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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査41巻9号

1997年09月発行

雑誌目次

今月の主題 臨床化学分析の指示反応系 巻頭言

臨床化学分析の指示反応物質の現状

著者: 片山善章

ページ範囲:P.979 - P.980

 生体試料中の各種成分の化学的分析とは,化学反応を利用して測定するという意味であるが,最近の臨床化学検査の一部を除いて,ほとんどが酵素反応を利用した酵素的分析に変遷した.したがって,現在の臨床化学検査は,この酵素的分析を利用した自動分析装置による測定が主流になった.
 酵素的分析の特徴は, (1)酵素の特異性を利用して,多成分系である生体試料中の目的成分を除蛋白や有機溶媒抽出などの繁雑な操作を経ずに測定することができる.

総説

指示反応系の基礎知識

著者: 小川善資 ,   伊藤啓

ページ範囲:P.981 - P.988

 迅速,簡便で精度が高く,しかも超高感度で測定することを望まれている臨床化学検査では分析に関するさまざまな工夫が施され,期待にこたえようとしている.酵素や抗体の特異性を生かし,分離操作を実施することなく,種々雑多な物質が混在するなかで,正確に測定できるように測定系を組み立てることに成功したのはその1つである.この成功を支えてきたのが指示反応の進歩である.しかし,今までの分析の概念を打ち破るような超高感度分析が要求されているのも事実である.まだまだ,すべての要望にこたえられるような指示反応はできていない.だからこそ,現在使われている指示反応系の長所,短所を十分に知ったうえで上手に利用することが望まれている.

指示反応系の特徴と問題点

NAD(P)H定量法

著者: 池田昌郁 ,   渡津吉史

ページ範囲:P.989 - P.993

 臨床検査における生化学項目の測定に用いられている指示反応には,過酸化水素定量法,ホルマザン定量法,合成基質定量法,NAD(P)H定量法などがある.この中でNAD(P)H定量法は,生体内の還元性物質をはじめとする干渉物質の影響を受け難く,変動がきわめて少ないNAD(P)Hのモル吸光係数を用いることができる利点を有しており,日常検査の精度を更に向上させる方法である.

NADH-ホルマザン系―水溶性ホルマザン

著者: 石山宗孝

ページ範囲:P.995 - P.1000

 テトラゾリウム塩を用いる生化学検査においては,生成するホルマザンの沈着による測定系の汚染が大きな問題であった.水溶性ホルマザンを生成する新規テトラゾリウム塩(WSTシリーズ)を開発したことにより,この問題を解決することができた.また発色感度も従来のNitro-TBより高く,生化学検査への適用が期待される.

(NADH)-ホルマザン系―不溶性ホルマザン

著者: 浦田武義

ページ範囲:P.1001 - P.1012

 テトラゾリウム塩の応用は広く,その有用性はつとに知られているところであるが,古くは19世紀に合成に成功し,多くの誘導体が生まれては消え淘汰されてきた歴史はあまり知られていない.本稿ではその由来を概観し,テトラゾリウム塩を用いる際の問題点および近年における主な応用例を時系列に述べた.すなわち電子伝導体としてジアホラーゼの採用によるLDHアイソザイム分画測定など,デヒドロゲナーゼ系検出測定への応用,ブロッティングのための高感度抗原染色検出法,デヒドロゲナーゼ系とテトラゾリウム塩の組み合わせによる組織内脂肪局在の分別染色法,および血清中コレステロール(TC),トリグリセリド(TG),リン脂質(PL)分画の分別測定法の概要と問題点を述べる.

H2O2-POD系

著者: 青山典仁

ページ範囲:P.1014 - P.1019

 Trinderが4-アミノアンチピリンとフェノールの組み合わせをグルコースオキシダーゼを用いたグルコースの比色定量に用いて以来,臨床検査の分野における酵素的測定法の爆発的普及と並行して,特にオキシダーゼ系における発色試薬の研究開発が盛んに行われてきた.共存物質の影響を受けにくい,安定でより高感度な発色試薬を目ざしてカップリング型とロイコ型の発色試薬が数多く合成され,モル吸光係数の理論的限界に近い105前後の色素を生成する化合物も実用化されている.

