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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査35巻6号

1991年06月発行

雑誌目次

今月の主題 臨床検査の新技術 巻頭言

新技術―注目されるバイオセンサー,マイクロマシーン

著者: 軽部征夫

ページ範囲:P.569 - P.569

 最近,臨床検査分野ではバイオセンサーの応用が注目されている.種々の生体素子とデバイスを組み合わせたいろいろなバイオセンサーの開発が行われている.マイクロ電極あるいはトランジスタのような微小デバイスを用いるセンサー,あるいは光デバイス,サーミスタなどのデバイスはバイオセンサーのトランスデューサーとして用いることができる.これらの中でもっとも注目されているのはマイクロエレクトロニックス技術を用いて製作した半導体素子やマイクロ電極をトランスデューサーとして用いるマイクロバイオセンサーである.このマイクロバイオセンサーを使い捨て型センサーとして血糖値の測定や尿中の各種成分の測定に用いようと研究開発が行われている.さらに,印刷技術などの汎用技術を用いてマイクロバイオセンサーを製作する研究も行われている.これらのバイオセンサーで種々の体液成分を測定することができる.特にマイクロエレクトロニックス技術を使うと大量にバイオセンサーを生産することもできるし,またこのバイオセンサーを1チップ上に多数集積化して,多数の体液成分を同時に計測することも可能である.
 さらにマイクロエレクトロニックス技術を利用したマイクロマシーニングが最近注目されており,この技術を利用するとアクチュエータ(ポンプ)やモータなどをマイクロ化することができる.すなわち,バイオセンサーとこれらのアクチュエータなどを同一のチップ上に形成させることが可能である.このようなマイクロマシーニングは人工膵臓をマイクロメーターオーダーのサイズにすることも可能である.すでにバイオセンサーとインスリンポンプを同一基盤上に形成させる研究も精力的に行われている.

新技術の展望

超伝導センサSQUIDと生体磁場計測

著者: 丸上弘晃 ,   河野秀樹

ページ範囲:P.570 - P.573

 低温物理学の世界で発見された超伝導現象は電気抵抗0,完全反磁性という2つの性質を持つ.その性質を利用すると超伝導量子干渉素子(Superconducting Quartum Interference Device;SQUID)と呼ばれる超高感度の磁気センサを構成することができる.SQUIDを利用することにより,生体内の神経や筋肉の活動に伴い生体外に発生する微弱な磁場を検出することが可能となった.この技術は無侵襲的手段による脳機能解明や,機能異常の診断の新しい手段として期待されている.

非観血的生化学検査法

著者: 菊地眞

ページ範囲:P.574 - P.577

 生体の検査対象は,物理量と化学量とに大別される.前者に関しては近年の医用工学の進歩により非観血的検査法が可能な項目が増えつつあるが,後者についてはきわめて少ない.ここでは,非観血的生化学検査法の対象となる各種体液検体について概説し,さらに筆者らが独自に研究・開発中の吸引滲出液を対象とした非観血血糖値測定法について述べる.本法は低分子量生化学物質の非観血的検査を可能にする.

生体検査

超音波内視鏡

著者: 上野規男 ,   木村健 ,   笠野哲夫 ,   榎本峰生 ,   吉田行雄

ページ範囲:P.578 - P.584

 超音波内視鏡(EUS)とは,超音波機能と内視鏡機能が一体となった新しい診断機器である.EUSは開発以来きわめて短期間の間に種々の改良が加えられ,かつまた精力的な臨床応用が試みられた結果,消化器疾患における画像診断法の1つとして,広くその臨床的有用性が認められるに至った検査法である.
 現時点において内視鏡機能は体腔内より超音波画像を得るための補助的役割が主体であるが,今後双方の機能が同時に発揮しうる検査法へと発展し,さらにまたカラードプラ化や細径プローブの開発など,新しいEUSの展開,進歩に期待がよせられている.
 消化器疾患の画像診断法において,近年著しい進歩を遂げた超音波内視鏡検査について,臨床的意義を中心に概説する.

