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雑誌目次

論文

臨床検査35巻5号

1991年05月発行

雑誌目次

今月の主題 サイトカインと造血因子 総説

サイトカインと免疫ネットワーク

著者: 向田直史 ,   笠原忠

ページ範囲:P.447 - P.452

 免疫と炎症反応に関与するサイトカインの特徴とサイトカインネットワークについて最近の知見をまとめて,概説した.サイトカインは免疫系だけでなく,内分泌,神経系との相互作用が認められ,その特性としての産生および作用の多様性と重複性が挙げられる.この多様性と重複性の例をIL-1,TNF,IL-6について挙げ,その起源を分子レベルで解明しようとする試みについて述べた.

造血因子と造血能

著者: 仁保喜之

ページ範囲:P.453 - P.456

 いくつかの造血因子の存在は以前から想定はされていたものの,実在が確認されたのはつい最近のことであり,分子生物学の発達,なかでも遺伝子工学の発展に負うところが多い.
 造血は主に骨髄で行われる.骨髄中の造血幹細胞から分化した各細胞系の前駆細胞を造血因子が刺激し,さらに成熟細胞の方向へ分化,増殖させる.顆粒球・マクロファージ系前駆細胞に働くCSF,赤芽球系前駆細胞に働くエリスロポエチンの両者がもっともよく知られている造血因子である.遺伝子工学を応用してリコンビナント因子が生産され,すでに臨床的に投与される時代となった.巨核芽球・血小板系に働くトロンボポエチンに関しては,IL-6がこれに当たるものか否か研究が進められているが,まだ,臨床応用にまでは至っていない.

技術解説

エリスロポエチン(EPO)

著者: 河合忠 ,   香西正昭

ページ範囲:P.457 - P.461

 エリスロポエチンは,乏酸素状態に反応して生成される造血因子である.近年ラジオイムノアッセイによる定量法が市販されるようになり,臨床応用も確立されている.血清エリスロポエチン濃度の成人正常値は12.0~32.0mlU/mlであって,男女差はない.臨床的には,貧血の鑑別,多血症の鑑別,エリスロポエチン製剤投与の適応の決定・経過観察に応用されている.腎性貧血では血清濃度は低下傾向を示し,エリスロポエチン製剤の投与により改善する.再生不良性貧血,鉄欠乏性貧血で血清濃度は増加する.真性多血症では低下傾向を示すのに反して,続発性多血症では逆に高値を示す.

インターロイキン1(IL-1)

著者: 林秀敏 ,   小野崎菊夫

ページ範囲:P.462 - P.465

 インターロイキン1は主に単球やマクロファージから産生されるサイトカインで,生体の恒常性維持機能に関与している.しかしながら,その産生機構の異常により炎症を伴う種々の疾患の原因となることが示唆されており,生体内での産生や挙動を知ることは重要になってきている.インターロイキン1の定量法としては,もっとも広く行われているマイトジェン存在下でのマウス胸線細胞の増殖促進活性測定法をはじめ,インターロイキン1依存性および感受性細胞株を用いたバイオアッセイ法が確立されている.また,最近,ELISA法やRIA法などの免疫学的測定法も開発されている.本稿では,それぞれの定量法およびその特徴と問題点について述べた.

インターロイキン2(IL-2)

著者: 谷口良久 ,   淀井淳司

ページ範囲:P.466 - P.469

 IL-2はT細胞増殖因子として発見されて以来,免疫担当細胞間の調節因子としてさまざまな生物活性を持つことが明らかにされてきた.IL-2とそのレセプター(IL-2レセプター)の解析は,成人T細胞白血病細胞におけるIL-2レセプターの異常発現の研究とともに進展してきた.IL-2レセプターは現在のところ少なくとも2種類の分子p55,p75から成ることが明らかになった.IL-2レセプターの発現誘導にはNF―κBなどのDNA結合蛋白が関与することが明らかにされ,IL-2/IL-2レセプターシステムの制御機構の解析が進行しつつある.

