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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査31巻9号

1987年09月発行

雑誌目次

今月の主題 医用オプチクス カラーグラフ

光ファイバー内視鏡

著者: 西坂剛

ページ範囲:P.924 - P.926

 Kussmaulの胃鏡(1868年)に始まった体腔内臓器の直視下観察法は胃カメラ(1950年)を経て,柔軟性に富む光ファイバーを利用する内視鏡法へと発展した.そして,最近ではこの光ファイバー内視像のイメージガイドのかわりに,内視鏡の先端に取り付けられたCCDセンサーによる電子内視鏡へと変遷をとげ,高解像力内視鏡像を提供している.
 ここでは,われわれにもっとも馴染みの深い,消化器系の内視鏡像を取り上げてみたい.

技術解説

光ファイバー内視鏡

著者: 西坂剛

ページ範囲:P.927 - P.934

 内視鏡を用いる検査法では,より侵襲が少なく,より初期の病変を診断するため大きな努力がなされてきた.内視鏡による治療法も多くの臨床分野で応用されており,優れた成績をあげている.ここでは,内視鏡の歴史からその原理,内視鏡システム,操作法などについて解説を加え,そして臨床応用といくつかのトピックスについて述べ,最後に石英のファイバースコープについて紹介した.

光電式容積脈波計

著者: 嶋津秀昭 ,   伊藤寛志

ページ範囲:P.935 - P.944

 光電式容積脈波計は,今日ではもっとも簡便な循環動態検査装置として,広く臨床に利用されている.脈波には非常に多くの循環諸情報が反映しているため,これを正しく計測し,判読を行うことができれば臨床的な診断装置としての有用性も高い.
 しかし,多くの因子が脈波に反映することは,逆に血管系の生理的,力学的性質や機器の操作などの正しい知識に基づいた計測,判断を必要とする.ここでは,光電式容積脈波計の原理,操作法,脈波の臨床的な意義などについて,できるだけ基本的な原理に基づいて解説した.
 さらに,光電容積脈波計を応用,発展させた新しい計測法についても,簡単な紹介を行った.

反射分光法による生体内ビリルビン濃度の測定

著者: 佐藤信紘 ,   松村高勝

ページ範囲:P.945 - P.951

 近年,オプトエレクトロニクスの医学への応用による診断・治療の向上にはめざましいものがある,その応用の一例として,光センサ技術を利用した経皮的ビリルビン測定器を紹介した.
 本機器は,原射分光分析法を応用したものであり,血中ビリルビン上昇に伴い黄染した皮膚内にプローブ先端から瞬間光を照射し,皮膚内からの散乱反射光の青と緑の波長領域の光学濃度差を測定して黄染度合を定量的に解析し,血中ビリルビンを間接的に測定するものである.
 市販の非観血式経皮的ビリルビン測定器はハンディタイプであり,特に新生児黄疸の監視に用いられ,血清ビリルビンとの相関が高いことが認められている.

総説

医用オプトエレクトロニクス

著者: 菊地眞

ページ範囲:P.952 - P.960

◆オプティクスとオプトエレクトロニクス
 最近,光技術という言葉をよく耳にする.昔から光を使った技術は数えきれないほどあり,今さらといった感がしないでもない.とくに臨床検査に日頃携っている読者なら,細菌や微生物検査が光学顕微鏡の発明なくしては始まりえなかったことをよく承知しているはずだし,また現在ではそのほとんどがオートアナライザーで検査可能な血液生化学分析においても各種酵素などにより発色させた後に比色法により検量していることを知っているはずである.このように,古くから理化学技術や機器の中には光技術を用いたものが多いが,とくに最近では,顕微鏡やカメラといったいわゆる古典的な光学技術・器械のほかに,新しい光技術が数多く誕生している.
 同じカメラの場合でも,撮影結果をフィルムに写し出すなら光学機械といったイメージがそのままあてはまるが,一方,テレビカメラやビデオカメラとなると,光情報が電子情報に交換され,そのほとんどがむしろ電子技術によって構成されていると言っても過言でない.すなわち,最近の光学(オプティクス)は,進歩の著しい電子工学と結合してその能力を一段と拡げており,これらを総称してオプトエレクトロニクスと呼ぶことが多い.

