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雑誌目次

論文

臨床検査34巻3号

1990年03月発行

雑誌目次

今月の主題 呼吸機能検査 総説

呼吸機能検査の現状と将来

著者: 白石透

ページ範囲:P.265 - P.272

 この10年間に,呼吸機能検査としての動脈血ガス分析は非常に増加し,スパイログラムと並ぶほどになった.体プレチスモグラフの進歩が目だち,気道過敏性,呼吸調節,睡眠時ポリグラフ,筋力・筋疲労などの検査が普及してきた.測定器では電子スパイロあるいは自動化呼吸機能測定システムが増加してきているが,これら自動化された装置の使用にあたっては慎重なチェック,較正が必要である.老年者での検査の実行ならびに評価,末梢気道閉塞の指標となる諸値の評価に関しては今後の検討にまつところが多い.臨床検査室より出される多数の数値を列挙した呼吸機能報告書が,臨床科で十分理解され診療に応用されているかについては疑問もある.将来は呼吸機能検査は一層多様化すると思われ,呼吸機能検査室は臨床科との連絡を密接にし,能率的で意義のある呼吸機能検査のやり方を見出していく必要がある.

技術解説

気道過敏性誘発試験

著者: 大塚智博 ,   牧野荘平

ページ範囲:P.273 - P.280

 気管支喘息は気道過敏性を病態生理学的特徴とする疾患であり,気道過敏性誘発試験は喘息の診断と重症度を客観的,定量的に解析しうる重要な検査の1つである.本稿では,非特異的気道過敏性誘発試験として気道過敏性を一秒量で評価する標準法とオッシレーション法による呼吸抵抗で評価するアストグラフ法,そして特異的気道過敏性誘発試験として抗原吸入誘発試験,アスピリン吸入試験,運動誘発試験について,試験施行の意義と具体的な試験方法および解析法につき概説する.

気道抵抗・コンプライアンスの測定

著者: 宮里逸郎 ,   東條尚子 ,   須賀龍治

ページ範囲:P.281 - P.286

 換気のメカニクスについて簡単に触れ,粘性抵抗の代表といえる気道抵抗(Raw)と弾性抵抗の代表のコンプライアンス(C)について,その原理および検査法を中心に解説した.ともに体プレチスモグラフを用いて測定するが,パンチングという特殊な呼吸法や食道バルーンを用いる検査法は,むしろ,その検査値を知りたい疾患患者にとって困難である.しかし,検者が機器の操作法や被検者の取り扱いに精通することにより改善される余地が十分にあると考えられ,より普及されることが望まれる.

スパイロメトリー・フローボリウム曲線

著者: 佐々木英忠 ,   関沢清久 ,   会川尚志 ,   矢内勝 ,   板橋繁 ,   福島健泰 ,   森川昌利 ,   手塚光彦 ,   氏家祐子

ページ範囲:P.287 - P.292

 スパイロメータで測定したスパイログラムは,肺気量分画とテフノー曲線である.一秒率は,70%以下で閉塞性障害があるといい,肺活量は標準値の85%以下で拘束性障害があるといえる.フローボリウム曲線は,テフノー曲線と同じ成績を別の表現にしたものにすぎない.しかし,型分類により病気を診断できる利点がある.閉塞性障害は肺弾性圧が小さいか,または等圧点より上流気道抵抗が高くても生じる.

呼吸機能測定の手技と装置

著者: 荒谷清

ページ範囲:P.301 - P.310

 近年の検査装置の自動化により,呼吸機能検査における患者の最大の努力を導き出すテクニックの主流は,手技いわゆる手の技から,むしろ口の技(掛声)の占めるウェイトが大きいと考えられる意味合いで,各検査での掛声の私案を提示した.
 また,ポピュラーな電子式スパイロメータの構造と原理,長所・短所についても簡単に解説するとともに,装置に内蔵されているソフトについても,最近,著者らが開発したプログラムの内容の一部を紹介した.

解説

特殊肺機能検査

著者: 工藤翔二 ,   石橋修 ,   岡村樹

ページ範囲:P.293 - P.300

 特殊肺機能検査として,臨床の場で測定されることの多い肺拡散能力とクロージングボリウムについて概説した.肺拡散能力(DL)は,肺胞毛細管膜における気相・液相間のガスの物理的拡散のみならず,ガスとHbとの結合,さらには肺毛細管血流量をも反映しており,このことよりDLは,肺胞一毛細管を通してのガス交換のoverallの効率をあらわす指標と考えられている.クロージングボリウム(CV)は,単一窒素呼出曲線における第Ⅳ相の開始点から残気量位までの肺気量をいい,加齢・末梢気道病変などで増加するとされている.

