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雑誌目次

論文

臨床検査43巻5号

1999年05月発行

雑誌目次

今月の主題 結核 総説

最近の結核の実態

著者: 森亨

ページ範囲:P.491 - P.498

 世界中で結核問題への再認識が進み,その対策・研究は目覚しく活性化している.日本の結核は欧米の数倍の高さにあり,ことに最近は改善の低迷が著しい.その中で,弱みを持った特定階層(高齢者,免疫抑制宿主,社会経済弱者など)に発生が集中している.今後は重点的な対策(リスク集団への患者発見,規則的な治療の確保,中高齢者の発病防止など)を行う必要がある.そのためにも日本の医療界は結核問題を見直すべきである.

結核の院内感染の現状

著者: 青木正和

ページ範囲:P.499 - P.503

 1990年以後,結核の院内感染事件の発生が目立ち,全国各地から毎年数件報告されている.事件とはならない散発的な結核発病例も多い.わが国では結核はまだ多く,病院職員の大部分が結核未感染となり,病院の建物が近代化して飛沫核感染を起こしやすい環境となっていることなどによる.職種別にみると,検査技師の発病率は高いので,今,結核の院内感染防止策を進めることは,何処の病院にとっても緊急かつ重要な課題である.

結核の院内感染予防対策

著者: 山岸文雄

ページ範囲:P.505 - P.510

 結核の院内感染予防対策としてトリアージや採痰室の設置などの外来での患者管理,職員採用時におけるツ反応二段階試験によるベースラインの決定とそれに基づくBCG接種と化学予防の実施,細菌検査室での安全キャビネットの設置,感染を受けやすい処置や操作時におけるN95微粒子用マスクの使用などとともに,結核症の早期診断が極めて重要である.不幸にして院内感染が生じた場合にはその規模を最小限にとどめる措置が必要である.

技術解説―抗酸菌検査法

塗抹検査

著者: 藤木明子

ページ範囲:P.511 - P.514

 結核診断が急速に発展してきた現在でも,塗抹検査は結核診断の基本である.とりわけ最も危険な感染性結核患者の発見には確実で有効な方法である.そのためWHOは先進国,途上国を問わず塗抹検査を結核対策の重要な柱として位置づけている.世界的に最も用いられている方法に,Ziehl-Neelsen染色法と蛍光染色法があり,それぞれに特徴を持つ.塗抹検査の意義・有効性をよく理解し軽視することなくその実施の励行や技術の習熟に努めることが重要である.

培養検査―卵培地を用いた方法

著者: 田澤節子

ページ範囲:P.515 - P.520

 結核の確定診断は検査材料から結核菌を分離,同定することである.従来,結核菌を含めた抗酸菌の分離は小川培地が用いられていた.小川培地での前処理は簡便かつ雑菌混入率も低い.しかし,NaOHに代わるより温和な前処理と抗酸菌の発育支持力の優れた培地を用いることで,抗酸菌の検出率の上昇および検出日数の短縮が可能となる.

培養検査―液体培地を用いた方法

著者: 斉藤宏 ,   山根誠久

ページ範囲:P.521 - P.526

 Middlebrook 7H9などのブロス液体培地を用いた結核菌の培養が,迅速化へ向け不可欠となってきた.ブロス液体培地の採用には,有効な喀痰前処理法が前提となるが,報告されているNALC-NaOH法では雑菌の混入発育が多く,実際的ではない.われわれはsemi-alkaine protease(SAP)を併用するSAP-NALC-NaOH法を考案し,満足できる結果を得ている.ブロス液体培地の採用で,小川培地よりも30~40%高い陽性率と培養の早期に抗酸菌陽性を判定することができるようになった.

核酸同定法―分離培養を用いる場合

著者: 草場耕二 ,   青木洋介 ,   只野壽太郎

ページ範囲:P.527 - P.531

 現在,細菌同定法の一手段として遺伝子工学技術を用いた検査法が導入されてきた.微生物検査領域における遺伝子検査には,検査材料から直接行う方法と分離培養後のコロニーを使用して行う方法とに区別される.分離培養後のコロニーを使用した核酸同定法には,主にrRNA (リボソームRNA)をターゲットとしたアキュプローブ法と全DNAをターゲットとしたDDH法がある.ここでは,この2種類の遺伝子検査法について紹介する.

