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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査31巻6号

1987年06月発行

雑誌目次

今月の主題 リウマトイド因子 カラーグラフ

悪性関節リウマチと血管変化

著者: 青木重久

ページ範囲:P.594 - P.596

 悪性関節リウマチ(MRA)は,慢性関節リウマチ(RA)に内臓病変を伴い,そのため生命に対する予後不良の疾患である.MRAの病理組織像を見ると,その基盤に血管炎があることがわかる.わが国では1973年に厚生省研究班が発足し,病理班の研究によると,MRAの血管病変として,リウマトイド動脈炎(RA)型,結節性動脈周囲炎(PN)と区別できないPN型,閉塞性動脈内膜炎(EA)型の三基本型に分類されている.RAにおける血管病変はMRAの重要な診断根拠となっている.一方,RAは免疫異常に基づく関節病である.したがって,MRAの血管炎の発生機序を研究するためには免疫病理学的解析が必要である.ここでは病理の立場から免疫組織化学も含め,MRAの血管炎とその関連所見を提示する.

技術解説

悪性関節リウマチと血管変化

著者: 青木重久

ページ範囲:P.597 - P.602

 悪性関節リウマチ(MRA)は,1952年にBevansらが,慢性関節リウマチ(RA)に全身性壊死性血管炎を伴い,予後不良の症例に対してつけた病名である.本邦では1973年に厚生省研究班が発足し,診断基準が作成された.それによると血管炎に基づく多彩な症状が挙げられているが,組織学的に血管炎を認めることが重要な診断根拠となっている.病理班の研究によると,その血管病変は①リウマトイド動脈炎(RA)型,②結節性動脈周囲炎(PN)と区別できないPN型,③閉塞性動脈内膜炎(EA)型に分類されている.
 MRAでは,RA関節炎があることが前提条件であるので,まずRAにおける関節病変について説明し,ついで検査所見の重要項目としてのリウマトイド因子と主要症状の一つである皮下結節について記載し,最後にRAにおける血管変化(リウマトイド血管炎)の病理について述べる.これら各項目についてはできるだけ免疫組織所見を加え,その技術解説を行う.

TIAによるRF定量法

著者: 向田直史 ,   河合忠

ページ範囲:P.603 - P.609

 リウマトイド因子(RF)は,主に慢性関節リウマチ患者などの血清に認められる変性IgGのFc部分に対する自己抗体である.従来RFはラテックス凝集反応などにて測定されていたが,再現性・定量性に乏しかった.今回筆者らはRFの測定に免疫比濁法を応用することを試みた.免疫比濁法によるRF測定法は,ビリルビン・溶血・乳びの影響をほとんど受けず,再現性・定量性に富んでいて,大量検体の処理も容易であった.本法にて正常人血清RF値を測定したところ,年齢依存的に血清RF値が増加し,そのほとんどは35u/ml以下の値を示していた.カットオフ値を35u/mlとすると,本法の陽性率はラテックス凝集法の陽性率に比べて,慢性関節リウマチで高く,ほかの疾患では低く,本法の疾患特異性・感度の高いことが示唆された.本法を含めたRF定量法の今後の普及には,標準血清の確立が望まれる.

ラテックス凝集比濁法によるRF定量法

著者: 山本則満 ,   青木良雄

ページ範囲:P.610 - P.616

 近年,光散乱分析法を利用した定量法は,自動化が可能であり,高精度の機能を有する分析機の開発が続くなかで,免疫血清検査領域に定着してきた感がある.そのなかでも,ラテックス凝集反応によって生ずる濁度変化を光学的にとらえるラテックス比濁法は,RIA法やEIA法に匹敵するほどの感度があると言われている,特にレートアッセイを自動システムに適用すれば,処理能力の面でも向上し,今やイムノアッセイを代表する定量法として注目され普及しつつある.
 リウマトイド因子(RF:Factor ll)測定法は,最近このラテックス比濁法を原理としたキットが各社から市販されたこともあって,従来の定性検査から,より密度の濃い情報を臨床サイドへ提供すべく,定量化へと歩みつつある.しかし,RF測定には非特異的反応の出現や測定値単位およびキャリブレーターの選定などの未解決な問題が潜んでいる.本稿ではラテックス比濁法によるRF定量法についての技術解説に加え,以上述べた問題点についても触れてみた.

