icon fsr

雑誌目次

論文

臨床検査38巻7号

1994年07月発行

雑誌目次

今月の主題 結合組織 巻頭言

組織学からみた結合組織

著者: 坂本穆彦

ページ範囲:P.755 - P.756

 身体の正常構造を論ずる組織学の領域では,すべての組織はすでに系統的に整合性をもって分類され尽くされ,当面大きな変更は加えられないであろうと思われがちではないだろうか.しかし,現在までの組織学の発展の歴史を振り返ると,今日なお諸領域における学問の進歩が組織学の内容に直接・間接に影響を与え続けていることがわかる.それは旧来の解釈の変更を迫る場合もあれば,分類上の位置の移動を強いる場合もある.また,いくつかの考え方が提出されていて近い将来の結着が予想し難く,柵上げ状態にされている課題もある.組織学全体の概観はどっしりとして揺るぎないもののようにみられるが,しかし随所で小さいが着実な動きが間断なく観察される.この様態は極点の氷山の生態にもたとえることができよう.
 ここで取り上げる結合組織もその例外ではなく,多分に流動的な面を含んでいる.ところで結合組織は身体の形状,細胞・組織・臓器の位置関係を適正に保つ役割を果たす支持組織の主要構成成分の1つである.支持組織には結合組織のほかに骨,軟骨が含まれる.しかし,血液,リンパをここに同列に扱うか否かについては立場によって違いがある.はたして今後どのような展開をたどるのであろうか.

総説

炎症・免疫異常と結合組織

著者: 山田登 ,   澤井高志

ページ範囲:P.757 - P.765

 結合組織はこれまで,臓器,組織の骨組みを構成する静的なものとして扱われてきた.しかし,最近,この結合組織という言葉は細胞外マトリックスという形で表現されるようになり,その内容も分子レベルの解析によって炎症性細胞の浸潤や免疫担当細胞の分化など細胞を調節する機能的な面が注目されている.ここでは,慢性関節リウマチ(RA)のような免疫異常によって引き起こされる炎症における細胞と細胞外マトリックスの関係を中心に述べる.〔臨床検査38:757-765,1994〕

結合組織の構成成分

著者: 中野博

ページ範囲:P.766 - P.770

 体内の組織では,細胞はその周囲を結合組織と呼ばれる複雑な高分子集合体の集合した環境で取り巻かれている.この結合組織は単に細胞の位置の維持だけではなく代謝,増殖,分化,接着,遊走などさまざまな機能の発現に重要なものである.結合組織を構成する主要成分はコラーゲン,エラスチンなどの結合線維,プロテオグリカン,非コラーゲン糖蛋白であり,線維芽細胞はこの構成成分の代表的な産生細胞である.〔臨床検査38:766-770,1994〕

コラーゲンの多様性と機能

著者: 山口典子 ,   畑隆一郎

ページ範囲:P.771 - P.779

 コラーゲンといえばテキストにある棒状分子のイメージが浮かぶ.しかし分子生物学の発展により,コラーゲンが多様な分子形態を持つ分子ファミリーへと進化してきたことが明らかにされつつある.多様な構造は多彩な機能を約束するが,組織の骨組みと考えられていた分子にも細胞との相互作用を介して細胞の増殖,分化,機能の調節などの働きがあることがわかった.〔臨床検査38:771-779,1994〕

技術解説

結合組織疾患の画像診断―軟部腫瘍を中心として

著者: 姥山勇二 ,   加賀美芳和

ページ範囲:P.781 - P.787

 結合組織疾患における画像診断法としては,単純X線写真,ゼロラジオグラフィー,CR,超音波検査,シンチグラフィー,血管造影,CT,MRIが挙げられる.しかしそれらには検査法としての限界もあり,1つの検査だけで診断できないことも多い.特に疾患の質的診断(病理組織学的診断)がこれらの画像診断では不可能な例が多く,今後に残された課題でもある.ここでは軟部腫瘍における所見を中心にして,各画像診断の特性を述べる.〔臨床検査38:781-787,1994〕

結合組織の免疫染色

著者: 加藤良平

ページ範囲:P.789 - P.794

 結合組織における各種コラーゲン分子の免疫染色は,単に膠原線維の量やその分布を知ることのみならず,従来の特殊染色では不可能であった結合組織の質的変化をも組織切片上で同定することが可能である.本稿では,結合組織におけるコラーゲンの免疫染色の意義などについて述べるとともに,われわれが日常行っているコラーゲン分子の免疫染色法とその注意点について解説し,さらにその応用例として甲状腺腫瘍での染色結果を供覧した.〔臨床検査789-794,1994〕

