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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査41巻1号

1997年01月発行

雑誌目次

今月の主題 スポーツと臨床検査 総説

スポーツによる生理学的変化,病態変化

著者: 佐藤祐造 ,   福春道太郎

ページ範囲:P.9 - P.15

 適度なスポーツは,心身の健康維持に重要な役割を果たしうる.適度な身体トレーニングの継続により,個体のインスリン感受性は改善し,同時に高血圧,高脂血症,動脈硬化性心疾患といったさまざまな成人病の予防や病態改善にbeneficial effectがもたらされる。しかし,運動の種類,強度,各個人の病態によっては,身体に有害な影響を及ぼす可能性があり,身体トレーニングの実施に際しては,スポーツによる生理学的変化,病態変化について十分理解することが重要である.

スポーツ前検査

ドーピングとは

著者: 川原貴

ページ範囲:P.17 - P.21

 ドーピングとは,競技成績を高めるために薬物などを使用することである.興奮剤の使用による死亡事故が相次いだため,ルールで禁止されるようになった.新しい薬物が使用されるにつれて,禁止薬物のリストも変更されてきた.ドーピング行為は選手の健康を害するだけでなく,フェアプレーの精神に反し,社会にも悪影響を及ぼす.日本では,まだ欧米ほど深刻な問題とはなっていないが,早急にドーピングに対処する体制を確立する必要がある.

ドーピングの検査

著者: 植木眞琴

ページ範囲:P.22 - P.25

 総合国際競技会やオリンピック加盟競技の世界選手権では,必ずドーピング検査が行われる.日本でも,一流選手によるドーピング事例が報告されるようになり,日本選手権や国際大会派遣対象日本選手に対する検査も実施されるようになってきている.ここでは,スポーツにおけるドーピング検査の最近の動向と,IOC検査機関の取り組み,臨床検査における薬物検査との相違点などについて解説する.

性別確認検査

著者: 山岡和子 ,   神辺眞之

ページ範囲:P.26 - P.30

 性別確認検査は女子選手全員に義務付けられる検査であるため,選手に負担が少なく,しかも短時間で多数検体を確実に処理できることを要求される検査である.男性決定遺伝子SRYが存在しないことを確認し,同時に,検査における種々の問題をモニターし,同時に性決定検査の二重のチェックが可能な部位の検出を行う必要がある.

運動負荷と検査値

血液検査

著者: 櫻田恵右 ,   武蔵学 ,   鴇田文男 ,   松野一彦

ページ範囲:P.31 - P.36

 最近,体力向上のために社会的にスポーツが盛んである.学校教育においても各種大会などスポーツは必須である.しかし,持続的運動負荷によって"スポーツ貧血"をきたすこともよく知られている.ここでは,高校生男子スポーツクラブ選手の運動前後における血液所見の変化について述べる.これら高校生選手では運動負荷によって鉄欠乏症や溶血による影響が高率に認められ,スポーツ貧血への注意の必要性が示唆される.

尿酸値

著者: 浅原弘嗣 ,   西岡久寿樹

ページ範囲:P.37 - P.40

 運動(スポーツ)は尿酸値の変動に影響を与え,スポーツ選手にはしばしば運動性高尿酸血症がみられる.痛風とは高尿酸血症を基礎病態とする急性関節炎であるが,多くの場合痛風発作の発症で初めて治療を受け,発作が治まったときから高尿酸血症のコントロールが始まる.この高尿酸血症は慢性的で,放置すれば腎臓をはじめとした他の疾患を引き起こすことが知られている.しかし,治療指針はほぼ確立されており,医師との連携による高尿酸血症の早期発見,早期治療が必要である.

血中乳酸濃度,血中ピルビン酸濃度の測定

著者: 八田秀雄

ページ範囲:P.41 - P.45

 運動に関連した血中基質の測定項目の中で,乳酸濃度の測定は最重要項目の一つである.血中乳酸濃度は酵素法でも比較的簡便に測定できる.近年自動測定器によって測定されることが多いが,その際にも酵素法で測定値を確認することが望ましい.血中乳酸濃度は運動強度の指標として非常に重要である.特に血中乳酸濃度が上昇し始める点である乳酸性作業閾値(LT)は,競技だけでなく,日常の運動や運動療法においても,運動負荷強度の設定や効果の判定に非常に有益である.