核酸同定法―検体から直接検出する場合

著者: 後藤美江子

ページ範囲:P.533 - P.539

 現在,わが国では抗酸菌検査の核酸増幅法として,①TMA (transcription mediated amplification)法によるDNAプローブ"中外"-MTD,②PCR (poly-merase chain reaction)法に基づいたアンプリコアマイコバクテリウム,③LCR (ligase chain reaction)法のLCXプローブシステムの3つの系が認可されている.
 これらは迅速性にも優れ,広く普及してきているが,高感度であるがゆえにまた新しい技術であることから検査設備,検体の取り扱い,手技,検査結果の解釈など厳重なる注意が必要である.

薬剤感受性検査

著者: 三澤成毅

ページ範囲:P.541 - P.549

 抗酸菌の薬剤感受性検査は,わが国では結核菌検査指針(1979年)により小川培地を用いる固定濃度法が広く行われてきた.しかし,近年の結核患者減少率の低下や多剤耐性結核菌の出現によって,わが国の抗酸菌検査方法全体の見直しがせまられている.迅速でより安定した結果が得られる液体培地を用いる薬剤感受性検査法の導入は,臨床に有益な情報を提供できるばかりでなく,医療費全体の削減にも大きく寄与することが期待されている.抗酸菌検査体制については,アメリカCDCの勧告(1994年)が,検査法にはNCCLSによる暫定法(1995年)がある.わが国でも測定濃度や方法改正にむけた提案(1997年)がなされている.

話題

日本結核病学会から提案された新しい薬剤感受性試験法

著者: 阿部千代治

ページ範囲:P.551 - P.553

1.はじめに
 これまでわが国で用いてきた結核菌の薬剤感受性試験法(耐性)は,1%小川卵培地を基礎培地とした固定濃度法である.これに対し,多くの諸外国ではLöwenstein-Jensen卵培地(L-J培地),Middlebrook寒天または液体培地を基礎培地とした比率法を用いてい1,2).結核病学会では1996年に薬剤耐性検査検討委員会を設置して検討を重ねた.1997年に同委員会から以下に示すような新しい検査法が提案された3).提案された試験法は小川培地を用いる比率法であり,結核菌の感受性試験に限定したものである.非結核性抗酸菌の試験についてはこの委員会で検討していない.以下に提案された新しい考え方を記述する.

LCXプローブシステムによる結核菌群の検出

著者: 小栗豊子

ページ範囲:P.555 - P.558

1.はじめに
 抗酸菌遺伝子検査の普及は結核症など抗酸菌症の迅速診断に大きく貢献している.わが国ではTMA法を利用したDNAプローブ「中外」-MTD®やPCR法を利用したコバスアンプリコア®(ロシュ)が広く用いられている.現場での日常検査への導入のためには,操作ステップが少なく,単純作業でないと難しい.
 LCXプローブによるM.ツベルクローシス・ダイナジーン(ダィナボット)は,操作も単純で,塗抹や培養などの日常検査をしながら検査でき,結核菌検出の感度や特異性の面でも優れている特徴を持つ.以下に測定原理,操作法,検討成績(文献による)について述べる.

ツベルクリン反応の二段階試験

著者: 志村昭光 ,   鈴木公典

ページ範囲:P.559 - P.561

1.はじめに
 わが国の結核対策の体系は,ツベルクリン反応検査(以下,ツ反応)で感染の有無を判定し,未感染者はBCGワクチンを接種して発病を予防し,既感染者にはX線と喀痰検査で発病の有無を診断することを基本にしてきた.
 感染の有無を診断するためのツ反応は,本来は陰性なら未感染,陽性ならば既感染という図式であったが,主として2つの理由から混乱をきたしている.その1つは既往のBCG接種による影響であり,もう一方は既感染率の低下による偽陽性の増加である.

