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雑誌目次

論文

臨床検査31巻1号

1987年01月発行

雑誌目次

今月の主題 高血圧 カラーグラフ

内分泌性高血圧症

著者: 土山秀夫

ページ範囲:P.4 - P.6

 内分泌性高血圧症は二次性高血圧症に属し,副腎の腫瘍ならびに過形成に基づくもののほか,下垂体や副甲状腺疾患などによっても引き起こされる.しかし,頻度の高さ,外科的治療の可能な点から,副腎がもっとも病理学的検索の対象となりやすい.その意味から,ここでは副腎皮質病変によるCushing症候群,原発性および特発性アルドステロン症,副腎髄質に生じた褐色細胞腫における各高血圧の実際例を取り上げることにした.

技術解説

Holter心電計

著者: 笠貫宏 ,   山田辰一 ,   山越憲一

ページ範囲:P.7 - P.16

 最近臨床分野で広く利用されているHolter心電計に関して,その原理,操作技術上の一般的問題,現在わが国で使用されているシステムとその得失を中心に概説するとともに,各種心疾患に対する本法適用の臨床的意義と解釈などについて具体的記録例を紹介しながら概説した,さらに,Holter心電図技術の一つとして最近新たに開発された容積振動法に基づいたHolter型間接血圧計についても併せて紹介した.

自動血圧計

著者: 小笠原康夫 ,   辻岡克彦 ,   梶谷文彦

ページ範囲:P.17 - P.21

 今日の医学の発展は,生体信号の計測技術の進歩に負うところが大きい.血圧は,心臓の前負荷(拡張末期の容積),心収縮性,心拍数,動脈のコンプライアンス,末梢抵抗などさまざまな要因の影響を受けて変化する.したがって,血圧を測定することによってこれらの要因に関する手がかりが得られるため,血圧計測法は循環計測の重要な計測として,それぞれの時代における先端技術を導入して新しい計測技術を確立し,多くの成果を上げてきた.ここでは,循環計測の基本的計測法である血圧計測法の歴史および自動血圧計の基本的原理である間接血圧計測法と直接血圧計測法の最近の話題について述べた.

レニン,アンジオテンシンの測定法

著者: 斉藤郁夫 ,   猿田享男 ,   竹下栄子 ,   大田敦美

ページ範囲:P.22 - P.27

 レニン—アンジオテンシン系は生体内において血圧・水電解質調節に欠かすことのできない重要な役割を果たしている.一般にレニン—アンジオテンシン系を評価するにはレニンの酵素としての活性をみており,それを血漿レニン活性(PRA)としている.レニンあるいはアンジオテンシンⅡの直接の測定は一般の臨床には用いられていない.高血圧,浮腫性疾患,電解質異常を示す疾患などでPRAの変化がみられ,診断にはPRAの測定が必須なものも少なくない.

尿カリクレイン,キニンの測定法

著者: 木付和幸 ,   守屋寛

ページ範囲:P.28 - P.35

 これまでに,尿中力リクレイン,キニン排泄量測定による各種病態の解析,また,腎力リクレイン—キニン系の生理作用研究を試みた多くの研究があり,いくつかの病態で尿力リクレイン,キニン排泄量が変動することがわかっている.
 しかし,古くから厖(ぼう)大な数の研究が行われてきたわりには,尿中力リクレイン,キニン排泄と特定の疾病との関連が明確となっているものはきわめてまれであり,多くの場合,その臨床成績評価にはなお多くの問題を残してきた,その大きな一因は測定法にあり,尿力リクレイン,キニン排泄と各種病態との関連を追究するためには尿力リクレイン,キニンをいかに正確に定量するかが最重要課題となる.
 ここでは,尿力リクレイン,キニンにかかわる最近の知見を基に,尿力リクレイン,キニンの測定法,また,その問題点について述べた.