インターロイキン3(IL-3)

著者: 林田一洋 ,   仁保喜之

ページ範囲:P.470 - P.473

 IL-3は比較的早期の幹細胞に作用し広い範囲の血液細胞の分化誘導に働くため,造血因子の中ではその作用が多岐に及ぶのが特徴的でmulti-CSFとして研究されてきた物質である.IL-3は刺激を受けたT細胞からのみ分泌され,支持細胞からは分泌されないことから,恒常的な造血よりも炎症などに伴う二次的な造血に働いていると考えられている.ヒトにおいてはIL-3とGM-CSFの両方に反応する細胞の場合,この2つのサイトカインの作用は重複するというマウスでは認められない特徴がある.したがってIL-3の生理的な作用についてはGM-CSFとの関連を考慮して考える必要があると思われる.

インターロイキン4(IL-4)

著者: 畠清彦

ページ範囲:P.474 - P.477

 インターロイキン4(IL-4)の最近の知見について述べた.1986年にクローニングされて以来,B細胞だけでなく,T細胞自身や単球マクロファージ,肥満細胞,ナチュラルキラー細胞や造血系幹細胞にも作用するT細胞由来のリンホカインの1つであり,その受容体や誘導される遺伝子も単離され,作用機序やシグナル伝達機構の解明が進んでいる.ヒトIL-4活性の測定に伴い,種々の疾病との関連が追究され,ことに高IgE血症や免疫不全症に関与している可能性が高く,今後の研究が興味深い.

インターロイキン5(IL-5)

著者: 松本良二

ページ範囲:P.478 - P.480

 われわれは,マウスおよびヒトにおいてインターロイキン5(IL-5)の測定を特異性と感度に優れたELISA法により行っている.IL-5はマウスにおいてB細胞分化増殖因子として分離精製されたが,IL-5トランスジェニックマウスを作ってみると,確かに血中IL-5濃度と免疫グロブリンの増加に相関をみた.特に,ヒトにおけるIL-5の測定は,IL-5のin vivoでの役割,疾患とのかかわりを知るうえで有用と思われ,今後,さまざまなアレルギー疾患などで測定を行う予定である.

インターロイキン6(IL-6)

著者: 藤林麻里 ,   松田正

ページ範囲:P.481 - P.484

 インターロイキン6(IL-6)の生物学的機能は多岐にわたる.臨床においてIL-6は疾患の活動性や重症度,予後との相関が示唆されているため,その測定法の確立が急がれている.IL-6の測定法はバイオアッセイとイムノアッセイに分類される.現在はバイオアッセイが主流であるが,多数の検体を迅速に処理するにはイムノアッセイ系が必要である.
 検体の採取・保存法や測定に供するまでの処理法についての検討はほとんど行われていない.ここでは,われわれの研究室で行っている方法を中心に述べる.

インターフェロン(IFN)

著者: 喜多正和 ,   今西二郎

ページ範囲:P.485 - P.488

 インターフェロン(IFN)は,基礎的研究および臨床応用のもっとも進んだサイトカインの1つである.抗原構造の違いから,α,β,γ型の3種類に分類されるが,α型には16種以上のサブタイプが存在する.α型とβ型の性状には共通点が多いが,γ型は遺伝子学的にもα,β型とは異なっている.IFN測定法として,バイオアッセイ法とRIA法あるいはELISA法があるが,おのおの長所と短所があり,研究の言的により測定法を選択する必要がある.各種疾患における内在性IFNおよびIFN産生能に関する研究結果から,IFNは生体防御機構あるいは病気の成因や発症機序において重要な因子と考えられ,今後,臨床検査においても重要な検査項目になる可能性がある.

