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雑誌目次

論文

臨床検査4巻1号

1960年01月発行

雑誌目次

グラフ 現代の最先端を行く検査装置

オートアナライザー

著者: 茂手木皓喜

ページ範囲:P.3 - P.5

 世はまさにオートメーシヨン時代,医学の分野における設備の進歩も目ざましく,とくに一部の病院や研究所の検査室装置の進歩はモデルケースとして一般病院の垂涎の的となつているようだ。ここに新時代の検査室装置の数々について紹介することとした。

島津の血球計数器Coulter計数器

著者: 山口潜

ページ範囲:P.9 - P.10

 現在一般に行われている血球計算は19世紀以来の方法で,いくらかの改良は試みられたにせよ計算板上の稀釈血液の1個1個を顕微鏡下で数え上げるという煩雑な旧態依然たる方法がとられている。このようないわゆる標準法は面倒で技術的熟練を要するばかりでなく,案外に大きな誤差を蔵しているので,最近では赤血球算定をルーチンの検査項目から除外してヘモグロビンおよびヘマトクリツト測定で代用する傾向がかなり強くなつてきているようである。しかし,高色性貧血・大赤血球貧血などの診断や,色素指数・平均赤血球容積の算定などには是非とも赤血球数算定が必要であり,また白血球数算定もこれに代るべき適当な検査項目が見出されていない。
 臨床上もつとも要求の多い検査項目の一つである血球計算を正確・迅速・容易に自動的に行うことが出来れば検査室の負担は相当に減ることであろうし,また早くそうなつて欲しいものである。

展望

これからの臨床検査

著者: 緖方富雄

ページ範囲:P.11 - P.13

 I.
 ちかごろけ,なにかの理由で,人間が医者のまえにあらわれると,その人が患者であれ,健康者であれ,その中間の人であれ,医者は一応いろいろくわしく検査しましようというようになつた。ひとむかしか,ふたむかしまえ,たいてい打診と聴診と,そして尿と血液の検査くらいですんだのにくらべると,大変なかわりかたである。
 それほど,臨床検査がおもんぜられるようになつたわけである。

ウイルス・リケツチア病の実験室診断法(1)—検査の依頼法と結果の解釈を中心にして

著者: 内田清二郎

ページ範囲:P.15 - P.20

 現在,細菌の検査はルーチンワークとして広く実施されているが,ウイルス・リケツチアの検査は殆んど日常化されていない。しかし最近になつてようやくこの領域を開拓しようとする機運がおこつてきた。そしてまだ試験的な実施の段階であるにもかかわらず各科とくに小児科方面から積極的に利用されだしている。
 そこでこれらの検査を行なうときの特に臨床の側で必要だと思われる知識をここにまとめてみた。すなわちある症状にたいして病因として考えられるウイルスの種類,それらのウイルスをしらべるための材料のとりかた,とる時期および検査機関への送りかた,えられた結果の解釈の仕方などである。不完全な記述も多いのではないかと思われるがその点ご指摘いただければ幸せである。なお直接には必要でないと考えられる診断法の技術的な面はいつさい省略した。それについて詳しいことを知りたい方は細菌学実習提要,臨床細菌学提要,衛生検査指針などを参照していただきたい。

技術解説

交差適合試験の実際

著者: 松橋直

ページ範囲:P.21 - P.25

 ちかごろ輸血はますますさかんにおこなわれるようになつてきている。手術方法の進歩にともないその規模が大きくなつたことも原因であろうし,また,血液そのものの治療効果の大きいことがわかつてきたこともその理由であろう。一方,輸血がさかんにおこなわれるようになるにつれ,輸血副作用も輸血事故の数も比例して多くなつている。そして,輸血に多少の事故はつきものであると考えるものさえあらわれるようになつてきている。しかし,健康な給血者をえらび,細菌学的にも化学的にも清浄な器具をもちい,正しい術式で交差適合試験をおこなえば,輸血事故はふせげるものであり,また輸血副作用はそれほどあるものではない。そこで,健康な給血者がえらばれ,細菌学的にも化学的にも清浄な器具がもちいられて採血されたばあいに,もつとも問題になる交差適合試験についてつぎにのべたいとおもう。
 この交差適合試験をおこなうには,従来おこなわれたようなベッドサイドでおこなう三滴法では不十分であり,ぜひとも,今日の輸血に関する血清学の知見にもとずいた検査法をおこなうことが望ましいわけである。しかし,その術式をおこなうには,十分の知識と,十分熟練を必要とするので,今日ではベッドサイド医師や看護婦が片手間におこなうことはむずかしくなつてきている。いきおい,中央検査室あるいは輸血センターないし院内血液銀行で,十分に訓練をうけた技術者によつて実施されるようになつてきている。

病原微生物株の保存法

著者: 佐藤和男

ページ範囲:P.27 - P.33

 病原微生物株は,研究上の試料として必要であるばかりではなく,防疫上の衛生検査ないしは臨床上の細菌学的診断または血清学的診断の際の標準株として,あるいは,免疫血清,ワクチンまたはトキソイドなどの生物学的製剤の製造のための材料として,あるいは,医学教育のための実験または示説の資料としてなど,多様の目的のために使用されている。
 したがつて,必要なときに必要なものをただちに役立たせるためには,無生物とはちがつて,平素からその保存に注意をはらつて備えておくことが大切である。

