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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査40巻8号

1996年08月発行

雑誌目次

今月の主題 造血幹細胞 総説

造血のしくみ―最新の理解

著者: 溝口秀昭

ページ範囲:P.875 - P.883

 胎生期から維持された造血幹細胞によって造血は維持される.その特徴は,①自己複製能と,②分化能であり,全能性幹細胞,多能性幹細胞,単能性幹細胞と順次分化する.
 多能性骨髄系幹細胞はCD 34CD 33という表面形質を有し,主にインターロイキン3やstem cell fac-torなどで自己複製が起こる.赤血球系ではエリスロポエチン,顆粒球マクロファージ系ではCSF,血小板系ではトロンボポエチンがその産生の調節に関与している.〔臨床検査 40:875-883,1996〕

技術解説

―造血幹細胞の同定―骨髄長期培養法による未分化造血前駆細胞の同定

著者: 横田朗 ,   張ケ谷健一

ページ範囲:P.885 - P.889

 骨髄長期培養法は骨髄ストローマ細胞をfeederlayerとして用いることにより,サイトカインのみならずストローマ細胞の影響を観察することが可能であり,造血幹細胞を最もin vivoに近い形で培養できる方法と考えられる.さらにこれを応用したLTC-IC(long-term culture-initiating cell)の定量により造血幹細胞の定量が可能となり,造血幹細胞移植の臨床に応用され始めている.〔臨床検査40:885-889,1996〕

―造血幹細胞の同定―in vitroコロニーアッセイ

著者: 池淵研二

ページ範囲:P.891 - P.895

 造血幹細胞は前駆細胞と区別して考えられなければならない.細胞周期上静止期(Go期)に属すことから,コロニー形成が非常に遅れて始まること,抗癌剤処理に抵抗性があること,を指標にとらえる工夫がある.またストローマ細胞依存性の増殖を行う細胞が幹細胞と考えた系の開発がある.細胞表面抗原の解析と同時に比較的小型の細胞が幹細胞の候補と考えた工夫もある.〔臨床検査40:891-895,1996〕

―造血幹細胞の同定―造血幹細胞の表面抗原

著者: 小松則夫

ページ範囲:P.896 - P.900

 未分化造血幹細胞表面に発現している分子やある分化の過程で新たに発現する分子に対して抗体が開発され,さらにFACS解析装置が導入されたことにより,われわれは造血幹細胞をほぼ1:1に純化,濃縮することが可能になった.その結果,in vitroで幹細胞を容易に扱うことができるようになり,未分化造血幹細胞に発現している分子の働きもしだいに解明されてきた.その中には接着因子や造血因子受容体が数多く含まれており,これらの分子の働きにより,われわれの造血は維持されているものと思われる.〔臨床検査40:896-900,1996〕

造血幹細胞の増幅

著者: 辻浩一郎 ,   中畑龍俊

ページ範囲:P.901 - P.905

 近年の著しい血液学の進歩により,サイトカインによる造血幹細胞の分化増殖機構も次第に明らかとなり,ヒト造血幹細胞の増幅の可能性が検討されつつある.ヒト造血幹細胞のin vitro増幅法の確立は造血幹細胞移植療法のいっそうの発展をもたらすと思われるが,その実現のためには解決すべき多くの問題が残されている.〔臨床検査40:901-905,1996〕

―造血幹細胞の採取とその性状―CD 34陽性細胞

著者: 高橋聡

ページ範囲:P.907 - P.913

 造血幹細胞の同定には細胞表面抗原が利用されており,CD 34分画の中にヒト造血幹細胞が存在すると考えられている.骨髄,末梢血,臍帯血中のCD 34細胞の性状は各々若干異なり,末梢血中ではより分化傾向が強く,臍帯血中ではより高率に細胞回転に入っているものが多い.造血幹細胞移植のためのCD 34細胞採取の効率化にはG-CSFが臨床応用されている.さらにCD 34純化細胞移植によって自家移植における腫瘍のパージングや同種多植におけるGVHD予防としての有用性について検討されている.〔臨床検査40:907-913,1996〕

