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雑誌目次

論文

臨床検査37巻2号

1993年02月発行

雑誌目次

今月の主題 PCRを用いた病原微生物の検出 総説

臨床微生物学におけるPCRの役割

著者: 猪狩淳

ページ範囲:P.119 - P.122

 これまで細菌感染症を疑う場合は分離培養を行って同定していたため,培養,同定に要する時間は少なくとも2~3日かかっていた.またウイルス感染症の場合は通常分離培養を行わず,抗体価の上昇を待って診断を行ってきたため感染初期の診断には役立たない場合が多かった.しかし,DNAプローブ法を感染症診断に応用するようになり,この問題は解決されたかにみえた.特異DNAを用い直接検出法が多く試みられたが,これらの直接法は意外に低い検出感度であるとの評価を得た.これに対し,高い感度を持った検出法としてpolymerase chain reaction(PCR)法が急速に臨床微生物学の分野にも取り入れられてきた.本稿ではPCR法の臨床微生物学への応用,役割について述べ,PCR法を施行するに当たり,その問題点を概説した.
 PCR法は特異性,迅速性,簡便性,検出感度に優れ,今後ますます応用が広まるものと思われる.〔臨床検査37(2):119-122,1993〕

技術解説

MRSA

著者: 小林芳夫 ,   木崎昌弘

ページ範囲:P.123 - P.126

 PBP-2′産生能を有している,換言すればmecA遺伝子を所有しているS.aureusをMRSAと定義し,そうでないS.aureusをMSSAと定義する傾向にある現在では,PCR法によりmecA遺伝子を検出することがMRSAの検出に最も確実な方法と言える.しかし従来提唱されてきた方法もかなりMRSAの検出には優れた方法で,先人の努力をPCR法で再評価することも重要なことである.〔臨床検査37(2):123-126,1993〕

下痢原性大腸菌

著者: 甲斐明美 ,   工藤泰雄

ページ範囲:P.127 - P.133

 下痢原性大腸菌の内,組織侵入性大腸菌,毒素原性大腸菌,Vero毒素産生性大腸菌(腸管出血性大腸菌)のPCR法を応用した診断法について概略紹介した.本法は,5時間で結果が得られる高感度,かつ簡便な方法であり利用価値が高い.ただし,下痢原性大腸菌では,その血清型など分離菌が持つ疫学的情報もまた非常に重要であるので,本法は,菌を分離した後その病原性を確認する手段として利用するのが最善であろう.〔臨床検査37(2):127-133,1993〕

結核菌と非定型抗酸菌

著者: 宮地勇人 ,   布施川久恵 ,   安藤泰彦

ページ範囲:P.134 - P.138

 わが国における最近の結核症は,新登録患者数の減少が鈍化し,臨床像が複雑化している.このため,迅速な結核菌検出法による早期診断がきわめて重要である.さらに,非定型抗酸菌症は,発生率の相対的増加と菌種の多様化がみられ,菌種の迅速な同定も重要である.抗酸菌に特異的な塩基配列を増幅するpolymerase chain reaction (PCR)法は,感度が高く迅速に直接検体から抗酸菌を検出できる.非定型抗酸菌種の同定もPCR産物において菌種特異的な塩基配列を確認することにより迅速にできる.菌種特異的な塩基配列の同定は,PCR増幅産物と特異的オリゴヌクレオチドプローブとのハイプリダイゼーション,さらには,PCR増幅産物の直接シークエンシングが有用である.〔臨床検査37(2);134-138,1993〕

Mycoplasma pneumoniae

著者: 石田一雄 ,   賀来満夫

ページ範囲:P.139 - P.143

 今回筆者らは,nested-PCR法でM.pneumoniaeの迅速検出を行った.nested-PCR法による臨床検体からのM.pneumoniaeの分離結果は良好であり,培養陽性例のみならず培養陰性例からもnested-PCR法で,M.pneumoniaeの存在を確認できた.この結果から,nested-PCR法はマイコプラズマ肺炎の迅速診断に有用と考えられた.〔臨床検査37(2):139-143,1993〕