活性酸素とSOD

著者: 大野秀樹 ,   瀬川雅彦 ,   大河原知水 ,   木崎節子

ページ範囲:P.46 - P.51

 運動と活性酸素の研究は,1978年に比較的軽度の運動によってもヒト呼気中のペンタンが上昇することが認められて以来,急速に盛んになった.ヒトの活性酸素測定は,まだin vivoでリアルタイムには成功していない.そのため,酸化ストレス状態を把握するためにさまざまなアプローチがなされている.本稿では,それらの代表例を紹介するとともに,最も重要な抗酸化酵素であるSODに対する運動の影響を解説する

骨格筋由来酵素

著者: 吉岡利忠 ,   山下勝正

ページ範囲:P.52 - P.58

 血液中に数種類の酵素が存在し,特定の役割を果たしているものとさまざまな臓器・組織から血液中に遊離した生理的意義を持たない逸脱酵素がある.ヒト(動物)が生命活動を営むことにより,一定量の酵素は臓器・組織から常に逸脱し続けている.すべての組織が,同じ種類の酵素を同じ量だけ含んでいないので,血清酵素活性を測定することで損傷を受けた組織を同定することができる.さまざまな骨格筋疾患により,血清中の骨格筋由来の酵素活性が増加する.血清逸脱酵素の増加は,疾病時だけでなくさまざまな筋肉活動によっても引き起こされる.運動負荷により増加した血清逸脱酵素の多くは,骨格筋細胞由来と考えられる.日常的にトレーニングを行っている場合,血清逸脱酵素の増加の由来を正確に判断する必要がある.血清中に逸脱した酵素から,生体がストレスから受けた負担度をある程度評価できることが報告されている.血清酵素検査方法の改善により,その酵素の由来組織や臓器を特定できるようになると,その測定の重要性はさらに高まるであろう.

尿検査

著者: 鈴木政登

ページ範囲:P.59 - P.63

 尿成分は,生体内の代謝状態および尿の生成臓器である腎臓の機能的・器質的状態の反映である.健常人の場合,運動負荷による腎血漿流量(RPF)の変化は約40%VO2maxから,糸球体濾過量(GFR)は50%VO2maxから,強度漸増に伴い直線的に低下する.しかし,尿定性試験や尿沈渣への影響および尿中アルブミン,β2-ミクログロブリンの一過性排泄増加は80%VO2max以上の強度で認められ,その影響は運動終了60分後にはおおむね消失する.一方,軽度肥満者では50~75%HRmaxの中等度運動によってアルブミンの尿中排泄が誘発され,糖・脂質代謝異常との関連が推測された.

話題

運動と発汗

著者: 小川徳雄

ページ範囲:P.64 - P.66

1.はじめに
 運動時には,熱産生の著しい増加に伴って熱放散も促進するが,発汗はその主役を演じ,特有な様相が認められる.また,発汗機能は運動鍛錬度と密接に関連する.

免疫機能

著者: 河野一郎

ページ範囲:P.67 - P.68

1.はじめに
 生体防御機構の中心として働く免疫機構は健康の維持に不可欠であり,きわめて精緻に構築されている.しかし,運動が免疫機能にどのような影響を与えるかについての研究は心肺機能や筋肉系あるいは代謝・内分泌系の研究に比べると歴史が浅く,運動と免疫のテーマが注目されはじめたのは,免疫学が飛躍的に発展した1980年代になってからである1).本稿では非特異的防御機構を含めた広義の免疫機能について整理する.

呼吸器疾患と運動能

著者: 吉川雅則 ,   小林厚 ,   山本智生 ,   竹中英昭 ,   夫彰啓 ,   米田尚弘 ,   成田亘啓

ページ範囲:P.69 - P.72

1.はじめに
 慢性呼吸器疾患では運動耐容能の低下は頻度の高い症状で,しかもquality of life (QOL)を低下させる重大な要因である.したがって,運動能の正確な評価は病状の把握や治療を考えるうえで非常に重要である.運動負荷試験の意義は客観的に運動能力を評価し,運動制限因子の解析,運動中に出現する呼吸困難などの自覚症状を再現することにある.そのほかに,運動療法の処方や治療効果の判定,薬剤および酸素投与の効果判定,運動誘発性喘息の診断など臨床的意義は大きい.

