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雑誌目次

論文

臨床検査35巻1号

1991年01月発行

雑誌目次

今月の主題 肝炎ウイルス関連マーカー 巻頭言

ウイルス肝炎研究の新しい展開

著者: 織田敏次

ページ範囲:P.7 - P.8

 肝炎はウイルスによる感染症である,と認識するようになったのが1941年,北海道大学の小児科,弘教授(当時講師)の小児に対する感染体験に始まるものであった.急性肝炎患者の血清から,ベルケフェルド板を通して得られた濾液がその場合,感染源に用いられた.したがって,細菌よりは小さな病原体ほどの感覚しか当時はなかったはずである.
 ウイルスも濾過性病原体といわれていた時代はともかく,その病原体にDNA,RNAを確認することができた時点から,われわれの関心はにわかに一変する.これが最小の生命担体として浮かび上がってくる.したがって研究方法も一躍,分子生物学のモデル的寵児にのし上がっていく.

解説

ウイルス肝炎の臨床とそのマーカーの意義および型別診断

著者: 飯野四郎

ページ範囲:P.9 - P.14

 ウイルス肝炎は原因ウイルスがA型,B型,C型,D型,E型まで決定され,E型を除いて,マーカーによる診断がほぼ可能になっている.ここでは各型の肝炎の主要な臨床像,ウイルス像を紹介し,それを基に各ウイルスマーカーの意義を述べ,最後に急性および慢性の肝炎のマーカーによる鑑別をまとめた.なお,C型肝炎に関しては今後,数々の測定系が出現すると予想されるが,その特性を見極めることが必要と思われる.

HCV遺伝子

著者: 米佳子 ,   三浦力 ,   有馬暉勝

ページ範囲:P.15 - P.19

 長い間除外診断に依存していた非A非B型肝炎の診断も,C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus; HCV)の遺伝子の断片がクローニングされて以来,急速に研究が進み,HCV抗体による特異的な抗体診断が可能となった.さらに,HCV遺伝子の詳細な解析が行われるなかで,HCVはフラビウイルスに類似するRNAウイルスであり,きわめて変異を起こしやすいウイルスであることも明らかにされた.HCV抗体のみによる診断には限界もあり,polymerase chain reaction (PCR)法を用いたHCV遺伝子を直接証明するゲノム診断も可能となった.

技術解説

抗HAV抗体

著者: 佐田通夫 ,   谷川久一

ページ範囲:P.20 - P.25

 A型肝炎の診断は,血清中に出現するIgM抗HAV抗体の有無をみることによって行われる.この画期的な血清診断法によって患者の早期発見,迅速な予防対策などが行えるようになった.抗HAV抗体にはIgA,IgG抗体の存在も知られており,IgA抗HAV抗体は血中に存在するばかりでなく,分泌型抗体として消化管粘膜局所における感染防御抗体として,血中のIgG抗HAV抗体は長期に持続するウイルス感染防御抗体としての重要な役割を担っている.
 これらの抗HAV抗体の反応は,A型肝炎の病態によって異なることがあり,今後の,より詳細な検討が必要である.

HBs抗原サブタイプ

著者: 熊田博光 ,   小林万利子

ページ範囲:P.26 - P.30

 HBs抗原は表面抗原のアミノ酸配列において122番目のdとy,160番目のwとrの相互な組み合わせからadr,adw,ayr,aywの4つのサブタイプに分類されている1,2).このサブタイプは,民族学的意義を持つもので世界各地で異なり,日本国内においても西日本では,adr優位,東日本では,adw優位となっている3).最近では,この4つのサブタイプ以外にadwr,adyrなどのcompond型サブタイプも存在することが明らかになった4~6).さらにこのHBs抗原を経過観察していくと変化する症例が認められる7,8).また,同一家系内においてもサブタイプが異なる家系も存在するなど9)サブタイプに関する話題は多い.ここではHBs抗原サブタイプをめぐる話題について述べる.