H2O2-POD系を利用した染色

著者: 田中公和 ,   三木康弘

ページ範囲:P.1020 - P.1024

 酵素抗体法を利用した染色法,特に最も汎用されている過酸化水素-ペルオキシダーゼ(H2O2-POD)系の色素原(chromogen)に焦点を絞り,発色試薬側面からみたPOD高感度検出系の開発進展についてまとめた.
 まずは,発色試薬の取り扱いに関する一般的な諸注意,染色する組織切片や蛋白質転写膜の前処理・後処理の重要性について触れた.そして,発色試薬の検出感度比較例,多重染色法,および複数の発色試薬を組み合わせ使用してPOD検出を高感度化するNadi反応について,文献報告例を紹介しながら概説した.
 酵素抗体法の発色試薬による染色は,特別な設備や機器を必要としない点,気軽に利用できる検出系であり,大いに活用したい検出手法である.

PNP,CNP

著者: 金島才仁 ,   小川善資

ページ範囲:P.1025 - P.1028

 PNPとCNPは,コンティニュアスモニタリング法に用いられる酵素活性測定用基質のための指示反応物質としてたいへん便利なものである.アルカリホスファターゼ,α―アミラーゼ,α―グルコシダーゼ,β―グルコシダーゼなどの加水分解酵素の活性測定に多用されており,酵素活性を1段または2段反応で測定できるメリットがある.一方では,PNP・CNPの発色強度の至適pHと酵素活性の至適pHの一致しない例が多くあり,また検体中のアルブミン遊離脂肪酸の影響を受けやすいという問題があるから,測定の精度や目的に応じて使い分ける必要がある.

コレステロール測定の指示反応系

コレステロールオキシダーゼ-POD法

著者: 大澤進

ページ範囲:P.1029 - P.1032

 コレステロールオキシダーゼ-POD反応系を用いたコレステロール測定における酵素および検出系試薬にかかわる問題点を整理した.特にPOD検出系に与える血清中の干渉物質の検出法とその主な干渉物質を明らかにした.コレステロールオキシダーゼは定量用酵素試薬としては実質的に優れているが,POD酵素はその非特異的作用により種々の干渉物質の影響を受け,その主な成分はビリルビンであった.この検出系は短時間で安定性に優れた日常検査法として有用であるが,標準法などに利用するには限界がある.

コレステロールデヒドロゲナーゼ-UV法

著者: 松本祐之 ,   森下芳孝 ,   深津俊明

ページ範囲:P.1033 - P.1038

 コレステロールデヒドロゲナーゼ-UV法は,反応性,直線性,再現性,試薬の安定性において良好であり,コレステロールオキシダーゼ法で問題となる還元物質の影響のみならず,他の影響物質からの干渉をまったく受けない特異的かつ精密な測定方法である.米国の実用基準法であるAbell-Kendall法とも一致し,正確度にも優れた方法である.
 UV法であるためNADHの分子吸光係数により理論的な濃度算出が可能であり,コレステロール測定における標準物質の検定や標準物質の製品管理などの客観的な評価ができる.

コレステロールデヒドロゲナーゼ-ホルマザン法

著者: 栢森裕三 ,   片山善章

ページ範囲:P.1039 - P.1045

 酵素的測定法を利用したコレステロール測定の指示反応系には,コレステロールオキシダーゼによって生成する過酸化水素を,ペルオキシダーゼ-色原体に導く可視域での測定法が一般的である.さらに最近,コレステロールデヒドロゲナーゼを利用したピリジンヌクレオチド(NADH)の変化に基づく,紫外部での検出反応が報告されている.本稿ではこれらの検出系とは異なり,コレステロールデヒドロゲナーゼによって生成したピリジンヌクレオチドを,水溶性ホルマザン色素を生成する新規テトラゾリウム塩を利用して検出する測定法について紹介する.

話題

アミラーゼ活性測定法の指示反応系

著者: 牧瀬淳子

ページ範囲:P.1047 - P.1050

1.はじめに
 α-アミラーゼ(AMY:EC 3.2.1.1)活性測定法は本来の基質であるデンプンのような高分子量のα-1,4グルコシド結合を水解する方法から,構造の明確なオリゴ糖またはその誘導体を基質とする方法に変化している.それは近年,オリゴ糖の生成が容易になったことと,サイクロデキストリントランスフェラーゼによる糖転移反応の利用により,還元末端グルコースへの各種化学基の修飾が容易となったことなどの技術進歩の結果である.この合成オリゴ糖を基質にした酵素的測定法は,AMY反応で遊離した生成物を共役酵素の存在下で,検査可能な化合物や色素に変化させて測定する方法である.これらの方法を指示反応系で分類して,各測定法について説明する.

