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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査40巻10号

1996年10月発行

雑誌目次

今月の主題 糖尿病―診断・治療の指標 巻頭言

早期,軽症時からの徹底した管理を

著者: 河盛隆造

ページ範囲:P.1111 - P.1113

 糖尿病,特にインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)は,多因子の遺伝素因を有する症候群であると言われる.遺伝素因に,加齢,高エネルギー・高脂肪食,運動不足に基づく肥満,妊娠・出産,感染症,さらに精神的ストレスなどの環境因子が重なることによりNIDDMが発症する.WHOは,糖尿病を発症させないことを第1次予防,血管合併症の発症を防ぐことを第2次予防,合併症の進展による臓器障害のために非活動状況に陥ることを防ぐことを第3次予防,と呼んでいる.残念なことではあるが,現状の診療では第3次予防に主眼が置かれていると言わざるをえない.しかし,ライフスタイルに早期から介入し,第1次,第2次予防を成し遂げることも決して不可能ではなくなった.
 重症度とは個々の患者が発症から現在までに呈した臨床像の総和であるとされているが,その概念自体明確ではなく,治療反応性を指したり,長期的,生命的予後を指す場合など一定していない.また,種々の病因によって発症する臨床症候群である場合,その重症度を画一的に論ずることは当然ながら無理と言わざるをえない.糖尿病患者の重症度を,診断,分類するに際しても,その程度に応じて便宜上,軽症,中等症,重症という分類が用いられている.しかし,実際にはどの症例を軽症と定義するのかということになると,明確な解答が得られないのが実状である.

病態

血糖応答曲線から何を読み取るか

著者: 河盛隆造

ページ範囲:P.1115 - P.1120

 健常人にみる糖のながれを理解し,対象糖尿病患者では,糖のながれがどれだけ偏位しているか,的確に把握することができる時代になってきた.それは,1滴の血液から多くの情報を得ることができるようになったおかげであろう.すると,治療の理論付けが可能となってきた.従来,糖尿病の血糖管理はその目標値が甘く,血管合併症が発症・進展してから対処する例が大多数であった.これからの臨床糖尿病学は,決して血管合併症を発症させないこと,を目標としている.〔臨床検査40:1115-1120,1996〕

インスリン分泌能の把握

著者: 羽倉稜子 ,   吉田洋子

ページ範囲:P.1121 - P.1126

 インスリン分泌能を検索するためには,GTT時の血中IRI反応,および血中CPR,尿中CPRが広く用いられている.なかでも,グルコース負荷後30分の△IRI/△BG,空腹時と食後2時間の血中CPR,24時間のCPR排泄量は,疾患の診断や鑑別のために極めて有用であることを述べた.診断に比べ,治療の指標としては,有用性に乏しいとわれわれは考えている.〔臨床検査40:1121-1126,1996〕

インスリン抵抗性の把握

著者: 佐藤義憲 ,   佐藤譲

ページ範囲:P.1127 - P.1130

 インスリン抵抗性は,グルコーススクランプ法,SSPG法,ミニマルモデル法といった本格的方法で,あるいはインスリン負荷試験,糖負荷試験のように簡便な方法で測定できる.また,日常臨床では,空腹時IRI,BMI,中性脂肪値などからインスリン抵抗性を推定することも多い.このように,インスリン抵抗性を把握するための方法はいくつかあるが,これらはそれぞれの目的に応じて使い分ける必要がある.〔臨床検査40:1127-1130,1996〕

技術解説

血糖自己測定の精度管理

著者: 内潟安子

ページ範囲:P.1131 - P.1136

 自己血糖測定という手技のもたらす恩恵は大きく,糖尿病患者のQOLを悪くする長期合併症の発症頻度を低下させるのにたいへん役だった.自己血糖測定値の精度は今日市販されているものはどれも良く,どの機器を使用しても遜色ない.またその手技もたいへん簡単になってきている.われわれ医療側は,自己血糖測定することが患者の煩わしさを増大させずに,測定するのに価値ある時間帯をよく教えること,そして測定した値を血糖コントロールに有効に反映させるよう指導することが肝心であろう.〔臨床検査40:1131-1136,1996〕

グリコアルブミン

著者: 田中逸

ページ範囲:P.1137 - P.1141

 グリコヘモグロビン(HbA1c)は過去1~2か月間の中期的血糖変動を反映する指標であるのに対して,グリコアルブミン(GA)は過去1~2週間の短期的な血糖変動を反映する指標である.全アルブミン中の安定型糖化アルブミンの割合を2段階の高速液体クロマトグラフィ法で測定する.糖尿病は慢性疾患であるが,短期的な指標を必要する場合は非常に多く,GAとほかの指標をうまく併用して血糖変動の推移を把握し,適切な血糖管理を行うことが必要である.〔臨床検査40:1137-1141,1996〕