Legionella pneumophila

著者: 比嘉太 ,   小出道夫 ,   草野展周

ページ範囲:P.144 - P.148

 Legionella pneumophilaは肺炎の重要な起炎菌の1つであるが,菌の分離培養が非常に困難であり,抗体を用いた検査でも交叉反応が問題となる.PCR法は高い感度と特異性を有しており,臨床検査において有力な検査法の1つとなることが期待される.筆者らの行っている二段階PCR法は1個のLegionella菌まで検出可能で,判定までの時間は12時間であった.臨床検体および環境検体(冷却塔水)からの検出においても本法の有効性が確認された.〔臨床検査37(2):144-148,1993〕

Chlamydia trachomatis

著者: 出口隆 ,   米田尚生 ,   河田幸道

ページ範囲:P.149 - P.153

 クラミジア・トラコマティスのmajor outer membrane protein (MOMP)遺伝子の塩基配列の一部に相補的なオリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCRによるクラミジア・トラコマティスの検出法を開発した.PCRによる検出法は,クラミジア・トラコマティスに対して特異性が高く,従来の検出法に比較して高感度であった.PCR法により男子尿道炎患者の尿道擦過物および初尿沈渣からクラミジア・トラコマティスは検出可能であり,PCR法はクラミジア性尿道炎の診断に応用可能で有用な検出法と思われた.〔臨床検査37(2):149-153,1993〕

Pneumocystis carinii

著者: 北田一博 ,   中村義一

ページ範囲:P.154 - P.157

 重症のニューモシスチス・カリニ肺炎患者からは,侵襲の大きい呼吸器材料を得ることが躊躇され,検査は喀痰材料に頼らざるを得ない.このような場合にきわめて有効なのは高感度なPCRによる検査である.従来の細胞診では,P.cariniiを検出できなかった例においても,PCRを用いることで検出できる例も多い.また,抗P.carinii薬投与後,経時的に採取した喀痰をPCRにかければ,P.cariniiの消長を直接知ることができる.この治療マーカーを参考にして,効果的な投薬も可能かと思われる.〔臨床検査37(2):154-157,1993〕

サイトメガロウイルス

著者: 本田順一 ,   大泉耕太郎

ページ範囲:P.158 - P.163

 サイトメガロウイルス(CMV)DNAをPCR法を利用して検出した.DNAサンプルはフェノール抽出を行わない簡便法で行い,サーマルサイクラーはキャピラリー方式による高速遺伝子増幅装置を用いた.本法を用いることで実際の症例からCMV肺炎の早期診断が可能であった.また,CMVの再活性化を早期に検出することができた.しかし,CMV感染症を診断する場合は,臨床所見や臨床経過など多くの因子を総合的に検討し,診断する必要がある.〔臨床検査37(2):158-163,1993〕

パルボウイルスB19

著者: 布上董

ページ範囲:P.164 - P.168

 パルボウイルスB19はヒト骨髄の赤芽球前駆細胞で増殖し,血液に散布され,体液にも広く分布するDNAウイルスである.分離培養が困難なために,DNA診断が不可欠であるが,ウイルス血症の極期を過ぎてもPCRの応用で容易に,長く検出できる.PCRの技術の基本には,パルボウイルスB19固有のプライマーに工夫がある.ウイルスヌクレオチドは流行株によって変わっているので,普遍的なプライマーの選択が課題である.〔臨床検査37(2):164-168,1993〕

C型肝炎ウイルス(HCV)

著者: 森茂久

ページ範囲:P.169 - P.176

 HCVには現在6種類の遺伝子型が存在しており,筆者らはこれらをⅠ~Ⅳに分類することを提唱している.HCVの遺伝子診断にはRT-PCR法が採用されている.また,最近では検出感度を上げるためにRT-nested PCR法が使われている.この方法は感度が高い反面,汚染が起こりやすいので十分な注意が必要である.RT-PCR法は感染の検出のほか,遺伝子型の分類,血中ウイルス量の定量などにも応用されている.〔臨床検査37(2):169-176,1993〕

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)

著者: 土江秀明 ,   山田修 ,   栗村敬

ページ範囲:P.177 - P.182

 近年,患者材料中の微量なサンプルから高感度にかつ迅速に,感染症の病原体あるいはその変異を検出できるPCR法はさまざまな研究分野に応用されている.逆転写反応とPCRを組み合わせた手法による血中HIVゲノム量の半定量的測定および,インドでのHIV-1分離株のenv遺伝子のV3ドメインの分子疫学的解析にPCR法を応用した例について紹介する.〔臨床検査37(2):177-182,1993〕