高感度測定への試み―チオ-NADを用いた酵素サイクリング法

著者: 美﨑英生

ページ範囲:P.1051 - P.1053

1.はじめに
 臨床検査において測定の高感度化が望まされているが,その1つの方法として,酵素サイクリング法がある.酵素サイクリング法は酵素または補酵素の組み合わせにより,測定目的物質のみを増幅して定量する.いわば核酸増幅法であるPCRに匹敵する方法である、本法は酵素の基質特異性,反応特異性により目的物質のみを増幅させることから,検体中の共存物質による測定への影響を軽減させ,目的物質を増幅定量するものであり,比色測定,電気化学的測定が応用できる.また,蛍光や発光測定と組み合わせることにより,さらに高感度化が可能である.
 酵素サイクリング法には図1に示すように,A法:酸化酵素―脱水素酵素系,B法:チオ-NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)系,C法:補酵素サイクリング系などがあるが,ここでは筆者らが開発した脱水素酵素と2種の補酵素(チオ-NAD:NADH)を組み合わせたユニークなB法:チオ-NAD法を紹介する.

今月の表紙 深在性真菌症の臨床検査シリーズ・5

酵母様真菌による感染症(3)―酵母の形態学的,血清学的および分子生物学的性状検査

著者: 山口英世 ,   内田勝久 ,   槇村浩一

ページ範囲:P.974 - P.975

 前号で述べたように,臨床検体から分離される酵母菌株の菌種同定は,現在主として生化学的性状に基づいて行われる.しかし,特定の菌種については,特徴的な形態学的性状や血清学的性状が同定のうえできわめて有用である.
 特徴的な形態学的性状としては,①仮性菌糸形能,②厚膜分生子(厚膜胞子)形成能,③発芽管形成能,④分節型分生子(分節胞子)形成能,⑤莢膜保有能などが挙げられる.なかでも②,③はCan-dida albicansに,④はTrichosporon beigeliiそのほかのTrichosporon spp.に,⑤はCryptoco-ccus neoformansに各々特異的であり,各菌種の同定の有力な指標となる.ただし,②については,この能力を欠くC.albicans臨床臨床分離株が少なくない点は,留意しなければならない.またそうした分生子の形成を十分支持する培養条件(例えば,コーンミール寒天)を用いて試験する必要があることは言うまでもない.図1にC.al-bicansの厚膜型分生子形成像を,図2にT.beigeliiの分節型分生子形成像を,図3にCr.neoformansの莢膜像を示す.

コーヒーブレイク

されどゴルフ

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.993 - P.993

 遊びともスポーツともとれるゴルフはまた生きてゆくうえに種々の示唆を与えてくれるものでもある.私もこの道に親しんで早30年にもなり,スコアはハーフでこの2倍もたたく始末であるが,ほかの仕事と違って一向に足を抜く気にならないのは不思議である.
 最近彗星のように(実際はそうでないが)現れた米国のプロゴルファーのタイガーウッズは,今年夢の舞台マスターズでニクラウス以来のぶっちぎり優勝の新記録で世界の話題をさらった.東洋系カラー人種であることも話題の1つだが,若くて謙虚で何よりこれからどんな記録を樹てるかわからない未来を秘めているのが,21世紀に入る世界の期待の星のように映る.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Technology編

染色体の電子顕微鏡観察法―走査電顕法

著者: 飯野晃啓 ,   稲賀すみれ

ページ範囲:P.1055 - P.1061

走査電顕(SEM)法
 走査電顕(走査型電子顕微鏡scanning electron micro-scope;SEM)による染色体観察の試みは,スライドグラスに広げた光顕用標本をそのまま観察することから始まった1,2).一般にSEMで観察される像は焦点深度が深く立体的であるが,スライドグラス上に広げた染色体は,空気乾燥の際にかかる表面張力のために押しつぶされて本来の立体構造が損なわれてしまう.また,染色体の周囲に細胞質や細胞膜が残っていることもしばしばであり,本来の微細構造が十分に把握できないという難点があった.そこでSEM観察のための染色体試料作製技術が次々に開発された.それには,光顕標本の直接観察法のほか,透過電顕(透過型電子顕微鏡transmission electron microscope;TEM)法にも用いられた染色体単離法や界面展開法のSEMへの応用3,4),細胞を割って染色体を剖出する凍結割断法5),染色体以外の細胞成分を溶解除去する酢酸加熱法6,7),光顕用標本に導電染色を繰り返し施すオスミウム・チオカルボヒドラジド法8)などがある.さらに最近では,クロマチンの最小単位であるヌクレオソームやDNAをSEMで観察するために微小遠沈法9,10)が改良して用いられている11)