HBc抗体

著者: 井上長三 ,   矢野右人

ページ範囲:P.31 - P.33

 B型肝炎ウイルス(HBV)関連マーカーであるHBc抗体にはIgM型,IgG型HBc抗体があり,ウイルス特異性が優れている.急性B型肝炎では,IgM型HBc抗体は発症12週までは陽性である.IgG型HBc抗体はIgM型HBc抗体陰性化後も陽性持続し,長期にわたり低力価~中力価陽性を示す.臨床的には,初感染のB型急性肝炎か,B型肝炎ウイルスキャリアからの急性肝炎様発症かの鑑別が重要である.検出感度が鋭敏な測定法では,急性初感染のみならずB型慢性肝炎急性再燃でもIgM型HBc抗体が検出され,両者の鑑別は必ずしも容易ではない.測定手段を吟味,考慮し,この鑑別のため調整されたキットを用いることが有用である.

HCV抗体検査

著者: 吉原なみ子

ページ範囲:P.34 - P.38

 非A非B型肝炎ウイルスは基礎および臨床の肝炎研究者が切望していたが永年発見されなかった.1988年にウイルスの遺伝子が解明され(ウイルス粒子は電子顕微鏡下ではまだみつかっていない),それを遺伝子クローニングで発現させた蛋白に対する抗体測定系が開発された.HCV抗体検査は献血血液のスクリーニングや臨床においてC型肝炎の診断に幅広く用いられるようになった.現在の抗体検査は急性肝炎の初期診断には適さないこと,抗体陰性例でもpolymerase chain reaction (PCR)法などによりC型肝炎例があること,偽陽性例があることなど問題点がある.それらの点を理解したうえで使用する必要があろう.

肝生検組織の肝炎ウイルスマーカーの検出

著者: 高口浩一 ,   岩崎良章 ,   下村宏之 ,   水野元夫 ,   山田剛太郎 ,   辻孝夫

ページ範囲:P.39 - P.43

 肝生検組織を使用した肝炎ウイルスの検出は,B型肝炎ウイルス(HBV)については,蛍光抗体法および酵素抗体法により1970年代より盛んに行われている.1970年代にはHBc抗原およびHBs抗原に対するポリクロナール抗体を用いた肝内局在の検討が行われていたが,遺伝子工学の発展により最近ではモノクローナル抗体が容易に使用できるようになり,また望みのペプチドが容易に作成できるようになった.またHBV-DNAの解析が進んだことにより,HBV関連抗原として従来知られていたHBs抗原,HBc抗原に加え,新たにpre-S1,pre-S2抗原,X抗原などが染色されるようになった.現在,当教室で行われている酵素抗体法と蛍光抗体法の実際を紹介し,免疲実験法の基本操作と理論のマスター,さらには各施設にあった実験機器やそれに用いる小道具の工夫が重要であることを記載した.

2’,5’-オリゴアデニル酸合成酵素

著者: 西口修平 ,   小林絢三

ページ範囲:P.44 - P.49

 2’,5’-オリゴアデニル酸合成酵素(2-5AS)は,インターフェロン(interferon;IFN)によって細胞内に誘導される酵素であり,IFNの抗ウイルス作用発現に重要な役割を果たしている.血中のIFNは,速やかに消失することから,生体の抗ウイルス状態の把握のためには,2-5AS活性が指標として用いられている.本酵素はウイルス感染症のみならず,SLE,Behcet病などでも,高値を呈する.さらに,2-5ASは,IFNに対する個体の反応性や,IFN投与時の抗ウイルス活性の評価をするうえで重要なマーカーである.近年,RIAを用いた測定法が開発され,血清中の2-5AS活性の測定が可能となった.従来の末梢血単核細胞に比べ,測定が容易になったため,今後臨床検査として汎用され重要性が増すものと思われる.