1,5アンヒドログルシトール(1,5AG)

著者: 山内俊一

ページ範囲:P.1143 - P.1148

 1,5AGは,体内に豊富に含まれる糖アルコールで,高血糖に伴う尿糖により再吸収が拮抗阻害を受け,尿中へ喪失されて血中濃度が低下する.近年,日本独自に研究が進められ,世界に先駆けて血糖コントロール指標としての臨床応用に成功した.現在,日本全体での測定件数は月間30万件に達する.1,5AGは特に軽度高血糖領域で感度鋭く,リアルタイムに変化して,血糖変動を正確・確実に知らせる.また個人の正常値を持ち,治療の個別化にも役だつ.〔臨床検査40:1143-1143,1996〕

ケトン体

著者: 洪尚樹

ページ範囲:P.1149 - P.1154

 アセトン,アセト酢酸,3-ヒドロキシ酪酸からなるケトン体は,絶食やインスリンが不足した状態で,脂肪組織からの遊離脂肪酸放出の亢進により肝で産生され,脳をはじめとする肝外組織のグルコースの代用エネルギー源である.ケトン体の過剰産生が原因で起こる糖尿病性ケトアシドーシスは代謝異常の極限状態ともいえるが,このほかにもケトン体は,その絶対値やその比で,代謝状態や病態を知るうえで重要な情報をわれわれに与えてくれる.〔臨床検査40:1149-1154,1996〕

GAD抗体

著者: 小林哲郎

ページ範囲:P.1155 - P.1159

 GAD抗体は膵島細胞(主としてβ細胞)脳などに存在するグルタミン酸脱炭酸酵素(glutamic aciddecarboxylase)に対する自己抗体である.GAD抗体はGADのレコンビナント蛋白を用いて簡便に測定でき、国際標準化も進んでいる.この抗体が糖尿病患者で陽性の際には,インスリン依存型糖尿病(IDDM)もしくは緩徐に進行するIDDM (slowly progressiveIDDM;SPIDDM)である可能性が高くなる.特にSPIDDMではGAD抗体の抗体価は高値で診断的有用性が高い.〔臨床検査40:1155-1159,1996〕

AGE

著者: 藤井渉 ,   牧田善二

ページ範囲:P.1161 - P.1166

 生体内蛋白が還元糖と非酵素的に反応することにより,特有の蛍光を持つ褐色のAGEと呼ばれる物質が生成する.糖尿病患者ではAGEが組織に蓄積し,合併症(腎症,網膜症,神経症など)の成因の1つと考えられている.AGEは多様な物質であり,それぞれのAGEの性質に応じて,機器分析,蛍光の測定,免疫学的手法などを用いて定量される.AGEの測定技術は,現在のところ普遍的なものではなく,その普及が望まれる.〔臨床検査40:1161-1167,1996〕

話題

HbA1cの測定の標準化

著者: 片山善章

ページ範囲:P.1169 - P.1174

はじめに
 糖尿病患者の血糖コントロール状態の中期指標としてグリコヘモグロビン(HbA1c)が広く用いられている.その測定法は,現在,高速液体クロマトグラフィ(HPLC)法が主流を占めているのは周知のとおりである.利用されている機種は京都第一科学,東ソーの2社のHPLC法が90%以上を占めているが,これらの測定装置によるHbA1c測定値は,装置間の誤差はもちろんのこと同種装置間においても誤差が生じている場合がある.その最大の原因は不安定型HbA1c分画の取り扱いが施設によって異なっていることである.すなわち不安定型HbA1c値に差が生じる.最近は装置内で不安定型HbA1cの除去が可能になっているが,HPLC法が普及しはじめた当初は不安定型HbA1cを全血試料溶血液で溶血処理して室温放置することによる前処理法による除去法が利用されていた.したがって,この前処理の実施の有無によってHbA1c値が異なり,HbA1c値の施設間誤差が生じ,糖尿病診療に混乱をきたしている.
 このような現状において,日本糖尿病学会の学術調査のテーマとして「HbA1cの標準化」が1993年8月に取り上げられた.現在も検討中であるが,本稿では今までの3年間の活動内容を紹介する.