病態解説

慢性閉塞性肺疾患

著者: 本間請子 ,   丸茂一義 ,   福地義之助

ページ範囲:P.311 - P.317

 慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD, chronic obstructivelung disease:COLD)は,気道閉塞を共通の病態とする疾患の総称として用いられてよいとする傾向であるが,含まれる疾患には慢性肺気腫,慢性気管支炎,びまん性汎細気管支炎および慢性化した気管支喘息がある.各疾患で気道閉塞を示す病巣部位が異なり,それぞれ特徴的な臨床像を呈する.肺気腫の基本病態は壁の破壊を伴った肺胞道および肺胞嚢の拡大であり,これが広範に生ずるため,症状としては息切れが主体となる.慢性気管支炎では気管支腺の肥大により気道分泌が亢進した状態であり,持続性,反復性の咳嗽・喀痰が主症状である.びまん性汎細気管支炎の場合は,病態は呼吸細気管支炎および呼吸細気管支周囲炎であり,咳嗽および呼吸困難が初発症状となる.気管支喘息においては気道の反応性亢進を特徴とし,気管支平滑筋攣縮,気道粘膜浮腫,気道分泌亢進をきたすが,これらの程度が変化しうるところから,発作性の喘鳴,呼吸困難,咳嗽,喀痰が主症状となる.いずれの疾患においても症状の進展度に従い,呼吸機能検査では閉塞性障害が主体をなし,動脈血ガス分析では低酸素血症,さらに重症に向かうに従い炭酸ガス蓄積傾向を示す.

話題

血液ガス分析の最近の動向

著者: 神辺真之 ,   西岡和恵

ページ範囲:P.319 - P.323

 動脈血ガス分析方法は呼吸不全の診断には不可欠な検査法である.動脈血ガス分析装置の進歩もあり,測定精度もよくなり,さらに臨床的意義があがっている.
 まず,呼吸不全の変遷について述べ,動脈血ガスと赤血球動態との関係について説明する.また,最近の動脈血ガス分析装置を紹介するとともに,動脈血採血上の注意点について述べた.

肺の代謝機能

著者: 北村諭

ページ範囲:P.324 - P.328

 肺を代謝臓器としてとらえ,肺の血管床の特異性,肺における血管作動性物質の産生と代謝,摘出灌流肺を用いたロイコトリエンの代謝,肺血管系および気管支系反応に関与する液性因子,ケミカル・メディエータの産生とその制御について述べた.さらに,肺と心の相互作用,喫煙と補体系の変動,気管支喘息の発症に関与する液性因子であるプロスタグランジン,ロイコトリエン,さらにacute lung injuryの病態についても言及した.

老人の呼吸機能

著者: 松岡健 ,   酒井正雄

ページ範囲:P.329 - P.332

 老人の呼吸機能は,生理的変化に加え環境因子や病理的因子が加味されたものであり,その評価にあたっては老人の特性を十分理解することが必要で,正常値も若年健常者のそれをそのまま適用するには問題がある.
 老人の肺機能としては肺気量変化,胸壁コンプライアンス減少,肺弾性収縮力低下,動脈血酸素分圧低下,運動負荷時換気応答増強,睡眠中呼吸異常などに集約される.

在宅酸素療法

著者: 毛利昌史

ページ範囲:P.333 - P.335

 在宅酸素療法(HOT)の適用者はわが国では約5000人とされているが,その数は毎年増加しつつある.HOTの方法としては,わが国では酸素濃縮器法が最も広く普及しているが,流量とは無関係に100%酸素が吸入可能で,騒音もないことから将来,液体酸素法がある程度増加する可能性はある.酸素療法による慢性呼吸不全の予後改善は明らかであり,この意味からも今後,HOTは一層普及するものと推定される.

カラーグラフ

糸球体疾患(1)

著者: 坂口弘 ,   緒方謙太郎

ページ範囲:P.262 - P.263

 今日でいう糸球体腎炎は,Bright病として19世紀前半より登場してきたが,Brightの最初の記載より今日に至るまでさまざまな分類がなされてきた.ここでは,現在広く使用されているWHOの分類と,国際的に統一されているおもな用語について説明する.

腎臓病の病理・3

総論・糸球体疾患(I)

著者: 坂口弘 ,   緒方謙太郎

ページ範囲:P.338 - P.342

 現在いう糸球体腎炎は,19世紀前半のBrightの記載に始まる.それ以来,腎病変が介在し,蛋白尿,浮腫を主徴とする疾患はBright病とよばれていた.今世紀後半に入り,腎生検の導入,電子顕微鏡の実用化,免疫学の進歩などが,本疾患に関するさまざまな側面からの情報を与え,一方,混乱していた疾患概念に国際分類(WHO分類)が与えられるに至った.本稿では,糸球体腎炎の歴史を中心として,腎疾患の病態生理,ネフローゼ症候群につき解説している.