高地トレーニング

著者: 浅野勝己

ページ範囲:P.73 - P.75

1.はじめに
 高地トレーニングは高所トレーニングとも言われる.この"高地"あるいは"高所"とは,標高の高い気圧の低い環境すなわち"低圧環境"を意味している.この低圧は大気圧の低下に伴う酸素分圧の減少を生じて,低圧低酸素環境をもたらすことになる.例えば,アトランタ五輪女子マラソン3位の有森裕子選手が高地トレーニングを行ったアメリカのコロラド州ボルダー(2,300m)は,約0.8気圧(580torr)であり,平地で約16%の低濃度酸素を吸入している状態に相当している.このような低圧低酸素環境において持久性トレーニングを行うことは,平地でのトレーニングに比べ相対的運動強度が高くなり,組織細胞への低酸素状態を一層増強することになる.すなわち低圧低酸素環境への滞在による安静時の呼吸循環系の亢進(受動的効果)のうえに,トレーニングによる生理的効果(積極的効果)を加えた合成効果を得ることが期待される.この高地トレーニングを一定期間継続すると,組織への酸素運搬能は急性適応から次第に慢性適応へ移行してくる.これが高地順化であり,この効果が平地および高地での競技力向上に貢献するものと期待されるわけである.そこで高地トレーニングに関する最近のトピックスを紹介してみたい.

腎機能

著者: 福永惠 ,   折田義正 ,   堀尾勝

ページ範囲:P.76 - P.79

1.はじめに
 腎臓はその重量は体重の0.5%以下にすぎないが心拍出量の約25%に相当する1,300ml/分の腎血流量(RBF)を有し1),運動時における心拍出量変化の影響を受けやすい臓器と言える1,2)

運動と心機能

著者: 山崎元

ページ範囲:P.80 - P.82

1.はじめに
 成人病が社会に蔓延し,その予防と治療に運動の意義と必要性が強調されるようになっている.運動習慣は,寿命を延ばすばかりでなく,QOL(生活の質)の向上にも役立つことが多くの疫学的研究から明らかになっている.運動の啓蒙や実践の社会的ニーズが増すにつれ,運動によって起こる心機能あるいは血行動態の変化を理解することはますます重要になった.心機能の急性変化は,運動の種類や習慣性の有無によって異なり,また慢性の変化つまり長期にわたる運動習慣は,心臓の機能と形態に生理的変化をきたす.その変化はときに疾患と鑑別を要することもある.

今月の表紙 深部皮膚真菌症の臨床検査シリーズ・1

スポロトリコーシス

著者: 山口英世 ,   内田勝久 ,   立石毅

ページ範囲:P.4 - P.5

 土壌中や植物の表面に腐生的に生息する真菌の中には,皮膚の刺創(棘に刺されるなど)を介した組織内への接種によって感染を引き起こすものがある.病巣は菌の接種(侵入)部位の皮膚(真皮を含む)および皮下組織に限局するのが普通であるが,菌種によってはリンパ行性または血行性に播種する.このような真菌症は,一般に深部(または深在性)皮膚真菌症と呼ばれる.
 深部皮膚真菌症は比較的まれな真菌症とされているが,その中で,最も発生率が高い疾患はスポロトリコーシス(sporotrichosis)である.わが国は世界的にみてもスポロトリコーシスの多発国の1つに数えられ,年間の発症患者は数百例に上ると推定される.

コーヒーブレイク

検査室のこれから

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.66 - P.66

 新年を迎えて臨床検査の世界も新しい覚悟で臨むことが改めて要求されている.医療財政がますます逼迫し検査室を取り巻く環境が厳しくなっているし,院内感染に次いで世上をこのうえなく不安に陥れたO-157による感染などで技師の役割りと感染症に対する検査の重要性が増して来た.
 昨年初秋,日本病院会の主催で全国臨床検査管理研究会が新潟で開かれ,全国から百数十名の人々が集まって2日間熱心な研修が行われた.私も初日に"検査室の在り方と運営"という特別講演を依頼され,久方ぶりに2時間近い長広舌を奮ったが,聴衆の熱心な取り組みを肌で感じて感銘深かった。このとき述べた内容を後で分析したら,意識せずに後続の講演,シンポジウムの命題と一致しており,むしろ基調講演と呼んだ方がふさわしかった.新年そして21世紀を数年後にした検査の話題に適当なので,要点をピックアップして紹介しておきたい.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Technology編

MASA法

著者: 木村聡

ページ範囲:P.83 - P.87

はじめに
 MASA法とは,mutant allele specific amplifica-tionの略称であり,日本語では変異アリル特異的増幅法,または対立遺伝子特異的増幅法と呼称されている(メチシリン耐性ブドウ球菌のMRSAと混同されないようご注意願いたい).本稿ではまずMASA法の概念・原理を解説し,その応用例として呼吸器系悪性腫瘍におけるK-ras遺伝子の分析例1,2)を,基礎からの解説とともに述べることとする.