多剤耐性結核菌

著者: 尾形英雄

ページ範囲:P.563 - P.566

1.はじめに
 多剤耐性結核菌とは,最強力の抗結核薬であるイソニアジド(INH)とリファンピシン(RFP)がいずれも耐性となった結核菌を呼ぶ.両剤が耐性の結核症はストレプトマイシン(SM)・エタンブトール(EB)など,他の主要薬剤も耐性化していることが多く難治性結核の代名詞となっている.事実,1年以上治療しても排菌の止まらない慢性持続排菌者の結核菌は,まずこの耐性パターンを呈する.慢性持続排菌患者の予後は極めて悪く,5年生存率が50%1)と抗結核剤のない時代の結核患者の予後と大差ない.しかし,その一方でカタラーゼ陰性のINH高度耐性結核菌はモルモットを用いた動物実験で弱毒とされた2)ことから,多剤耐性結核菌の毒力も弱く,その感染性は低いと漠然と信じられてきた.しかし,本文にあるような米国・日本で発生したこの菌による集団感染事件は,医療関係者の認識を大きく変えた.この集団感染事件の概要を紹介をするとともに,結核菌の耐性の仕組みとその治療法・対策について言及する.

今月の表紙 血液・リンパ系疾患の細胞形態シリーズ・17

骨髄異形成症候群

著者: 栗山一考 ,   朝長万左男

ページ範囲:P.486 - P.487

 骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome;MDS)は,造血幹細胞に源を発するクローン性疾患であり,このMDSクローンは無効造血を呈するために血球減少症をきたす.FAB分類ではMDSは5型に分類されるが,いずれの病型においても形態学的異形成(dysplastic change)が共通に認められMDS診断の大きな根拠となる.
 広く鉄芽球性貧血として知られている環状鉄芽球を認める不応性貧血(refractory anemia withringed sideroblast;RARS)は,末梢血液像おいて小球性低色素性の赤血球と正球性の赤血球の混在したdimorphismを認めることが診断の契機となることがある(図1).骨髄像は赤芽球過形成のことが多く図2に示すように赤芽球の原形質には空胞を認めるものがある.また中央部には偽ペルゲル核異常を示す好中球を認める.鉄染色像では赤芽球の核周囲に青く染色された鉄顆粒を環状に認める(図3).RARSではこの環状鉄芽球を15%以上有するとされている.

コーヒーブレイク

日中の橋

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.510 - P.510

 中国の江沢民国家首席が先般来日し,仙台の魯迅の跡を訪ねて帰国して行った.永い年月,近くて遠い間柄になった日中関係も,次第に融和しつつあるようであるが,まだかなりの隔たりも感じられる.昭和初期のそれこそ不幸な関係を思い起こせば,時間のかかるのは止むをえないことかもしれない.
 永く両国を隔てていた政治情勢を一変させる橋わたしをしたのは,何と言っても昭和47年の田中角栄氏の決断と実行力に負うことは誰しも否定できぬところであろう.その後の彼個人に対する毀誉褒貶について,両国で大きな差があるのは立場のほかに国民性の差もある.中国人は大陸的でとらえどころのない点もあるが,信義を重んずるところもおおいに見られる.大昔からの歴史的関係を考えても,決して遠い間柄ではないはずである.

医療ビッグバンと臨床検査

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.561 - P.561

 近年金融ビッグバンが大きく叫ばれ,わが国経済の大きな転換が行われつつあるが,医療ビッグバンはそれ以前から既に急速に始まってきていることに,気づかない医療従事者も多いと思われる.
 周知のごとくわが国も高齢化社会を迎え,国民の医療費の増大は経済成長率を大きく超え,医療費/国民生産比は7.4%に達した.したがって,医療法や診療報酬の改正により,平成9年度には全国の病院の約70%が赤字経営となった.近い将来医師が過剰になり医学部定員数の削減が既に試行されている.

ハワイの休日

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.572 - P.572

 雪国新潟から暖国ホノルルに1998年12月から週1便の直行便が通った.野次馬根性で妻とともに暮から正月にかけてこれに乗って足を伸ばし以前に泊まったワイキキのロイヤルハワイアンホテルを根城にして遊んだ.昔の王宮の跡に建てられた最も落ち着きあるホテルで,ピンク色に統一されていることからピンクパレスと呼ばれている.
 このホテルの大食堂で行われるニューイヤーディナーは前にも経験したが楽しみの1つであった.正装してディナーをとりながらダンスに興ずるパーティで,米本土から有名な女性歌手も来て興を盛り上げてくれた.陶然と踊りながら老人や若者など周囲のカップルを観察しては彼らの間柄,人生模様などを勝手に想像して楽しんだ.零時になると音楽が中断され,除夜の鐘ならぬ浜辺一杯の花火が打ち上げられ,人々はハッピーニューイヤーと挨拶したり,キスを交わしたりしていた.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Technology編