心拍スペクトル解析

著者: 矢永尚士 ,   西村敏博

ページ範囲:P.585 - P.590

 R-R間隔は自律神経の状態によって変化する.R-R間隔変動周期の周波数のスペクトル解析を行うと,高周波領域と低周波領域の2つの主な周波数領域に分けることができる.前者は呼吸性不整脈に関係し副交感神経機能の,後者は血圧変動に関係し主として交感神経機能の定量的指標と考えられている.これらの指標は,加齢,糖尿病,冠動脈疾患,心不全,高血圧,心移植などの病態時に変動し,重症度診断,予後診断の一助となる.

ホルター心電図による心室遅延電位の検討

著者: 矢久保修嗣 ,   小沢友紀雄

ページ範囲:P.591 - P.596

 加算平均心電図で検出される心室遅延電位(IP)は心室頻拍,突然死の予知に有用である.ホルター心電図法(ホルター法)を利用する加算平均心電図のLP検出を従来よりの加算平均心電図法と比較し,また,心筋虚血作成実験時にホルター法による検討をした.ホルター法では従来のLPの診断基準を使うことは困難であるが,LPの評価は可能と思われた.心筋虚血作成時にLPが検出され悪性心室性不整脈が記録されたことはこの不整脈の発生機序の推測に有用と思われた.

心臓微小電位のスペクトロテンポラルマツピング

著者: 高橋義和 ,   小沢友紀雄

ページ範囲:P.597 - P.603

 従来の心電図は,その時定数,周波数帯域,増幅度のため,本来の心臓の電気現象に含まれるμV単位の微小電位やより高周波の成分の検出は困難である.実際の臨床では心室遅延電位,His東電位,心房の遅延電位などがあり,これらを検討するためにtime domain,frequency domainが開発され,そのおのおのの長所を取り入れてスペクトロテンポラルマッピングが開発された.この方法での心室遅延電位の判別は有用とされているが,その他未知の部分も多く今後の研究が期待される.

血管内エコー法

著者: 松尾裕英 ,   水重克文 ,   森田久樹 ,   鷹野譲

ページ範囲:P.604 - P.609

 血管内エコー法とは,カテーテルの先端に細小な超音波振動子を装着し,これを走査することから血管エコー像を血管内から描出する方法である.これによって,血管壁の組織学的情報を得ることや,血管壁厚,血管径などの血管形状の正確な計測が可能となった.
 まず,エコー像と組織像とを対比して,①正常動脈では内膜面が高輝度,中膜が低輝度,外膜が高輝度に描出されること,②動脈硬化病巣では弾性線維,膠原線維の量,配列の仕方,コレステリンおよび石灰沈着の仕方などによって,エコー像が異なることなどを示した.これらにより,エコー像の観察によって血管壁の組織像を推定することが可能であると考えられた.
 さらに,血管内エコー像から血管形状を正確に計測し,血圧との同時計測によって動脈壁張力―周囲長関係など,血管の物理的特性の評価も可能であることも示した.

極微弱生物フォトン発光による生体計測

著者: 小林正樹 ,   稲場文男

ページ範囲:P.610 - P.615

 生命活動や生理作用と密接に関連して,さまざまな極微弱な発光(生物フォトン)が検出される.生体内で進行する生化学反応に由来するこの一般的な発光現象は,生体内部の機能や生理状態の動的な変化を反映するものであり,特に活性酸素種やブリーラジカルなどの動態との関連性において注目されている.本稿では,超高感度な極微弱生物フォトン計測・分析技術の進歩による測定例と新しい生体情報非侵襲計測の可能性について概説する.