検査と疾患その動きと考え方126

胃癌と電子内視鏡—画像処理の試み

著者: 郡大裕 ,   鈴木邦夫 ,   加藤卓次 ,   多田利男 ,   野村元積 ,   伊藤重二 ,   大滝美恵 ,   中永昌夫 ,   佐藤富貴子 ,   得田彰 ,   道鎮正規 ,   松村賢 ,   藤木典生 ,   大滝秀穂

ページ範囲:P.961 - P.966

はじめに
 胃の内視鏡検査法は1868年にKussmaulの硬性胃鏡に始まり,SchindlerやWolfによる軟性胃鏡を経て,本邦における胃カメラへと発展してきた.胃カメラは,その柔軟可撓性と,先端カメラ方式の写真撮影装置を具備していることから,胃内を幅広く撮影できるようになり,内視鏡検査を普及させる引き金となった.その後1957年にHirschowitzらによって,new gastroscopeとしてグラスファイバースコープが開発され,ついで本邦で改良されたファイバースコープが作られ,胃内を隈なく観察できるようになった.さらには,生検鉗子孔が具備されるに及び,目的部位の直視下生検や種々の内視鏡的治療法も考案され,胃の内視鏡は診断面ばかりでなく,内視鏡治療面でもその後飛躍的に発展したことは周知のとおりである.
 1983年,米国Welch-Allyn社は,内視鏡先端部に"電子の眼"ともいうべき超小型撮像素子であるCCD (charge coupled device)を内蔵した新しい映像伝導システムを開発し,翌年にはClassenら1),Matekら2)やSivakら3)によって相ついでその臨床報告がなされ,従来のファイバースコープと比較してその特徴や問題点が指摘された.1985年には本邦でも,富士光学,東芝一町田,オリンパスの各社から同様の映像伝導システムが開発・試作された.

座談会

医用オプチクスの臨床応用と将来

著者: 野口義夫 ,   黒田寛人 ,   佐藤信紘 ,   小黒八七郎 ,   桜井靖久

ページ範囲:P.968 - P.978

 医学・医療においても,光学的手法の応用・展開にはめざましいものがある.とりわけレーザーの出現は,電子工学の進歩と相まって診断・検査・治療の各面で画期的な進展をみせる一方,その特性からしてまだ限りない可能性を秘めている.高速セルソーター,電子内視鏡などホットな話題を中心に医用オプチクスの未来を,医学・工学両分野の第一線研究者が夢を込めて語る.

学会印象記 第36回日本臨床衛生検査学会

シンポジウム「輸入感染性下痢症の細菌検査をめぐって」から/シンポジウム「呼吸機能検査の現状と問題点」を中心に

著者: 青山巌

ページ範囲:P.981 - P.981

 第36回日本臨床衛生検査学会は,去る5月1日〜3日,南国情緒豊かな鹿児島市で,鹿児島県臨床衛生検査技師会の担当(満留敏弘学会長・鹿児島市立病院)で,6000名を超える多数の参加者を集めて「臨床検査その未来」をメインテーマに盛大に開催された.
 学会演題数は764題,学会展示出展メーカー142社,800小間を超す機器・試薬の展示も行われた「マンモス学会」であった.学会では,微生物,一般検査,病理,血液,生理の各部門から各1題のシンポジウム,臨床化学,公衆衛生,情報システム,血清,細胞の各部門から各1題のパネルディスカッション,輸血からワークショップ1題が企画発表された.

新しいneuropeptides・3

Neuropeptide Yとhistidyl-proline diketopiperazine

著者: 小林功 ,   入内島徳二 ,   森昌朋

ページ範囲:P.984 - P.991

はじめに
 1960年代後半から始まった視床下部ホルモンの構造式の決定とそれに続くラジオイムノアッセイ(RIA)法の確立,生理作用とその機序の解明および臨床的意義をめぐる検討など,一連の脳内ペプチドホルモン研究の足跡はめざましいものがあった.この間にあって,新しい脳内ペプチドが相次いで発見され,さらに脳以外の組織にも広範囲に分布していることが明らかにされ,その生理作用も明らかになるにつれ,「脳・腸管ペプチド」という概念も生まれるに至った.今回ここにとりあげた二つのペプチドneuropeptide Y (以下,NPYと略)とhistidyl-proline diketopiperazine (以下,cyclo (His-Pro)と略)も比較的新しく登場し,その多彩な生理作用が注目されているものである.