プリオン病

著者: 古川ひさ子 ,   堂浦克美

ページ範囲:P.567 - P.572

はじめに
 Creutzfeldt-Jakob病(CJD),Gerstmann-Sträuss-ler-Scheinker症候群(GSS),クールー,致死性家族性不眠症(fatal familial insomnia;FF1)はヒトのプリオン病である.これらはいずれも進行性の神経変性疾患であり,その発症には蛋白性感染粒子"プリオン"(prion:proteinaceous infectious particle)が重要な役割を果たしているとされている1).このうち表1に示すようにCJDの一部とGSS,FFIは家族性に発症し,プリオン蛋白遺伝子変異を伴う.本稿ではこれら家族性プリオン病の臨床上の特徴と遺伝子診断の実際について述べる.

Application編

大腸癌の遺伝子診断

著者: 松村雅幸 ,   東郷剛一

ページ範囲:P.573 - P.577

はじめに
 食生活の欧米化に伴い,わが国でも大腸癌の頻度が増加している.一方で大腸ファイバーを用いた診断法とポリペクトミーなど治療法の進歩により,早期の大腸癌の発見率も向上しつつある.
 本稿では画像を中心とした臨床的診断とは別に,現在までに得られた分子生物学的知見を基に大腸癌の診断を行う"遺伝子診断"についてこれまでの報告と概説を行いたいと思う.その目的には遺伝的に大腸腫瘍をきたす家系から発病の危険度をいかに評価するかという点や,簡単に採取できる組織や体液を用いて癌転移の危険度や患者の予後を予測するものが含まれる.以下に順に解説したい.

トピックス

HIVを覆うスパイクの電子顕微鏡写真

著者: 後藤俊幸 ,   森松伸一 ,   佐野浩一

ページ範囲:P.578 - P.580

 臨床検査上得られる情報はウイルスの部分的なものによってであるが,その意義はウイルスの構造などの基礎的研究成果によって裏付けされる.ウイルスは光学顕微鏡の分解能よりも小さく,電子顕微鏡(電顕)で観察する必要がある.電顕でウイルスの構造や性状を調べる場合,ウイルスはどのくらいの大きさか,そのウイルスはエンベロープを持っているか,さらにエンベロープ表面には細胞レセプターと反応する突起物,すなわちスパイクと呼ばれるものがあるか,などの情報を得ることができる.また,ウイルス内部構造には正二十面体対称などのコアがあるか,あるいはらせん対称のヌクレオカプシドがあるかを知ることも重要である.さらに,正二十面体対称である場合には,それを構成しているカプシドが何個あるかも重要である.このような情報から今観察されているウイルスがどのような種類かを推定することができる.さらに,このウイルスの表面構造,あるいはエンベロープやスパイクの構造を観察し,その成分を明らかにすることは,このウイルスがどのようなものと反応するか.すなわちこのウイルスがどのように感染するか,を知る手がかりとなる.また,ウイルス表面抗原は免疫系の被認識部位ともなり,治療法や予防法の開発にもつながる.
 実際エイズの病因であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染材料をエポキシ樹脂に包埋し,薄く切って観察すると,細胞外にエンベロープを持っウイルス粒子が見られる(図1).直径は平均約110nm,中心には電子密度の濃い(写真の上では黒く見える)類円錐形の特徴的なコアが観察される.HIVの場合,コアの対称性はまだ決まっていない.このHIVが細胞内に侵入するとき,ウイルスエンベロープ上のスパイクが重要な役割を演じている.そのスパイクと細胞膜上のレセプターとの相互作用により,ウイルスエンベロープが細胞膜と融合して,細胞内へウイルス遺伝子を含むコア部分が侵入して感染が成立する1)

T細胞でのアレルギー誘導の制御

著者: 星岡明 ,   河野陽一

ページ範囲:P.580 - P.582

1.はじめに
 気管支喘息などのアレルギー疾患の炎症部位には,好酸球,肥満細胞,Tリンパ球などが浸潤している.このうち,アレルギー反応の誘導にはTリンパ球が,組織障害には女子酸球や肥満細胞が重要な役割を果たしている.従来のアレルギー治療薬は,好酸球や肥満細胞などのエフェクター細胞の機能を抑制することを目標に開発されてきた.しかし,アレルギー性炎症にかかわるさまざまなサイトカインについての研究が進展しTh1とTh2という概念が認知されるに至り,アレルゲンに対する免疫応答の方向性を決定するT細胞に焦点を当てたアレルギー制御が注目されている.