話題

重合ヒトアルブミンレセプターとHBV感染

著者: 折戸悦朗 ,   溝上雅史

ページ範囲:P.50 - P.53

 重合ヒトアルブミンレセプターによって,B型肝炎ウイルスの血中での運搬と標的細胞への結合を説明したアルブミンレセプター仮説は,生理的にはほとんど存在していない状態のアルブミンを用いるなどのためこれを否定する報告もあり,必ずしもこのウイルスの臓器侵入のメカニズムは解明されたとは言えない.しかし,これを1つの手がかりとして,このメカニズムと重合アルブミンレセプターの真の意味が追求されなければならない.

pre-S抗原とHBx抗原

著者: 林紀夫 ,   片山和宏 ,   鎌田武信

ページ範囲:P.54 - P.56

 B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus; HBV)の増殖機構が解明されるにつれ,従来の増殖マーカーであるHBe抗原やHBc抗体などに加え,より正確にその増殖動態を把握できるようになりつつある.pre-S抗原はHBV増殖に先立って増加するため,その動態を早期に診断しうる可能性がある.またHBx抗原は,HBV増殖を制御していると考えられ,その時点の増殖活性を判定しうるものと期待される.

輸血後非A非B型肝炎とその予防

著者: 吉澤浩司 ,   野尻徳行 ,   高橋和明

ページ範囲:P.57 - P.60

 C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus; HCV)関連のC100-3抗体測定系が開発された結果,C型肝炎の特異的な診断,予防への第一歩が踏み出されようとしている.現在の測定系は,HCV関連の第一世代のマーカーとも言えるものであるが,本文中に述べるGOR抗体をはじめとする新しい測定系の開発などにより,C型肝炎もやがてはB型肝炎のようにその全貌がとらえられ,輸血に伴う感染が制圧される日も近いと期待される.

カラーグラフ

肝臓の発生,構造と機能および外形の異常

著者: 奥平雅彦 ,   大部誠 ,   二上玲子

ページ範囲:P.4 - P.6

図1成人正常肝の外景
 一酸化炭素中毒死亡例.肝表面の名称については本文中の図2を参照されたい.肝臓の形態は細かくみると人相のように各個体により異なるが,この例はほぼ標準的な形態である.

肝臓病の病理・1

肝臓の発生,構造と機能および外形の異常

著者: 奥平雅彦 ,   大部誠 ,   二上玲子

ページ範囲:P.64 - P.70

 肝臓は生体内における最大の腺臓器で,1つしかなく,生存に不可欠である.肝臓病の病理と題するシリーズを始めるにあたり,まず肝臓についての基礎知識として,発生や脈管系を中心とした解剖学,さらに,機能や臓器特性について略述した。肝臓という臓器についての理解に役だてば幸いである.また,病理解剖に際して,肝臓を取り出したおりに観察される肝臓の外景異常について示説した.

TOPICS

自己免疫性肝炎におけるHCV抗体陽性

著者: 池田有成 ,   戸田剛太郎

ページ範囲:P.72 - P.73

 自己免疫性肝炎は,ウイルスや薬剤による肝障害とは異なる自己免疫機序により生じる慢性の肝疾患の1つとされている.しかし,Chiron社により開発され,C型肝炎ウイルス(HCV)感染に特異的なアッセイ法とされているHCV抗体が高率に陽性であることから,HCVが,その原因である可能性が考えられるようになった.HCV抗体の測定法にはEIA法とRIA法とがあり,自己免疫性肝炎ではEIA法で測定した場合は62%,RIA法は25%で陽性であったとの報告もある1).しかし,陽性とはいえ,輸血後慢性肝疾患と比べてその抗体価が低力価(EIA法でのOD値が2.0未満)の症例が多いこと1),血中γ―グロブリン値と高い相関(図1)を認めること,ステロイド治療に伴い低下することなどから,HCVの感染とは無関係な抗体もしくは非特異的なIgGの結合を検出しているという見方が有力となっている2)
 HCV抗体の検出には組み換え型ヒトースーパーオキシドジスムターゼ(SOD)とHCVの非構造部分由来のC100-3蛋白との融合ペプチドが抗原として用いられている.自己免疫性肝炎ではSODに対する抗体が高率に検出され,HCV抗体価と相関を認めている(図2))3).したがって,HCV抗体のアッセイ系において,SODに対する抗体をも検出している可能性が考えられる.