コロニー刺激因子(CSF)

著者: 岡部哲郎 ,   朴雲峰 ,   桔梗伸明

ページ範囲:P.489 - P.493

 顆粒球やマクロファージは,感染防御の最前線で細菌の侵入を防ぐという大きな役割を果たしている.コロニー刺激因子(CSF)と呼ばれる液性因子がその産生を調節している.CSFにはmulti-CSF,GM-CSF,G-CSF,M-CSFと4種類あり,それぞれG (granulocyte),M (macrophage)または両者の増殖や機能を調節している.これらのCSFは細菌やウイルスなどの感染症の病巣が形成されていく過程で,好中球やマクロファージを病巣へ動員したり,活性化して細菌を殺させたり,感染に対する生体反応を制御していると考えられる.また,感染の後期には特異的な免疫反応によるT―リンホカインとして活性化T細胞より産生され,その免疫反応をコントロールしている.またさまざまな炎症性疾患でも同様に病巣形成や免疫反応に関与している.

腫瘍壊死因子(TNF)

著者: 川上正舒 ,   早田邦康

ページ範囲:P.494 - P.498

 TNFは腫瘍細胞を障害するモノカインとして注目されたが,現在では,正常細胞においても炎症や代謝異常にかかわる多彩な作用を示すことが知られるようになってきた.したがって,患者の血液や髄液中のTNF濃度を測定することは,さまざまな病態におけるTNFの役割を理解するうえで重要である.現在,生物活性の測定法とELISA,RIAが用いられているが,感度の点でこれらの測定値の臨床的意義づけは難しい.

肝細胞増殖因子(HGF)

著者: 坪内博仁 ,   弘野修一 ,   上村章 ,   二井谷好行

ページ範囲:P.499 - P.503

 肝臓は再生能力の旺盛な臓器であり,肝再生の機序については古くより液性因子の存在が指摘されていたが,長い間その本体は解明されなかった.最近,劇症肝炎患者血漿やラット血小板よりあいついで精製された肝細胞増殖因子(HGF)は分子量約83000の蛋白質であり,生理的な肝再生因子であると思われる.ヒトHGF (hHGF)の測定系には初代培養ラット肝細胞を用いたバイオアッセイと酵素標識免疫測定法(ELISA)があるが,その特異性,感度,簡便性において後者が著しく優れている.hHGFは種々の肝疾患で血中に増加し,特に広範な肝細胞の壊死を伴い予後不良な疾患である劇症肝炎の早期診断や予後の推測に有用である.

話題

インターロイキン7(IL-7)

著者: 松橋信行

ページ範囲:P.504 - P.506

 1988年骨髄細胞長期培養の系を用いて前駆B細胞増殖因子としてIL-7が分離され,遺伝子がクローニングされ,特異的なレセプターも同定された.IL-7単独ではpre-B細胞の増殖とpre-B細胞から成熟B細胞への分化を支持した.pro-B細胞は間質細胞存在下にIL-7反応性を持つ.IL-7はCD48前駆T細胞と成熟T細胞の増殖を補助因子(co-factor)として支持した.胸腺臓器培養ではIL-7がCD48細胞の細胞群に特異的(lineage-specific)な分化/増殖因子である可能性が示唆された.

インターロイキン8(IL-8)

著者: 向田直史

ページ範囲:P.507 - P.510

 インターロイキン8(IL-8)は,好中球の遊走を促進する新たな因子として発見されたペプチドである.遺伝子組み換え技術により大量に発現されたIL-8を用いることによって,IL-8が好中球の細胞内酵素の放出を引き起こすほかに,T細胞・好塩基球の遊走と好塩基球からのヒスタミン放出も引き起こすことが判明した.本稿ではIL-8の物理生化学的性状,生物活性,測定法およびその臨床的役割について概説を加えた.

