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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査43巻4号

1999年04月発行

雑誌目次

今月の主題 原発性免疫不全症 巻頭言

原発性免疫不全症候群とその研究の流れ

著者: 早川浩

ページ範囲:P.371 - P.372

1.原発性免疫不全症候群の意義
 今月の主題「原発性免疫不全症候群」について,日常この領域に馴染みが薄い読者のためのオリエンテーションをしよう.
 原発性免疫不全症候群とは,種々の免疫遂行因子の1次的な欠陥により,感染をはじめとするさまざまな症状を呈する疾患の総称であり,なんらかのほかの疾患や病態に基づく2次的な免疫系の障害であることが明らかな場合,すなわち続発性免疫不全症候群と区別される.免疫系の1次的な欠陥は多くの場合,遺伝により,既に種々の疾患で責任遺伝子が同定され,その変異が研究されていることは後章に詳しく述べられよう.

総説

原発性免疫不全症の診断

著者: 﨑山幸雄

ページ範囲:P.373 - P.379

 原発性免疫不全症はその臨床像と免疫機能の欠陥から抗体欠乏症,複合免疫不全症,食細胞機能不全症に大別することができる.抗体欠乏症はB細胞の分化・活性化に関わる分子の欠陥による.複合免疫不全症は主としてT細胞の分化・活性化に関わる分子の欠陥で,B細胞の機能異常はT細胞から適切な相互作用を受けられないことによる.
 T,B両細胞の分化・活性化に関わる分子が明らかにされつつあるので,その診断も分子レベルで考えることが必要である.

原発性免疫不全症候群の分子遺伝学

著者: 高木正稔

ページ範囲:P.380 - P.387

 近年分子生物学の進歩に伴い多くの原発性免疫不全症の責任遺伝子が明らかにされてきた.その責任遺伝子の解明は疾患において欠損している機能の原因の検索から遺伝子側へアプローチするする方法,先にある遺伝子が知られていてそれから推定される機能の欠損が免疫不全であった場合,臨床と基礎との2方向からのアプローチによってなされてきた.現在まで原発性免疫不全症の診断は末梢血におけるその数の異常および機能の異常に注目してなされてきた.しかし近年の多くの原発性免疫不全症の責任遺伝子の解明はその診断に多くの分子生物学的手法を取り入れ,実際の臨床においても遺伝子診断やそれに基づく遺伝相談が行われている.またADA欠損によるSCID (重症複合免疫不全症)では遺伝子治療も行われ良好な成績を上げており,これからの原発性免疫不全症の診断,治療においては分子生物学的な病態の理解が重要となってくる.

原発性免疫不全症の病理―病因・病態について

著者: 岡野素彦 ,   小林邦彦

ページ範囲:P.388 - P.398

 原発性免疫不全症は,生来免疫系に遺伝的欠陥を持つ疾患群である.その結果,主に感染症の重症化・遷延化・再発が高頻度に認められる.主な感染防御機構は細胞性免疫・抗体・補体・食細胞機能などに集約され,それぞれの欠陥あるいは重複した機能不全が特徴的な病態をもたらす.本稿ではまずそれら感染防御機構の仕組みを述べ,また,この機構を理解するうえで最近特に注目される各種サイトカインおよびシグナル伝達機構を概説する.次に,どのような欠陥が特異な原発性免疫不全症に関与するのかにつき,代表的な例について要約を述べた.

検査法

リンパ球機能検査法

著者: 天野宏一 ,   竹内勤

ページ範囲:P.399 - P.404

 リンパ球機能検査の多くは,アレルギーの原因物質の推定/同定に利用されているDLSTや一部の皮膚反応以外,直接疾患の診断に役だつものではない.しかし種々の疾患,病態において,個体の免疫能をnetで評価する方法としてこれらの機能検査は価値がある.

補体検査―MBL欠損症について

著者: 松下操 ,   野澤亜紀子 ,   藤田禎三

ページ範囲:P.405 - P.411

 MBL(mannose-binding lectin)はヒト血清レクチンの1つで,微生物が持つマンノースやN―アセチルグルコサミンに結合して補体系を活性化する.MBLによる補体活性化経路はレクチン経路と呼ばれ,MBLに会合する新たなセリンプロテアーゼMASP(MBL-associated serine protease)が関与している.遺伝子変異によるMBL機能不全は血清オプソニン化能を低下させ,ときに繰り返し感染などを起こす免疫不全のリスクファクターである.ヒトの生体防御に関わるMBLとさまざまな病態との関連性を示唆する報告がされ,MBL遺伝子型の決定や血中濃度測定には免疫関連検査としての応用が期待されている.

