため血栓塞栓性疾患の早期発見あるいは予防のための検査が必要である.この意味において,血小板機能検査はたいへん重要である.
 一般的に血小板機能検査として患者の血液から多血小板血漿(以下,PRPと略)を分離し,それを血小板凝集計に入れ,ADPなどの凝集惹起物質を添加することによって起こされる透過度の変化のパターンから判定2)されている.全血からPRPを分離する手段がデリケートな血小板機能になんらかの影響があるとも考えられるうえ,操作の煩わしさが血小板凝集機能検査の一般的な普及の障害になっているとも言える.

私のくふう

写真印画紙水洗機に細工を加えたサンプルカップ洗浄機

著者: 藤川淳

ページ範囲:P.927 - P.927

 大型自動分析機の導入によって,大量のサンプルカップの洗浄が必要になり,市販されているサンプルカップ洗浄機を2〜3検討した結果,満足するものは得られなかった.そこで写真印画紙の回転式水洗機に着目し,これに2〜3の細工を施すことにより,洗浄効果を上げることができたので報告する.

質疑応答

臨床化学 尿中酵素について

著者: 佐野紀代子 ,   S生

ページ範囲:P.943 - P.944

 〔問〕 尿中酵素の臨床的意義および測定上の注意点について教えてください.

血液 血漿カリクレインの定量に当たって

著者: 加藤正俊 ,   N生

ページ範囲:P.944 - P.946

 〔問〕 血漿カリクレインの定量(合成基質)における,次の疑問についてお教えください.
(1)試料とアクチベーターとの反応を氷中で行わせる理由は.

輸血 赤血球抗体の解離法—特にABO式血液型の亜型・変種の判定における吸着・解離法

著者: 小松文夫 ,   I生

ページ範囲:P.946 - P.947

 〔問〕 ABO式血液型の亜型・変種の判定には解離試験を行いますが,このときの(1)解離液の組成(2)方法と操作上のポイント(3)判定のしかたについてお教えください.

輸血 ブロメリン法での非特異的凝集

著者: 内川誠 ,   F生

ページ範囲:P.948 - P.949

 〔問〕私の病院では交差試験をブロメリン法,Coombs-アルブミン法で行っていますが,時々Coombs-アルブミン法陰性でブロメリン法陽性の場合があります.この原因の一つにブロメリンの非特異的凝集がありますが,その見分けかたと,非特異的凝集がなぜ起こるのかをお教えください.

免疫血清 Widal反応実施上の疑問

著者: 岩田進 ,   K生

ページ範囲:P.950 - P.951

 〔間〕 Widal反応について成書を読み,疑問を持ちました.
(1)血清希釈法がバラバラで,希釈液が『臨床検査提要』では「0.5ml」,『微生物検査必携』では「0,25ml」となっています.このどちらか一方の方法で実施し,1週間間隔で測定した値に差を認めれば陽性としていいのでしょうか.

臨床生理 build up現象の年代差

著者: 洲鎌盛一 ,   福山幸夫 ,   T代

ページ範囲:P.951 - P.952

 〔問〕脳波検査の賦活法として過呼吸にみられるbuildupという現象は,成人では弱くて,小児で強く,また頻度の高いのはなぜでしょう.

臨床生理 過呼吸賦活患者のしびれ感

著者: 松岡成明 ,   E生

ページ範囲:P.952 - P.953

 〔問〕脳波検査での賦活法に過呼吸がありますが,その過呼吸賦活中に患者がしばしば手足や全身のしびれ感を訴えます.その生理学的メカニズムをお教えください.

臨床生理 脳波の左右差

著者: 内海庄三郎 ,   A生

ページ範囲:P.953 - P.954

 〔問〕正常人において脳波の左右差には生理学的な意味があるのでしょうか.

一般検査 喀痰の質評価および処理法

著者: 相原雅典 ,   B生

ページ範囲:P.954 - P.955

〔問〕喀痰の細菌検査に当たって,(1)喀痰の質の評価法であるMurry & Washingtonのグレーディング
(2)喀痰の均一化のための諸法の長所,短所の二点につきお教えください.

診断学 心疾患無自覚者の巨大陰性T

著者: 石見善一 ,   E生

ページ範囲:P.955 - P.956

 〔問〕 過去に心疾患の自覚がなく,巨大陰性(giant negative) Tの心電図所見を示す人がありますが,どのように解釈すればよろしいのでしょうか.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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