icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床検査29巻2号

1985年02月発行

雑誌目次

今月の主題 発光分析 カラーグラフ

蛍光と細胞化学—その定量的手法

著者: 芦原司 ,   藤本高久 ,   諸富直文 ,   蒲池正浩 ,   竹下秀之 ,   土橋康成 ,   楠崎克之 ,   香川恵造

ページ範囲:P.114 - P.116

 蛍光染色(または標識)法は細胞内微量物質の高感度検出法として,組織細胞化学に多用されてきた.一方,十数年前から落射型顕微蛍光測光法およびフロー・サイトメトリーが発達し,細胞単位の微弱な蛍光の測光定量が可能になってきた.すなわち,これらの細胞(蛍光)測光法は,高感度な定量的組織細胞化学の手法であるとともに,細胞レベルの生化学的解析手法でもある.特に,細胞を形態観察とともに蛍光測光できる落射型顕微蛍光測光法では,オートラジオグラフィーも併用できて細胞(病理)学研究への応用性が広い.『技術解説』も用いて,この手法のための装置,測光原理,細胞蛍光染色の実際,さらに解析応用例も含めて紹介したい.

技術解説

顕微蛍光測定法の手技

著者: 芦原司 ,   蒲池正浩 ,   楠崎克之 ,   藤本高久 ,   竹下秀之 ,   香川恵造 ,   諸富直文 ,   土橋康成

ページ範囲:P.117 - P.123

 細胞蛍光測光法は,細胞内微量代謝物質の蛍光標識による高感度定量法として,最近では基礎・臨床医学,および生物学研究に広く利用されている.この手法のうち,フロー・サイトメトリーは高速な自動測光ができるため,細胞性格の臨床検査にも用いられているのに対し,落射型顕微蛍光測光法は細胞形態観察とオートラジオグラフィーを併用できるため,細胞動態をはじめとする測光解析の応用性が広い特徴がある.したがって後者の手法は,細胞の形態評価と密に関連した細胞測光解析を可能にするため,細胞学研究上の有用性が高く,定量的細胞病理学の一つの重要な研究手段と考えられる.このような背景で,この落射型顕微蛍光測光法に関する装置や技術の開発研究,ならびに癌,その他の病変に関する病理学などへの応用研究も,エネルギッシュに進められてきた.さらに現在,この技術を,自動化を図ることによって,臨床検査などの実用的細胞解析法に発展させる試みも行われており,また細胞の応用解析法そのものも,まだ端緒を開かれたところで,将来に大きな発展があると考えられる.この手法の現状を,技術に焦点を合わせて,カラーグラフとともに述べた.

生物発光分析

著者: 鈴木喜隆 ,   後藤俊夫

ページ範囲:P.125 - P.133

 生物発光分析はラジオイムノアッセイに匹敵する感度を持ち,安全性や操作の容易さなどでは,これよりも有利であるにもかかわらず普及するまでに到っていない.牛物発光分析は現在では,ホタルによるATPおよびそれを軸とする生体成分の超微量分析,発光バクテリアによるFMNまたはFAD (P) Hを軸とする酵素系の定量,発光ミミズによるH2O2の定量,発光クラゲのエクオリンによるCa2+の定量が実用化され,これらはさらに無限の可能性を秘めている.本稿では,これらの定量法の現況と,その他の発光系の応用の可能性について概説した.

化学発光分析

著者: 亀井幸子

ページ範囲:P.135 - P.143

 化学発光は古くから知られている現象であるが,臨床化学の領域でこれが見直されたのは1970年代未頃である.それから後,爆発的にというわけではないが報文数も増加してきている.生物発光と比較すると量子収率が低いのが欠点と言えるが,比較的単純な反応系を使用することができて,シルフェラーゼのように不安定な酵素を必要としないところは強みである.
 最近は化学発光に利用する試薬の開発にも目が向けられて量子収率の向上,試薬の純度や安定性の向上などの面で改良が見られ,選択できる試薬も蛍光性物質や,触媒を含めて良いものができているのは心強い.当面は模索を続けながらも実用化を目指して発展して行く領域であると思われる.