Application編

発作性夜間血色素尿症

著者: 西村純一 ,   弘田稔幸 ,   木谷照夫

ページ範囲:P.1062 - P.1067

はじめに
 発作性夜間血色素尿症(paroxysmal nocturnalhemoglobinuria;PNH)は,血色素尿を主徴とする血管内溶血性貧血であるが,その病因に関する分子レベルでの成績は,1983年にdecayaccelerating factor(DAF)がPNH患者の異常赤血球において欠損しているという報告が最初である.その後,補体活性化の後期段階を制御しているCD59もPNH赤血球で欠損していることが判明し,PNHは補体活性化制御蛋白の欠損病として把握された.さらに同じころ,PNH患者の異常赤血球はこれらの蛋白のみならず,ほかにも欠失した蛋白があることが判明した.これらの欠損蛋白は,すべてglycosylphosphatidylinositol(GPI)と言われる糖脂質を利用し,細胞膜にアンカーするGPIアンカー型蛋白(GPI-AP)と呼ばれるものであった.
 PNHは後天性の疾患でこの異常は血液細胞でのみ検出されるので,造血幹細胞に体細胞突然変異が生じたクローナルな疾患と理解された.また,PNH細胞ではすべてのGPI-APが欠損しており,個々の蛋白の構造遺伝子は正常なので,PNHの病因はGPIアンカー合成にかかわる遺伝子の変異であろうと考えられた.この合成系には少なくとも10段階のステップがあり,細胞融合による相補性の実験から8種類の異なる変異細胞株が知られていた.

トピックス

HDL亜分画(LpA-IとPreβ1-HDL)

著者: 三井田孝

ページ範囲:P.1068 - P.1070

1.はじめに
 高比重リポ蛋白(HDL)は,末梢組織の過剰なコレステロールを引き抜き肝へ運ぶコレステロール逆転送系の主役である.HDL重量の約半分は蛋白で,残りの半分が脂質である.コレステロールはHDL重量の15~20%を占めるにすぎないが,従来からHDL分画のコレステロールがHDL量の指標として測定されてきた.しかしコレステリルエステル転送蛋白(CETP)欠損症のように機能の低下したHDLが増加する場合があり1),HDLの質的診断の手段としてHDL亜分画を測定する意義がある.

プロトン核磁気共鳴(1H NMR)を用いたヒト病原菌の菌種同定

著者: 大原智子

ページ範囲:P.1070 - P.1072

 1946年,Bloch1)とPurcellら2)によって発見された核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance:NMR)とは,静磁場中で原子核のスピンの向きが変化するのに伴って観測される物理現象のことである.NMRスペクトルは試料が示すNMR現象をグラフに表したもので,物質の化学構造と反応機構の研究手段として現在最も便利な方法の1つである.微生物に対してプロトンNMR (1HNMR)が用いられ始めたのは1970年代後半から3,4)で,主としてその代謝機構の解明が目的であった.
 1995年,Delpassandら5)は高分解能1H NMR分光器を用いて,ヒト病原菌のNMRスペクトルを測定し,そのパターンから菌種の迅速同定を試みた.方法は,菌体を浮遊させた重水を入れた試料管を磁極の間に挿入して一定の周波数で照射し,さらに磁場を変化させ,吸収スペクトルをチャート紙上に書かせるものである.われわれも同様の方法でEscherichia coli,Staphylococcus aur-eus, Pseudomonas aeruginosa, Klebsiella Pneumoniaeの4菌種の1H NMRスペクトル測定6)を行った.図1に4菌種の典型的な1H NMRスペクトルを示す.4.5ppmより低磁場ではシグナルはほとんど認められず,菌種や菌株によってシグナルの位置や形状は異なるが,0.5~4.2ppmの範囲において約8~9のシグナル群が認められた.これらのシグナルのうち,4菌種いずれにも認められる6群を図1に示したように,それぞれの位置に応じて高磁場よりAからF群に便宜的に分類した.E.coliとK.pneumoniaeは0.8~1.10ppmに高いシグナルを認める菌株が多く,70~80%の菌株が対照としたC群のシグナルの50%以上であった.S.aureusの90%は3.27ppm付近に最も高いシグナルを有し,さらに特徴的な小さいシグナルを1.40~1.50ppmに認めた.P.aeruginosaに特徴的なスペクトルは3つのシグナルで構成される2.30~2.40ppmのシグナル群である.一方,K.Pneumoniaeは特徴的なNMRスペクトルには乏しかった.再現性は良好であり,超音波で菌体を十分に破砕した前後の試料においても,NMRスペクトルに著変はみられなかった.1試料あたりの測定時間は画像処理も含めて約40分間であった.