総説

高血圧の成因と検査

著者: 桑島巌

ページ範囲:P.37 - P.44

はじめに
 ここ十年の間に高血圧臨床面では,他の医学の分野に劣らず著しい進展をみ,特にそれは疫学面および治療面において顕著であった.例えば軽症高血圧の概念が打ち出され,それに対する降圧薬治療の有益性が証明され,また新しい機序を有する降圧薬が次々と開発され実用に供されてきた結果,悪性高血圧や難治性高血圧の頻度は著しく減少し,脳卒中などの高血圧合併症による死亡率も明らかに減少した.
 しかしながら,現在の本態性高血圧における血圧治療はコントロールすることであって,決して根治療法ではない.そのために高血圧患者は長期間にわたって降圧薬の服用を余儀なくされる.したがって,将来的には高血圧の機序が明らかにされ,発症そのものが抑制されることが望まれる.本態性高血圧の成因あるいは維持機構についても,最近の研究によりかなりの知見が増えてきているが,まだまだ解決すべき問題が山積している.
 本態性高血圧は文字どおり,原因不明の高血圧ということであるから,臨床的には各種検査により二次性高血圧を除外することによって本症の診断がなされる.二次性高血圧の多くは,外科的手術などの適切な治療により長期間降圧薬を飲む煩しさから逃れることができる.したがって,各種検査により二次性高血圧を除外することは高血圧診断の第一歩であり,きわめて重大なことと言えよう.

主題を語る

血圧と正常値

著者: 尾前照雄 ,   澤田恂

ページ範囲:P.46 - P.52

 よく「上が高い」「下が高い」と話題になるほど高血圧はポピュラーな病気であるが,高低はいわゆる正常値を基準にしている.しかし血圧は,高年齢になるといわゆる正常値内にあるものよりも高血圧のほうが多い,ということも起こりうる.数の多いほうを正常と考えるならばこれはどう考えればよいだろうか.血圧における正常値とは何であるのか,そして,年齢とともに上昇してゆく正常値をどう考えればよいのだろうか.

検査と疾患—その動きと考え方・118

内分泌性高血圧

著者: 山北宜由 ,   村瀬寛 ,   皆森良明 ,   安田圭吾 ,   三浦清

ページ範囲:P.53 - P.64

◇はじめに
 現在,内分泌性高血圧症とされている主な疾患を表1に列記したが,これらは,高血圧性疾患のうちの0.3〜0.8%前後を占める1)という事実は臨床的に重要で,看過できない問題である.これら以外に,腎血管性高血圧症なども,昇圧機序からは内分泌性高血圧症と考えられる.表1のうち,糖質コルチロイド反応性高アルドステロン症(dexamethasone-suppressible hyperaldosteronism:DSH)や17α水酸化酵素欠損症(17α-hydroxylase deficiency;17-OH-D)は,病因論的に特に興味ある問題が近年提起されている.最近,われわれは,DSH国際シンポジウム(1986年6月,ローマ)に参加し,これらの疾患本邦例の全国調査の機会をもったので,本稿では,特に,この原発性アルドステロン症(PA)類縁疾患を中心にして,自験成績を対比して述べる.紙面のつごう上,I),C)の褐色細胞腫,およびII)については割愛するので,他の総説を参照されたい.

糖鎖の分析法・1

糖蛋白質糖鎖の構造とその生合成機構

著者: 高崎誠一

ページ範囲:P.65 - P.72

はじめに
 糖蛋白質は,蛋白質や核酸と同様にきわめて重要な機能を有した生体高分子の一つとして,生物種や臓器,器官を問わず広く分布している.種々の細胞によって合成される糖蛋白質の一部は,細胞内にとどまり形質膜などの膜構造を構成する成分として,また一部は細胞外に分泌され血漿,消化液,乳汁,細胞間質などに含まれる成分として存在する.
 血漿中に含まれる蛋白質性の成分は,アルブミンを除くほとんどすべてのものが糖を含んでいる.これら糖蛋白質の病理的変化の分析はきわめて重要な医学的意義を有する.種々の疾病に伴って特定の糖蛋白質の血漿内レベルが上昇したり,あるいは減少したりすることはよく知られているところであり,それらの変化は臨床検査の一項目として調べられている.これによって得られる情報は量的変化に関するものである.