クラス別RFの検出法

著者: 小林茂人 ,   廣瀬俊一

ページ範囲:P.617 - P.622

 リウマトイド因子(rheumatoid factor;RF)はIgMのほかに,IgG,IgA,IgEなどが存在する.臨床検査上,広く普及している凝集法によるリウマトイド検出法は,IgMリウマトイド因子(IgM-RF)の検出にほかならない.Enzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)法では,IgM-RFのほかに,IgG,IgA,IgEなどのRFを比較的簡単に測定することができる.本文では,ELISA法によるクラス別リウマトイド因子の測定法の手技や注意点を中心に解説する.

総説

リウマトイド因子

著者: 塩川優一

ページ範囲:P.623 - P.627

 リウマトイド因子の概要
 リウマトイド因子(rheumatoid factor;RF)は,慢性関節リウマチ(以下RA)の血清中において発見された,特殊な蛋白質である.これは現在,血清中の免疫グロブリン,IgG分子のFc部分上にある抗原決定基に対する自己抗体であることがわかっている.RFは,1940年代にWaaler,ついでRoseによって発見された.すなわち,ウサギ抗体によって感作されたヒツジ赤血球が,RA患者の血清によって凝集されることより,RAに特異的な因子の存在を推定したのである.やがて,これは自己抗体であることがわかったが,RFの名称は残されている.
 最初は,RFはRAの原因であるとされた.しかし,やがて,RFは決してRAに特異的ではなく,そのほかの疾患にも見られることがわかった.現在では,RF以外にも,IgGの種々の抗原決定基と結合する免疫グロブリンが知られている.しかし,これらは,抗グロブリン因子と呼ばれ,RFとは区別されている.

検査と疾患—その動きと考え方・123

悪性関節リウマチ

著者: 東威

ページ範囲:P.628 - P.633

◇はじめに
 慢性関節リウマチ(RAと略す)は関節炎を主症状とする疾患であるが,全身性結合組織疾患(いわゆる膠原病)の一つで,関節炎以外にも多くの症状を示す(表1).その多くのものは血管炎による症状で,爪の周囲や爪床に認められる小出血斑,皮膚潰瘍,Raynard現象,網状皮斑livedo reticularis,指趾壊疽,多発性単神経炎などがこれに含まれる.
 このようにRAに血管炎を伴うことは古くから知られていたが,1952年にBevansらは,短期間に死の転帰をとったRAの剖検で,結節性多発動脈炎類似の全身性血管炎を認めた2症例を報告し,これを悪性関節リウマチ(malignant rheumatoid arthritis;MRA)と名づけた1)

座談会

RF検査と標準化

著者: 鈴田達男 ,   廣瀬俊一 ,   岩田進 ,   河合忠

ページ範囲:P.634 - P.643

 リウマトイド因子の検査は定性法から定量法へと移りつつある.抗原としてのIgGの性質の違いによっても反応性が異なるが,測定者の技術や結果の読みかたを揃えることが必要である.製品間の違いが最小限になるように国内標準品あるいは国際標準品の作製が望まれている.

糖鎖の分析法・6

モノクローナル抗体を用いた糖鎖の特異的検出方法とその臨床応用

著者: 神奈木玲児 ,   繁田勝美 ,   山肩葉子

ページ範囲:P.646 - P.655

はじめに
 KöhlerおよびMilsteinによってハイブリドーマの作成法が樹立されてから10年余の間に,癌抗原をはじめ各種の分野でこの方法によって作られたモノクローナル抗体の診断,治療への応用が進められている.特にリンパ球をはじめとする血液細胞のマーカーの分野,および癌の血清診断の分野への臨床応用が活発に行われている.
 最近になって,これらのモノクローナル抗体が認識する抗原の多くが,糖鎖抗原であることが次々と判明してきた.血液細胞のマーカーの分野では,顆粒球系のマーカーであるLeuM1(CD 15)や,NK細胞のマーカーであるLeu 7が糖鎖抗原であることが判明している.また癌の血清診断の分野では,CA 19-9,シアリルSSEA−1抗原をはじめ,現在臨床応用されている抗体の認識する抗原のほとんどが糖鎖抗原である.

注目される腫瘍マーカー・3

二次元電気泳動法により検出された消化器癌関連細胞蛋白質に対するモノクローナル抗体

著者: 高見博 ,   貞広荘太郎 ,   奥田康一 ,   高橋哲也 ,   山高謙一 ,   柴田徹一 ,   長池一博

ページ範囲:P.657 - P.661

 ヒトの癌の発生に関しては,正常細胞に癌を発現させる癌遺伝子およびそれを調節する調節遺伝子が存在し,その癌遺伝子の発現により癌蛋白質が合成され,癌としての表現形質が作られると考えられている.
 著者らは,この癌にみられる蛋白質,すなわち癌関連蛋白質をO'Farrellの二次元等電点—SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法1)を改良した著者らの方法2)を用いて,実験癌組織3,4)およびヒトの癌組織5,6)について研究してきた.