TOPICS

癌の定量的悪性度評価とDNA ploidy

著者: 米村豊

ページ範囲:P.344 - P.345

 休止期の正常細胞はつねに一定の染色体数とそれに対応した核DNA量を有しているのに対し,癌細胞ではしばしば正常細胞とは異なったDNAploidyがみられることが知られている.近年,癌の診断,予後の推定や悪性度診断にDNA ploidyの測定が広く普及しつつある.
 測定の原理は,DNAに特異的に結合する色素(propidium iodide, DAPIなど)で細胞核DNAを染色して,顕微蛍光測光装置(OLYMPUS社,NIKON社)やフローサイトメトリー(Coulter社,Becton Dickinson社)により測定するが,このとき,癌細胞のstem lineのDNA量を,正常細胞のstem lineのDNA量(2C)の相対値で表現する.

アンチトロンビンⅢ欠乏症

著者: 小濱寛也 ,   丸山征郎

ページ範囲:P.345 - P.346

 アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)は,血中濃度が22~30mg/dlのセリンプロテアーゼインヒビターである.ATⅢは432個のアミノ酸からなり,分子量は55000で,凝固系のそのほかのインヒビター,α1アンチトリプシン,C1インヒビター,ヘパリンコファクターⅡなどと一次構造上25~30%の相同性を示すことから,serpin (serine proteaseinhibitor)とよばれるようになった1)
 serpinのなかで最も重要なものはATⅢで,活性化プロテインC,第ⅩⅢ因子以外のほとんどの凝固系のプロテアーゼを阻害するが,特徴的なことは,その阻害作用がヘパリンによって著しく増強される点である.ATⅢのArg (47)周辺がヘパリン結合部位で,ここにヘパリンが結合するとATⅢの三次構造が変わり, Arg (393)―Ser (394)にトロンビンをはじめとする活性化凝固因子が結合しやすくなると想定されている.生体内では,血管内皮細胞上のヘパリン様分子によってATⅢは即時型のインヒビターに変わるものと考えられ,この意味ではATⅢも,ちょうどプロテインCの活性化が血管内皮細胞上のトロンボモジュリンと結合したトロンビンに依存性であるのに似て,血管内皮細胞依存性である.ATⅢは,ヘパリンによって活性が1000倍以上も増強するためヘパリンコファクターともよばれるが,血中にはヘパリンコファクターⅡ(HCⅡ)というserpinも存在する.

マイクロ波サーモグラフイ

著者: 前田隆志

ページ範囲:P.347 - P.348

 生体内部からは,その温度により定まった熱エネルギーを有する電磁波が放射されている.マイクロ波は周波数数百MHz~数十GHzの電磁波であり,物質透過性を有している.電磁波はその周波数によって組織の浸透度は異なり,周波数が上昇するに従って透過性は減少する(図1).この原理に基づいて,生体内部から放射されるマイクロ波領域の熱エネルギーを計測することにより,より深部の温度測定が可能となる.このようにして生体内部の温度をマイクロ波領域で計測するものをマイクロ波サーモグラフィ(以下,MWTと略す)という.
 現在,臨床に応用され普及しているサーモグラフィとして赤外線サーモグラフィ,液晶コンタクトサーモグラフィがある.これらは組織における血流や代謝により産生され,皮膚表面に伝導された熱の温度分布を画像としてとらえ,診断する方法である.これに対し,MWTは外的環境の変化に影響されず,より深部の温度変化をきたす病変(癌や脈管疾患など),またはその近傍の温度情報を無侵襲に直接得ることが可能であり,生体表面の温度情報しか得られない従来のサーモグラフィとはこの点で大きく異なる.すなわち,同じ電磁波である赤外線はγm単位の組織浸透度しかないのに対し,1~100GHzのマイクロ波は200γm~17cmの深さの温度情報を得ることができる.ただし,放射されるそのエネルギーは赤外線より微弱であるため,高感度で安定性の高いラジオメータが必要である.