インターロイキン9(IL-9)

著者: 北村聖

ページ範囲:P.511 - P.513

 インターロイキン9は,ヘルパーT細胞の増殖因子としての活性のほか,マスト細胞の増殖因子,赤芽球系造血因子としての作用が知られており,多系統の細胞に働くことからインターロイキンの中に入れられている.マウス,ヒトともに遺伝子がクローニングされ,一部受容体の性状も明らかにされている.作用はIL-3と類似しているが,特徴として標的細胞が非常に制限されており,細胞障害性T細胞や,非刺激状態のT細胞に対してはまったく作用を示さない.

カラーグラフ

ウイルス肝炎

著者: 奥平雅彦 ,   木田芳樹 ,   管知也

ページ範囲:P.444 - P.446

学会印象記 第6回日本環境感染学会

幅広いフィールドで―ニワトリからMRSAまで

著者: 小林芳夫

ページ範囲:P.514 - P.514

 本年の日本環境感染学会は2月8日,9日の2日間にわたり東京新宿副都心にある京王プラザホテルにおいて東京大学外科学教授出月康夫会長の下に開催された.思えば1985年4月2日東京本郷の学士会館別館において,当時勤務していた川崎市立川崎病院院長藤森一平現東海大学教授の代理として現在本学会の理事長を務められている上田泰東京慈恵会医科大学名誉教授,清水喜八郎東京女子医科大学教授ならびに川名林治岩手医科大学教授らの肝入りで開かれた設立準備会に出席して以来6年近くが経過したわけである.
 特別講演は「感染性廃棄物の適性処理について」という演題で国立公衆衛生院の田中勝博士によりなされたが本学会にふさわしい企画であり,会場は熱心に聞き入る会員であふれていた.

肝臓病の病理・5

ウイルス肝炎

著者: 奥平雅彦 ,   木田芳樹 ,   管知也

ページ範囲:P.516 - P.522

 肝臓の炎症は肝炎と呼ばれる.わが国でもっとも頻度が高く重要なものはウイルス肝炎である.原因となるウイルスに関する知見を整理したうえで,急性肝炎,劇症肝炎,慢性肝炎の病理学的所見を示し,かつ,肝細胞壊死の形態学についてやや詳しく述べた.

TOPICS

鼻呼吸における肺機能

著者: 須賀龍治 ,   宮里逸朗

ページ範囲:P.524 - P.525

 ヒトは安静時通常,生理的には鼻もしくは鼻と口で呼吸しており,口のみで呼吸することはない.しかし,各種呼吸機能検査はノーズクリップを装着し,マウスピースをくわえて大きく開口した状態で行われているため,その測定値が安静鼻呼吸時の呼吸状態を正確に反映していない可能性がある1)
 肺胞の表面張力は肺を虚脱させる方向に作用する.一方,鼻腔の気道抵抗は口腔の気道抵抗に比べ著しく高く,鼻呼吸時の高い気道抵抗は肺の虚脱を防止する方向へ有効に作用しているとされている.鼻呼吸での機能的残気量の測定値は口呼吸での測定値より大きい可能性が考えられた2)

Holter心電図による心拍数のFFT解析の意義

著者: 田村康二

ページ範囲:P.525 - P.526

1.Holter心電図とその信号処理
 Holter心電図では経時的に心電図を記録して得た信号の情報処理の方法がさまざまに工夫されている.まず,オッシロスコープ上に描出されたある時間単位での心電信号の時間間隔と各波形成分の振幅についてのアナログ量としての処理がこれまで一般に行われている.これに対して心電信号をスペクトル解析器にかけてデジタル量としての処理をして周波数変化として観測しようとする方法が近年飛躍的に進歩してきている.

肺胞マクロファージ貪食能

著者: 福島健泰 ,   関沢清久 ,   佐々木英忠

ページ範囲:P.526 - P.527

1.はじめに
 単核食細胞系(mononuclear phagocyte system)に属する肺胞マクロファージ(AM)は,さまざまな細胞機能を有している.肺は,経気管支的に直接,外界異物の暴露にさらされる特異的臓器であり,その環境の中でAMは異物の処理,病原体の殺菌不活化,抗原提示を含めた炎症免疫反応の誘導など生体防御機構において重要な役割を担っている.
 今回紹介する生体磁気計測系は,近年肺磁界1),脳神経磁界研究,核磁気共鳴映像法(MRI)などに利用され,応用範囲が拡大している分野である.以下,AMの基本的特性である食作用を貧食された鉄粉粒子から発生する残留磁気の減衰曲線から評価する方法を述べる.