化学・生物発光反応を用いるイムノアッセイ

著者: 辻章夫 ,   前田昌子

ページ範囲:P.145 - P.152

 酵素や蛍光色素を標識体とするエンザイムイムノアッセイやフルオロイムノアッセイはラジオイムノアッセイに代わる方法としてしだいに広く用いられてきている.最近,より高感度のイムノアッセイとして化学・生物発光反応を用いる方法が開発されている.本稿では,化学発光性化合物のイソルミノール誘導体を標識体とする化学発光イムノアッセイ,ペルオキシダーゼやグルコースオキシダーゼを標識体とし,ルミノール—H2O2やビス(2,4,6—トリクロルフェニール)オキザレート—蛍光色素を用いる化学発光酵素イムノアッセイおよびグルコースデヒドロゲナーゼを標識酵素とし,バクテリヤルシフェラーゼによるNADHの生物発光反応を用いる酵素イムノアッセイについて解説する.

総説

発光分析の現状と展望

著者: 今井一洋

ページ範囲:P.153 - P.160

 1984年9月4日から6日まで,ベルギーのゲント市にて,第一回国際シンポジウム「生物医科学における定量的発光分析法」が開催され,各国より約200人の参加者を得て,発光分析法についての活発な討論が行われた.シンポジウムの趣旨は発光分析に携わる研究者同志の情報交換をスムースにしようとするものである.
 発表の内容は化学発光分析(Chemiluminescence Analysis),生物発光分析(BioluminescenceAnalysis),蛍光分析(Fluorescence Analysis)およびリン光分析(Phosphorescence Analysis)の基礎研究に関するものから,これらの,イムノアッセイや高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の検出系への応用ならびにそれにまつわる研究など,広範囲にわたるものであり,このシンポジウムの内容そのものが発光分析の現状を反映しているように思えた.

主題を語る

炎光分析の問題点を探る

著者: 高原喜八郎 ,   水野映二

ページ範囲:P.162 - P.169

 炎光分析の歴史は古く,現在でも正常値は炎光分析法での測定値が用いられている.イオン電極法との比較を中心に,各測定値の持つ臨床的意義,ランニングコストの問題,機器の管理面の問題などに触れ,炎光分析のこれからの方向を語っていただいた.

座談会

必須元素としての重金属とその臨床的意義

著者: 不破敬一郎 ,   大久保昭行 ,   大森昭三 ,   和田攻

ページ範囲:P.170 - P.180

 栄養素やビタミン欠乏症は臨床的にも臨床検査の上からも古くから対象とされていたが,鉄欠乏による貧血やヨード欠乏による甲状腺腫を除いて元素の欠乏は,あまり注目されなかった.近年,原子吸光法など測定技術が進歩し,多くの病態や病気に,亜鉛,銅,セレン,クロムなどの必須微量元素が関連していることが判明しつつある.この座談会では,微量元素の理解と実際の検査室での取り扱い,およびその臨床的意義について専門家の話をうかがった.

シリーズ・先天性遺伝性疾患の診断に役だつ検査・2

先天性アミノ酸代謝異常症

著者: 青木菊麿

ページ範囲:P.188 - P.195

 先天性アミノ酸代謝異常症は,分析技術の進歩に伴って新しい疾患が発見されてきた.フェニルケトン尿症が発見されたのは1932年であり,尿の塩化第二鉄試薬による簡単な呈色反応によるものであった.1940年代にペーパークロマトグラフィーが臨床に導入されてから多くのアミノ酸代謝異常症が確定されるようになり,次いで液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーが開発され,特に1951年Steine&Mooreの開発したアミノ酸自動分析計の普及によりアミノ酸代謝異常症の研究は画期的な発展をとげている.現在はさらに質量分析計による異常代謝産物の構造解明などに基づき,より詳細な研究がなされている.しかし日常臨床のアミノ酸代謝異常症の診断には必ずしも複雑な分析技術を必要とするものではなく,最初は定性的なスクリーニングの方法から開始し,次いでアミノ酸自動分析計などによる定性,定量へと検査を進めていくべきである.図1は現在知られている主なアミノ酸代謝異常症(転送障害症も含む)と血中および尿中に増加するアミノ酸やその他の異常代謝席物との関係を示したものである.本稿では主として尿と血液からアミノ酸およびその代謝産物を検出する方法について,スクリーニング的方法からアミノ酸自動分析計による分析にまで触れたいと思う.