検体検査

染色体分析の自動化

著者: 中川原寛一

ページ範囲:P.616 - P.620

 染色体検査は細胞の培養に始まり染色体標本の作成から諸種の染色を行い,染色体の解析に終わる一連の操作を指す.このような多くのプロセスがある検査は多大な時間と労力および深い見識を必要とする.そして近年,医学の進歩とともに染色体検査の需要が増してくると,染色体検査の一部でも省力化する必要が生じてきたのである.このような状況の中から初期の染色体自動解析装置が誕生し,10余年を過ぎた今日に至り染色体解析の自動化はほぼ満足されるものになりつつある.

PCR法による遺伝子診断

著者: 嶌田雅光 ,   藤永蕙

ページ範囲:P.621 - P.626

 遺伝子増幅(PCR)法は生命科学に変革をもたらすとも言える画期的な技術であり,遺伝子工学のみならず,臨床診断,法医学などにその応用分野は急速な広がりをみせている.本稿ではPCR法の原理と実際の操作法を解説し,現在までの報告をもとに応用分野を概説する.また,筆者らが行っているヒトパピローマウイルスの検出例を紹介する.

Hybridization Protection Assay

著者: 松岡幸雄

ページ範囲:P.627 - P.631

 近年のめざましい分子生物学の発展により検査室レベルでDNA診断が可能となってきた.HPA (hybridization protection assay)は臨床検査室で行える簡便・迅速なDNA診断法であり,化学発光物質であるアクリジニウムエステルをDNA標識物として用いている.HPAは,ハイブリダイゼーション,セレクション,検出という3つのステップから成り,未反応のプローブは加水分解して失活させる(セレクション)のでB/F分離を必要とせず,操作時間は1時間以内である.

QBOⅡシステム

著者: 河合忠 ,   篠田一治 ,   安達真二

ページ範囲:P.632 - P.637

 QBCⅡシステムは一般血液検査のための簡単な装置で,1回の検査で,迅速にヘモグロビン濃度,ヘマトクリット値,血小板数,白血球数,顆粒球数と百分比,単核球(リンパ球+単球)数と百分比の8項目の検査結果が得られる.自動血球計数機との相関は良く,救急検査,外来検査,などプライマリー・ケアにおける有用性が高い.

話題

ISFETの最近の展開

著者: 松尾正之

ページ範囲:P.638 - P.640

1.はじめに
 ISFETはイオン選択性電極(ISE)と電界効果形トランジスタ(FET)とを一体化した半導体イオンセンサであり,1970年にP.Bergveldによって提案されたイオンセンサである.ISFETは,集積回路(IC)技術を用いて製作するためきわめて小形であり,かつ多重化や周辺信号処理回路を一体化することが容易であるという特徴がある.この特徴を生かしてISFETの多様な研究が行われてきた.特にISFETが超小形であることを用い,主として医用を目的としての研究が進められている.
 ISFETの原理をはじめその全般的な解説は専門書1)に譲り,ここでは最近のセンサの国際会議2,3)を中心にしてISFET研究の動向を述べよう.

生体NMR・近赤外分光同時測定法

著者: 金城勝 ,   三宅可浩

ページ範囲:P.641 - P.643

1.はじめに
 体内における物質の代謝動態を,生きたままの状態で,侵襲を加えることなく知るための測定技術の開発はきわめて活発であり,生体核磁気共鳴(NMR)法1)や生体近赤外(NIR)分光法2)も,その線に沿って開発されてきた.
 現在,臨床的に広く利用されている生体の形態計測とは異なり,これら2種の測定法は,生体内物質の同定を行い,また,代謝過程の分析を行うものである.例えば,脳虚血の場合,脳内循環系のヘモグロビンの状態は,生体NIR分光法で,また,脳組織のATPやクレアチンリン酸(PCr)などの動態は,31P―生体NMR法で知ることができる3).得られる情報は脳への酸素の供給状況および脳組織の代謝動態の変化であり,たがいに密接に関連した情報である.したがって,これら2つの測定を同時に行うことによって,より効果的な情報が期待できる.しかしながらNMR装置内の狭い測定空間で,しかも,強磁場のもとで分光測定を行うことは技術的に困難であり,これまであまり行われていない.最近,われわれは,この2つの測定法を組み合わせた生体NMR・近赤外分光同時測定系を作製したので,以下,その概要を述べる.