Ki-1リンパ腫

著者: 塩田真美 ,   森茂郎

ページ範囲:P.528 - P.529

1.はじめに
 Ki-1リンパ腫とは単クローン抗体Ki-1によって同定される大型リンパ球よりなるリンパ腫に与えられた呼称である.特徴的な組織像と臨床像を示すところから近年注目されている.Hodgkin病細胞株L-428に対し作製されたモノクローナル抗体Ki-1(CD 30)は,Hodgkin細胞,Reed-Stemberg細胞のみに発現すると考えられていた1).しかし1985年Steinらは活性化された正常リンパ球にも同抗原が発現し,さらにnon-Hodgkin lymphomaの1部にKi-1陽性を示すものが存在することを指摘し,これをKi-1陽性リンパ腫と命名した2).翌年Kadinらが特異的な臨床像と組織像を持つ小児のKi-1リンパ腫6例をまとめて報告し,その疾患概念が確立した3)

ウレアーゼを産生するV.parahaemolyticus

著者: 大村寛造 ,   本田俊一

ページ範囲:P.529 - P.530

 哺乳類では,窒素代謝の最終産物として尿素を産生する.ウレアーゼ(Ua)は尿素と加水分解する酵素で,最終産物としてアンモニア(NH3)を産生する.
 Uaは微生物間に広く分布し,産生菌は200種以上に及び,しばしば同定の指標とされ,特にUremplismaやMycoplasma,Proteusと他の腸内細菌との鑑別上の重要なkey性状となる.

研究

糖尿病性神経障害における温度差識別閾値―改良型温度覚測定装置の開発と臨床的検討

著者: 間島毅彦 ,   馬嶋素子 ,   北岡治子 ,   磯谷治彦 ,   池上陽一 ,   坂根貞樹 ,   高松順太 ,   大澤仲昭

ページ範囲:P.531 - P.533

 温度覚異常を定量的に検査する方法として,温度覚識別閾値(TDT)の改良型測定装置を考案し有用性を検討した.健常者の拇指球部におけるTDTの再現性は23%であった.健常者と糖尿病患者のTDTは,4.7±2.0VS7.4±6.5℃と糖尿病患者で有意に(p<0.01)高値を示した.糖尿病患者を臨床的な末梢神経の重症度により3群に分け検討したところ,TDTはⅠ群:4.3±1.7,Ⅱ群:7.3±2.0,Ⅲ群:10.8±4.5℃と重症度に平行して上昇した。本装置は小径神経機能の評価法の1つとして広く臨床応用されることが期待される.

心エコー・ドップラー法による直視下僧帽弁交連切開術後の弁機能評価

著者: 神谷英樹 ,   石光敏行 ,   平沼ゆり ,   榎本強志 ,   杉下靖郎 ,   筒井達夫 ,   岡村健二 ,   堀原一

ページ範囲:P.534 - P.538

 直視下僧帽弁交連切開術後36か月以下の症例を対象として,断層心エコー法による僧帽弁弁口面積測定,pressure half-timeを用いた弁口面積推定,僧帽弁通過血流量と平均圧較差を用いた弁口面積算出,ドップラー法による圧較差の算出,僧帽弁逆流の重症度判定を行った.その結果,僧帽弁弁口面積は平均2.1~2.2cm2,最高左房左室圧較差は平均10.0mmHg,平均左房左室圧較差は3-0mmHgであった.また,47%の症例に軽度の僧帽弁逆流を検出した.