COFFEE BREAK

春夏秋冬20周

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.133 - P.133

 この題は秋田市の開業医菅原真氏の最近刊行した著書の題名である.開業20年間の自らの経験,カルテをもとにした医療全体に関する提言や労作は目をみはらせるものがある.特に検査ミスの対策をうち出そうとする「検査値を考える―一内科開業医のカルテから―」は圧巻であり,最近は他県の医師会や学会からも講演依頼が舞い込んでいるのも宜なるかなと思われる.恐らく日本医師会でもこれだけ日常診療の中で検査を活用し検査を知っている人は数少ないに違いない.しかも人柄がきわめて謙虚なため,長い間多くの検査専門医とも交流を求め無理なく知識と資質を高めていったと思われる.
 最近ある雑誌の対談で菅原氏は検査技師への提言として次のように述べている.「私は医師が検査技師に臨床と検査との関係性について常々語りかけることを提唱しています.また技師も症例検討会や臨床病理検討会などにも時には出席して,日頃皆さんが労苦の末出されてきたデータがいかに病魔に悩まされている人々の診断や治療に役立っているかを目の当たりにみて,医療のパートナーとしての臨床検査技師に使命と誇りをもってもらいたいと思います.」

Oxy──

著者: 𠮷野二男

ページ範囲:P.138 - P.138

 Oxyglycemia,Oxycephalia,Oxylalia,Oxytocia,それぞれ,糖尿病でもないのに食後の急激な血糖値の上昇,頭蓋骨がとがって塔状になっている頭,話し方が早くてペラペラと舌がまわることで早口,分娩が急速に進行してしまうことを意味する.いわゆる酸素とは関係のない話である.
 むかし化学が進歩してきて,ある気体成分を分離してその性質を調べていたところ,その気体の中に赤熱した鉄線を入れると激しく反応して火花を散らすことが観察された.一方で,鉄線となんの反応もしない気体も分離されていて,これには不活性気体,抑えてしまうという意の窒素という名が付けられた.

学会だより 第36回日本医真菌学会総会

指向すべき新展開へ

著者: 阿部美知子 ,   久米光

ページ範囲:P.183 - P.183

 真菌および真菌症にかかわる研究発表の専門学会として設立された日本医真菌学会も,その総会が1992年には36回目を迎えた.本学会は,皮膚科,内科,基礎医学,獣医学および臨床検査などのきわめて幅広い領域の人たちによって構成され,現在の会員数は個人会員1,024名,賛助会員22名,名誉会員13名および寄贈会員10名である.年に1回,秋季に日本医真菌学会総会が開催されるが,内容的にも経年的に充実した感があり,用語委員会,将来計画委員会,標準化委員会,教育委員会および疫学調査委員会などの各種委員会が設置され,学会活性化のための努力がなされている.学会誌は年に4回(季刊)発行され,1989年までは『真菌と真菌症』という誌名であったが,1990年に表紙のデザインも一新し,『日本医真菌学会雑誌』と誌名改称された.
 第36回日本医真菌学会総会は,福岡大学,皮膚科学,利谷昭治教授を総会長として,1992年10月23,24の両日,福岡市のホテルニューオータニ博多において開催された.学会賞受賞講演2題,招請講演3題,教育講演5題,シンポジウム2題,ワークショップ1題,一般演題145題という盛り沢山の内容であった.

目でみる症例―検査結果から病態診断へ・2

アルブミンと特異的に結合する微量IgG-k型M―蛋白を伴った多クローン性高ガンマグロブリン血症

著者: 藤田清貴

ページ範囲:P.187 - P.190

検査結果の判定
1.セルロースアセテート膜電気泳動による血清蛋白分画像
 表1にその結果を示す.アルブミン,α2―グロブリン分画の減少を伴った多クローン性高ガンマグロブリン血症のパターンと考えられる.