センサの応用・5

温度センサの応用

著者: 田村俊世

ページ範囲:P.993 - P.999

はじめに
 臨床における体温計測は,発熱に関する情報を得る検温が一般的である.そのほか,循環状態の指標としての皮膚温の計測,基礎体温の計測,高体温による癌治療の制御のための温度計測,体表面温度分布測定による悪性腫瘍の診断などがある.
 検温には水銀温度計が広く一般に用いられている.精度が高く,安定性があり,取り扱いが容易で,安価であるなどの点で,温度計測機器としてきわめて優れている.しかしながら,目盛りを読む機構は連続計測に不便であり,水銀汚染の問題もある.水銀温度計に代わるものとして,サーミスタを用いた電子体温計が用いられるようになってきており,記録計と接続できる機器も開発されている.

研究

ELISA法による風疹IgM抗体の検出—IgM捕捉法と間接法との比較

著者: 加藤茂孝 ,   杉浦昭 ,   ジャネジャイノッパワン

ページ範囲:P.1000 - P.1003

はじめに
 風疹抗体の検索法として,一般には,赤血球凝集抑制(HI)法が普及している.HI法を用いた風疹感染の血清学的診断には,採取時期の異なるペア血清を用いて,急性期に比較して,回復期血清のHI抗体価が,4倍以上上昇したときに,風疹ウイルスの感染と診断しているが,感染初期の血清は,入手困難なことが多く,適当な採取時期を逸することが多い1)
 単一血清で,最近の感染の有無を推定する方法に,IgM抗体の検出があるが,これまで用いられたショ糖密度勾配遠心法,ゲル濾過法は,操作が煩雑であり,2メルカプトエタノールで処理する方法は,発疹出現後短期間に限られ,実際に使用するには,時期的な点で役立たないことが多い.

L鎖蛋白尿のスクリーニング検査の検討—スルホサリチル酸・Brij35法とKingsbury・Clark法との組み合わせ法

著者: 鈴木優治 ,   入野勤 ,   坂岸良克

ページ範囲:P.1004 - P.1006

 尿中蛋白質の分画測定あるいは個別測定などによる質的な解析は,蛋白尿の出現機序を明らかにするうえで有用である1〜2).特に尿中γ—グロブリンの測定は糸球体性蛋白尿と尿細管性蛋白尿との鑑別および糸球体基底膜透過選択性の推定に有効といわれている3〜5).われわれはγ—グロブリン尿のスクリーニング検査法としてスルホサリチル酸・Brij 35試薬を用いる簡便な比濁測定法を設定し,その有用性を約900例の患者尿による検討で明らかにした6).この検討の際に本法で混濁したγ—グロブリン陽性尿の中に数例のL鎖蛋白尿が検出され,本法のL鎖蛋白尿に対する反応性に興味がもたれた.
 そこで今回はL鎖蛋白尿を用いて本法のL鎖蛋白尿との反応性およびL鎖蛋白尿とそれ以外の蛋白尿との判別に,本法とKingsbury・Clark法の測定値の比が指標になるかどうかを検討した.その結果,有用な知見が得られたので,その内容を報告する.

中葉症候群の症例の喀痰から検出した非溶血A群レンサ球菌について

著者: 設楽政次 ,   設楽正登 ,   吉元加代子 ,   細井由紀子 ,   伊藤京子 ,   原昌子 ,   佐野純子 ,   林康之

ページ範囲:P.1007 - P.1010

はじめに
 A群溶血レンサ球菌は,咽頭炎,扁桃炎,皮膚化膿症,またリウマチ熱,急性糸球体腎炎などの二次疾患の原因菌として重要なことから注目されてきた1〜3).また,B群溶血レンサ球菌は,小児の敗血症,髄膜炎4)や泌尿生殖器疾患5)などの原因菌として知られている.
 さて,レンサ球菌は,Brown6)により血液寒天培地上の溶血態度により,α,β,γ溶血レンサ球菌と分類され,Lancefild7)の血清学的群別により,現在までA〜V(I,Jを除く)の20群に分類されている.そして,臨床材料から検出される溶血レンサ球菌は,A,B,C,G群があり1),A群がもっとも頻度が高く,これらのほとんどは,β溶血を示すと報告されている8,9).咽頭スワブからの溶血レンサ球菌の検出は,通常β溶血を指標として行われ,血液寒天培地上でβ溶血を示さないレンサ球菌は,咽頭部常在菌として検査されないまま放棄される場合が多く,著者らの検索した範囲内では,非溶血性のA群レンサ球菌に関するわが国内の報告は見あたらない.