―造血幹細胞の採取とその性状―自己末梢血造血幹細胞

著者: 木山善雄 ,   笠井正晴

ページ範囲:P.915 - P.920

 近年アフェレーシス技術を応用して,サイトカイン単独で,あるいは化学療法後の回復期にサイトカインを併用して動員した自己末梢血幹細胞(PBSC)を採取することが行われている.骨髄と比較してPBSC中には造血幹細胞も同程度に含まれるが,より顆粒球系に分化した幹細胞が多く含まれていることが明らかになってきている.このことが末梢血幹細胞移植の特徴の1つである移植後の早期の生着に関与していると考えられている.〔臨床検査40:915-920,1996〕

―造血幹細胞の採取とその性状―同種末梢血造血幹細胞

著者: 石田明

ページ範囲:P.921 - P.925

 同種末梢血造血幹細胞移植はここ2~3年の間に急速に普及した新しい治療法で,健常人ドナーへのサイトカイン投与によって末梢血中に動員された造血幹細胞を移植する治療である.サイトカインの中で最も安全かつ動員効果が高いとされているG-CSFが通常用いられている.
 骨髄バンクへの導入あるいは種々の細胞移植治療への応用など,将来への展望が非常に魅力的な治療法である一方,健常人にG-CSFを大量投与することの安全性については未解決の面も残されており,その安全性の確保は今後の重要な課題の1つである.〔臨床検査40:921-925,1996〕

―造血幹細胞の採取とその性状―臍帯血移植の現状と展望

著者: 加藤俊一

ページ範囲:P.926 - P.930

 Gluckmanらによって最初の同胞間臍帯血移植が施行されて以来,約100例の同胞間臍帯血移植と約100例の非血縁者間臍帯移植が行われている.骨髄移植と比較すると,臍帯血移植では少数の幹細胞で移植が可能であり,GVH病が軽度であるため,HLAが1~2抗原異なっていても移植が可能であるという特徴がある.欧米では非血縁者間で臍帯血移植を行うために臍帯血バンクが設立され始めており,わが国においても準備が進められている.〔臨床検査40:926-930,1996〕

造血幹細胞の臨床

非血縁者間同種骨髄移植の現状と成績

著者: 得平道英 ,   岡本真一郎

ページ範囲:P.931 - P.937

 同胞間にHLA適合ドナーが見いだせない症例にも同種骨髄移植の適応を広げようとする試みの1つが非血縁者間同種骨髄移植(UBMT)である.わが国では毎月約30件のUBMTが日本骨髄バンク(JMDP)を介して施行され,すでに739件の移植を終了している.血縁者間骨髄移植(RBMT)に比較してUBMTでは移植片対宿主病(GVHD)などの移植関連合併症の頻度,重症度が増し,急性白血病などの一部の疾患を除くとその成績はやや劣るものとなっている.UBMTの今後の課題は,移植関連合併症のより効果的な制御法の確立と,各疾患の治療戦略上へのその位置づけを明確にすることである.〔臨床検査40:931-937,1996〕

造血幹細胞への遺伝子導入とその応用

著者: 服部豊

ページ範囲:P.939 - P.945

 近年造血幹細胞の分離や生体外培養が可能になり,一方,ウイルスベクターやリボソームの開発により遺伝子導入技術も進歩した.幹細胞の生体内での動向を追跡し,また造血幹細胞移植をより危険性が少なく効果的に行うために幹細胞を標的とした遺伝子治療,マーキングは重要である.対象疾患は悪性腫瘍,単一遺伝子病,AIDSとその適応は広がりつつある.反面,技術的困難や危険性も付随するため臨床応用には十分な吟味が必要である.〔臨床検査40:939-945,1996〕