センサの応用・1

機械量センサの応用

著者: 山越憲一

ページ範囲:P.74 - P.81

はじめに
 一般に生体計測は,対象とする物理化学量の種類に応じて,また使用目的や条件などに応じて多種多様なセンサ(トランスデューサ)が選択され,センサの生体への適用法のいろいろなくふう(計測技術)により,生体計測システムが構成されて,生体機能分析,患者監視,臨床検査診断などに供される.
 ここでは,さまざまな生体用センサのうち機械量センサを取り上げ,これを用いた生体計測について概説する.表1は機械量センサを用いた主な生体計測に関してまとめたもので,これからもわかるように,対象とする生体情報は広範囲にわたっており,限られた紙面でその全貌(ぼう)を記すことは困難である.したがって,本稿では対象量をごく限り,また各センサの原理構造などの詳細も省略して,機械量関連の比較的新しい生体計測の数例を紹介してみたい.

研究

マイクロカラムを用いる甲状腺ホルモンおよびサイロキシン結合グロブリンの酵素免疫測定法

著者: 山本良平 ,   木村茂樹 ,   高阪彰 ,   石突吉持

ページ範囲:P.85 - P.88

はじめに
 甲状腺機能を把握するうえで血中サイロキシン(T4),トリヨードサイロニン(T3),甲状腺刺激ホルモン(TSH)およびサイロキシン結合グロブリン(TBG)のレベルはもっとも基本的な測定項目である.したがって,これらの項目を同じ様式で同時に測定することは,検査のセット化および省力化に有意義であり,自動測定システムを開発するうえでも重要である.
 われわれはすでにB/F分離にマイクロカラムを用いる酵素免疫測定法を開発し,甲状腺機能に関連するものとして甲状腺ホルモン1,2),甲状腺ホルモン自己抗体3)の測定を行ってきた.今回,この方法をさらに発展させ,T4,T3,TBGを比較的短時間に,しかも同じ時間設定で同じマイクロカラムを用いて測定することを試みた.

気管支喘息におけるMEFV曲線測定前後の肺内ガス分布の変化および気管支拡張剤吸入の影響

著者: 荒谷清 ,   松下淳 ,   林実 ,   榊原博一 ,   荒井正夫 ,   小林利次 ,   城戸優光

ページ範囲:P.89 - P.93

はじめに
 気管支喘息の基本的病態像は気道の過敏性であり,それに基づく気管支平滑筋の攣縮・気管支粘膜の浮腫・腫脹,気管支腺の分泌亢進などが種々の呼吸機能障害を惹起することは周知のとおりである.この呼吸機能障害の程度を定量的に把握するために1秒量・1秒率,気流速度,呼吸抵抗・気道抵抗,残気量・残気率,全肺気量および肺内ガス分布などの検査が行われる1,2)
 臨床的には気道狭窄の可逆性が重視されており3〜5),一般的には気管支拡張剤(以下BD)投与前後の呼吸機能検査値の改善率により評価されている6〜8).このように気管支喘息の診断や病態把握のために呼吸機能検査は不可欠の検査法であるが,近年スパイログラフィー実施時の深吸気それ自体が気道狭窄を誘発することが注目され始めた.特に強制呼出による気道狭窄については種々検討されているが,その病態生理学的解析についての報告は少ない.

学会印象記 第37回電気泳動学会総会

電気泳動法のDNA診断への展開

著者: 古賀俊逸

ページ範囲:P.94 - P.94

 秋たけなわの1986年10月17,18日の両日,第37回電気泳動学会が高月清総会会長(熊本大学第2内科教授)の下に,熊本市産業文化会館において開催された.好天にも恵まれ,筆者も充実した2日間のプログラムを堪(たん)能した.
 電気泳動学会は会員1336人を擁しており,年1回の総会がすでに37回を数えているところからもわかるとおり,歴史の比較的古い学会に属する.本学会の主たる方向は,分析法としての電気泳動法の開発,改良に関するものと,電気泳動法を利用した物質の分離,精製,同定と病態の解析などにあると思われる.しかし,電気泳動という手技を一つの柱にしていても,時代とともにそのテーマには変遷がみられる.今回の一般演題32題とポスター5題をみてみると,電気泳動法の理論や新しい手技,実験方法の開発に関するもの,各種血清酵素のアイソザイム分析や結合性免疫グロブリンに関するもの,α—フェトプロテインのレクチン親和性による分析と肝癌診断への応用,各種血漿蛋白質の分析,急性期蛋白質,髄液,歯根部病巣浸出液の分析などが含まれていた.各演題には発表時間10分間と討論時間が3分間割り当てられており,ゆっくり発表を聞くことができ,研究者間でも十分な討論が行われていた.これは最近の学会が数会場に分かれて,短い時間に多数の演題が発表される傾向にあるのに比べて,たいへん心地良いことであった.