資料

福岡県で見出された東洋眼虫の人体寄生例

著者: 宮原道明 ,   松井孝夫 ,   日吉康子

ページ範囲:P.1011 - P.1013

はじめに
 東洋眼虫(Thelazia callipaeda)は,主にイヌ,ネコ,ウサギなどの眼球およびその付属器に寄生する小線虫であるが,ときおりヒトにも寄生して,いわゆる東洋眼虫症を発症する.わが国における症例の多くは熊本,宮崎,大分の九州3県から報告されているが1),福岡県からの報告はない.今回われわれは福岡市内で感染したと思われる人体寄生例に遭遇したので,その概要を報告する.

尿中アラニンアミノペプチダーゼ測定試薬の基礎的検討

著者: 竹立精司 ,   入江章子 ,   田渕彰子 ,   片山善章 ,   伊藤敬一

ページ範囲:P.1014 - P.1017

 アラニンアミノペプチダーゼ(Aminopeptidase,microsomal, EC 3.4,11,2;以下AAPと略)は腎近位尿細管上皮細胞のbrush-borderと呼ばれる微絨毛部分に多く含まれ,その尿中活性の測定は腎疾患の診断,予後の判定に有意義であるとされている1,2)
 今回シオノギ製薬より発売予定の尿中AAP測定試薬キットを使用する機会を得,若干の検討を行った.

質疑応答

臨床化学 血清ビリルビン値の異常の原因は?

著者: T子 ,   坂岸良克

ページ範囲:P.1019 - P.1021

 〔問〕肝機能検査でビリルビン値のみの異常(1.4〜1.9mg/dl)が日に1〜2件みられ(20検体/日),生理的黄疸にしては頻度が高すぎるように思えます.当施設は人間ドック専門で,採血直後に測定していますので,翌日測定をしたところ,0.9〜1.9の範囲内では0.2〜0.4mg/dl低値になりました.また,前日ソルベンを飲ませているので酵素法との比較も試みましたがほとんど変化はみられません.そこで,①総ビリルビンの光分解における割合,②脱水の影響,③絶食による影響,④成人における生理的黄疸の割合,⑤年齢差,季節変化,男女差についてご教示くだい.

輸血 ブロメリン試験は不要か

著者: 中西寛治 ,   平野武道

ページ範囲:P.1021 - P.1022

 〔問〕交差適合試験において,不規則性抗体スクリーニングを実施していればブロメリン試験は省略してもよいのでしょうか.輸血の成書には,ブロメリン試験も掲載されていますが.

臨床生理 心筋梗塞時の陰性T波の成り立ち

著者: N生 ,   佐藤忠一 ,   明石勝也

ページ範囲:P.1022 - P.1023

 〔問〕成人の場合,心室筋の脱分極は心内→心外に進み,再分極は心外→心内に進むので陽性T波になります.しかし,心筋に梗塞部があるとこの方向が変わり,特に再分極の方向が変化するため陰性T波になるのではないかと考えています.陰性T波の成り立ちについて諸説があるようですが,解説をお願いましす.

臨床生理 呼気ガス分析におけるVo2の異常高値

著者: 小川哲也 ,   毛利昌史

ページ範囲:P.1024 - P.1024

 〔問〕呼気ガス分析においてO2摂取量とCO2排泄量を測定していますが,Vo2399,Vco2271,RQ 0.79とVo2,Vco2ともに高値の症例を経験しました(57歳,男性,身長170cm,体重72kg).考えられる原因と対策をご教示ください.また,Vo2399という高値から,甲状腺機能亢進を考えてよいでしょうか.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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