好中球機能検査法

著者: 北川誠一

ページ範囲:P.412 - P.418

 好中球機能検査は一般に細菌感染症を反復する患者の診断目的に行われる.好中球には遊走能,接着能,貪食能,脱顆粒,活性酸素産生能,殺菌能など極めて多くの機能が備わっている.これらの機能のいずれに障害があっても,生体は反復する細菌感染症に罹患することになる.臨床的にその頻度と重篤性から最も重要な疾患は慢性肉芽腫症である.したがって,臨床検査の面からはNBT還元テストとスーパーオキシド産生能の検査が最も重要である.

病因解析

重症複合免疫不全症

著者: 松岡宏 ,   柘植郁哉

ページ範囲:P.419 - P.424

 細胞性ならびに液性免疫能をともに先天的に欠く重症複合免疫不全症(SCID)の病因について,①"T細胞,B細胞ともに著減したSCID"はVDJ再編成機構の異常として,②"B細胞を有するSCID"はサイトカイン受容体シグナル伝達系の異常としてとらえて,最近の知見を概説した.

X連鎖無γグロブリン血症

著者: 金兼弘和 ,   宮脇利男

ページ範囲:P.425 - P.428

 低γグロブリン血症を呈する原発性免疫不全症の多くにX連鎖無γグロブリン血症(XLA)がある.その原因遺伝子がBruton's tyrosine kinase(Btk)と同定され,遺伝子解析が行われるようになってきた.しかし遺伝子解析は時間と労力を要するため,われわれはフローサイトメトリーによるXLAの患者・保因者診断法を開発した.これまでの解析により,わが国において少なくとも90家系以上のXLAが存在することが明らかとなった.また家族歴の全くない症例や明らかな低γグロブリン血症を示さない症例などの非典型的なXLAが少なからず存在することも明らかとなった.

高IgM症候群

著者: 野々山恵章

ページ範囲:P.429 - P.433

 伴性劣性高IgM症候群はCD 40リガンドの遺伝子異常により起こる先天性免疫不全症である.B細胞へのCD 40刺激が入らないためクラススイッチが起こらず,IgG,IgAの低下を認める.さらに最近T細胞機能不全があり,Pneumocystis carinii肺炎や,Cryptosporidium感染などを起こし,予後が不良であることが判明してきた.

Ataxia telangiectasia (毛細血管拡張性失調症)

著者: 近藤直実 ,   深尾敏幸 ,   金子英雄 ,   笠原貴美子 ,   吉田任子

ページ範囲:P.434 - P.439

 ataxia telangiectasia (AT)の病因遺伝子,ATM遺伝子が1995年にクローニングされ,その遺伝子変異も明らかにされた.ATM蛋白の機能の全容を明らかにすることが,免疫系,神経系,内分泌系での役割を理解するのに重要である.さらに発癌機構の解明にもつながる.本稿ではATM遺伝子とその変異ATM蛋白の機能,下流に存在する蛋白,ノックアウトマウスなどにつき最近の報告を,筆者らの成績も含めて紹介した.

慢性肉芽腫症

著者: 蓮井正史

ページ範囲:P.440 - P.444

 慢性肉芽腫症(chronic granulomatous disease;CGD)は食細胞の活性酸素産生障害のため細菌および真菌感染症を反復する食細胞機能異常症である.Ni-cotinamide adenine dinucleotide phosphate(NADPH)酸化酵素の欠陥のため酸素依存性殺菌機構が働かず,易感染性を呈する.

WASP

著者: 小田淳

ページ範囲:P.445 - P.449

 Wiskott-Aldrich症候群の原因蛋白であるとされるWASPはその構造から低分子量G蛋白のエフェクターとして細胞骨格改編に作用するものと想定されている.以前,WASPはアクチン重合に関与することが指摘されたが,最近の知見からは,WASPの役割はT細胞抗原刺激の際などに限局しているらしい.このことからも明らかなように,WASPの機能にはまだ不明な点が多い.本稿では,WASPの機能と病態との関連についての最新の知見を紹介したい.

話題

原発性免疫不全症候群における感染予防対策と治療

著者: 上松一永 ,   小宮山淳

ページ範囲:P.450 - P.451

1.はじめに
 原発性免疫不全症候群は免疫系の欠陥を主病態とする先天性あるいは遺伝性の疾患群であり,感染に対する防御機構の破綻のため易感染性が生ずる.免疫系は,リンパ球による特異的免疫機構と,食細胞や補体などが関与する非特異的免疫機構とから成り立っている.特異的免疫機構を担う主要細胞には,Bリンパ球とTリンパ球とがあり,これらの障害によって,抗体欠乏や細胞性免疫の異常が生ずる.さらに食細胞機能不全や補体欠損など,非特異的免疫機構の破綻によって細菌などの反復感染が発症しやすい.原発性免疫不全症候群はこのように多種多様の疾患群であり,その重症度も疾患によりかなり異なる1,2)
 ここでは感染に対する一般的な予防対策から最近の治療について概説する(表1).