質疑応答 臨床化学

高コリンエステラーゼ血症の検査

著者: 須藤加代子 ,   S生

ページ範囲:P.583 - P.584

 Q 人間ドックを受診した兄・妹の例です.兄(57歳)はドック検診で異常なし.妹(54歳)は肺サルコイドーシスありとの結果が出ました.兄,妹ともに生化学のデータでコリンエステラーゼ値が異常高値を示しました(兄920,妹820,当院の正常域300~710IU/I) fatty liver (脂肪肝),obesity (肥満)などはありません.このような家族性(先天性と証明するために)に認められる,高コリンエステラーゼ血症はどのように検査をすすめていけばよいのでしょうか.また,その臨床的意義や頻度などについてもご教示ください.

診断学

Refsum病での血清フィタン酸の増加の理由と測定

著者: 鈴木康之 ,   N生

ページ範囲:P.585 - P.586

 Q 遺伝家族性ニュロパチーのなかにRefsum病がありますが,この疾患では血清のフィタン酸(phytanic acid)の増加が特徴的と言われています.①フィタン酸について,生体内での代謝・合成など,②今の時点で考えられているRefsum病で血清フィタン酸が増加する理由,③現在,血清フィタン酸が測定可能な施設などについて具体的にお教え下さい.

研究

Variable Number of Tandem Repeat(VNTR)多型解析を指標とした同種骨髄移植後の生着確認

著者: 舞木弘幸 ,   丸山芳一 ,   国分寺晃 ,   谷脇清助 ,   大西浩史 ,   肥後恵子 ,   小浜浩介 ,   納光弘

ページ範囲:P.587 - P.591

 同種骨髄移植後の生着確認を,DNA多型性の1つであるvariable number of tandem repeat(VNTR)多型解析にて行った.全症例VNTRマーカのMCT-118(D1S80)およびYNZ-22(D17S5)にて骨髄生着を確認した.生着確認に要した日数は,22日(17~27日)と短期間であった.major ABO不適合(donor→recipient,A→O)の移植症例では,血液型の変換に41日間要したが,YNZ-22を用いたVNTR多型解析では22日間と早期に生着確認可能であった.

資料

トリグリセライドと総コレステロールとの各年齢別平均値における相関性―糖質コルチコイドの分泌亢進による各上昇の可能性

著者: 小林正嗣 ,   園伊知郎 ,   村田和弘 ,   芹生陽一

ページ範囲:P.593 - P.597

 血清脂質濃度の変動には種々の要因が複合的に関与していることはもちろんであるが,トリグリセライド値と総コレステロール値の年齢変化(男女別年齢別平均値)が並行することから両者の増加には共通の起因が存在することが推定される.日常生活動作に伴う身体的ストレスでの副腎皮質ステロイド(糖質コルチコイド)の分泌亢進の存在は,特に過栄養の生活条件下では,両者の増加をもたらす可能性が考えられる.

自動血球分析装置(SE-9000)IMIチャンネルを用いた末梢血幹細胞の至適採取時期の検討

著者: 富山順治 ,   安島厚 ,   藤田浩 ,   工藤秀機 ,   小野澤康輔 ,   足立山夫 ,   松井和子 ,   前田陽子 ,   黒田彰

ページ範囲:P.599 - P.602

 末梢血幹細胞移植(PBSCT)において末梢血幹細胞(PBSC)を有効に採取する時期の決定には未だ確実で有用な手段はない.最近自動血球分析装置(SE-9000)のIm-mature Information (IMI channel)で造血幹細胞の検出が可能と言われており,われわれはPBSC採取時期の末梢血IMI%,白血球数,単球(%),血小板数と,採取された幹細胞(CD34陽性細胞数)との相関を検討したところ,末梢血IMI%が最も有意に採取幹細胞量と相関し,しかもIMI%≧10%であれば有効なPBSC採取が可能であることがわかった.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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