非観血的血糖測定装置

著者: 菊地眞

ページ範囲:P.1175 - P.1176

1.はじめに
 採血による観血的連続血糖測定では,総採血量が多くなり,また採血局所における出血,感染,疼痛が問題となる.非観血的な検体採取法について検討を重ねた結果,非観血的に表皮角質層を除去した後に,皮膚表面を減圧吸引することにより微量な検体(吸引浸出液:suction effusion fluid:以下SEF)が採取できることを見いだした.吸引浸出液量は400mHg陰圧時で約36±11μl/時・cm2と微量であるため,採取に適する吸引装置が必要であり,また糖濃度測定には微小な半導体型バイオセンサを使用する必要がある.

座談会

糖尿病管理に対する臨床データの有効利用法

著者: 河盛隆造 ,   遅野井健 ,   松葉育郎

ページ範囲:P.1177 - P.1185

 河盛(司会)"糖尿病は検査の病気である"と言われてきました.糖尿病では,ほとんどが症状が出ないので,検査により患者の病態を把握して,適切な治療をしなければいけないということでしょう.しかし,今や糖尿病患者の血糖応答反応を判断する指標は多くあって,病態を把握しているのに,適切な治療を行っていない,という指摘も多いわけです.
 そこで本日は,最前線で多くの患者さんを診ておられる先生方に,数多い指標をいかにうまく組み合わせて患者の1人1人の動態を捉えるか,そしてそれをいかに治療にフィードバックしていくか,ということについて教えていただきたいと思います.

今月の表紙 表在性真菌症の臨床検査シリーズ まれな表在性または深在性皮膚真菌症の臨床検査・1

黒癬

著者: 山口英世 ,   内田勝久

ページ範囲:P.1106 - P.1107

 黒癬(tinea nigra)は,主として年少者の手掌に発症し,自覚症状がないことに加えて境界明瞭で非隆起性の褐色ないし黒色の不規則な形の色素斑をつくることを特徴とする表在性真菌症である(図1).もともと熱帯,亜熱帯地域にみられる疾患として知られ,特に中南米からの報告例が多い.一方,わが国には黒癬はないといわれてきたが,1983年に沖縄で第1例が見つかつた.それ以来沖縄をはじめ九州や四国の南部からも報告例が相次ぎ,近年さらに発生地域が拡大して関東(東京,神奈川)でも症例がみられるようになった.今後は全国的に患者が発生するものと予想されるが,前号まで述べてきた主な表在性皮膚真菌症に比べれば,まれな疾患であることには変わりない.
 黒癬の原因菌は黒色真菌に属する一菌種であるが,その分類学的位置についてはなお議論が残されている.現在,Cladosporium werneckii, Exo-phiala werneckii, Phaeoannellomyces werne-ckii,またはHoztaea werneckiiの菌名が統一されないまま使用されているが,わが国では西村・宮治(1984年)によって命名されたH.werneckiiが一般的である.

コーヒーブレイク

天上大風

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.1154 - P.1154

 昭和17年旧制新潟高校へ入った頃,坂部という先生がおられ化学の教授なのに当時有数の書家であった.この方に書いていただいた「天上大風」という書を手拭いにして皆大切に持っていた.元来は越後の生んだ良寛の書にある文字で一見して豪快さに魅きつけられるものがある.それで同じく越後出身の相馬御風の『大愚良寛』という書物をひもとく気になったりした.
 ある日フィッシャーというドイツ語の教師の時間にRyokanについて知っている人は手を挙げうといわれた.一知半解ながらドイツ人よりは知っているだろうと思って挙手したら,ドイツ語で話せという.一年足らずのドイツ語がすらすら出るはずはなく出るものは冷汗ばかりで大いに後悔した.あとでこの教師は「蓮の露」という良寛についての英文著書もあると聞いて恐れ入ったものである.

印象記 第2回国際緊急保健医療援助研修

第2回国際緊急保健医療援助研修に参加して

著者: 山田誠一

ページ範囲:P.1186 - P.1190

研修の概要
 国際緊急保健医療援助研修は国内研修と海外研修からなり約4週間の日程で行われた.1996年2月16日に国立国際医療センターに集合し,午前11時の開会式をもって始まった.3月16日からの海外研修ではコスタリカ・バルバドス・ハイチのカリブ海の国々を周り,PAHO (pan american health organization),コスタリカ厚生省,赤十字,診療所,病院,サナトリウム,学校,保健施設などを訪問した.マイアミとシアトルを経由して成田に戻ったときには,これでやっと日常生活に戻れると実感し,ほっとした.
 研修は国内研修と海外研修がそれぞれ2週間で,私の専門の医動物学とは少し遠い内容であったが,大学にいては体験できない非常に有意義な経験を積ませてもらった.この研修により自分の世界が広がったという実感がもてた.現在は今後この研修の経験をどういうふうに活かすか思案しているところである.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Technology編