原発性免疫不全症に合併する悪性腫瘍

著者: 笠原善仁 ,   小泉晶一

ページ範囲:P.452 - P.454

1.はじめに
 悪性腫瘍,特にリンパ増殖性疾患は原発性免疫不全症(PID)の患者の死因の中で感染症に次いで2番目を占める.原発性免疫不全症全体での悪性腫瘍の発生率は約4%と予測されており,悪性腫瘍の危険率は健康正常人の100倍以上と想定される.さらに続発性免疫不全症においても高率の悪性腫瘍の合併が報告され,免疫系の監視機構と恒常性維持が悪性腫瘍発症においても重要であることが示唆される.基礎疾患の免疫不全症の発症原因の相違を反映し悪性腫瘍の種類や特徴,発生頻度は異なってくる.
 この稿では原発性免疫不全症における悪性腫瘍の種類や特徴,発生頻度を解説する.

ADA欠損症に対する遺伝子治療の現況

著者: 川村信明

ページ範囲:P.455 - P.457

1.はじめに
 遺伝子治療は,1990年に米国で開始されてから癌,AIDS患者を中心に多数例で施行されてきたが,その大部分で期待された臨床効果が得られず,さらなる基礎的研究が求められているのが現状である.その中で,ADA欠損症はある程度の治療効果が得られている数少ない疾患である.
 本稿では,筆者らが実施した遺伝子治療の結果を含めて,これまでに施行されたADA欠損症に対する遺伝子治療についてその概略を解説し,現時点における遺伝子治療の効果と問題点について言及したい.

遺伝子治療の医療経済

著者: 今井博久 ,   齋藤和雄

ページ範囲:P.458 - P.459

1.はじめに
 1990年9月に米国1)で世界初の遺伝子治療が原発性免疫不全症(SCID)であるADA欠損症に対して実施され,次いでイタリア2),オランダ3)と続き1995年には日本4)でも実施された.その後,癌やAIDSなどを対象疾患として3,000人以上の患者に試みられている.しかしながら,当初の熱気と裏腹にADA欠損症の遺伝子治療以外に明らかな有効性を示す論文は出ておらず,臨床研究よりも基礎研究をもっと重視すべきといった反省期に入った感がある.
 また実用化に向けて,医療経済的な課題も検討する必要がある.近年,医療費の高騰と医療技術の高度化により,米国や欧州を中心に医療に対する技術評価が進んでいる.今後,遺伝子治療は医療経済上の影響が大きくなると見込まれ,そのため技術評価の対象として重要な位置を占めると思われる.この点に関してFuchsら5)は,医療技術が普及していく諸段階においてどの段階でも技術評価(テクノロジーアセスメント)がなされるべきであると主張している.ことに初期の段階における技術評価は,その技術に対してさらに研究投資をすべきか,どのように技術改良すべきかなどを明らかにするうえで重要であろう.

今月の表紙 血液・リンパ系疾患の細胞形態シリーズ・16

慢性骨髄増殖性疾患

著者: 栗山一孝 ,   朝長万左男

ページ範囲:P.366 - P.367

 慢性骨髄増殖性疾患(chronic myeloprolifer-ative disorders; CMPD)の中には慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia; CML)をはじめ真性多血症(polycythemia vera; PV),本態性血小板血症(essential thrombocythemia; ET),骨髄線維症(myelofibrosis; MF)などが含まれるが,CMLを除くと各疾患相互の移行も認められ,あるいはいずれの病型にも分類し難くCMPDと診断せざるを得ない症例も存在する.
 MFは骨髄線維化のために骨髄穿刺を行ってもdry tapのため十分な骨髄穿刺標本による骨髄の形態観察ができない.したがって脾腫などの身体所見に加え,末梢血液像で赤血球の形態異常(破砕赤血球,涙滴赤血球など.図1)や核左方移動と同時に赤芽球の出現を認めるいわゆるleukoer-ythroblastosisを認める場合にはMFを疑って,骨髄生検を行い骨髄線維の有無を確認する必要がある(図2).多くのMF症例は血小板増多症を伴い,骨髄生検でも線維化の一部に巨核球の増生を認めることがよく経験される(図3).MFは骨髄線維化が進むと髄外造血の場としての脾臓が増大し著明な脾腫をきたすようになり,中に芽球の増生を認める急性転化を認めることがある.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Technology編