カラーグラフ

自己免疫性肝炎・薬剤性肝障害の病理

著者: 大部誠 ,   奥平雅彦

ページ範囲:P.566 - P.568

肝臓病の病理・6

自己免疫性肝炎・薬剤性肝障害の病理

著者: 大部誠 ,   奥平雅彦

ページ範囲:P.646 - P.650

 自己免疫性肝炎の組織学的特徴は慢性活動性肝炎に類似する組織像を示すことであるが,言い換えれば慢性ウイルス性肝炎との鑑別が難しく,免疫学的背景の裏付けが必須である.一方,薬剤性肝障害は,日常の臨床で遭遇する症例の大部分は急性薬剤アレルギー性であり,胆汁うっ滞や多核肝細胞の出現とその分布,壊死の形態などに特徴がある.近年,新しい医薬品の加速度的な開発および使用量の増大に伴って中毒性肝障害も増加傾向にあり,薬剤に応じた特有な組織像を呈する.

TOPICS

左室拡張能評価におけるAustin Flint雑音の意義

著者: 鈴木修

ページ範囲:P.652 - P.654

 Austin Flint雑音は,僧帽弁狭窄症(MS)を伴わない大動脈弁閉鎖不全症(AR)において心尖部に認められるMS類似の拡張期ランブルである.1862年に米国のAustin Flintが2例についての観察を報告した1)のが始まりであるが,特にその雑音発生機序に関してはいまだに議論が絶えず定説があるとは言えない,すなわち大動脈弁逆流ジェットの僧帽弁前尖への衝突による機能的僧帽弁狭窄状態や,順行性の経僧帽弁血流と大動脈弁逆流ジェットの衝突による乱流の形成,左室拡張末期圧(LVEDP)上昇による拡張期僧帽弁逆流,などの説がある.
 一方,ARの臨床的重症度および予後を決定づける重要な因子として,逆流自体の強さ,左室収縮能および拡張能の3者があげられる.このうち逆流自体の重症度評価に関しては,Austin Flint雑音が高度の大動脈弁逆流例に見られやすいことから,本雑音の存在がARの重症度診断の1つの目安になると思われる.

う蝕ワクチンの可能性

著者: 高橋一郎 ,   岡橋暢夫 ,   古賀敏比古

ページ範囲:P.654 - P.655

1.はじめに
 昭和62年に厚生省が実施した歯科疾患実態調査によると,学童・生徒(5~15歳未満)のう蝕(虫歯)有病者率(乳歯+永久歯)は約90%である.また,歯科関連の国民医療費は,約2兆円にも達する.
 う蝕の病因論に関する研究は,最近20年間に急速に進展し,この病気がStreptococcus mutansと称されるレンサ球菌によって引き起こされる感染症であることが確立された.