血中コラーゲン関連物質

著者: 堤幹宏 ,   高瀬修二郎

ページ範囲:P.795 - P.799

 肝での線維増生の状態を知ることは,慢性肝疾患の病態の把握や治療の選択,およびその予後の判定に必須のことと考えられ,近年,肝線維化の血清マーカーとしてプロリルヒドロキシラーゼ,Ⅲ型プロコラーゲン,IV型コラーゲン,ラミニンなどのコラーゲン関連物質が測定されてきている.これらの血清マーカーは,いずれも肝の線維化をある程度反映しており,臨床的に有用といえるが,それぞれのマーカーは,肝線維化のある一面のみを反映しているにすぎず,肝全体の線維化の評価には各々のマーカーの特徴をよく見極める必要があると考えられる.〔臨床検査38:795-799,1994〕

血中接着性糖蛋白質

著者: 中林仁美 ,   中野博

ページ範囲:P.800 - P.804

 近年,血液中や細胞外マトリックスに存在し,細胞の接着にかかわる糖蛋白質が,細胞の分化,移動,増殖などに重要な役割を担っているとして注目されている.これらのうち,特にラミニン,フィブロネクチン,ビトロネクチンは,その血中値と各種の疾患,病態との関連を検討した報告がみられる.これら3種の糖蛋白質はそれぞれ特徴があり,その血中値の測定は現在のところ,単独で疾患を診断できるものではないが病態の把握に役立つと思われる.〔臨床検査38:800-804,1994〕

血中ヒアルロン酸―慢性関節リウマチを中心として

著者: 松浦豪 ,   山中健輔 ,   橋本三四郎 ,   井上明生 ,   七條茂樹 ,   横山三男

ページ範囲:P.805 - P.810

 われわれは,慢性関節リウマチ(RA)患者の血中ヒアルロン酸(HA)濃度を,新しく開発したsandwichbinding protein assay法により測定し,HAがRAの診断および病態を把握するマーカーの1つとして有用であるとの結論を得た.本法はRIを用いない検査法であるため,どこの検査室でも測定可能である.すでに本法は,慢性肝炎の肝硬変移行期の診断キットとして現在厚生省の健保適用を受けており,肝の線維化を示すマーカーとしても注目されている.〔臨床検査38:805-810,1994〕

血中コラーゲン代謝酵素活性

著者: 村脇義和 ,   川崎寛中

ページ範囲:P.811 - P.816

 コラーゲン代謝関連酵素のうち,合成系酵素プロリルヒドロキシラーゼ(PH),ガラクトシル―ヒドロキシリシルグルコシルトランスフェラーゼ(GTT),架橋形成に関与するリシルオキシダーゼ(LO),分解系酵素コラゲナーゼについて,血中での酵素活性測定およびその意義について概説した.一般に,血清PH,GTT活性は組織中での線維増生を反映し,血清LO活性は組織線維量を反映し上昇する.血清コラゲナーゼ活性は組織でのコラーゲン分解状況を反映するものと考えられるが,TIMP (組織メタロプロテイナーゼ阻害因子)が増加する病態では血清中の活性は正確に測定できない.〔臨床検査38:811-816,1994〕

話題

結合組織の遺伝性異栄養症

著者: 知念克也 ,   平安恒男 ,   岩政輝男

ページ範囲:P.817 - P.820

 結合組織代謝異常症を解説し,ムコ多糖代謝異常症やムコリピドーシスなどリソソーム酵素欠損症の理解に必要な小胞体―ゴルジ体―リソソーム間の蛋白質輸送(小胞輸送)についても概説した.〔臨床検査38:817-820,1994〕

混合性結合組織病

著者: 吉田浩

ページ範囲:P.821 - P.823

 混合性結合組織病(MCTD)は抗ENA抗体高値陽性で,SLE,PSSそれにPM様所見を併せ持つ疾患として提唱され,確立された.わが国では特定疾患として認知された.MCTD研究班で診断基準を作成したが,抗U1RNP抗体陽性が必須で,Raynaud現象や手指・手背腫脹が90%以上にみられる.死因としては,肺動脈高血圧症を含む心肺不全症が半数を占める.適当な治療法はない.〔臨床検査38:821-823,1994〕