海外だより

臨床検査の格づけ—ボルチモアにて

著者: 小酒井望

ページ範囲:P.25 - P.25

 病院の検査室と限らず,どの検査室でも同じことであるが,検査室で最も大切なのは,そこの検査成績が果して何時も信頼できるかどうかということである。ところが残念ながら我々にはそれを知る方法がない。それで検査件数が猛烈に多くなり,どうみても信頼度が低下せざるを得ないような状態になつても,院長はじめ病院管理者は知らぬ顔をしておれるのだし,検査室の管理担当者も止むを得んと溜め息をついておしまいになるのである。
 結局,検査室の良しあしは,(1)部屋の広さ,機械などの設備,(2)指導者ならびに技術員の良否から判定せざるを得ない。特に技術員の良否は重要な判定資料である、さいわい日本では臨床病理学会の1級,2級試験が回を重ねて来ているから,2級,1級技術者が検査を担当しているところならば,それ相当の信頼度があると判断できよう。勿論,最近衛生検査技師法による国家試験が出来たが,現在のところは試験の内容からみて技術者としての最低限の能力の試験にしか過ぎないから,これの合格者が検査を担当しているからと云つて,それだけでは成績の信頼度が高いとは云い難い。

座談会

第1回国家試験を終つて

著者: 松村義寛 ,   天木一太 ,   松橋直 ,   高橋昭三 ,   桑原義一 ,   稲福全昌 ,   吉田光孝 ,   上条千秋 ,   杉崎輝子 ,   浜野創作 ,   樫田良精

ページ範囲:P.34 - P.44

有難かつた関係者の努力
 樫田 皆様お忙しいところをお集り頂きまして有難うございました。10月25日に行われました第1回の衛生検査技師法にもとづく国家試験の結果はまだ分りませんがとにかく受験者の方々,又ある意味においては試験に関係したいろいろの方々は第1回だけに非常に骨を折つて大変だつたと思います。初めてのケースの試験を終えていろいろ御感想なり,あるいは不満なり,あるいは改善すべぎ点なり,あるいは試験が済んだあとに残された,例えば身分の問題とか,いろんな問題があると思いますが,そういうようなものを縦横無尽にお話し頂ければ,幸いだと思います。読者にいろいろな問題を提起するというような意味合もあると思います。それでは初めに誰方か一つ。

新しい検査法

細菌鞭毛染色法の研究—Leifson法の検討

著者: 神中寛 ,   中山宏明 ,   水口康雄

ページ範囲:P.45 - P.48

緒言
 細菌の鞭毛は,菌体の主要な構造物の一つであり,細菌分類学上の重要な指標となるものである。従つて,この形態学的特徴を知ることは,分類のための手続きとして,是非必要なことであるが,このものの長さに比して幅が小さく,光学顕微鏡の分解能以下にあることは,簡単な観察を困難にしている。電子顕微鏡を用いれば,大きさによる制約はなくなり,容易に微細な構造まで知ることが出来るが,細菌細胞全体に対する鞭毛の関係,巨視的(電子顕微鏡に比して)形態を検するには,反つて適していないし,どの検査室でも簡単に行いうるというものでもない。光学顕微鏡による検査は,この点を考えればやはり鞭毛の形態を検する上に最も有力な手段であることになる。
 ところで,今述べた如く,鞭毛の太さが光学顕微鏡の分解能以下にあるために,光学的観察は普通の方法では行うことが出来ない。

オートアナライザー(autoanalyzer)について

著者: 茂手木皓喜

ページ範囲:P.51 - P.54

 オートアナライザー(autoanalyzer)とは化学分析を自動的に行う機器であつて,数年前にアメリカのTechnicon社により製作され,既にアメリカでは日常の臨床検査に応用されている。日本ではつい最近,アメリカンコマーシヤル社により一台輸入され,ごく短期間ではあるがオペレートすることが出来たので,以下簡単に紹介してみたいと思う。
 本機器は一口でいえば分析化学のオートメーションであつて,同社の能書をみると,人手を殆んど使わずに,多数の検体を短時間にごく正確に分析出来,その信頼度と再現性の良さは高度のものである。

紫外線カラーテレビジヨン顕微鏡および定量用紫外線顕微鏡について

著者: 市川收

ページ範囲:P.55 - P.58

 顕微鏡によつて細胞,組織を観察しようとする試みは古くから行われているが,初期段階では染色したものを見る光学顕微鏡が普通であつた。その後生体のままで細胞の屈折率のちがいを利用して見ようとした位相差顕微鏡とか干渉顕微鏡が出現したが,さらに進んで細胞構成物質の非可視光による吸収を利用して観察する紫外線顕微鏡,赤外線顕微鏡,X線顕微鏡などが作られて,ますます生の状態における細胞構造の探究が出来るようになつて来た。
 細胞の最も重要な構成物質である核酸や蛋白質は,いずれも紫外部に強い吸収をもつている。核酸は2種類あつてデソキシリボ核酸(DNA)は核に,リボ核酸(RNA)は仁と細胞質に含まれている。前者は核の主要成分であり,細胞の遺伝を支配する物質として知られ,後者は蛋白合成に関与する物質として近年ますます重要性を強調されてきた。このような核酸は2600Åに強い吸収をもつているし,その吸光係数は20/mg/cc/cmの大さで,蛋白質の20倍以上である。紫外線顕微鏡による核酸の研究は,ウイルスとか癌の研究に重要な武器となつたのはこれらが核酸をもつているからであつて,紫外線吸収像を観察することによつて細胞化学的に細胞内の核酸の動向をしらべることが出来る。

研究

最近当教室においておこなつた細菌学的検査の統計的観察

著者: 川名林治 ,   大平新治 ,   伴正善 ,   金子康雄 ,   小見昌夫 ,   井筒孝 ,   中村国雄

ページ範囲:P.59 - P.61

 I.
 臨床医学において感染症の正確な診断,予防ないし治療を行なう為には,適確な細菌学的あるいは血清学的検査が臨床家より吾々に要求される。
 近年とくに臨床病理,臨床細菌に関する要望が多く各方面より注目されるにいたつている。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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