ヒト造血幹細胞の分化

著者: 中村幸夫 ,   中内啓光

ページ範囲:P.655 - P.657

 造血幹細胞の分化・増殖には間質細胞やサイトカインなどの複雑な相互作用が関与していると考えられており,その機構の解析にあたっては造血幹細胞を濃縮して取り出すことが有用である.ヒトの血液細胞に対しては多くのモノクローナル抗体が作製されいるが,中でもCD34抗原はヒトの造血幹細胞に特異的に発現していることが知られており1),幹細胞純化にとってきわめて有用である.そこでわれわれはCD34に対するモノクローナル抗体とFACS (fluorescein activated cellsorter)を用いて骨髄血ならびに末梢血から血液幹細胞を濃縮し,その機能を調べる実験系を確立することを試みた.
 CD34は分子量約110kDaの糖蛋白で,骨髄細胞の一部と毛細血管内皮細胞の一部に発現しているが,末梢血細胞には発現していないとされていた.CD34に対する抗体を用いてヒトの正常骨髄血ならびに末梢血細胞におけるCD34抗原の発現をFACSで解析した.その結果CD34を強く発現している細胞は骨髄単核球分画の0.40±0.23%であり,また同様な明るさを持つCD34陽性細胞は末梢血中にも0.011±0,002%存在することがわかった(図1).FACSを用いたさらに詳しい解析から,骨髄中のCD34陽性細胞の大部分がHLA-DR抗原陽性であること,また一部のCD34陽性細胞は,CD13,CD33といった骨髄単核球系に分化した細胞に発現している抗原を同時に持っていることが明らかになった2).

Reed-Stern-berg巨細胞を巡って

著者: 難波紘二 ,   青木潤

ページ範囲:P.657 - P.658

 ホジキン病に侵された組織内に出現する特徴的な多核巨細胞をReed-Sternberg巨細胞と言う.最近ではRS細胞と省略することも多い.
 ホジキン病は1832年に英国の病理学者Thomas Hodgkinにより初めて記載された.当時はまだ病理組織学が発達していなかったので,彼の7例の報告はリンパ節と脾臓を選択的に侵す特異な悪性疾患というものであった.

クレアチン・キナーゼと悪性高熱症

著者: 下中浩之 ,   太田宗一郎 ,   服部雅仁

ページ範囲:P.658 - P.660

1.クレアチン・キナーゼ(CK)
 CKは高エネルギー・リン酸の転移を司る酵素で,筋収縮時のエネルギー供給上きわめて重要な酵素の1つと考えられている.CK活性の病態変化について,従来,急性心筋梗塞でMB-CKの診断学的意義が重視されてきたが,最近では発症後の早期検出という観点からMM-CKアイソフォーム(MM3/MM1比)の検索1),および,後述するCK免疫グロブリン複合体の解析が注目されている.次に,BB-CKは脳組織由来とされ,中枢神経障害時の血中の変動が論じられている.また,胎児骨格筋においてBB-CKが優位であるとの指摘は,後述する悪性高熱発症機構との絡みで興味深い.さらに,BB-CKはadenocarcinomaにおける腫瘍マーカーとして注目されている2).他方,MM-CKは主として骨格筋障害時に変動するとされているが,他のCKアイソザイムに比較してその疾患特異性は低い.
 ところで,アミラーゼ免疫グロブリン複合体の報告3)以来,酵素結合性免疫グロブリンの臨床的意義に関心が寄せられるようになり,最近,Tozawa & Niiya4)は酵素-IgG複合体の出現背景には自己免疫異常が示唆されるのに対して,酵素-IgA複合体の出現背景には疾患特異性が見いだせなかったとしている.

資料

HDL―コレステロール測定用沈殿試薬で沈殿が完全に起こらなかったIgA良性単クローン性免疫グロブリン増加症の一例

著者: 岡山直子 ,   網美代子 ,   西村千江 ,   宮村恵宣 ,   大庭雄三 ,   広重幸雄

ページ範囲:P.661 - P.664

 HDL―コレステロール沈殿法で測定中,完全な沈殿が得られず異常高値を呈した,脂質検査に著明な異常が認められない症例について原因を究明した.沈殿試薬の組成,濃度の変更を行うと,高濃度のリンタングステン酸ナトリウムに問題があり,塩化マグネシウムとの相互性が関係していた.その原因としては,患者の原疾患である単クローン性免疫グロブリンで増加していたIgAが沈殿を阻害していたと考えられた.