話題

造血幹細胞と接着分子

著者: 石川淳 ,   金倉譲

ページ範囲:P.946 - P.947

 骨髄微小環境は線維芽細胞,脂肪細胞などの骨髄ストローマ細胞とその周囲の細胞外マトリックスからなる造血支持組織である.骨髄ストローマ細胞は各種の造血因子を産生し,造血を調節していることが知られている.さらに接着分子を介する造血幹細胞と骨髄ストローマ細胞や細胞外マトリックスとの相互作用が造血に重要な役割を果たしていることが近年明らかにされつつある.本稿では接着分子による造血調節に観点を絞り概説したい.〔臨床検査40:946-947,1996〕

トロンボポエチン(Thrombopoietin;TPO)

著者: 堀江かおり ,   宮崎洋 ,   加藤尚志

ページ範囲:P.948 - P.950

 巨核球造血・血小板産生機構の制御を担う造血因子"トロンボポエチン(TPO)"が最近,筆者らを含む4つのグループにより単離された.TPOはMeg-CSFとMeg-Potの2因子により調節されるという説に反し,この2つの性質を兼ね備えた新規の因子であった.本稿では,今後臨床への応用が期待され,その構造と機能において極めてユニークな特性を持つTPOについて概説する.〔臨床検査40:948-950,1996〕

今月の表紙 表在性真菌症の臨床検査シリーズ

皮膚糸状菌症 5.顕微鏡観察による形態学的特徴(続)

著者: 山口英世 ,   内田勝久

ページ範囲:P.870 - P.871

 前号で取り上げたTrichophyton rubrumとT.mentagrophytesに続いて,本号ではMicrospo-rum canis, M.gypseumおよびEpidermophytonfloccosumについて,属ならびに種レベルの同定に有用な形態学的特徴を解説する.Trichopyton属菌種が大分生子よりも小分生子を豊富に産生するのに対して,Microsporum属菌種では一般に大分生子産生のほうが優勢であり,Epidermo-phyton属菌種(E.floccosumが唯一の菌種)に至っては大分生子しかつくらない.したがってMi-crosporum,Epidermophyton両属菌種における最も重要な形態学的特徴は大分生子にみられ,これが菌種同定の最も有力な指標となる.以下に両属主要3菌種のスライド培養標本(コットンブルー染色)の光顕観察で得られる特徴的な所見を記す.

コーヒーブレイク

縁に従って

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.900 - P.900

 この春私にとって7冊目になったエッセイ集『北冥に魚あり』を発刊した.最近3年間に種々の雑誌に発表したものをまとめたもので,本誌のコーヒーブレイクの文が主軸になっている.すでに河合 忠先生が懇篤な書評を7号に書いて下さった.題名にした一文は平成6年1月に読んでいただいたが,あれは会津八一先生を主題に書いたもので,その内容について少々補足したい.
 魚の字をわざわざワープロにない魚としたが,会津先生の書は現代随一といわれるのに加えて,文字にこだわる学者としても有名で実際は魚よりもさらにくずした字で書いてあるのを魚より魚に近いと勝手に判断したことをご容赦願いたい.またこの奥付けには出版社が魚(サカナ)と書いていたが,古来からウオの方が正しい呼び名だと思われる.

学会だより 第45回日本臨床衛生検査学会

Diagnosis by New Approach―DNAが変える臨床検査

著者: 坂野富裕 ,   竹下久子 ,   静怜子

ページ範囲:P.951 - P.953

 第45回日本臨床衛生検査学会が1996年6月9,10日両日にわたり,千葉県の幕張メッセ国際会議場・国際展示場において開催された.本学会では,招待講演3題,特別講演1題,シンポジウム3題,パネルディスカッション5題,一般演題760題が行われた.なお次回は愛知県の名古屋国際会議場で1997年5月14~16日にわたり開催される予定である.