TOPICS

toxic shock syndrome様症状を呈するA群溶血性連鎖球菌感染症

著者: 清水可方 ,   登政和

ページ範囲:P.191 - P.191

 A群溶連菌(Streptococcus pyogenes)は猩紅熱または丹毒の原因菌として知られているが,1980年代より同菌感染で筋膜などの軟部組織壊死と循環不全で発病し,急速にDICや多臓器不全に陥る病態を起こす症例が報告されている.同様の疾患は従来からブドウ球菌感染によって発症することが知られており,toxic shock syndrome (TSS)と称されていたが,ブドウ球菌以外による類似疾患はtoxic shock like syndrome (TSLS)と呼称されている.A群溶連菌によるTSLSはまれな疾患とされ,1980年代末までは北米大陸のロッキー山脈地方に限局集中し,年間数例程度の頻度で発生していたが,その後欧州やアジア地域でも報告されている.筆者らは1992年6月におそらく本邦で最初の症例に遭遇した.
 本疾患は悪寒発熱,下痢,嘔吐などを前駆症状として,突然四肢の疼痛と壊死および循環不全で発症する.死亡率は30%以上で,予後不良例の多くが発症直後のショックから回復できずに短期間に死亡する.ショック離脱後は脳死や呼吸不全が直接死因となる.また生存例も救命のため壊死部位を切除する必要があり,また意識障害を含む多臓器不全を後遺症として残す例が多い.

ヒト骨髄腫細胞の分化に伴う細胞表面抗原の発現

著者: 河野道生

ページ範囲:P.192 - P.193

 骨髄腫はBリンパ球系の最終分化細胞と考えられている形質細胞の腫瘍性増殖疾患である.通常骨髄腫細胞は骨髄で増殖し,び漫性に全身の骨髄に浸潤する.骨髄腫細胞はモノクローナル免疫グロブリン(M蛋白)を産生して血清蛋白値が高値となることから,従来骨髄腫は異常蛋白血症として理解されていた.しかし,最近,骨髄腫細胞の増殖動態が明らかにされてくると,骨髄腫は蛋白異常の疾患から骨髄腫細胞の増殖疾患,つまり細胞を中心とした研究が主体になってきた.その中で,①骨髄腫細胞の増殖因子がインターロイキン6(IL-6)であること1)と,②骨髄腫細胞がその細胞表面の接着分子の発現の相違により,細胞亜群に分けられることが明らかになってきた2,3,4).この2点が注目されている.後者について詳述する.
 骨髄腫細胞の細胞表面抗原の検索において,従来の1カラー染色から抗CD38抗体を使用した2カラー染色により,CD38強陽性分画に骨髄腫細胞(形質細胞)のみを展開できることがわかったことは特筆に値する.図1に示すように,健常人の骨髄単核球を抗CD38抗体(FITC)と抗CD19抗体(PE)とで2カラー染色すると,成熟B細胞をCD38陰性分画に,Pre-B細胞をCD38弱陽性分画に,形質細胞をCD38強陽性分画に明瞭に展開できる.抗CD38抗体を使用した2カラー解析にて,骨髄腫細胞(CD38強陽性分画)における接着分子の発現が検討された.

リポ蛋白質に結合して存在する外因系血液凝固系阻害因子

著者: 円城寺慶一

ページ範囲:P.194 - P.196

 外因系血液凝固反応は血管が破錠をきたした際に,血管外に存在している組織因子と血液が接触することによって引き起こされる.今から約40年前にこの組織因子の活性を中和する物質が血清中に存在することが示され,1987年に,Brozeらは,HepG2の培養上清からこの凝固系阻害因子(tis-sue factor pathway inhibitor;TFPI)を精製することに成功し,1988年にcDNAクローニングによりその構造を明らかにした.ここでは,このTFPIについて,最近までに明ちかになっている知見をまとめて紹介したい.また,代表的な総説を2編あげておくので参照していただきたい4,5)

血清アミロイドA

著者: 伊藤喜久

ページ範囲:P.196 - P.197

 生体に対して感染,腫瘍,外傷などのストレスが加わると,種々の機能を持った蛋白質が短時間の間に血中に増加してくる.このような蛋白質を急性相反応物質(acute phase reactant;APR)と呼んでいる.血清アミロイドA (SAA)はC反応性蛋白(CRP)とならぶ代表的なAPRで,もともとは,慢性炎症疾患に合併する続発性アミロイドーシスにおける沈着蛋白成分であるアミロイドA(AA)の血中前駆物質として同定されたもので,分子量11,600,106個のアミノ酸から構成されている.荷電は不均一で,少なくとも6種類のアイソフォームが存在し,mRNAも3種類以上あることが知られている1)
 SAAの機能については,これまでのところ,炎症,免疫反応の修飾,抑制作用(抗体産生抑制,白血球細胞内代謝抑制),組織修復の促進(繊維芽細胞のコラゲナーゼの誘導)などに役割を果たしていることが示されている2)