シリーズ・医用基礎工学入門・2

基礎・2

著者: 金井寛

ページ範囲:P.197 - P.199

生体の構成
 生体は,原子→分子→細胞内構造→細胞→組織→臓器→系→個体,というように階層的に構成されている.生体の特性を考える場合には,これらのどのレベルが重要であるかを考えなければならない1).X線,光,電波,超音波,力学的振動などはいずれも波動なので,これらに対する生体の特性は同一の現象として統一的に考えることができるが,波長が異なるので上記のどのレベルが重要であるかは波長によって決まる.例えば,X線は波長が短くエネルギーが強いので,X線の生体内での吸収や散乱は原子レベルで決まる.光の場合はX線より波長が長いので,吸収は原子・分子レベル,散乱は原子・分子・細胞レベルの影響が大きい.
 電気特性は一般に細胞・組織レベルの構造で決まるが,マイクロ波では波長が組織の大きさに近くなり,組織レベルでの共鳴や散乱が重要となる.超音波,力学振動などは細胞・組織レベルと関係が深いが,超音波吸収や力学的非線形性は分子レベルの影響を強く受ける.

シリーズ・癌細胞診・2

子宮頸部癌・1

著者: 長谷川寿彦

ページ範囲:P.201 - P.204

 子宮頸部癌を大別すると,発生部位と組織型別とがあり,前者では原発性と転移性癌とがある.子宮頸部転移性癌の場合には明らかな癌細胞が出現しているのに腫瘍性背景が欠如する例が多いなどの特徴がある.さらに腔円蓋部プール,頸管内吸引細胞診で子宮体内膜腺癌,卵巣原発癌や腹水からの腫瘍細胞を見い出すことも多い.これらは子宮頸部に存在する癌ではないが,鑑別として当然考慮すべき疾患である.組織型別では扁平上皮癌,腺癌,腺扁平上皮癌とがある.以下稀有症例は除き,日常細胞診でみられる定型例の細胞像につき解説する.

研究

Compromised hostの血液より分離された比較的まれな病原菌3菌種

著者: 佐久一枝

ページ範囲:P.205 - P.208

はじめに
 東京都立駒込病院は悪性腫瘍(癌)の診断と治療とを重点としている施設であり,癌による全身の衰弱や,放射線と化学療法による治療の結果,感染防御能の低下をきたしたことによる起病性の弱い細菌や真菌などによる感染症患者が多い.
 今回は,かかる患者の血液からの分離菌としては比較的まれな,Campylobacter fetus subsp.fetus 2例,Vibrio vulnificus 1例,Listeria monocytogenes1例,計4例について報告する.

Congo Red法を用いる網内系機能検査法についての実験的研究

著者: 清水一広 ,   田中修一 ,   半田武 ,   中沢照喜 ,   白石美津子 ,   長瀬英生 ,   田中美紀 ,   平澤博之 ,   佐藤博

ページ範囲:P.209 - P.212

緒言
 網内系(reticuloendothelial system)は貧食作用系の一端を形成し,細菌をはじめ内因性,外因性の毒素および微小血栓などの微細異物を貧食する機能を有することが知られている.すなわち網内系は血流のフィルターとして,血流によって運ばれてくるものを肝および脾などにおいて細胞内へ貧食し処理することにより生体防御機構として重要な役をはたしている,また肝は網内系の大部分を占める臓器であり,肝硬変および肝切除後には肝網内系機能が著明に低下し,この低下が術後における敗血症,成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)の合併症の発生1),さらには多臓器不全発生の一つの因子であるとして最近注目を集めている2)
 この網内系機能を検査する方法は従来から生体に主として網内系において処理されることが判明している異物を静脈注射し,異物の流血中からの消失を経時的に測定し,網内系への異物摂取状態を観察する方法が一般的に用いられている.この異物の投与法としては脂肪乳剤法3),鉄負荷法4),墨汁法5)およびCongo Red法6〜9)など多数10)あるがおのおのの方法には一長一短がある.たとえば微粒子を静脈注射する場合には微粒子の大きさおよび投与量が網内系機能を測定するうえにおいて重要な因子となり,また放射ラベルを行った物質を用いるときには施設,測定機器および安全性などに問題が生じる.