パルスフィールドゲル電気泳動法

著者: 大原智子 ,   伊藤喜久

ページ範囲:P.1191 - P.1196

はじめに
 パルスフィールドゲル電気泳動(pulsed-field gelelectrophoresis;PFGE) とは,電場の方向転換を繰り返すことにより巨大DNA分子を分離する技術である.通常のアガロース電気泳動が20kb (kb:キロベース,103塩基)以下に対し,PFGEでは2Mb(Mb:メガベース,106塩基)に及ぶDNA分子を分離できる.その対象は細菌,酵母からヒトに至るまでの多くの生物や培養細胞のDNAのみならず,蛋白や多糖体にも広範囲に応用されている.本稿ではPFGE法の基本的原理・操作法について,われわれが実際に行っているメチシリン耐性ブドウ球菌(methicillin-resis-tant Staphylococcus aureus;MRSA)のDNA解析を一例に解説する.

Application編

リン病

著者: 松井隆 ,   荒川創一 ,   守殿貞夫

ページ範囲:P.1197 - P.1200

はじめに
 リン病(淋菌感染症)は性病予防法に規定されている現在でも重要な性感染症の1つである.リン菌(Neis-seria Gonorrhoeae)の古典的な診断法には鏡検および分離培養がある.リン菌はグラム陰性双球菌で,分泌物や擦過検体塗抹のグラム染色や,レフレル染色による鏡検で診断可能であるが,ほかの細菌との区別が困難な場合も多い.分離培養にはチョコレート寒天培地やサイヤー・マーチン培地などが用いられてきた.しかし培養法はリン菌が宿主外で生存性が低いことから偽陰性の可能性がつきまとう.一方,より簡便で客観性に優れる非培養検出法に酵素抗体法(EIA)によるゴノザイム(Gonozyme:アボット社)がある.ゴノザイムの検出感度は2×102CFU/アッセイ程度と報告されている1).本キットはポリクローナル抗体を用いている点で特異性に若干の問題があり特に一般細菌が多く存在する咽頭や直腸からのリン菌検出には不適である.
 最近ではこれらの方法に加え,より特異性や感度に優れた遺伝子診新法が臨床に応用されている.リン菌検出における遺伝子診断には核酸ハイブリダイゼーションによるDNAプローブ法と,DNAを増幅して検出するPCR法およびLCR法が開発されており本章ではこれらについて解説する.

トピックス

virus associated hemophagocytic syndrome〔VAHS〕

著者: 和田靖之

ページ範囲:P.1201 - P.1203

1.はじめに
 virus associated hemophagocytic syndrome(VAHS)は,1979年にRisdallらが良性の組織球増殖症の1つとして報告して以来1),ウイルス感染のみならず,さまざまな感染症で発症することが報告され,また各種の免疫異常状態を根底に持つ患者の経過中に合併することもいわれており2~3),これらの疾患群を近年hemophagocyticsyndrome(HPS)と総称している.VAHSは,ウイルスなどの先行感染の後,比較的良性で反応性の組織球の増殖と以前は考えられていたが,致命的な症例も多く報告されるようになり,また悪性リンパ腫との鑑別が困難であった症例も散見されている4).本稿では,われわれが経験したウイルス感染が関連したと考えられるHPS,つまりVAHSの症例も含めて概説する.

Mato細胞

著者: 間藤方雄

ページ範囲:P.1203 - P.1204

 Mato細胞は突起で互いに結び合って,脳の細動脈や細静脈の周りを取り囲む細胞群である.同細胞は蛍光顕微鏡下で黄色の自然蛍光を発する顆粒を多数含むことから,MatoのFGP細胞(fluorescent granular perithelium;蛍光性顆粒周囲細胞)と名付けられている.FGP細胞は細血管の基底膜と,その外側を囲む星状膠細胞の限界膜との間にある間隙(いわゆるVirchow-Robin腔)に位置している.この間隙は血液成分の脳への移行,あるいは脳内産物の血中への移行の通路に当たっている.細胞内の顆粒は酸性ホスファターゼ,エステラーゼ,リパーゼ,プロテアーゼなどの各種の酵素を含み,リソソームに属する.
 生理的条件下に,若年動物の脳標本を作製し,FGP細胞を観察すると,弱酸性の原形質にPAS染色でよく染まる多数の顆粒を持っている.この顆粒が前述の蛍光性顆粒と一致する.電顕的には同顆粒は直径0.2~0.8μmの電子密度の高い顆粒である.同細胞は明るい胞体を持ち,ミトコンドリア,小胞体の数は一般に多くない.一般のマクロファージと異なる点は偽足は持たない反面,深い原形質膜の陥入(infolding)を多数有することで,これらは本細胞がいわゆる貪食能は欠くが,液性成分ないしごく小さな顆粒を選択的に取り込む性質に関連するものと想像している.