資料

セルフリーIL-2R―可溶性ヒトィンターロィキン2受容体(sIL-2R)の測定法

著者: 小原侃 ,  

ページ範囲:P.539 - P.544

 セルフリーIL-2Rは米国T Cell Sciences社により開発されたヒト血清中の可溶性インターロイキン2受容体を測定するビーズ固定化抗体を使用するサンドイッチ酵素免疫吸着法である.インターロイキン2受容体はαおよびβの2種類の糖蛋白質複合体として活性化T細胞上に発現するが1,2),T細胞活性化プロセスの進行とともに血中に可溶性の分子として遊離される3,4).この血中に遊離される可溶性インターロイキン2受容体の量はT細胞の活性化の消長を示す良い指標となることが知られている.本報告ではこのヒト血清中に存在する可溶性IL-2受容体(sIL-2R)を定量するセルフリーIL-2Rの測定法について紹介する.

編集者への手紙

臨床検査技師教育を考える

著者: 宮原道明

ページ範囲:P.545 - P.545

 臨床検査はもともと診療の一部として,医師みずからの手でなされていた.ところが,第二次大戦後アメリカ医学の導入によって昭和25年,当時の国立東京第一病院を皮切りに各地の病院に中央検査室が設置されてきた.医学・医療の進歩に伴い臨床検査も発展し,検査内容や検体数も急激に増加してきた.専門化し,細分化していく臨床検査は徐々に技師の手にゆだねられるようになり,それにつれて技師養成施設が全国各地に設立されてきた.法に基づく2年制の学校が開設されたのは,「衛生検査技師法」制定の翌昭和34年であった.さらに,同45年の法改正によって,現行の3年制以上の臨床検査技師養成施設へと移行した.
 以前実施した技師教育に関連したアンケート調査の成績では,実に多くの人々が教育年限の延長を希望していることが判明した.すなわち,福岡県内にある技師養成施設5校の学生684名のうち71%の学生は,「カリキュラムの緩和」を理由にしていた1).一方,東京,他5都府県の技師会員650名の回答ではなんと92%の会員が教育年限の延長を希望しており,その理由は「技師の地位向上につながる」であった2).世界的に技師の教育年限を比較すると,日本を除く世界の269校のうち238校(89%)は,WHOの分類によるレベルA (graduate)の4年制とのことである.一方,わが国の現状は89校のうち80校はレベルB(non-graduatecertified)であり,4年制のところはわずか9校にすぎない.日本の臨床検査の水準は先進諸国の中でもトップクラスと言われているが,こと教育制度に関しては遅れていると言わざるをえない.

質疑応答 臨床化学

メチルマロン酸尿症の臨床検査項目

著者: R生 ,   須藤正克

ページ範囲:P.547 - P.550

 Qメチルマロン酸尿症の臨床検査項目とその検査値動態を,病態解析と併せてお教えください.

ヒト・エリスロポエチンにおけるシアル酸の意義

著者: K生 ,   竹内誠 ,   井上登

ページ範囲:P.550 - P.554

 Qエリスロポエチンの持つシアル酸の構造の意義について,お教えください.

血液

抗リン脂質抗体測定の原理

著者: 山本美保子 ,   I生

ページ範囲:P.554 - P.555

 Q抗リン脂質抗体の測定がよく行われるようになりましたが,測定法の原理,問題点,さらに現在使用しうるキットについてご教示ください.

臨床生理

脚ブロックでの運動負荷偽陽性の解釈

著者: 川久保清 ,   O生

ページ範囲:P.555 - P.558

 Q脚ブロックでは,運動負荷試験の結果が偽陽性になるとのことですが,なぜなのでしょうか.また,そのような患者での心筋虚血をどのように診断したらよいでしょうか.

診断学

尿素サイクル異常症について

著者: 大竹明 ,   N生

ページ範囲:P.558 - P.560

 Q尿素サイクル異常症とはどのような疾患なのでしょうか.また,その確定診断などに必要な検査法について,お教えください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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