手根管症候群

著者: 下条文武

ページ範囲:P.348 - P.349

 手根管症候群とは,手根管内における正中神経の圧迫麻痺をいう.本症は,手根管部の外傷,職業的に手関節を反復して動かす場合,甲状腺機能低下症,末端肥大症,全身性アミロイドーシスなど,明らかな原因が存在するものと,原因不明の特発性のものに分けられる.
 1975年WarrenとOtieno1)は,血液透析患者に手根管症候群が多く発症することを報告したが,その後,この疾患は長期透析患者の重要な合併症として注目されるようになった.透析による手根管症候群の成因として,まずシャントの存在による血行障害や尿毒症の代謝障害が考えられた.しかし,1980年Assenatら2)により正中神経周囲の腱・滑膜にアミロイド沈着が明らかにされ,以来,このアミロイドの形成機序について論争が起こった.当初は,透析膜で活性化された血中の補体C3a,C5aがインターロイキン(IL-1)を刺激してAAタイプのアミロイドーシスをひき起こすという仮説が提唱された.しかし,1985年,筆者ら3)のグループは,生化学的にアミロイド蛋白を分析し,β2―ミクログロブリンが主な構成蛋白であることを同定した.その後,この事実を裏づける報告が続き,通常の透析では除去されない分子量12000ダルトンのβ2―ミクログロブリンの体内蓄積が,本症の成因として最も重要であると考えられるようになった.

ハンバーガー甲状腺中毒症

著者: 高松順太

ページ範囲:P.349 - P.350

 ハンバーガー甲状腺中毒症は,今から数年前の1984年から1985年にかけて,アメリカ合衆国において流行し,医療界のみならず社会的にも注目を浴びた疾患である.
 図1に示すように,ミネソタ州の南西部および隣接するサウスダコタ州東部とアイオワ州北部において,甲状腺機能亢進症状を呈する患者が多発した.検査データ上,血中遊離型T4値が増加しているが,甲状腺123I摂取率を調べると著しく低下していることが見出された.亜急性甲状腺炎に一致する成績ではあるが,圧痛がないことから,いわゆる無痛性甲状腺炎(silent thyroiditis)と診断された.本疾患は通常,散発性に発症すると考えられているにもかかわらず,この地域に限って多発したので,あるいはウイルスなどによる感染が機序かとも推測された.そこで当地において,甲状腺学者で構成される研究調査班が結成された1)

タウリン

著者: 西槇貴代美 ,   中島信治

ページ範囲:P.350 - P.352

 タウリンは,新生児の発育や眼変性との関連が1970年初めのころより注目されはじめ,その後脳に多含されることをはじめ,表1に示すような多彩な生機作用を有することが明らかとなってきている.特に脳および心臓血管系に対する作用は,高齢化社会の到来を迎えてにわかに注目されてきている.
 食品のタウリン含量表2にタウリンの多い食品を示した.海産物には多く,植物性食品には一般に少ない.タウリンの経口的供給が臓器内タウリン含量を増加しうるのかどうか,タウリン投与で病変の進行を抑制できるのか否か,などについては疑問とする学者もある.

研究

免疫組織化学法を利用した全血塗抹標本の細胞分類について―Biotin-Strept-Avidin Complex Alkaline Phosphatase標識new fuchsin法による検討(第1報)

著者: 永井淳一 ,   鈴木弘文 ,   永倉隆夫 ,   坂井慶子 ,   片平宏

ページ範囲:P.353 - P.357

 免疫組織化学法において,標識酵素にAlkaline Phosphatase (ALP)を使用すると,良好なカラーコントラストが得られるものの,反応物質が退色してしまうことが問題であった.しかし,naphthol AS-BIphosphoric acidを基質としhexazotized new fuchsinをカップラーとしてALP反応を行うと,その反応物質は退色しないことが報告された.われわれはBiotin-StreptAvidin Complex法にこの原理を応用し,全血塗抹標本における免疫学的細胞分類を試みた.固定はBuffered Formalin Aceton (BFA)4℃30秒固定を中心に行い,CD分類上期待する結果が得られない場合若干の改良を試みた.顆粒球系抗原のCD 13,CD 16は内因性のALP活性を阻害するために,添加するレバミゾールの使用量により反応が左右された.レバミゾールの終末濃度は0.1~0.3mmol/lで良好な結果が得られた.CD 33は今回検討した固定液とレバミゾール濃度からは陽性像は得られなかった.B細胞系抗体ではBFAのアセトン終末濃度が40へ30%で比較的良好な結果が得られた.T細胞系と血小板系抗体はBFA固定で良好な結果が得られた.本法は美しいカラーコントラストが得られ永久標本になること,また内因性ALP活性もレバミゾールで容易に阻害でき,細胞形態の保存性も良好なこと,また反応液に長時間つけておいても染色結果に差がないなどの利点があった.