後腹膜線維症―最近の知見を中心に

著者: 金井信行 ,   清水英男

ページ範囲:P.824 - P.826

1.概念
 後腹膜線維症(retroperitoneal fibrosis)は,1905年最初にAlbarranにより報告され,1948年Ormondにより病理組織所見も含め詳細に記載された疾患である.病理学的には,大動脈を中心とした後腹膜に炎症性細胞浸潤とそれに引き続いた線維化をきたすことを特徴とする.後腹膜の線維化が尿管周囲に及ぶと,尿管の狭窄・閉塞による水腎症ないし進行性の腎不全をきたすため,主として泌尿器科で取り扱われることが多い疾患である.まれではあるが,文献上500例以上の報告がある.

結合組織由来腫瘍

著者: 福永真治

ページ範囲:P.827 - P.830

 結合組織由来腫瘍とは線維細胞と線維芽細胞の増殖を主体とする新生物(狭義)である.しかし,現実には真の腫瘍のみならず過誤腫や炎症性性格の強い腫瘍様病変,反応性増殖性病変も含めることが多い(広義).その中で病理診断,生物学的態度や治療法について特に慎重を要するものがある.これらは結節性筋膜炎,増殖性筋膜炎(筋炎),デスモイド,種々の線維腫症,隆起性皮膚線維肉腫と線維肉腫であり,その基本的な臨床病理の理解が望まれる.〔臨床検査38:827-830,1994〕

吸引浸出液による連続血糖モニタ

著者: 菊地眞

ページ範囲:P.832 - P.833

 吸引浸出液(以下SEF)の性状について分析した.SEFは角質層を除去した皮膚を絶対気圧400mmHgで吸引することにより採取できる.SEFの性状は,グルコース,クレアチニンや尿素窒素などの低分子量物質に関してはほぼ血漿と同値の濃度を示した.静注糖負荷時のSEF中のグルコース変化を非侵襲的にモニタすることが可能であり,SEF中のグルコース濃度は血糖変化からほぼ10分遅れで追従した.400mmHg陰圧下でのSEFの浸出量は約35.7±11.1μl・h-1・cm-2である.〔臨床検査38:832-833,1994〕

今月の表紙 臨床細菌検査

非溶血性B群レンサ球菌

著者: 猪狩淳

ページ範囲:P.748 - P.749

 B群レンサ球菌はヒトの腟に20~30%常在し,咽頭や腺管にも常在菌として認められる.本菌は化膿レンサ球菌(A群レンサ球菌)より明らかに毒力は弱いが,新生児の化膿性髄膜炎や敗血症の原因菌として,また成人の日和見感染菌として注目されている.
 B群レンサ球菌のほとんどは,ヒツジ,ウマ血液寒天培地ヒでα~β溶血を示すことが指標とされる.さらにグラム染色陽性,カタラーゼ陰性,6.5%NaCl加BHI培地における発育陽性,胆汁エスクリン加水分解陰性の場合はバシトラシンテスト,ピログルタミールアミノペプチダーゼ活性,CAMPテスト,馬尿酸ナトリウム加水分解,小林の分類などによりスクリーニングし,Lancefield沈降反応,亜硝酸抽出法による群別により同定する.

コーヒーブレイク

0.1mm

著者: 𠮷野二男

ページ範囲:P.765 - P.765

 自動血球計数機が普及してきて,目視により計算盤を使っての血球計算を行うことが少なくなってきていますが,なお,計算盤の使用は血球計算の基本だと思います.
 目盛りをした計算盤の上に,0.1mmの間隔を保って,平面に磨かれたカバーグラスを置きます.その間隔を保つために,いまは両脇にその分だけ高くした突堤を作って,その上にガラス板を置くようにしています.