ゼラチン粒子凝集法(PA法)によるHTLV-1抗体の測定―血清検体とEDTA血漿検体の比較一

著者: 武弘道 ,   梅本正和 ,   持冨実 ,   楠原浩一

ページ範囲:P.665 - P.666

 抗HTLV-I抗体検査において血清検体と血漿検体を比較した報告はいまだない.私たちは103例(陽性49例,陰性54例)につき血清と血漿を同時に採血しPA法による抗体検査を行い両者を比較した.抗体陽性の49例中47例の抗体価は両者で一致し,不一致の2例も力価の違いは1管以内であった.血清で陰性のものは血漿でもすべて陰性であった.採血量の限られた乳幼児では血球計算用の血漿検体でも検査が可能であると結論した.

同一検体を用いて測定した3種の自動血球計数機の差について

著者: 堀田勝弘 ,   藤崎智 ,   和田高司 ,   菊地常昭 ,   田窪孝行 ,   巽典之

ページ範囲:P.667 - P.671

 最近の自動血球計数機の進歩は著しく,特に,再現性については血小板を除いて極に達したと思える程である.しかし,異種の自動血球計数機間では項目により機種間差があり,施設問のデータ比較に差が生じる.そこで,わが国でよく使用されているメーカの異なる代表的な全自動血球計数機(STKR,E-4000,THMS H-1)の3機種を選び機種間差を調査した.同時に2年間のCollege of American Pathologists(CAPと略す)のサーベイ結果も集計し,参考値として比較に用いた.Ht,Hb,MCV,MCHCでは機種間差を認めなかったが,WBCではキャリブレーションに起因する比例系統誤差を,RBCではシュレッシュホールドレベルに起因する一定系統誤差を認めた.関係機関においては機種間差をなくすための,各機種に共通の標準化を望む.

私のくふう

Ag-NORs染色の―工夫

著者: 関口進

ページ範囲:P.672 - P.672

1.目的
 核小体形成体(nuclear organizer regions;NORs)は,細胞核内に存在しribosomal RNA (rRNA)を転写するDNAのloopで,最近腫瘍細胞の増殖能を測定する方法として,また,良性,悪性の判定に有用性があるとして注目されつつあり,銀染色により比較的容易に染色される1).しかし,このAg-NORs染色(以下原法)の染め上がりは,コントラストに問題があり,1,000倍で通常200細胞中の核内銀粒子を測定するため,鏡検が非常に困難である.そこで,今回私は,塩化金で置換した後,対比染色を施す方法(以下変法)により,コントラストが良好で,かつ観察が容易な標本を作成することができたので報告する.

質疑/応答 臨床化学

WHOプロラクチン標準品の値付け設定

著者: 松井朝子 ,   北野充絵 ,   紫芝良昌

ページ範囲:P.673 - P.674

 Q WHOから提供されている2つのプロラクチンの標準品を用いてプロラクチンを測定すると,1:2で測定値にズレが生じます.この差は標準品の値付け設定によるものと考えますが,なぜこのようになったのでしょうか.またどちらの正確度がより高いのでしょうか.

ヒト血清中レクチンの種類・性状

著者: N生 ,   川嵜伸子

ページ範囲:P.674 - P.678

 Q ヒト血清中レクチン(動物レクチン)の種類・性状について,どのようなものが知られているのかお教えください.

臨床生理

運動負荷時のanaerobic threshold

著者: K生 ,   藤本繁夫 ,   栗原直嗣

ページ範囲:P.679 - P.681

 Q 運動負荷時のanaerobic threshold (AT)についてお数えください.

カテーテルアブレーションの方法と適応

著者: N生 ,   渡辺一郎 ,   小沢友紀雄

ページ範囲:P.681 - P.684

 Q 不整脈の治療の1つとして,カテーテルアブレーションが最近注目されていますが,その方法と適応について簡単に教えてください.

診断学

アスピリン喘息の確定診断

著者: K生 ,   早川哲夫 ,   宮本昭正

ページ範囲:P.685 - P.686

 Q アスピリン喘息の確定診断に対して,どのような臨床的検査を行えば適当か,お教えください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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