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雑誌目次

論文

臨床検査4巻8号

1960年08月発行

雑誌目次

グラフ

検査室とエア・コンディショニング

ページ範囲:P.453 - P.456

 臨床検査では検査条件が室内の温湿度に相当支配されるので,これが余り変動すると,データーに"ばらつき"が生じてくることは避けられない。正確なデーターを出すためには夏季だけでも最小限のエア・コンディショニングを行う必要がある。装置は主として目的とする室の大きさによつて,数種のもののうちから選ぶ。多くの検査室をもつ病院では,各検査室ごとに要求条件や使用時間も異なるし,一度使用した空気を再度循環させることも問題になるので,装置の選定には充分考慮が払われなければならない。

Virocyteあるいは異形リンパ球について

著者: 天木一太 ,   肥後理

ページ範囲:P.457 - P.460

技術解説

Virocyteあるいは異形リンパ球について

著者: 天木一太 ,   肥後理

ページ範囲:P.461 - P.464

 1.はじめに 血液像に関する記述の中でしばしばVirocyteとか,異形リンパ球とかいう名称がいわれたり,書かれたりしていますが,あいまいな点があつて困つておられる方があるようです。実際把握し難いところのある細胞で,人によつてこの細胞に対する意見に相違もありますが,なるべく一方の意見にとわれないようにして,述べてみましよう。

バリストカルジオグラフ

著者: 北田茂 ,   中村芳郎

ページ範囲:P.465 - P.471

I.緒言
 人が体重計にのつた時,心臓の拍動につれて体重計の針が,規則正しく振動するのに気付いた人は多いであろう。これを実際に記録し,この運動を測定しようと試みたのが,J.W.Gordon1)(1887)で,バリストカルジオグラフィーのはじまりである。Ballisticsとは弾道学のことで,心臓の活動・それにともなう血液の駆出・血管内の血液の通過に関連して身体に伝わる運動を時間の経過と共にグラフにあらわす方法がバリストカルジオグラフィーで,心弾図法又はバリスト法とも言う。
 Gordonは,体重計の針で図形を描かせ,後,改良形式として軽いテーブルを架柱から4本の針金で吊した装置を使用した。その後,地震計を利用した方法等も考案されたが,バリスト法に物理学的考察を加えたのはE.Abramson(1933)2)で,記録装置の固有振動数と人体のそれとは隔たる可きと考え,装置の改良を行つた。又,彼はさらに分時心搏出量を算出しようとして公式を考えてもみた。しかし,バリスト法を急速に進歩させたのは,Isaac Starr3)の功績によるものである。彼はHigh frequency tableを作製し,人体とテーブルで構成する振動系の物理学的特性を研究し,それから得られる記録にBallistocardiogram(バリスト波形又は心弾図)の名称を与えた。

寄生虫感染の"試験管培養法"による診断

著者: 佐々学

ページ範囲:P.473 - P.479

 人体寄生線虫類のうち,ズビニ鈎虫,アメリカ鈎虫,毛様線虫,糞線虫などは便中に排出された虫卵が孵化し,フイラリア型の感染幼虫にまで外界で発育する。寄生虫感染の培養診断法というのはこの性質を利用して,幼虫を検出しその種類を同定する検査法である。
 こういう試みは,とくに我国において古くから一部の寄生虫学者などによつてとりあげられ,色色な方法が考案されて来たが,とくに最近数年間にその方法が改良されて,臨床検査や集団検診にも充分に応用しうるようになつた。ここには,とくに我々が寄生虫の集団検診にひろく実施している方法を紹介し,その実用価値や長所,短所を解説したいと考えた。