第85回日本病理学会春期総会

日本病理学会の転換点となる総会

著者: 覚道健一

ページ範囲:P.954 - P.954

 本年4月23~25日,東京国立教育会館他3会場で第85回日本病理学会春期総会(会長 細田泰弘)が開催された.
 日本病理学会は,会員数約4,500名の人体病理,獣医病理,歯科口腔病理,毒性病理,実験病理などを包含する病理学会全体をカバーする学会である.腫瘍病理学,免疫病理学,分子病理学などの関連学会の発展とともに,その活動力が弱まった感があり,実際に,若手研究者の参加が減少傾向にあることが悩みであったが,本総会は,約1,200題の一般演題と19のワークショップ,また病理学会の伝統的特別講演である宿題報告などの発表により構成され,成功裏のうちに閉幕した.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Technology編

PAG電気泳動の実際

著者: 須藤加代子

ページ範囲:P.955 - P.958

はじめに
 ポリアクリルアミドゲル(PAG)は,アクリルアミドがビスアクリルアミドを架橋剤として重合し,三次元の網目の化学結合を形成している.したがって,PAG電気泳動は,ゲルの網目構造による分子篩作用を受けて分離される.核酸の等電点が強酸性のため中性の緩衝液中では各ヌクレオチドは負に荷電しており,電気移動度は塩基組成にほとんど依存せず,分子の大きさに依存して泳動される.大きい分子ほど移動度が小さい.数千ヌクレオチド2本鎖長(bp)程度の大きな核酸はこのPAGに入ることが難しく,通常1,000bp以下の核酸の泳動に用いられる。ゲル濃度は,目的とする核酸の大きさにより3.5~20%のものが用いられる.表1に各%における分離可能な2本鎖DNAの鎖長(bp)を示した.PAGはアガロースゲルよりも作製に手間がかかり保存が困難などの欠点があるが,より低分子の核酸の泳動に適している.したがって,PAG泳動は,PCR-SSCP (single strand confor-mation polymorphisms)法,DNAの塩基配列の決定,本シリーズの6.RFLP法などに用いられている.本稿においては誌面の都合で概略の説明となってしまう所も多々あるので,具体的な手法としては,遺伝子技術マニュアル1)を参考にしていただきたい.

Application編

サイトメガロウイルス

著者: 柴田元博

ページ範囲:P.959 - P.963

はじめに
 サイトメガロウイルス(CMV)は,ヘルペスウイルス科に属するDNAウイルスである.日本人では成人の90%以上がCMVに既感染である(抗体を保有している)が,通常CMV感染(CMV infection)は無症状に終わり(不顕性感染),症候性感染すなわちCMV感染症(CMV disease)として問題となることは多くなかった.CMV感染症が臨床上注目を集めるようになったのは,易感染宿主の増加に伴ってである.
 骨髄移植をはじめとして臓器移植が広く行われるようになり,また一方でエイズ患者や強力な化学療法を受けている癌患者らの易感染宿主が増加し,CMVが病原性を発揮するようになった.易感染宿主におけるCMV感染症はしばしば致命的となるが,ガンシクロビルなどの抗ウイルス剤が使用できるようになり,早期診断・早期治療が臨床上重要な課題となっている.本稿ではCMV感染症の診断に用いられる検査法,診断を行ううえでの問題点を概説し,その中で遺伝子診断をどう位置づけていくかについて解説を加えたい.

トピックス

塩素と血圧

著者: 奥田拓道

ページ範囲:P.964 - P.965

 食塩を取り過ぎると,血圧が上昇することはよく知られている.ほかに何も異常がないが血圧だけが高いという本態性高血圧の患者に食塩制限をすると,その6割に血圧低下がみられる.
 食事中の食塩は,ナトリウムイオン(Na)と塩素イオン(Cl)として腸管から別々に吸収され,その後も生体内で,それぞれ異なる調節を受けている.例えば血清中のNaは,食前・食後とも,140mmol/l前後で変動しないが,Clは,食後上昇し,数時間後に食前の価に戻る.したがって,食塩によって血圧が上昇するといっても,その原因がNa+なのか,Clなのかが問題になるわけである.