けんさ―その拡がり

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.810 - P.810

 1月末東京にしては珍しい大雪に見舞われた日,羽田から南端宮崎まで空路を翔んだ.隣の鹿児島行きが欠航したのに,宮崎では南国の陽に映えるフェニックスの並木に迎えられた.宮崎の技師会の方々の前で,現在の医療と臨床検査について1時間ほど話させてもらった.最近の国内外の医療の変革に臨床検査はどう対応してゆくか,検査技師は狭い視野でなく広く医療全体から臨床医学の中核としての検査の本質を見つめ,多様な道を設定してゆくべきというのがその論旨である.終わって十分にそれを取り入れた近代的な県立宮崎病院を見学,技師長で県技師会長のK氏,熊本県技師会長U氏らと懇談したが,九州人らしい剛毅にして純粋な検査技師論に接し足を伸ばした甲斐があった.
 帰路東京で平成5年度の公益信託臨床病理学研究振興基金の奨励金授与式があった.この選考会は昨年8月に行われたが,これも東京には珍しく台風の直撃を受けた日で,ノッポビルKホテルは会議の最中大揺れであった.終わって東京駅へ戻る地下鉄では,浸水のため車中に数時間閉じ込められ生きた気もしなかったのを思い出した.12人の受賞者はそんなことはつゆ知らず,研究費の使い方を楽しんでいるようであった.

目でみる症例―検査結果から病態診断へ・19

遺伝性サイロキシン結合グロブリン増加症

著者: 小松誠 ,   花村直 ,   関龍幸 ,   奈良田光男

ページ範囲:P.835 - P.837

●検査結果●
 血中T3,T4は高値を示したが,TSH,freeT3,free T4は正常範囲であった(表1).血中サイロキシン結合グロブリン(thyroxine bindingglobulin;TBG)は高値であったが,サイロイドテスト,マイクロゾームテスト,血中エストロン,エストラジオールは正常であった.
 甲状腺超音波検査では甲状腺の大きさおよびエコーレベルは正常範囲であり,甲状腺結節は認められなかった(図1).

トピックス

ローピーコロイド

著者: 広川満良

ページ範囲:P.838 - P.839

 近年,穿刺吸引細胞診は甲状腺疾患,特に悪性腫瘍の術前診断には欠かせない手法となっている.この理由の1つに,生検とほぼ同程度の診断精度を持つことが挙げられるが,その背景には甲状腺の悪性腫瘍のほとんどを占める乳頭癌が数多くの細胞診学的特徴を有しているため組織型の判定が比較的容易であるという事実がある.乳頭癌のよく知られている細胞診学的特徴として,乳頭状集塊,スリガラス状核クロマチン,核内細胞質封入体,核溝,砂粒体などがある.ローピーコロイド(ropy colloid)もまた乳頭癌の細胞診学的特徴の1つであるが,わが国ではほとんど知られていないのが現状である.
 ローピーコロイドとは,甲状腺乳頭癌の穿刺吸引材料中に出現する棒状に伸びた粘稠なコロイド1)のことである.その形態がチューインガムを引き伸ばした形に似ていることから,bubblegum colloidという名称でも親しまれているが2),そのほかcolloid strings, ropy strand, viscouscolloid, sticky colloid, cord-like colloid,abnormal colloidなどいろいろな形容がなされている.わが国ではこれらに対応する一定の邦訳がないため,本稿では最初に指摘したWillemsとLowhagen1)の言葉を採用してローピーコロイドとして紹介する.

糖尿病と骨髄移植

著者: 池原進

ページ範囲:P.839 - P.841

1.はじめに
 骨髄移植は,再生不良性貧血,白血病,先天性免疫不全症などの治療法として,目覚ましい治療効果を上げている.筆者らは,全身性自己免疫疾患を自然発症するモデルマウスを用いて,正常のマウスの骨髄を移植することにより,全身性自己免疫疾患を治療できることを見いだした1)
 これらの実験結果に基づいて,糖尿病の発症にも免疫学的異常が関与しているのではないかと考えて,以下のような実験をした.

共焦点レーザー走査型顕微鏡

著者: 田坂哲哉 ,   中原一彦

ページ範囲:P.841 - P.843

 通常の顕微鏡では組織切片の厚みの積算像を見ているため,陽性部位が細胞・組織の表面に存在するのか,あるいは内部に存在するのかを明らかにすることは困難であった.また,組織切片の中にある器官の構造を観察するには焦点を変化させながらの高度な観察技術が必要であった.
 近年,開発が進んでいる共焦点レーザー走査型顕微鏡(confocal Iaser scanning microscope;CLSM)1)は位相が揃ったアルゴンレーザーを用い,さらにピンホール効果によりX,Y方向の情報をX線CT像のような断層面としてミクロンの単位で観察することができる(図1).また,標本の各断層面の情報をもとにコンピュータ解析を行って三次元的に表示することが可能となり,病理・組織学の分野での利用が期待されている(図2).現在までCLSMを用いて肝臓,神経系,皮膚ランゲルハンス細胞,筋,核2),肺胞サーファクタント,腫瘍などの構造解析,あるいは胆汁生成,腎機能などのような機能的解析が行われてきた.また,in vivoでの解析にも用いられている3)

