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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査4巻3号

1960年03月発行

雑誌目次

グラフ

採液注射室の発足

著者: 樫田良精

ページ範囲:P.137 - P.141

 東大病院中央診療施設の一環として,採液採血注射を行う室が昭和34年10月から開設された。中央診療部に所属し,運営主任1名,4内科から当番制で派遣される医師2名と看護婦4名,技術員6名で構成されている。
 東大病院の中央検査室は昭和30年6月臨床検査部の名のもとに発足したが,昭和34年4月機構の改革により検体のみを扱う中央検査部と,患者が来なければ検査が出来ない種類の検査を扱う中央診療部に分れた。この採液注射室は主として外来患者の採血,採液および注射を処理するために設けられた中央診療部の一室である。

日常検査における交差適合試験

著者: 松橋直

ページ範囲:P.142 - P.144

 輸血には,受血者と給血者の血液型が完全におなじものをつかうのが理想である。しかし,受血者と給血者の血液を完全に一致させることは実際問題としては不可能なので,輸血前に次善の策として,受血者の血清中には給血者の赤血球に対する抗体が,給血者の血清中には受血者の赤血球に対する抗体があるかどうかを試験することになつている。もし抗体が検出されたら不適合な血液であることはいうまでもないが,抗体が検出されなかつた場合は適合血液とみなしてよいとされている。
 この試験法にはいろいろあるが,かぎられた時間と,かぎられた経費の範囲内でよいと考えられるのは血清法であろう。しかし,輸血副作用,新生児溶血性疾患児分娩などの経験者には,Coombs試験,赤血球の酸素処置試験などを忘れてはならない。日常検査における交差適合試験の一例をつぎに紹介しよう。

技術解説

トランスアミナーゼの検査法

著者: 小田正幸 ,   坂田泰昭

ページ範囲:P.145 - P.153

 transaminaseとはアミノ基転移酵素の意であり,アミノ酸のα-アミノ基をα-ケト酸に転移させるのに必要な酵素である。体内中間代謝過程で重要な役割を果しているものとして,glutamic oxalacetic transaminase(一般にGO-Tと略称する)。ならびにglutamic pyruvic trans-aminase(一般にGP-Tと略称する)が広く知られている。GO-Tは
 aspartate ―→oxalacetate
 α-keto glutarate ←―glutamate
の過程を触媒する酵素であり,GP-Tは
 alanine ―→pyruvate
 α-keto glutarate ←―glutamate
の過程を触媒する酵素であり,共にアミノ酸代謝,糖代謝の両者に密接な関連を持つている。これらtransaminase
の血清中における活性値測定が近時注目れるようになつたのは,主として心疾患,肝疾患と関連してである。血清trans-mainase活性値の上昇は心,肝等の実質細胞の変性,壊死等の存在に起因し,従つて心筋梗塞,急性肝炎等で測定の意義が最も大である。

滴定法の入門

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.155 - P.158

 臨床化学検査はもとより正しい値が必要であるが,そのうえ迅速に結果が得られねばならない。現今ではエレクトロニツクスの進歩のために光電比色計や炎光光度計,pHメーターなどが化学検査のうえで最もよく利用せられるようになつた。
 しかし容量分析法(滴定法)は所要器具が簡単なのと正確さに優れている点で捨て難いものである。ことに標準液,基準液の調製にあたつては重量分析法が面倒であるから容量分析にたよることになるのでその手技は基本的の重要性を有する。

血清Cholinesterase検査法

著者: 中沢幸胤 ,   岡本重幸

ページ範囲:P.159 - P.161

 現在行われているCholinesterase (ChE)測定法は,Acetylcholine (Ach)を主体とする基質に血清を加えて加温すると,血清中のChEの作用でAchが酷酸とCholineに分解されるが,この酷酸をもとにして間接的にChEの活性度をあらわしているものが多い。
 即ち,1.予め基質に重曹を加えておいて,生じた酷酸により発生した炭酸ガスをWarburg検圧計によつて測定する方法,2.酷酸発生による基質pHの低下�pHをpH meterを用いて読む方法1)2)等であるが,ここでは極めて簡便で,臨床検査用に適していると思われるPhenol Redを指示薬として,酷酸による基質pHの低下度を光電比色計を用いて測定する方法について詳述する3)4)5)

座談会

細菌検査技術の検討

著者: 桑原章吾 ,   比留間忠松 ,   秦賢寿 ,   藤野湜 ,   松村義寛 ,   松橋直 ,   高橋昭三 ,   樫田良精

ページ範囲:P.162 - P.173

いろいろな失敗がある
 樫田 きようは細菌検査の技術的な問題を検討する座談会を開きます。今後この雑誌で,細菌検査に限らず,いろんな検査室関係のこまかい問題を取り上げていくつもりでおります。きようがその第1回目になるわけですが,臨床病理学会の2級の技術士の資格を持つている方が働いている検査室を話の対象としまして,いろんな問題を御検討いただきたいと思います。
 一番初めに高橋先生からおもな問題点を提起していただきましようか。