Helicobacter pylori

著者: 川口竜二 ,   川俣治

ページ範囲:P.460 - P.465

はじめに
 Helicobacter pyloriは1983年に発見された微好気性・グラム陰性の螺旋状短桿菌である.しかし薬剤などの外的刺激で,しばしば球状化(coccid form)する1,2).球状化により,ゲノムDNA量も減少し,菌の増殖やウレアーゼ産生に抑制がかかる3).この一見死滅したかにみえる菌が,沈静化したまま生息し,再びチャンスを得て,螺旋化し活性化する可能性もないわけではない.この菌は現在,大腸菌(Escherichiacoli)やHaemophilus influenzaeと共通祖先を有するProteobacteriaに分類される.1997年にH.pyloriの1つの株の全ゲノム配列が明らかにされた.その全塩基配列数は1,667,867bpから成り,1,590個の遺伝子を有すると推定されている4)
 H.pyloriの大きな特徴はウレアーゼ遺伝子を発現して,菌自体がその酵素の強い活性を有することにある.そのために胃液の厳しい酸性下でも生育し,胃壁にコロニーをつくる.H.pyloriと胃癌,胃潰瘍,胃炎および十二指腸潰瘍などとの関連も報告されてきた5,6)

Application編

拡張型心筋症

著者: 上野光

ページ範囲:P.466 - P.471

はじめに
 拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy;DCM)とは心筋収縮力の低下と心室の拡大を主徴とし,やがては薬剤耐性の心不全に陥いる極めて予後不良の疾患群であり,現在のところ心臓移植術しか根治の手段はない.拡張型心筋症と診断された症例の約半数が原因不明のいわゆる特発性DCMであるとされる.罹患率は人口10万人当たり5~8人とされているので1),わが国でも毎年6千~1万人の発症が予想される.ほかの心疾患に有効な治療手段が確立しつつある現在,循環器領域では今後ますます重要度の高まる疾患であるとも言える.
 拡張型心筋症は,病因ではなく病態に基づく疾患概念であるためさまざまな疾患単位を含んでおり,事実近年の分子遺伝学的・分子生物学的解析では複数の病因候補遺伝子が同定されているが(すなわち遺伝子異常は単一ではない),その数は今後ますます増加することが予想され,同じ病名であっても病因論的には異質性が極めて高い.また心筋症には初め心筋の肥大を示しながら,その末期には心室の拡張をきたしDCMと診断されるものも存在する.さらに明らかな遺伝性を示さない2次性の心筋症も多く存在する.以上,病態からひと括りにされた拡張型心筋症の中から遺伝子異常に基づく心筋症を選別し(特発性DCMの約20%に遺伝性を認める2),さらに病因となるべき遺伝子異常を診断することは意外と難しいことが予想される.

質疑応答 その他

デジタル辞書の現在と将来

著者: 鹿島哲 ,   K生

ページ範囲:P.472 - P.476

 Q 1998年11月に広辞苑の第5版が書籍およびCD-ROMとして発売されました.ほかにもそのような組み合わせで辞書が発売されていますが,将来デジタル辞書はどのような形式のものに発展するのでしょうか.

学会だより 第45回日本臨床病理学会総会

問題に果敢に挑戦し検査の本道を示す

著者: 松尾収二

ページ範囲:P.477 - P.477

 第45回日本臨床病理学会は,去る1998年11月11日~13日,高知市で高知医科大学臨床検査医学講座佐々木匡秀教授のもと開催された.
 今回の目玉は何と言ってもR-CPCであった.しかも7題は圧巻であった.事務局の準備は大変だったろうと推察する.R-CPCはごく簡単な臨床所見に日常的な検査データを提示し病態を把握するものである.検査データの判読法を身につけるには有益である.詳細な臨床所見や剖検所見は伏せてあるにも拘らず,各演者はしっかりとデータを読んでいた.私自身がコンサルテーションを受けた症例も呈示したが,ここまで読めるものかと感心した.参加した知り合いの臨床医も感心していた.演者は若い臨床検査医でありプレッシャーもあったろうが堂々とされており誠に頼もしかった.