座談会

検査室とエア・コンデイシヨン

著者: 吉沢晋 ,   高田倶之 ,   松村義寛 ,   松橋直 ,   天木一太 ,   高橋昭三 ,   樫田良精

ページ範囲:P.480 - P.491

検査室にも冷房は必要樫田
 暑くなりますと,りつぱな建物ではみんな冷房が入つております。以前ではデパートぐらいしか涼しいいこいの場はなかつたのですが,このごろは大きなビルとか,新しく建てる建物は冷房は一つのお決まりの設備で標準設備というように考えられております。
 私は建築の専門家から伺つたんですが,今日の建築学の常識で建物が上等かどうかということを判定する場合に,その建物はすでに冷房が付いているか,あるいはこれから本式の冷房が付けられるかどうかということで,建物のいい悪いの評価がされているというような話を聞きました。というのは,冷房装置というのは少し大型になりますと,古い建物に備え付ける時には非常にむずかしいことになるからです。さて検査室関係では,検査の条件が室内の温度に相当支配されるものがある。このような種類の検査の際の温度がいい加減な条件になつていると,たとえば予想されないような高い温度でいろんな操作をすると,操作中に思わぬ影響をうけて,データーにバラツキが出てくるんじやないかと思います。贅沢とかいうことじやなくて,正確な検査データーを出すためには夏場に最少限どういうような冷房施設が必要かということを今日検討してみたいと思います。

『医学常識』

造血臓器のはなし(2)

著者: 鈴木秀郎

ページ範囲:P.493 - P.497

 先月号では造血臓器の構造と機能,血液疾患でもつとも一般的にみられる貧血の際の症状について申し上げました。今月は血液検査法と血液の病気について簡単に申しあげます。

〈検査室メモ〉

衛生害虫の駆除法

著者: 鈴木猛

ページ範囲:P.499 - P.503

衛生害虫とその害
 人の衛生に害を与える昆虫及びダニを総称して衛生害虫と呼んでいる。したがつて,この中には,ハエ,蚊,ゴキブリ,ノミ,シラミ,ナンキンムシ,イエダニ,ブユ,アブ,ヌカカ,恙虫,コナダニ,毒蛾など,動物分類学からみれば,広い範囲の目や科に属する「虫」が含まれる。
 そしてこれらの害虫のもたらす害も,3つぐらいに大別される。その1は,疾病を媒介し,あるいは疾病をひきおこす害である。たとえば,シラミが発疹チフスを媒介し,ノミが発疹熱を媒介し,蚊がマラリア,日本脳炎,フイラリアの伝播に一役買い,ハエが赤痢菌などを運び,また恙虫病は恙虫に刺されることによつておこり,コナダニ,毒蛾はそれぞれ人体内ダニ症と皮膚炎の原因になる。このような害は,医学的にみてもつとも重要である。そして,疾病予防ないし撲滅のために行われる害虫駆除は,Vector control(媒介者駆除)と呼ばれている。台湾をはじめ,東南アジアの諸国でDDTの屋内残留噴霧によつてハマダラカを駆除し,これによつてマラリア撲滅に成功したのは,Vector controlの典型的な例である。日本でも,奄美大島,九州の離島,四国の西南部などで,フイラリア撲滅のためのアカイエカ駆除が,大がかりな実験的規模で進められている。

研究

濾紙電気泳動技術に関する研究(第1報)

著者: 佐藤乙一

ページ範囲:P.505 - P.511

I.はしがき
 わたくしどもの体が,生命を保持するうえに,きわめて大切な要素のひとつとして,血漿がある。そして,この血漿は,7.5g/dl前後の蛋白質をふくんでおり,毛細血管壁から他の組織液と自由に交流しあつていると言われている。この血漿蛋白は浸透圧の均こうをまもり,γ—globulinを中心に,多少他の分画をふくめて"抗体"を成生し,そして,その力を発揮させ,また,Fibrinogenや,血小板,電解質といつしよになつて,血液の凝固をうながす役目をはなし,さらに流動細胞をうかべて送るということが,血漿のなされる仕事の主なるものであると言われていた。
 ところが,血漿蛋白は他にもつと重要な役割をもつているということは,通常,つよくとなえられているところであつて,たとえば,いろいろな疾患や条件によつて,いちじるしい変動をきたすところをみても,容易にうなずかれるのである。いいかえれば,血漿蛋白量が,いろいろな疾患の診断,治療,ひいては予後の判定にいたるまで,かくことのできない重要な位置をしめているということである。そこで,最近は,血漿の総蛋白量を知ると同時に,電場における移動度を利用してAlbumin, Globuminα1,α2,β,φ,γ等の分画にわけ,その分画含有量の結果を臨床面にひろく活用することの必要性が,相当ふえつつあることに注目したい。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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