Application編

フェニルケトン尿症

著者: 山下啓子 ,   香川昌平

ページ範囲:P.88 - P.91

はじめに
 フェニルケトン尿症(PKU)はフェニルアラニン水酸化酵素(PAH;EC 1.14.16.1)の欠損によるアミノ酸代謝異常症で常染色体劣性遺伝形式をとる.PKUではフェニルアラニンからチロシンへの代謝はほとんど認められず,体内にフェニルアラニンが蓄積し,知能・言語障害あるいは発育不全が引き起こされる.
 初期のPKU診断では制限酵素消化断片長多型(RFLP)によるハプロタイプ解析が主流であった.保因者の大半がハプロタイプヘテロ接合を示す白人では,RFLPハプロタイプによるPKU診断がかなりの程度まで可能とされている.しかし,正常および変異遺伝子の約80%が同一のハプロタイプに連鎖している日本人・中国人では,この方法による確定診断は実際上不可能である.近年の目覚ましい遺伝子診断技術の進歩によって,現在ではPCR直接シークエンシングによるPAH遺伝子変異の同定がPKU診断の有力な手段となっている.

トピックス

感染症領域における遺伝子治療の展望

著者: 徳江豊 ,   渡辺彰 ,   貫和敏博

ページ範囲:P.92 - P.93

1.はじめに
 遺伝子治療の適応疾患は,技術,安全性,倫理など複数の側面から考慮されるべきである.現在,感染症の領域では通常の治療法では制御できない感染症,すなわちHIV感染症,エイズのみがその適応とされている.エイズの遺伝子治療は,細胞へ抗HIV遺伝子を導入してHIVの遺伝子発現とその働きを抑制阻止し,ウイルスの複製とエイズ発症を防ぐ試みであり細胞内免疫法と呼ばれている1)

乳癌-甲状腺癌家系

著者: 野水整

ページ範囲:P.94 - P.95

 乳癌は家族集積性を示す癌の1つであり,乳癌多発家系の報告も多い1,2).これらの乳癌は一般に家族性乳癌と総称され,臨床的な定義として,A.第1度近親者(親,子,同胞の関係)に3名以上の乳癌患者がいる場合,B.第1度近親者に2名の乳癌患者がおり,そのいずれかが①40歳未満の若年者乳癌,②両側乳癌,③他臓器重複癌のいずれかを満足するものと,定めている2).そのほとんどは遺伝的要因を背景に持つと考えられ2),最近いくつかの原因遺伝子が発見,同定された3).乳癌多発家系の家系内腫瘍スペクトラムを調べると,乳癌のみが集積している家系のほか,乳癌一卵巣癌家系,乳癌―前立腺癌家系,乳癌―消化器癌家系,あるいは乳癌一甲状腺癌家系などがみられる.これらのうち乳癌―卵巣癌家系については,gernlineでのBRCA 1遺伝子の変異が原因で起こる遺伝性疾患で,Familial Bresat/Ovarian Cancer syndromeという1つの疾患単位として認知されている3).ここで述べる乳癌―甲状腺癌家系は,現在のところ原因遺伝子は同定されていないが,家族性乳癌の一亜型と考えられる.甲状腺癌(乳頭癌)は個人としての乳癌の重複癌として頻度の高いものであるし4),同じ甲状腺癌が家族性乳癌の家系内腫瘍スペクトラムで頻度の高いものである5)ことは興味深い.一方,甲状腺では,家族性髄様癌やMEN (多発性内分泌腫瘍症) II型の髄様癌が遺伝性腫瘍としてよく知られている6)が,甲状腺乳頭癌の家族発生も報告されている7).遺伝性の髄様癌では原因遺伝子がRET遺伝子であることが明らかにされている6)が,乳頭癌では明らかではない.
 当科の5家系を表1に示したが,乳癌は30~40歳代が多く,また,重複腫瘍が多いのが特徴である.家系3を図1に示した.遺伝性乳癌の原因遺伝子の1つであるBRCA 1遺伝子の変異の有無をすべての患者の血液サンプルで調べたが陰性であった.