細胞膜の糖の移送―糖輸送担体

著者: 岡芳知

ページ範囲:P.73 - P.74

 ブドウ糖は生体のエネルギー源としてもっとも重要な物質であり,その代謝異常の代表である糖尿病とは,ブドウ糖の細胞での利用が障害され,その結果としてブドウ糖が血中にとどまり血糖値が上昇した病態と考えることができる.
 細胞で糖が利用されるためには,リン脂質の二重層から成る細胞膜をまず通過しなければならないが,ブドウ糖は水溶性の物質であり,一種の油の層である細胞膜を迅速に通過することはできない.そこで,細胞膜にはグルコーストランスポーター(糖輸送担体)と名づけられたブドウ糖輸送蛋白が存在して,ブドウ糖の細胞膜での移送を介在している.すべての細胞にはブドウ糖を取り込む機構が必要であるので,糖輸送担体もすべての細胞に存在する.

P 170(P―糖蛋白)

著者: 大川二朗

ページ範囲:P.74 - P.75

 癌化学療法の進歩により,抗癌剤によって癌がほとんど完全に消失するような症例が散見されるようになってきた.しかし,最初は抗癌剤がよく効いていてもしだいに薬剤耐性の癌細胞が出現してくる.
 治療をさらに困難にするのは,癌細胞が最初に用いた抗癌剤に対して耐性を示すばかりでなく,構造的に関連のないほかの抗癌剤に対しても交差耐性を示すようになることである.この現象は多剤耐性(multidrug resistance; MDR)とよばれている.

慢性肝炎におけるシアリルルイスX

著者: 辻孝夫 ,   岡田良雄

ページ範囲:P.76 - P.77

 細胞膜表面および分泌蛋白質の糖鎖表原型が細胞の悪性化に伴って変化することが知られている.その一部はいわゆる癌特異抗原としてすでに癌の臨床診断に応用されている.
 私たちは肝癌における糖鎖抗原の異常の研究中,担癌患者の非癌肝硬変組織の肝細胞が糖鎖抗原シアリルルイスX(以下SLEX)を細胞膜表面に発現していること(Am. J. Pathol.,130, 384~392,1988)を観察した.後にこの糖鎖抗原は正常肝では発現されておらず慢性肝炎では肝の組織障害の程度に応じて発現が増強されること(J. Hepatl.,30, 1~7, 1990),肝癌ではほとんど発現されていないことを明らかにし細胞の糖鎖構造の変化が単純に胎児性抗原の再発現という従来の概念では捉えきれないことを示唆した.この観察はまた「細胞の悪性化を伴わない糖鎖抗原の変化とその生物学的意義」という新しい問題を提起していた.

HCVと肝癌

著者: 樋野興夫

ページ範囲:P.77 - P.78

1.はじめに
 アメリカのベンチャービジネスであるChiron社が,1988年C型肝炎ウイルス(hepatitis Cvirus;HCV)を発表して以来,日本人研究者のHCV研究に対する取り組みは,すさまじく一種の洪水的現象であると言っても過言ではない.もちろん,日本におけるHCV研究の関心の高さは,HCV感染の社会的な重要性に由来することは言うまでもない.Chiron社の方法,塩基配列の情報(1989年6月ヨーロッパ特許の公開で全塩基配列の7割である約7kbの情報が流れた)を基に,日本のいくつかのグループも,日本人感染者の血清からHCVのクローニングに成功し,最近では,ウイルスの全塩基配列も決定されるに至っている.HCVは,ウイルス間で塩基配列にかなり違いが見られ,今後サブタイプに分類されることも予想される.