研究

免疫ペルオキシダーゼ染色法を用いたvon Willebrand因子マルチマーの解析法

著者: 高橋芳右 ,   帯刀亘 ,   柴田昭

ページ範囲:P.665 - P.668

はじめに
 von Willebrand因子(vWf)は,血管内皮細胞および骨髄巨核球で産生される高分子の糖蛋白質である.循環血漿中では,vWfは非共有結合により第VIII因子と複合体を形成して存在しているが,両者はまったく別個の蛋白質であり,別個の機能を営み,独立した遺伝子支配を受けている.vWfは血小板膜糖蛋白質(GP IbとGP IIb/IIIa)およびコラゲンに対する結合部位を有し,傷害を受けた血管の内皮下組織への血小板粘着および血小板血栓形成を促し,一次止血に重要な役割を果たしている.vWfは正常血漿中では均一の蛋白質構造をしているのではなく,分子量0.5〜20×106の広範囲に不連続に分布するマルチマーから成る1,2).分子量500000のプロトマーは,アミノ酸2050個より成る分子量225843の蛋白質に糖鎖が着き分子量約278000となったサブユニット3)が2個S-S結合したダイマーであり,その長さは100〜120nmである4).このプロトマーがS-S結合により端々結合し,長さ2μmまでのひも状のマルチマーとなる4).vWfの機能は主にそのマルチマー構成により規定され,高分子マルチマー(またはlarge multimer)がもっとも活性が高く,低分子マルチマー(またはsmall multimer)は活性が低い1,2).したがって,vWfの量的減少あるいは高分子マルチマーの欠如があると,異常出血をきたすことになる.

速効性を特徴とする新しい解糖阻止法

著者: 内田壱夫 ,   松瀬亮一 ,   豊田恵波 ,   奥田尚司 ,   冨田仁

ページ範囲:P.669 - P.672

はじめに
 現在,血糖検査法は酵素法が主流となっている.グルコースオキシダーゼ法,ヘキソキナーゼ法をはじめ,最近ではグルコースデヒドロゲナーゼ法,グルコキナーゼ法が開発され自動化が安易なことから,日常分析では電極法を含めて自動化が進んでいる.
 このような測定法および測定機器の進歩発展に伴って測定精度も向上し,同時再現性でCV 1%,日差再現性でもCV 2%以内におさまる良好な結果が得られるようになってきた.

風疹の血清学的診断における赤血球凝集抑制試験とIgG ELISAとの比較

著者: 加藤茂孝 ,   杉浦昭 ,  

ページ範囲:P.673 - P.675

はじめに
 風疹ウイルス感染の血清学的診断に,最近enzymelinked immunosorbent assay(ELISA)が,普及している.ELISAの利点は,インヒビター除去のための血清の前処理が不要なことと,操作が簡便なこととである.しかし,これまでの風疹の血清疫学および血清診断の研究には,専ら赤血球凝集抑制(hemagglutination inhibition;HI)試験が用いられてきたので,ELISAの吸光度(OD)とHI価との関連を明らかにしておく必要がある.HI法とIgG ELISA法との比較については,Shekarchiら1)やEndersら2)が述べているが,われわれは市販のキットを用いてHI価とIgGELISAのOD値との関連を調べたので報告する.

資料

胆汁細胞診により診断された肝吸虫症の一症例について

著者: 由井明子 ,   古山劷 ,   永見光子 ,   松井克明 ,   中村克己 ,   五明田斈

ページ範囲:P.677 - P.678

はじめに
 細胞診は,一般には悪性腫瘍のスクリーニングや一部で確定診断の手段として実施されているが,時には予想外の疾患の診断に役だつことがある.
 今回,われわれは胆汁の細胞診によって,非流行地である山陰地方ではまれな寄生虫である肝吸虫の虫卵を見いだしたので,その1例について若干の文献的考察を加えて報告する.

血漿糖化蛋白・フルクトサミン測定に関する基礎的ならびに臨床的検討

著者: 中恵一 ,   下條信雄 ,   北橋繁 ,   佐伯成子 ,   平井幹男 ,   奥田清

ページ範囲:P.679 - P.682

はじめに
 血漿蛋白は血液中で共存するアルドースにより蛋白アミノ酸側鎖リジン末端アミノ基を主体としてシッフ塩基を形成し,非酵素的にケトアミンとなる.ケトアミンはAmadori転移による生成物で,両者の結合は安定であり,しかも反応が非酵素的であるため生体中では基本的にその生成量は蛋白量と糖量に比例する.したがって血漿蛋白は合成されてから徐々に糖化されるが,蛋白の供給を一定とするとその糖化量は血糖量を反映すると予測される.この意味において蛋白の糖化量を推測する目的で,ケトアミンのもつ緩慢な還元力を酸化還元系の発色剤で定量化する方法が報告された1)が,われわれはこの方法を追試するとともに,その還元能(以下ケトアミン量の測定という意味で,単にフルクトサミン量という)の測定とその臨床的意義について検討したので報告する.