ガス産生性のShigella boydii 14型による海外旅行者下痢症の1例

著者: 大塚英樹 ,   鈴木達代 ,   奥野隆子 ,   北原美恵子 ,   後藤たまき ,   大隈章平

ページ範囲:P.213 - P.215

はじめに
 近年海外との交流が飛躍的に発展した結果,海外旅行者,輸入動物および食品などによってわが国が持ち込まれる感染性下痢症いわゆる"輸入感染症"が増加しており,なかでも東南アジアや西南アジアの開発途上国からの感染症例が多く,疫学上重要な問題となってきている1)
 海外旅行者下痢症より分離される病原菌は,法定伝染病菌であるコレラ菌,チフス菌,赤痢菌のほか腸炎ビブリオ,病原性大腸菌,毒素原性大腸菌,NAGビブリオ,サルモネラなどであるが,輸入赤痢はここ数年増加の一途をたどっている2)

資料

FITC標識モノクローナル抗体と、エチジウムブロマイドによる核蛍光染色法を用いた、T細胞、B細胞測定法の検討

著者: 園田啓 ,   高田肇 ,   天野洋 ,   原中美枝 ,   入久巳

ページ範囲:P.216 - P.220

 現在,ヒト・リンパ球のT細胞,B細胞百分率の検査には,En・EACロゼット法,あるいは表面免疫グロブリンに対する膜蛍光抗体法が広く用いられている.近年,細胞融合法の普及に伴い,リンパ球表面抗原に対するモノクローナル抗体が多数作製され,製品化されるようになってきた.今回われわれは,T細胞,B細胞のおのおのに対して,特異的に反応すると思われるモノクローナル抗体(10.2,2H7)を用いた,直接蛍光抗体法によるヒト末梢血リンパ球T細胞,B細胞測定用キット「ブルートスタンT&B」(第一化学薬品)を使用する機会を得た.本キットでは,細胞核をエチジウムブロマイド(EB)によって蛍光染色することにより,顕微鏡による判定を容易にするくふうがなされている.このキットについて若干の検討を行ったので,その結果を報告する.

質疑応答

血液 加齢と血球の老化

著者: B生 ,   内田立身

ページ範囲:P.221 - P.222

 〔問〕個体において赤血球の生成から崩壊まで,赤血球の老化が進行しますが,人間の年齢によって,この赤血球の老化現象に差はみられますか.また,赤血球の構成分のうちで,年齢を示すものは何ですか.

血液 なぜ多能性幹細胞を取り出せないのか

著者: T生 ,   高久史麿

ページ範囲:P.222 - P.223

 〔問〕血球の生成において多能性幹細胞の存在が言われますが,この細胞はなぜ,取り出して確認されないのですか.

血液 FAB分類におけるL1とL2のためのスコアリング・システムについて

著者: 小野忠吉 ,   熊坂一成

ページ範囲:P.223 - P.224

 〔問〕『血液像の見方・考え方』(医歯薬出版)中,130ページの表2にわからない点があるのでお尋ねします.
(1)「以下のものは数えない」とは,鏡検中の個々の細胞を言っているのか,スコアについて言っているのか(例えば+・—を除外するという意味でしょうか)

血液 Philadelphia(Ph1)染色体陰性の慢性骨髄性白血病について

著者: I生 ,   吉田彌太郎

ページ範囲:P.225 - P.226

 〔問〕Ph1染色体陰性の慢性骨髄性白血病(CML)の発症頻度とその特徴について,ご教示ください.

免疫血清 抗核抗体および補体価とLE細胞との関係

著者: 本間淑子 ,   恒松徳五郎

ページ範囲:P.226 - P.227

 〔問〕抗核抗体が+(—)でもLE細胞が—(+)の場合があります.これはなぜでしょうか.また,LE細胞がつくられる際に補体もかかわっていますが,LE細胞と補体価にはどのような関係があるのでしょうか.

免疫血清 免疫グロブリン測定とポリエチレングリコールとの関係

著者: E子 ,   山岸安子

ページ範囲:P.227 - P.229

 〔問〕免疫グロブリンを比濁法で測定するとき,なぜポリエチレングリコールが必要なのか,また,どうして添加により濁度が高くなるのかお教えください.

診断学 慢性骨髄性白血病の急性転化の診断について

著者: H生 ,   喜多嶋康一

ページ範囲:P.229 - P.231

 〔問〕慢性骨髄性白血病(CML)の急性転化の診断につき,その検査と臨床症状とに関連して,ご教示ください.

診断学 臍帯異常の検査法

著者: K生 ,   前田一雄

ページ範囲:P.231 - P.234

 〔問〕臍帯異常の検出について,次の二点をお尋ねいたします.
(1) NSTによって,出産前に臍帯異常,体部および首部などの巻絡を検出できますか.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?