IL-6の臨床応用

著者: 石橋敏幸

ページ範囲:P.197 - P.198

 インターロイキン6(IL-6)は,活性化B細胞に抗体産生を誘導する因子(BSF-2)として発見され,そのcDNAが1986年平野らによって単離された1).遺伝子組換え型分子による幅広い研究によって,IL-6が種々の生物学的活性を有するサイトカインであることがわかってきた2).免疫系,造血系,急性期蛋白,神経系,発癌・制癌にも関連し,その作用は多岐に及んでいる.
 造血系に関しては,1987年に池淵らが造血幹細胞への作用を初めて報告した3).岡野らがマウスin vitro系にてIL-3の存在下でIL-6の造血幹細胞増幅作用を報告し4),骨髄移植への臨床応用が期待されているが,in vivo投与ではその作用はあまり明らかではない.

研究

多項目自動血球分析装置の白血球測定において見いだされた異常ヘモグロビン症の一例

著者: 中越りつこ ,   奥村伸生 ,   降旗謙一 ,   勝山努 ,   金井正光 ,   北村文明 ,   中畑龍俊 ,   大庭雄三

ページ範囲:P.200 - P.204

 電気抵抗方式を測定原理とする多項目自動血球分析装置の白血球測定において,直流インピーダンスと高周波インピーダンスに基づく白血球スキャタグラム上の白血球弁別線に沿って,大量の粒子が異常な分布をする症例を経験した.検討の結果,日本人では報告されていないHbCを有する患者であった.本例は母親が日本人,父親が外国人の混血であったが,父親の出身地などの詳細については不明であった.一方,白血球スキャタグラム上に認められた粒子の異常分布の出現機序は明らかでないが,この現象が異常ヘモグロビンのスクリーニングとして利用できればたいへん興味深いことである.

酸素摂取量測定上の注意点―特に呼吸の影響について

著者: 奥田忠行 ,   松井祥子 ,   桧山幸孝 ,   鍛冶利幸 ,   新谷憲治 ,   櫻川信男

ページ範囲:P.205 - P.208

 breath-by-breath法による酸素摂取量(VO2)測定時における不規則な呼吸が,規則的な呼吸に比し,分時換気量(VE),VO2,炭酸ガス排泄量(VCO2)に及ぼす影響をダグラスバッグ法と比較した.また,呼吸の仕方をチェックするための指標としては,VE,VO2,VCO2,respiratory flowのうちどれが最適か検討した.
 その結果以下の点を認めた,①不規則な呼吸は,規則的な呼吸に比しVEでは差を認めなかったが,VO2,VCO2ではバラツキがみられた.②呼吸の仕方をチェックするための指標としては,respiratory flowが最適であった.

HCV関連抗原N-14(SGH-N14融合抗原)を用いたC型肝炎診断の基礎的検討

著者: 守田和樹 ,   森秀治 ,   福井正憲 ,   杉本整治 ,   好田肇 ,   長谷川護 ,   前田栄樹 ,   有馬暉勝

ページ範囲:P.209 - P.213

 HCV関連抗原は有馬(鹿児島大)らにより報告されたHCV肝炎と関連性のある抗原である.筆者らはこれら抗原を臨床診断に応用すべく,大腸菌で発現させた融合抗原を用いて予備評価を行った.
 HCV関連抗原の1つであるN-14を用い,遺伝子操作法によって白サケ成長ホルモン(salmon growth hormone;sGH)と融合させ,大腸菌で顆粒状での大量発現に成功した.このsGH融合HCV関連抗原(SGH-N14)の精製品を用いた予備評価は,C型肝炎患者血清とのウエスタンブロッテングにより検討した.従来法であるplaque immuno blott(PIB)法より感度が良好であり,さらにカイロン社キットで陰性と判定された検体1例は,SGH-N14と反応性を示した.さらにPCR法による患者血漿からのHCV遺伝子の検出によりC型肝炎診断におけるN-14抗原の有用性が強く示唆された.