Alcian green 2GX色素を用いた新しい粘液染色法の検討―Alcian green染色(山本法)

著者: 山本格士 ,   平良信弘 ,   鳥居良貴 ,   岡村義弘 ,   三村雅子

ページ範囲:P.358 - P.362

 細胞診材料における酸性ムコ多糖類染色に,Alcian green 2 GX色素を用い染色性について検討を行った.その結果,本法は従来行われているAlcian blue染色より満足すべき染色結果を得ることができ,日常の細胞診断に有用な染色法と考えられた.

資料

Easy Stainer"ヒメネス"について

著者: 山中喜代治 ,   藤田育子

ページ範囲:P.363 - P.366

 Giménez染色液処方を基本に,日常検査で手軽に利用できる染色液セット,Easy Stainer"ヒメネス"を開発した.評価実験にはLegionella 属5種基準株と,Legionella属菌を検出した臨床材料5検体を用いた.ヒメネス染色標本中の菌体は,いずれも赤色,紅色,深紅色の,鮮明な像として観察された.これに対し,同一材料のグラム染色では,基準株で薄い朱色がみられたものの,臨床材料標本からは,細菌細胞を検出できなかった.

カンジダ抗原検出法としてのCAND-TECの有用性

著者: 相原守夫 ,   沢田美彦 ,   高見秀樹 ,   駒井立子 ,   工藤育男 ,   齋藤太郎 ,   山田康秀 ,   吉田豊

ページ範囲:P.367 - P.370

 血液疾患,固形腫瘍を有する症例で重症感染症を伴った患者56例を対象とし,ラテックス凝集法による半定量法(CAND-TEC:CA)にて血中カンジダ抗原を検査した.全身カンジダ症およびカンジダ症疑例34例ではCA陽性71%,非カンジダ症22例ではCA陰性82%であった.CA力価8倍陽性例では,2倍陽性例に比しリンパ球数が低値であった.CAND-TEC法は容易かつ迅速で,カンジダ感染症の臨床検査として有用と思われる.

質疑応答 臨床科学

免疫学的アミラーゼ分別法

著者: Q生 ,   牧瀬淳子

ページ範囲:P.371 - P.373

 〔問〕モノクローナル抗体を用いた(免疫学的)アミラーゼ分別法(S型,P型のアイソザイム)についてご教示ください.

CRP測定における抗凝固剤の影響

著者: K生 ,   河合忠

ページ範囲:P.373 - P.374

 〔問〕CRP測定の場合,一般に「血漿は使用しない」とか「EDTA血漿は不適」といわれる一方,文献によっては,「EDTAの影響は認められない」とか「……新鮮血清で補体性がある場合には偽陰性を示すことが起こりうる.それを防ぐにはEDTA塩のようなキレート剤を適量加える.……」(臨床検査,33(8):912,1987)と述べられています.ヘパリン加血漿やEDTA加血漿をCRP測定に用いてよいものかどうか,特にベビーではヘパリン処理毛細ガラス管に採血した血漿でCRP測定を行うことがありますが,その可否についてご教示ください.

免疫血清

ウイルス抗体測定ELISAキットにおけるカットオフ・インデックス

著者: K生 ,   井上栄

ページ範囲:P.374 - P.376

 〔問〕最近,ウイルス抗体価のあらわし方としてCI (カットオフ・インデックス)が用いられています.求め方として,CI=サンプルO.D./カットオフ値ということですが,この場合のカットオフ値はどのようにして求めればよいか,ご教示ください.

臨床生理

肺機能検査のシステム化

著者: 小林清子 ,   遠田栄一 ,   毛利昌史

ページ範囲:P.376 - P.378

 〔問〕現在,FUDAC-60 systemにNECのパソコンを接続してデータ管理を行っています.保存方法は5インチフロッピーディスク(2DD)に数値データのみではなくフローボリウム曲線や拡散などの波形データも一緒に収集していますが,容埴が少ないため31件しか入りません.2HDのフロッピーディスクなどを使用して保存容量を増やすにはどうしたらよいでしょうか.また,このシステムで日報などを打ち出し,台帳を作成するにはどうしたらよいでしょうか.よろしくご教授ください.

一般検査

ヘモグロビン尿とミオグロビン尿の鑑別

著者: K生 ,   今井宣子

ページ範囲:P.378 - P.380

 〔問〕ヘモグロビン尿とミオグロビン尿の性状と,区別のしかたについてご教示ください.

検査機器

免疫センサー開発の現状

著者: Y生 ,   中野安裕 ,   軽部征夫

ページ範囲:P.380 - P.383

 〔問〕従来,免疫センサーといえば電極に抗体膜を用いたものでしたが,最近いろいろの免疫センサーができつつあると聞きます.その現状についてご教示ください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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