質疑応答 臨床生理

ホルター心電図の判読

著者: 田辺晃久 ,   Y生

ページ範囲:P.96 - P.99

 Q ホルター心電図について質問します.68歳女性,胸の異常感で外来受診.検査結果として,ISOABN 921ケ,一過性心室性2段脈(+)数回.10秒ぐらい洞性頻脈(+)数回,PM 10時,1分間②のような波形が得られましたが,心室頻拍なのかアーチファクトなのか,そのほかのものなのかお教え下さい.

私のくふう

便の虫卵潜血検査法近代化への工夫

著者: 大竹敬二

ページ範囲:P.100 - P.100

 検便による人体寄生虫卵検査は少なくなったとはいえ重要な検査で最近は海外からの輸入野菜,ペットや海外旅行での感染などについて,指導教本だけでは,虫卵や成虫での正確な正体を判別することが困難になりつつある.今回の工夫は虫卵検査と保存および潜血検査を1枚の名刺大の厚さカードで,検査が簡単に正確にできないものかと試みたもので,虫卵潜血反応での検査をカード上で,より一層簡素化したものである.
 ここに作り方,試みた方法を記述した.検査担当者の参考となればと願っている.

研究

96穴平底マイクロプレートとマイクロプレートリーダーを用いたHelicobacter pyloriの薬剤感受性測定法の検討

著者: 伴場裕巳 ,   近藤行男 ,   黄麗明 ,   関根進 ,   松崎宸

ページ範囲:P.101 - P.106

 胃内視鏡生検材料から分離同定したHelicobacter pyloriを5%CO2インキュベーター中に静置した25cm2組織培養用フラスコ内で5%ウシ胎児血清加2%バイトックスおよび0.5%酵母エキス添加ブルセラブロスを用いて培養した.Helicobacter pyloriの増殖は良好で,同条件では96穴平底マイクロプレート中でも良好な増殖を認めた.また,菌の増殖は450nmの吸光度で測定することが可能であり,マイクロプレートリーダーで自動測定することができた.したがって,この条件下で96穴平底マイクロプレートとマイクロプレートリーダーを用いた微量液体希釈法によるHelicobacter Pyloriの薬剤感受性測定が可能であった.本法による各種薬剤のMICは,従来の寒天平板希釈法による報告とほぼ一致し,本法の有用性が示された.

資料

検査部門内物流システムの構築―院内統合物流システムへの展開に向けて

著者: 大門良男 ,   内記三郎 ,   林史朗 ,   川島猛志 ,   多賀由紀子 ,   吉田郁子 ,   笹倉玉恵 ,   新谷憲治 ,   櫻川信男 ,   石田達樹 ,   日合三雄 ,   林隆一

ページ範囲:P.107 - P.112

 試薬・消耗品などの発注,在庫管理は,日常業務の中で繁雑であり,省力化を求められるものの1つである.筆者らは,試薬・消耗品の発注,納入状況,在庫管理はもとより,有効期限やロット番号についても容易に把握可能な物流システムを構築した.この結果,業務の省力化,情報の一元管理が可能となるとともに,経営効率の把握に必要な情報が容易に得られるようになった.また,物流システムが将来病院全体で稼働したときにも容易に接続可能な設計とした.

編集者への手紙

下痢を起こすクリプトスポリジウム

著者: 山田誠一 ,   友田弥里 ,   モアゼムホセインモハメッド ,   月館説子 ,   藤田絋一郎

ページ範囲:P.113 - P.114

1.はじめに
 1996年夏,下痢の集団発生の原因になった病原性大腸菌O157:H7は全国的に大問題となり,指定伝染病の指定まで受ける事態になった.1992年11月に発行された『東京都感染症マニュアル』にはすでにO157:H7は記載されているが,今回は,発症患者数が空前の規模となり,下痢もあなどれない感染症であることを改めて思い知らされた.O157以外にも本年6月には埼玉県越生町で水道水に混入した原虫"クリプトスポリジウム"が原因とみられる下痢症の集団発生があった.下痢はいろいろな微生物が原因で発症する.原因になる原虫には,赤痢アメーバ,ヒトブラストシスチス,ランブル鞭毛虫,戦争イソスポーラ,大腸バランチジウム,クリプトスポロジウムなどがある.これらの原虫の中には日本の経済規模が拡大して,海外との交流が盛んになったことで,日本国内に持ち込まれるようになった原虫も多くなっている.
 このたび中米のコスタリカの首都サンホセの某病院の受診者(現地人)の糞便を検査する機会があったので,その結果とともに若干の考察を加え,報告する.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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