新しい間質性肺疾患の血清マーカーKL-6抗原

著者: 小林淳 ,   北村諭

ページ範囲:P.965 - P.967

1.はじめに
 間質性肺炎の活動性の指標として呼吸困難の程度,PaO2や胸部X線所見の経時変化,血清LDHなどが用いられてきた.しかし実際に病態を把握するうえで役だち,ある程度臓器特異的で,臨床医にとって真に客観的な指標となりえるようなマーカーは存在しないのが現状である.
 KL-6抗原はムチンの一種で,Ⅱ型肺胞上皮,呼吸細気管支上皮細胞などに発現する糖蛋白抗原である.1985年に河野らが発見し,当初は腫瘍マーカーとして研究されていたが,現在では間質性肺炎の活動性のマーカーとして注目されている1~5).

質疑応答 血液

解糖阻止剤添加血液の血漿分離までの時間による血糖値の変化

著者: 蘒原佐千子 ,   都築久美子 ,   光吉慶生 ,   泉川ツヤ子

ページ範囲:P.968 - P.972

 Q 血漿で血糖値を測定するとき,解糖阻止剤と抗凝固剤を添加すれば,その血糖値は安定であると言われている.しかし,当施設で実験してみた結果,表1のように,血漿分離までの時間が長いと血糖は低下の傾向にある.当施設で使用中の解糖阻止剤はアングロットGS®(日本商事)である.血糖測定値法はヘキソナーゼ,エンドポイント法第一化学である.表2は,参考にヘモガードプラス(真空採血管)ベクトン,フッ化ソーダ+EDTAを試した結果である.やはり3時間後には低下している.解糖阻止剤を添加すると,血漿の解糖作用は完全に阻止されるはずではないでしょうか.もし,血糖値が低下するとしたらその程度はどれくらいでしょうか.

臨床生理

トレッドミル運動負荷試験時の電極接着法

著者: 日岡美苗 ,   Q生

ページ範囲:P.972 - P.974

 Q トレッドミル運動負荷試験を行う場合,電極コードのゆれによって心電図上にアーチファクトが混入しやすくなりますが,トレッドミル運動負荷試験においてできるだけアーチファクトの少ない心電図を記録するにはどういった電極の接着法が一般的に行われているのでしょうか.

研究

男子尿道炎患者における尿沈渣中白血球数

著者: 甲田雅一 ,   村橋勲 ,   清水有二 ,   宇田川郁子 ,   福原淳子 ,   竹内美香 ,   松崎廣子

ページ範囲:P.975 - P.979

 筆者らは男子尿道炎患者の尿沈渣中白血球数の調査を行った.尿沈渣中白血球数は,Neisseria gonorrhoeaeが検出された症例では全例とも10~29個/1hpf以上と多く,Chlamydia trachomatisのみを検出した症例ではそれよりも少なかった.C.trachomatisのみを検出した症例の中には白血球数がUTI薬効評価基準で(-)と判定される2~4個/1hpfしか観察されない症例も見られたが,1個/1hpf以下の症例は存在しなかった.一方,対象とした正常人の尿沈渣中白血球数は2~4個/1hpf以下であった.
 以上から筆者らは,男子C.trachomatis性尿道炎においては,尿沈渣中白血球数2~4個/1hpfは感染の可能性ありとみなすほうがよいと考える.

Helicobacter pylori除菌後の血清IgG抗体価の推移

著者: 櫻井伊三 ,   浪岡知子 ,   野田幸一 ,   久住幸一 ,   箱崎幸也 ,   大庭健一 ,   桑原紀之

ページ範囲:P.981 - P.983

 Helicobacter pylori(H.pylori)除菌療法後の治療効果のモニター法として,H.pylori IgG抗体の推移を除菌成功群8名および失敗群6名について約1年間にわたり追跡検討した.除菌成功群では,3~6か月後から有意な抗体価の低下を示し,7~12か月では,除菌前の抗体価の60%以下になりほぼ陰性化した.一方,除菌失敗群では,12か月を通じ血清抗体価の有意な変化はみられなかった.H.pylori感染に対する血清学的検査は,生体にとって非浸襲的な方法であり,さらに多数例について定量的に検討することにより有用なモニター法になり得ると考える.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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