第5回アジア臨床病理学会議

アジア臨床病理学の学術交流の成果あがる

著者: 森三樹雄

ページ範囲:P.478 - P.479

 第5回アジア臨床病理学会議(The Fifth AsianConference of Clinical Pathology)が第45回日本臨床病理学会に引き続き,1998年11月13日,14日に高知市の高知会館で開催された.出席者は総計185名で,その内訳は日本から127名,韓国35名,中国6名,台湾7名,インドネシア4名,トルコ1名,マレーシア1名,タイ1名,イタリア1名,アメリカ2名などであった.
 内容はシンポジウム2題,口演24題,ポスター発表52演題と盛会であった.日本臨床病理学会とのジョイントで,遠藤治郎会長の司会によりNIHのDr.Weinsteinの"Gs-alpha knockouts in mice andmen"招待講演があった.ノックアウトマウスを用いてAlbright hereditadry osteodystrophyの発現機序の解析に関する研究成果を発表した.Luncheon Sem-inarとしてRoche Diagnostics社後援による"Prog-ress of Diagnosis and Monitoring in HIV Infection"と河合忠先生の司会により,JCCLSの活動,NCCLSのGlobal Standardizationの講演があった.教育講演として,国立循環器病センターの松尾寿之先生より"New Profiles of Natriuretic Hormones"があった.櫻林郁之介日本臨床病理学会会長より"ClinicalDecision Levels on the Serum Lipids Abnormality inJapan"の講演があり,わが国の脂質代謝異常の診断基準や治療基準がアジア各国の流目を集めた.

第42回日本医真菌学会総会

新たな展開を模索する医真菌学

著者: 槙村浩一

ページ範囲:P.480 - P.480

 第42回日本医真菌学会総会(順天堂大学医学部総合診療科渡辺一功会長)が1998年10月25日,26日の2日間にわたり,砂防会館と全共連ビル(東京部千代田区)を会場として開催された.1998年は医真菌学にとって,ややインパクトに欠ける,谷間の年であったかも知れない.しかしその一方で,真菌症対策への関心と臨床的要請は日々高まっており,よた水面下では次世代に向けたさまざまな研究開発と実用化体制の確立も計られている.このような状況下,学会は医真菌学の新たな展開を模索する内容となったように思われる.その中で,将来的に臨床検査上下トピックスとなり得る演題のいくつかを紹介したい.
 学会の企画演題としては,①教育講演:"抗真菌剤の耐性機構",②シンポジウム:"Malassezia fur-frur-最近の話題","抗真菌薬の現状と展望",③ランチョンセミナー:"医真菌研究の新たな視点","血清で診る深在性真菌症","New Trends in the Treat-ment of Onychomycosis","皮膚真菌症と免疫反応"が用意された.シンポジウムで取り上げられたMalassezia furfrurは,従来癜風(しろなまず,くろなまず)と呼ばれる皮膚真菌症の起因菌としてのみ知られていた脂質要求性の担子菌系酵母である.ところが今日,本菌の病原性は,脂漏性皮膚炎(ふけ症を含む),毛嚢炎,アトピー性皮膚炎に及び,海外においては,新生児敗血症の起因菌としても注目されている.しかし,本菌は通常検査室で使用する培地単独では培養が不能であるため,一般の微生物検査室では培養同定がなされていない.演題では本菌の分子生物学的同定,および各疾患に対する病因論的な役割に関して活発な議論がなされた.今後,本菌感染症の診断と検査体制の確立が必要となろう.ランチョンセミナーのテーマの1つ,"血清で診る深在性真菌症"では,現行の補助診断法として有効とされている検査法のうち,β―グルカン測定法,抗原検出法,および遺伝子診断法のいずれも,臨床的要請に答え得る検査法の要件を満たしているものの,その結果,解釈のためにはより詳細な臨床試験が必要なことが浮き彫りにされた.また,"医真菌研究の新たな視点"では,植物由来のエッセンシャルオイルを用いたユニークな抗真菌アロマテラピーが報告され,話題を呼んだ.

コーヒーブレイク

相撲という国技

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.481 - P.481

 大相撲の横綱貴乃花を取り巻くマスコミの話題がにぎわった昨年の9月場所で,堂々と20回目の優勝を飾った貴乃花はバッシングを寄り切ったことになる.土俵態度をみても体形,四股,マナーの美しさで現在彼の右に出る力士は少ない。その点で不世出の名横綱と言われた双葉山の流れを継ぐ人である.
 双葉山は相手力士の立つときはいつでも受けて立って先手を取った名力士で,69連勝は現在と比し年間場所数のはるかに少なかった戦時中で稀有の勝星でもあった.この両者は風貌も似ているが,貴乃花のマインドコントロール騒ぎのときは,双葉山が爾光尊という新興宗教の女教主に私淑して警官の立ち入りに大手を広げて立ちはだかった新聞の写真を思い出した.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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