研究

糖尿病患者の血清CA19-9,CA-50およびSLXに対するLewis式血液型ならびに糖代謝異常の影響

著者: 村井順一郎 ,   中林廣榮 ,   黒木哲夫 ,   下條信雄 ,   中恵一 ,   奥田清

ページ範囲:P.79 - P.82

 非担癌状態のインスリン非依存型糖尿病患者で,CA19-9,CA-50およびSLXの各血中濃度を測定し,Lewis式血液型および糖尿病の血糖コントロール状態との関連について検討した.糖尿病患者のLewis式血液型の分布は,健常者のそれとほぼ同様であった.血中CA19-9, CA-50およびSLXの値は,Lea+b―型の患者群がLea-b+型ならびにLea-b―型の両群に比し有意に高値であった.Lea+b―型の患者群について,ヘモグロビンA1c(HbA1c)が10%を超える例で同値7%以下の例に比し,血中CA19-9, CA-50の値は有意に高値であった.またLea-b+型の患者群でも同様にHbA1cの高い例で,血中CA19-9, SLXの値が高値を示した.糖尿病患者では非担癌状態であってもこれら糖鎖抗原の血中濃度に,Lewis式血液型および血糖コントロール状態が関与する可能性が示唆された.

閉塞性肺疾患にみられる肺活量低下の機序に関する考察

著者: 前田貢 ,   中野赳 ,   塚本玲三

ページ範囲:P.83 - P.86

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)で,気道閉塞が高度になると,肺機能検査上,肺活量が低下し,混合性障害様パターンを示す.われわれは,拘束性肺疾患を合併しないCOPD患者74名を対象に,肺活量と一秒率,残気率,気道抵抗との相関関係を調べ,肺活量の低下をきたす気道閉塞の程度について検討を行った.その結果,一秒率が58%以下,気道抵抗が381%以上,残気率が54%以上で肺活量が低下することがわかった.

資料

成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)における血清可溶性interleukin-2receptor(s-IL-2R)の測定

著者: 樅田三郎 ,   池田柊一 ,   柳迫隆夫 ,   跡上直 ,   森弘行 ,   山田恭暉 ,   上平憲 ,   朝長万左男

ページ範囲:P.87 - P.91

 ATLLにおける血清s-IL-2R濃度をELISA法により測定した.コントロール231±97,HTLV-Iキャリア236±137,pre-ATL259~1987(平均731)U/mlとなり,ATLLでは慢性型639~3239(同1621),急性型5814~160550(同70697),リンパ腫型1505~94800(同27210)U/mlであった.3症例の経過観察では末梢血のATL細胞数との連動も見られた.血清s-IL-2R値はATLLの腫瘍量を反映し,有用性の高いマーカーと考えられた.

大学附属病院臨床検査室における運動負荷心電図検査の実態(アンケート調査報告)

著者: 川久保清

ページ範囲:P.92 - P.95

 全国大学病院臨床検査技師81人に,臨床検査室における運動負荷心電図検査の実態について,アンケート調査を行った.運動負荷の方法としては,96.2%の施設でマスター2階段試験を行っていて,71.4%の施設ではトレッドミル試験を併用していた.マスター試験では,週平均48人,トレッドミルでは16人の検査を行っていた上検査の安全性の面では,医師の待機率66%などであり,十分でない施設も見られた.