編集者への手紙

ASO価の異常高値を示した骨髄腫の一例

著者: 杉村智恵子 ,   山永みゆき ,   石丸寿男 ,   横山裕 ,   森村義行 ,   岡田三徳 ,   北野公造

ページ範囲:P.683 - P.684

1.はじめに
 骨髄腫は形質細胞の腫瘍性増殖を本態とする疾患であるが,その腫瘍細胞が産生する異常蛋白(ミエローマ蛋白)やBence-Jones蛋白の出現など蛋白代謝異常を示す点が,病態像の特徴として古くから注目されてきた.ミエローマ蛋白は電気泳動的に均一で,スパイクピークとして認められ,M蛋白あるいはM成分などと呼ばれてきた.また,このM蛋白はparaproteinとも呼ばれ,腫瘍化した単一のクローンから産生される均一な分子であり,性格的には異常蛋白であると考えられてきた1).しかしながら,近年骨髄腫以外にもM蛋白を伴う疾患の存在が知られ,同時に,M蛋白の中に定型的な抗体,あるいは抗体様活性を持つものが種々報告されるようになった.その中でも,特に注目されているものに寒冷凝集素や抗ストレプトリジン活性があるが2),今回われわれは著明な高ASO活性を伴ったIgG(K-type)型多発性骨髄腫の一例を経験したので報告する.

質疑応答

臨床化学 赤血球膜含有コレステロールの簡易な測定法

著者: Y生 ,   八幡義人

ページ範囲:P.685 - P.686

 〔問〕コレステロールを比色法で測定する際,抽出→鹸(けん)化→精製→比色の四過程が必要とされていますが,赤血球膜中には遊離型のコレステロールしかないとされているので「鹸化」の操作は省略できるのではないでしょうか.この点を考慮した赤血球膜含有コレステロールの簡易な測定法をご教示ください.

臨床化学 胆汁酸の〔グリシン抱合体/タウリン抱合体〕比測定法

著者: Y子 ,   眞重文子 ,   田中直見

ページ範囲:P.686 - P.688

 〔問〕胆汁酸の〔グリシン抱合体/タウリン抱合体(G/T)〕比の測定法と臨床化学的意義とをご教示ください.

血液 血小板数増加の理由は/免疫血清 ASO価測定で反応像が凝集を示した原因は

著者: 今野隆子 ,   山口潜 ,   ,   巴山顕次

ページ範囲:P.688 - P.691

 〔問〕鉄欠乏性貧血で血小板数が増加する傾向があるのはどうしてですか.また,術後などの反応性に血小板数が一過性に増加することもありますが,その理由をご教示ください.

 〔問〕マイクロタイター法によりASO価を測定してますが,反応像に凝集を示す現象に遭遇しました.この原因と検索方法とをお教えください.なお,SLOおよび緩衝液は市販品.2%O型血球については輸血用パイロットを使用し,富山法に準じて検査を行っています.凝集は27℃においてすでに現れ,また家兎および他社のSLOにおいても同様の結果でしたが,SLO無添加の同検体には凝集はみられませんでした.

一般検査 尿素チッ素定量用ウレアーゼ液調整時のpHの補正法は/診断学 骨髄腫患者にみられた骨芽細胞

著者: I生 ,   渡邊富久子 ,   O生 ,   戸川敦

ページ範囲:P.692 - P.693

 〔問〕尿素チッ素定量用ウレアーゼ液はEDTA−2Naを溶解しますが,pHを7.0付近に調整しなくてはなりません.NaOH液を加えながら,pH試験紙で調整してもpHメータで測定してみるとpH 7にはそうとう差があります.この理由と,正しい調整法をご教示ください.

 〔問〕骨髄腫患者の治療経過中,骨髄像にわずかながら骨芽細胞を認めました.この骨芽細胞の由来,染色態度,および臨床的意義についてご教示ください.

検査機器 二波長・三波長測定による干渉物質の補正理論

著者: T子 ,   有末一隆

ページ範囲:P.693 - P.698

 〔問〕比色定量における薬物の干渉について,特に薬物自体が色をもっている場合には二波長,三波長測定ではどのように干渉を除去できるのか,ご教示ください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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