質疑応答 一般検査

Schmidt昇汞試験に代わるものは?

著者: 虻川大樹 ,   田沢雄作 ,   Q生

ページ範囲:P.1073 - P.1074

 Q 乳幼児の胆管閉塞時にSchmidtの昇汞試験の依頼が年に何回かありますが試薬の最終処理ができないので断りました.これに代わるものはないのでしょうか? もしあればどのようにすればよいのかお教えください(設備の関係上できるだけ簡便で有効な方法をお願いします).

その他

現在の化学電池の種類と特性とその利用

著者: 鹿島哲 ,   K生

ページ範囲:P.1075 - P.1080

 Q 最近アルカリ電池に代わってリチウム電池が,ニッケル・カドミウム蓄電池に代わってニッケル・水素蓄電池が使われるなど,たくさんの種類の電池が使われるようになりました.それらを使い分け利用するために必要な解説をしてください.

学会だより 第47回 日本電気泳動学会春季大会

現代医療における電気泳動法のプレゼンス―先端医療から日常診療まで

著者: 陰山克

ページ範囲:P.1081 - P.1082

 第47回日本電気泳動学会春季大会は,去る1997年6月6~7両日にわたり,東京野口英世記念会館で東京医科歯科大学教授保崎清人会長のもとに開催された.特別講演は"酸化ストレスと生体の防御機構"と題して大阪大学医学部生化学教室の谷口直人教授が講演され,酸化ストレスに対する防御機構が破綻することにより,老化,炎症,癌やAIDS,自己免疫疾患,動脈硬化,糖尿病,神経変性疾患などが発症したり進展する.また細胞レベルでもアポトーシスや細胞増殖などに活性酸素の関与がみられ,酸化ストレスが引き起こされるが,これに対して抗酸化機構の中でレドックス制御機構があることを証明された.そして酸化ストレスに対する生体の応答性を,NOとスーパーオキシドとのクロストークがいかに重要であるかを潰瘍性大腸炎ラットモデルの実験データで説明され,また膵臓B細胞はNOによるアポトーシスを起こすが,ここでも類似の反応がみられるであろうと述べられた.
 教育講演では"レトロウィルスのトピックス"と題して東京医科歯科大医学部微生物学教室の山本直樹教授から,1996年はエイズの歴史により,エポックメーキングな年となったいくつかの華々しい研究成果についてのレビューを同教室の研究を混じえて報告された.

資料

コンパクト2の有用性の検討

著者: 田中和彦 ,   篠原和幸 ,   廣田由美 ,   中川文一 ,   中居幸雄

ページ範囲:P.1083 - P.1085

 血液ガス分析機は呼吸機能の評価に不可欠であり,臨床検査部だけでなく手術室やICUなどでも広く用いられている.したがって,装置はコンパクトでしかも操作が簡単であることが求められている.今回AVL社のコンパクト2がこの目的に適しているか否かを検討したので報告する.本装置は操作が非常に容易でメンテナンスも少なく,測定時間が20秒と早く,サンプル量が50μlと他機種に比べて少なく,特に緊急・小児科領域に有用であった.

編集者への手紙

AST/ALT比が0.87となることの検討

著者: 小林正嗣

ページ範囲:P.1087 - P.1088

1.はじめに
 血清中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase;AST)とアラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine amhlotrallsferase;ALT)の活性値の比(AST/ALT比)は,JSCC勧告法準拠試薬による日常一般法(IU/l,37℃)では,カルメン法の1に対し0.87であることが確認されている1).また,筆者らが先に報告した同日常一般法による健診例の測定値2)は,AST/ALT比が,男性群のASTとALTの各平均値の対比において0.87となること,女性群の各平均値+3SDでの対比またはノンパラメトリック法による各上限値での対比においていずれも0.87に近い値となることを示している.
 一方,トリグリセライド水解酵素―肝性リパーゼ(hepatic triglyceride lipase;HTGL),リポ蛋白リパーゼ(lipoprotein lipase;LPL)およびホルモン感受性リパーゼ(hormone sensitive lipase;HSL)の酵素蛋白におけるアスパラギン酸(Asp)およびアスパラギン(Asn)とアラニン(Ala)の各合計存在比(以下トリグリセライド水解酵素のAsp+Asn/Ala比)は表1から0.87の近似値であることが推定される.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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