C型肝炎ウイルスRNA(HCV・RNA)の競合定量法による測定

著者: 木下盛敏 ,   波多間徹 ,   江戸谷真理 ,   片桐豊雅 ,   福井崇史 ,   幸浦実 ,   岡真樹生 ,   妹尾多美子 ,   葛城粛典 ,   申貞均

ページ範囲:P.214 - P.218

 RT-PCR法によるHCV・RNAの検出はHCV感染において,抗体検査とともに,臨床的にもよく用いられるようになってきた.筆者らは患者血清中に存在するHCV・RNAに対して一塩基置換DNAを人為的に作製し,制限酵素Kpn Iの認識部位を導入し,発現ベクターに挿入してRNAスタンダードを調製した.さらに,このRNAスタンダードを用いて,競合定量法により患者血清中HCV・RNAの定量測定系を確立した.このHCV・RNAの定量はC型肝炎の病態解析に重要な役割を果たすことが期待される.

質疑応答 臨床化学

個体的標準偏差の設定方法

著者: 中恵一 ,   Q生

ページ範囲:P.219 - P.222

 Q 累積デルタチェック法において,同一患者の前回値と今回値の間隔は何日が適当なのでしょうか.個体内標準偏差の設定はどのようにすればよいでしょうか.健常者のデータは利用できますか.有効検査項目の選択方法も併せてお教えください.

食後アミラーゼ値の臨床的意義とその測定法

著者: 原田英雄 ,   田中淳太郎 ,   中政人

ページ範囲:P.222 - P.224

 Q 上についてご教示ください.実際に測定するにあたっての注意事項,補正値の出し方なども併せてお教えください.

蛋白非結合ビリルビンの特性とその臨床的意義

著者: 渭原博 ,   篠良雄 ,   大塚昌信 ,   S生

ページ範囲:P.224 - P.226

 Q 血清ビリルビンには非抱合型ビリルビン,抱合型ビリルビンおよびデルタビリルビンの存在が知られています.これらの物質は血清アルブミンと結合して存在すると言われていますが,血液中には蛋白質と結合していない蛋白非結合ビリルビンが存在し,その測定が臨床上重要になるときがあるとの記述がありました.この物質の生成機序と臨床的意義について詳しくお教えください.

免疫血清

抗liver/kidney microsome(LKM)抗体の測定法と臨床的意義

著者: 茂木積雄 ,   天木秀一 ,   T生

ページ範囲:P.226 - P.228

 Q 蛍光抗体法で抗ミトコンドリア抗体(AMA)を測定しています.ラット腎・胃組織切片上での蛍光染色像を詳細に観察しますと,典型的なAMAの染色パターンとは異なり,腎の一部のみが染色される陽性像を認めることがあります.抗LKM抗体とAMAとの鑑別上のポイント,ならびに抗LKM抗体の臨床的意義などについてお教えください.

嫌気性培養の肺炎球菌の形態

著者: 田中香お里 ,   渡辺邦友 ,   Y生

ページ範囲:P.228 - P.230

 Q 肺炎球菌は好気性培養よりも嫌気性培養のほうが,コロニーの形成も大きく,ムコイド状の形態も作りやすいのですが,その生成過程について教えてください.

その他

臨床検査におけるSI単位

著者: 𠮷野二男 ,   T生

ページ範囲:P.230 - P.231

 Q  SI単位ということばを耳にしますがこれはどのような単位なのでしょうか.また,この単位は日本でも使われているのでしょうか.臨床検査における今後の見通しを含めて,お教えください.

追悼

松村義寛先生のご逝去を悼み,中央検査室制度の黎明期,発展期に果たされた功績を偲ぶ

著者: 天木一太

ページ範囲:P.232 - P.232

 東京女子医科大学名誉教授,本誌編集顧問,松村義寛先生には,平成4年11月27日肺炎のためご逝去になられた.先生のご専門は生化学であり,私は血液学なので,先生の真の偉大さは私にはわからないのであるが,本誌の編集でまことに長い間ご一緒させていただいたので,先生のご功績を偲びたいと思う.
 日本の病院で最初の中央検査室制度は,昭和26年の国立東京第一病院研究検査科であり,細菌学の小酒井望先生が運営に当たっておられ,病理,生化学,生理,それぞれに専門医がいたが,私は昭和28年夏,血液検査室に入れていただいた.当時この制度の先達は,聖路加国際病院の橋本寛敏院長,東大血清学の緒方富雄教授,東一病院の守屋博管理部長で,橋本院長はまず臨床検査技師の専門の学校が必要とされ,理事長をしておられた学校に東京文化医学技術学校(中野区)を作られ,昭和29年には第1回生7名が卒業した.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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