研究

健康診断受診者群における血清中ALT値およびAST値の男女差―男女別基準範囲の検討

著者: 小林正嗣 ,   三崎覚 ,   九里重義 ,   長崎作蔵 ,   野元忠 ,   山本栄一 ,   木村洋一郎 ,   村田健司

ページ範囲:P.844 - P.848

 健康診断受診者群のALT (GPT)およびAST (GOT)にっいて男女別に平均値を求めると,男女間に顕著な差が認められる.ALTおよびASTの基準範囲(正常参考値)については,男女別集計値に基づく検討の必要性が考慮された.

資料

臨床検査技師学校における寄生虫学(医動物学)の履修

著者: 佐野基人 ,   王煌輝 ,   陳文旭 ,   佐藤和文 ,   川出智子 ,   武田靖子

ページ範囲:P.849 - P.852

 日本の寄生虫症は激減してからかなりの年月が経過した.そのことが,教育や衛生行政をゆがめてはいないかと懸念して本調査を行った.その結果,臨床検査技師学校では,各校とも質の高い教育がなされていたことが判明した.

多施設による"サズHIV-1抗体"の臨床的検討

著者: 土江秀明 ,   目黒嵩 ,   松本孝夫 ,   今井光信 ,   杉本和敏 ,   山田兼雄 ,   栗村敬

ページ範囲:P.853 - P.856

 HIV-1抗体迅速測定法"サズHIV-1抗体"(以下サズ)につき,5施設で評価を行った.HIV-1抗体陽性者67例,陰性例340例で,うちサズ陽性67例(感度100%),陰性336例(特異度98.8%)であった.従来のPA法やELISA法とほぼ同等の性能を持ちながら,約10分で結果が出る点,一切の機器を必要とせず,目視判定できる点など,多くの利点を有しており,今後,中小病院や実地医家レベルでの検査が普及すれば,検査のすそ野が広がることが期待される.

質疑応答 臨床化学

NAGと尿中β2ミクログロブリンの相関

著者: 風間武 ,   台川勝子

ページ範囲:P.857 - P.858

 Q NAG 2.0U/l,β2ミクログロブリン2.3mg/l,尿中β2ミクログロブリン25,390μg/lという値が出ました.NAGが高くないのに尿中β2ミクログロブリンだけが高値を示しているので,臨床の場から"原因を調べてください"と言われました.NAGと尿中β2ミクログロブリンとはデータ的に相関するのでしょうか.

インスリンの異常高値

著者: 中井利昭 ,   竹越一博 ,   J子

ページ範囲:P.859 - P.860

 Q 当院では,ダイナボットのIMxを用いてインスリンの測定をしています.日内変動の検査依頼があった患者さんのデータが異常高値となり,測定系を変えてみても(外注でRIA)やはり高値となりました(表1).臨床上どのようなことが考えられるでしょうか.また測定上の問題があるのでしょうか.お教えください.

一般検査

尿中蛋白検査結果の乖離

著者: 伊藤喜久 ,   K子

ページ範囲:P.860 - P.862

 Q 尿中蛋白を試験紙法で定性したところ(±)を示し,マイクロTPテスト(ピロガロールレッド法)で定量したところ350mg/dlとなりました.そこで,この蛋白はアルブミンではないかと考え尿中蛋白分画を実施したところ,γグロブリンが79.0%でした.さらに免疫電気泳動ではγグロブリンが(±)でした(図1).この結果の不一致をどのように理解したらよいのでしょうか.
 また,このようなことは正常人でもよくあることなのでしょうか.例えば,一過性の尿細管機能障害のために蛋白の再吸収が低下し,免疫グロブリンの分滑,β2ミクログロブリンなどの低分子蛋臼が尿中に出現したと考えていいのでしょうか.

臨床生理

Holter心電図による心筋虚血の診断と正常者の不整脈

著者: 中山敏夫 ,   Y子

ページ範囲:P.862 - P.866

 Q 24時間Holter心電図で症状なし,SVE 7,VPC単発162,2連発1,STレベル0~-1.2mmの患者さんは,無症候性心筋虚血とみなしてよいでしょうか.また,1回だけの2連発の発生機序と病的意味の有無についてお教えください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?