学会印象記

第15回国際微生物学会議/第37回日本臨床病理学会総会

著者: 本田武司

ページ範囲:P.96 - P.97

裾野の広い微生物学研究
 「微生物学-21世紀への展望」をキャッチフレーズに微生物学関係のオリンピックともいわれる第15回国際微生物会議が9月13日から22日の間,三輪谷俊夫(大阪大学微生物病研究所教授)組織委員長の下で日本学術会議と日本微生物学協会の共同主催により大阪市内の3会場で開催された.1903年のパリに始まるこの会議は,4年ごとに開催され,第11回会議が東京で1974年に開催されて以来,日本では第2回目の開催にあたる.本会議の母体がICSUからIUMS (国際微生物学連合)に昇格したことからもわかるように,微生物学の研究分野の裾野が広がり,会議の規模も拡大して今回の参加者は60か国から計約3000名を数えた.
 会議は9月13日からの各種学術・運営委員会(いわゆるCOMCOF)で始まり,16日の盛大な開会式の後に,17日から22日の6日間にわたって学術発表が行われた.開会式当日は,応用微生物学分野で功績のあった別府輝彦(東京大学教授)氏が有馬賞受賞講演をされ,次いで,WHOの中嶋宏氏が世界の感染症の現況について,さらに,木下祝郎(協和発酵)氏が「アミノ酸発酵の過去と現在」というテーマで基調講演をされた.

質疑応答 臨床化学

アデノシンデアミナーゼ(ADA)活性値の基準値

著者: 鬼原道夫 ,   倉田矩正 ,   木澤郁子

ページ範囲:P.99 - P.100

 Q 胸水および腹水中のアデノシンデアミナーゼ活性値の基準値をお教えください.また臨床的意義も併せてご教示ください.

免疫血清

α-1―アンチキモトリプシンについて

著者: 津田道雄 ,   松本雅彦 ,   S生

ページ範囲:P.100 - P.102

 Q 最近,α-1―アンチキモトリプシンは免疫系の調節など,その生理的役割が注目されているようですが,その構造や機能などをご教示ください.

マイクロプレートを用いたELISA法について

著者: 石井勝 ,   山田雄二

ページ範囲:P.102 - P.104

 Q ポリスチレン製のマイクロプレートを用いてELISA法を行っています.ロットの異なるプレートを使用したところ,抗原がウエルに結合しませんでした.その結果発色値がほとんど出ません.この原因と対策についてご教示ください.

HTLV-1抗体陽性患者からの二次感染について

著者: 山口一成 ,   堀川博

ページ範囲:P.105 - P.106

 Q 注射針の誤穿刺や呼吸器用のカテーテルで感染することがありますか.また,リンパ球を介しての感染はあるのでしょうか.

微生物

食中毒性サルモネラの長期保菌者について

著者: 相楽裕子 ,   H生

ページ範囲:P.106 - P.108

 Q 食中毒性サルモネラの長期保菌者について以下の2つをご教示ください.(1)生体内のどこに棲息しているのでしょうか.(2)保菌しやすい人としにくい人はいるのでしょうか.

風疹ウイルス抗体価測定時の前処理について

著者: 松野哲也 ,   Q生

ページ範囲:P.108 - P.109

 Q 風疹ウイルス抗体価を測定するときに,PBSなどで前処理をしますが,これはどのような目的を持つのでしょうか.ご教示ください.

資格制度

呼吸機能検査の件数と点数の違い

著者: 森田勇一 ,   遠田栄一 ,   毛利昌史 ,   Y生

ページ範囲:P.109 - P.110

 Q わが病院研究検査科では現在チェスト社の呼吸機能計でSP,FVを測定し,VC曲線とFVカーブを記録しますが医事課での請求は支払い基金より削られて一件分の代金となります.この場合検査科では件数を1件とすべきか2件とすべきか苦慮します.薬物負荷を行っても点数は取れません.県内のほかの施設はどうしておられるのか聞いておりませんが,中央ではどのような見解をしておられますのでしょうか.研究部内の件数として取り上げることは不可能でしょうか.適正なアドバイスをお願いいたします.

超音波検査技術の修得について

著者: 諸井中 ,   遠田栄一 ,   福田健司 ,   島崎久美子

ページ範囲:P.111 - P.112

 Q 超音波検査を基礎から勉強したいと思っています.細胞診スクリーナー養成のような確立されたシステムがないように思いますが,どんな方法があるのか,ご教示ください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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