新しい肝炎ウイルス―HGV/GBV-C

著者: 上田一仁 ,   清水章

ページ範囲:P.1205 - P.1207

 血液を介してヒトに感染し肝炎を引き起こす新しい肝炎ウイルスの存在が1995年に相次いで2つの施設から報告された.1995年1月の輸血の安全性に関する学会で,Genelabs社のKimら1)のグループは,仮にG型肝炎ウイルス(hepatitisG virus;HGV)と名付けた因子をこれまでにない肝炎ウイルスであると報告した.
 HGVは非ABC輸血後慢性肝炎の患者から得られたプラス鎖RNAウイルスで,輸血前の保存血清にはHGV-RNAは認められず,輸血後アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の上昇に伴ってHGV.RNAが検出された.HGVはアミノ酸配列の類似性からフラビウイルス科であることが明らかになった.一方,1995年4月,Ab-bott社のMushahwarら2)のグループは約30年前に肝炎を発症した外科医の血清から,タマリン(南米産キヌザルの一種)に肝炎を発症させることができ,継代培養が可能な因子を発見した.この外科医のイニシャルから"GB agent"と名付けられたこの因子は非A-E型の新しい肝炎ウイルスである可能性が強く示唆された最初にタマリンから検出された因子はGBウイルスA (GBV-A),GBウイルスB (GBV-B)の2種でともにフラビ様ウイルスであった.

質疑応答 臨床化学

ミクロゾームトリグリセリド転送蛋白の基質異常・機能異常検査

著者: 横出正之 ,   北徹 ,   Q生

ページ範囲:P.1208 - P.1209

 Q ミクロゾームトリグリセリド転送蛋白(MTP)の基質異常あるいは機能異常を知るため血清ベースで行える検査としてどんなものが現在あるでしょうか.アポB-100,アポB-48の定量検査はその意味で意義があるのでしょうか.関連性も含めてお教えください.

臨床生理

アース接続の必要性

著者: 白井康之 ,   Q生

ページ範囲:P.1210 - P.1211

 Q ME機器を使用するときに接地(アース)は必ず接続しなくてはならないのでしょうか.接地の不要なME機器はないのでしょうか.

シールドマットの必要性

著者: 白井康之 ,   Q生

ページ範囲:P.1211 - P.1212

 Q 心電図や脳波検査で交流雑音対策としてシールドマットをベッドに敷くのはなぜですか.

研究

末梢血幹細胞採取時期決定における網赤血球強蛍光分画の有用性

著者: 岡田恭孝 ,   小池考一 ,   萩野真子 ,   伊藤妙 ,   神村信吾 ,   安藤学 ,   新海佳子 ,   矢神幸子 ,   桑原正喜 ,   有吉寛

ページ範囲:P.1213 - P.1218

 自動網赤血球測定装置R-3000(東亞医用電子)は,網赤血球の数を計測する以外に,網赤血球を成熟度に応じて,LFR,MFR,HFRの3分画に分類する機能を有している.
 これらの3分画においてHFRは,幼若網赤血球を示し,同時に骨髄造血能を把握する指標になることがこれまでに報告されている.
 今回,末梢血幹細胞採取を予定した症例に対し,HFRとCD 34陽性細胞率の経時的変動を観察した結果,HFRの変動は,CD 34陽性細胞に先行することが示唆された.このため,HFRに基準値を設定することを検討し,それを利用して末梢血幹細胞を効率的に採取し得る時期を予測することが80%の確率で可能となった.

病理検査室における溶媒再生に関する基礎的検討

著者: 中村圭吾 ,   八木健一 ,   西村千枝子 ,   谷口恵美子 ,   横井豊治 ,   覚道健一

ページ範囲:P.1219 - P.1222

 病理検査室では,何種類かの有機溶媒廃液を排出している.筆者らはアルコール廃液とキシレン廃液の2種類について,市販の溶媒蒸留装置を用い,実用性について検討したので報告する.パラフィン,アルコールの混入したキシレン廃液から,高純度のキシレンを回収できた.しかし,キシレンの混入したアルコールからアルコールの分離精製は,キシレンの混入を防ぐことができなかった.蒸留残渣としてのパラフィンや色素成分は,固形物として処分することができた.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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