海外だより

検査と能率

著者: 小酒井望

ページ範囲:P.173 - P.174

 日本にいるとき,アメリカの臨床検査室では技術員の1人当りの検査件数が,日本のと比べてとても多いと聞いて,便利な機械,器具がたつぷりあつて,検査室の構造もきつと便利なんだろうと想像していました。まだこちらへ来て日が浅く,見たのも当ジヨンスポプキンス病院とその隣りにあるサイナイ病院だけですから,本当のところはまだわかりませんが,こちらの検査室が能率的であることの一端がわかりかけて来ました。ジヨンスポプキンス病院は大学病院であるので,検査室や作業人員もかなりゆつたりしているらしいのですが,私が作業量や日常検査の術式をくわしくしらべているのはジヨンスポプキンス病院ですから,この病院のことを述べましよう。検査室の作業員にはいくつかの職種があつて,作業内容がはつきり分れています。細菌検査室で云えば,滅菌,洗物をする人は勿論きまつていますが,粉末培地をはかつてとかし,滅菌する人,毎日最も多く使用する血液寒天平板,デスオキシコール酸培地,チヨコレート平板などを平板に流すのが専門の娘さんがいます。技術員各人の作業机の横にからのバケツがあつて,使用ずみの試験管,シャーレはどんどんそこへ入れると洗い物の小母さんがしよつちゆう集めに来てから新しいのと交換して行きます。従つて技術員は検査だけをしておればよいわけで,日本のように雑用はありません。勿論床の掃除は別な人がします。

『医学常識』

消化器のはなし(1)

著者: 鈴木秀郎

ページ範囲:P.175 - P.178

§消化器の構造としごと
 口腔から始まつて食道,胃,小腸(十二指腸,空腸,回腸)大腸(盲腸,結腸,直腸),肛門にいたる食物のとおる道すじは,すべて管状になつているので消化管とよばれます(第1図)。消化管は食物を通過させるだけでなく,消化液を出して食物を消化し,栄養分を吸収します。この消化液は消化管の粘膜から分泌されるばかりでなく,他の器管でもつくられて消化管に送りこまれます。この主な器管が肝,膵などですが,これらの器管については前にのべました。
 〔1〕口腔:口腔には消化に関係あるものとして,まず歯牙があります。歯の役目は食物を咀嚼によつて噛みくだくことです。口腔には耳下腺,顎下腺,舌下腺という3つの唾液腺があつて唾液を分泌します。この唾液は咀嚼によつて食物とよくまじりあい,その中に含まれている酵素によつて食物はある程度消化され,咽頭から食道に送りこまれます。

新しい検査法

PPLOの分離培養—特にその手技について

著者: 佐々木正五 ,   名出頼男

ページ範囲:P.179 - P.183

 Pleuropneumonia-like organjsm (略称PPLO)とは牛に牛肺疫を起させるPleuropneumoniaorganismに似た微生物を云う意味で,その形態は極めて多形性で,その一部のものは濾過性でありながら細胞を含まぬ培地に生える事の出来る—この点がVirus Rickettsiaと根本的に違う点である—一群の微生物を総称する言葉である。その本態は未だ充分に解明されていないし,各種細菌が種々の条件の下に生ずる所謂L型菌との異同も常に問題となりながらまだ何れとも決定されていない。しかし今日の段階としては,L型を生ずる条件を取り去つた時に,もとの細菌に復帰するものをL型菌と呼び,復帰の認められないものと区別して考えればよい。即ち安定した形で累代されるものに限つてPPLOの名称を用いればよい。
 人間からの分離例は,子宮腟部,頸管,尿道等泌尿生殖器からのものが最も多く,ついで唾液及び咽頭等からも例数は少いながら高い比率で分離されている。膿瘍,関節腔液,血液,眼球結膜等からPPLOが見出された例もある。

臨床病理技術士「一級」資格認定試験

著者: 清水文彦 ,   太田邦夫 ,   石井暢 ,   天木一太 ,   鈴木鑑 ,   村尾誠

ページ範囲:P.185 - P.189

細菌学
 はじめて「一級試験」をお世話することになつて,いよいよ唯1名ながら受験者のあることも決定して,最初に当面した問題は「一級」という資格に対する認識と,それに直結している試験問題選定のむずかしさであつた。早速ベテランの先生方を委員にお願して,今までの様子もうかがい,種々御相談して問題を決定した。その方針としては,項目は既に発表されている試験範囲によるが,日常ありふれたやさしい面からと,あまり扱う機会のないむずかしい面からと試験してみてその能力応用の広さを見ようということになつた。この点試験範囲の〔A〕〔B〕〔C〕という段階にあまりにもこだわりすぎていた受験者側と多少意見の相違があつた様であるが,「一級」という資格に対する責務の重大さから考えれば,たしかに範囲も広いしむずかしくもあるが,あの程度でやむを得ないと思われた。従つてその点を充分考慮して採点したし,今後の問題として範囲の表わし方等の再検討の点に関しても反省してみた。
 全般的にいえば理論としては知つていても実際的にしつかりと把握していない点のあつたこと,日常の処理としては充分手馴れていてもやや粗雑さの見られたことである。

〈検査室メモ〉

臨床化学分析談話会抄録

著者: 春日 ,   大場 ,   玉井

ページ範囲:P.191 - P.193

紫外部吸収測定による血清蛋白質定量法
1) A Simple ultraviolet spectrophotometric method for the determination of protein.
William. J. Waddel:J. Lab. & Clin. Med.,48, 311, 1956

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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