質疑応答

臨床化学 ヒンジ法とは

著者: Q生 ,   石川榮治

ページ範囲:P.95 - P.97

 〔問〕hCGのEIAでヒンジ法が開発されましたが,その原理と操作法をご教示ください.また,0.1pg/mlという高感度の理由もお教えください.

輸血 直接抗グロブリン試験陰性自己免疫性溶血性貧血

著者: 新川和功 ,   福岡良男

ページ範囲:P.97 - P.99

 〔問〕貧血,黄疸,間接ビリルビン増加,網赤血球増加の所見を認め,Coombs試験が陰性の場合,自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を否定できるでしょうか.また,Coombs試験陰性のAIHAがあるならば,どのように検査を進めればよいのでしょうか.以上ご教示ください.

免疫血清 ATLA抗体の名称の由来は

著者: S生 ,   三好勇夫

ページ範囲:P.99 - P.100

 〔問〕ATLA抗体とHTLV抗体とは同じものと言われていますが,その名称の由来をお教えください.

免疫血清 熊谷変法における寒冷凝集素の影響

著者: 石田勉 ,   吉田浩

ページ範囲:P.100 - P.101

 〔問〕Paul-Bunnel反応の原法では,冷蔵庫に一晩置いた後判定しますが,これでは寒冷凝集素の影響を受けることを考慮して,Davidsohnが冷蔵庫に一晩置いた後室温に放置する変法を考案しました.それでも,室温でも凝集する寒冷凝集素の影響が考えられるため,現在では37℃15分間の温置後判定しています.さて,熊谷変法では,血清希釈後室温(10〜20℃)に一晩放置後判定しますが,室温でも凝集する寒冷凝集素の影響はどのように考えているのでしょうか.また,熊谷変法は37℃2時間の温置はなく室温放置なのですが,この条件差の影響はないのでしょうか.以上,ご教示ください.

微生物 新生児敗血症,髄膜炎から分離される大腸菌の意義

著者: N生 ,   北島博之

ページ範囲:P.101 - P.103

 〔問〕新生児の敗血症や髄膜炎の起因菌として,最近B群溶レン菌がよく知られるようになりましたが,従来からの分離頻度の高い大腸菌についてお教えください.また,外国の文献では,大腸菌の中でも,O1:K1株という菌株が多いと述べられていますが,わが国ではどうでしょうか.

病理 BrdUを用いた細胞動態解析法

著者: N子 ,   高橋学

ページ範囲:P.103 - P.104

〔問〕近年プロモデオキシウリジン(BrdU)とそのモノクローナル抗体を用いた細胞動態解析法が報告され始めましたが,臨床に応用するには標本採取後どのくらいの時間内に行えばよいのでしょうか?また,通常の培養器がある施設なら施行できるのでしょうか?

病理 血性精液中の大型の濃染核の意義

著者: G生 ,   矢谷隆一

ページ範囲:P.104 - P.105

 〔問〕血性精液中にしばしば大型,時には多核の濃染核をみることがあります.N/C比はやや増加している程度で,悪性判定に困ることがあります.このような細胞の起源と鑑別法をご教示ください.

臨床生理 RQの低値とVO2の年齢差,性差

著者: T生 ,   鈴木政登

ページ範囲:P.106 - P.107

 〔問〕呼気ガス測定においてRQが0.60〜0.70と低めに出るため困っています.この原因ならびに対策をご教示ください.また,VO2の年齢差,性差についても,ご教示ください.

制度・資格 外部からの集検業務を受託する際の法的手続きは

著者: T生 ,   高橋正雄

ページ範囲:P.107 - P.108

 〔問〕病院内の検査室ですが,開業医からの検体や,会社・自治体の検診を行いたいと考えています.この場合必要な届け出などの法的手続きをお教えください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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