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雑誌目次

論文

臨床検査43巻6号

1999年06月発行

雑誌目次

今月の主題 高血圧と臨床検査 巻頭言

高血圧症と臨床検査

著者: 高橋伯夫

ページ範囲:P.611 - P.612

 血圧は心拍出量(CO)と総末稍血管抵抗(TPR)により規定され,それぞれは元来,変動する生理的指標である.COとTPRの両者は流血中の液性因子や,血管の構成要素自体あるいはそのごく近辺の組織で産生される血管作動性物質などにより規定され,これらの物質の変動あるいはその特異的な受容体の変化により変動することにより,血圧が変動する.COは体液量に依存して変化するので,体液量を直接調節する重要な臓器である腎の役割が重要である.腎の水・ナトリウム(Na)排泄能はアルドステロン,糸球体濾過量,第3因子として一括される体液性因子などにより調節されている.慢性糸球体腎炎などのように健全な糸球体数が減少すればNa排泄能は低下し,これを補完するために血圧が上昇し,糸球体内圧を高めて限外濾過を亢進させて水―Naバランスを保持している.すなわち,高血圧の犠牲のもとにNaバランスを保つもので,腎の血圧―利尿曲線は高圧域に偏移(シフト)するのが高血圧の特徴であり,腎の占める役割の重要性が指摘されている.この際の血圧上昇には体液性因子,神経性因子が種々複雑に絡んで機能しているので,これらの因子の変動を計測することで,高血圧の病態診断の一助となる.
 本特集では,多くの血管作動性物質の生理,病態生理的役割について個々に論説をお願いしている.また,動脈硬化症は腎血管性高血圧,脳血管障害に起因する高血圧,狭心症に伴う高血圧,などの原因として注目すべき病態であり,その危険因子の評価,動脈硬化症の形態診断なども重要である.この点についても,各論の中で論説をお願いしている.

総説

高血圧症の臨床検査―二次性高血圧症の鑑別診断

著者: 高橋伯夫

ページ範囲:P.613 - P.621

 血圧を変動させる血管作動性物質の増減は直接血圧値に反映されるので,その定量は診断と治療に欠かせない.血圧の究極的な調節臓器と目されているのは腎であり,その病態を簡便に診断できるのが臨床検査である.標的臓器障害は高血圧症患者の予後を左右するものであり,その病態診断に臨床検査を必要とする.さらに,内分泌ホルモンの測定は二次性高血圧症の確定診断に欠くことができない.高血圧の臨床に臨床検査は大きく寄与している.

高血圧の合併症

著者: 丸山征郎

ページ範囲:P.622 - P.626

 高血圧単独では,単なる血圧が高いという状態に過ぎず,「症」とは言えない.高血圧が問題になるのは,合併症を伴い,これが種々の患者に重篤な精神身体のハンディキャップを与えるからである.この高血圧の合併症の基本像は,「血管合併症」であり,「内皮細胞障害」→血栓,血管リモデリングというパスウェイを経て臓器機能障害に陥るのである.

本態性高血圧症の成因

高血圧の遺伝子的背景

著者: 川口秀明

ページ範囲:P.627 - P.631

 分子遺伝学的な解析によってレニン―アンジオテンシン系と高血圧の関連が多くなされているが,現在のところレニンとACE遺伝子の高血圧へのかかわり合いは少ないようである.しかし,アンジオテンシノゲン遺伝子多型性のうちM235Tは高血圧との関連が示唆されている.すなわちTT型またはTM型の遺伝子を持った者は,野生型のMM型の遺伝子を持つ者より高血圧患者が多いと報告されている.

交感神経活動

著者: 西村眞人

ページ範囲:P.632 - P.637

 境界域高血圧患者では末梢交感神経末端からのノルエピネフリン放出量が増加しており,本態性高血圧例では,交感神経系機能は高血圧発症時に増大するとされている.中等症以上の高血圧例では著明な交感神経活動の亢進はなく,交感神経活動は高血圧域にリセットされている.交感神経活動の調節機構として,延髄弧束核・腹外側核を中心とする中枢性機構が重要であり,脳内レニン―アンジオテンシン系もその調節に関与している.

病態に果たす腎性機序

著者: 保嶋実

ページ範囲:P.638 - P.643

 血圧調節や高血圧の成因・病態に果たす腎性機序に関して,糸球体血体動態についての基礎的な研究から,多くの新知見がもたらされた.腎の基本的な役割である体液の恒常性に深く関与する尿細管糸球体フィードバックやレニン分泌の異常が血圧―利尿曲線の変化を介して,血圧異常を引き起こすとするものである.詳細な機序についてはいまだ十分に明らかにされていないが,今後の研究の進展が期待される.

生理活性物質

副腎および脈管ステロイド

著者: 畠山治彦 ,   宮森勇

ページ範囲:P.644 - P.647

 鉱質コルチコイドや糖質コルチコイドは高血圧の発症に関与する副腎ステロイドとして知られている.副腎内分泌性高血圧症はこれらの過剰産生という形で現れることが多く,全高血圧症に占める割合はそれほど高くないのが現状である.しかし,血管壁など副腎外での生成系が明らかにされたことにより,これらステロイドが内分泌性高血圧のみならずいまだ原因の明らかでない本態性高血圧の発症に関与している可能性がある.

電解質調節因子

著者: 大島哲也 ,   松本敏幸 ,   小園亮次

ページ範囲:P.648 - P.651

 水や電解質の全身バランスもしくはその調節因子の増減が血圧に影響を与えることはよく知られている.今回,そのうち水やNaの貯留作用のあるバゾプレッシン,排泄作用のあるキニン,カリクレイン,ドパミンについて検査法と意義,高血圧との関連について解説した.さらに,近年注目されているCa調節ホルモンとして,副甲状腺ホルモンとビタミンDについても概説した.

レニン-アンジオテンシン系

著者: 小原克彦

ページ範囲:P.652 - P.655

レニン-アンジオテンシン系の律速段階はレニン酵素反応であり,レニン活性を測定することによりレニン―アンジオテンシン系の活性を推定できる.腎血管性高血圧においては,血漿レニン活性測定は,その診断に必須であり,カプトプリル負荷試験や分腎レニン比などが利用されている.本態性高血圧患者においては,食塩摂取量との関係からレニンプロフィールが合併症の発症と関係すると報告されている.

合併症評価法

血管内皮機能―エンドセリン,NO,アドレノメジュリン

著者: 太田一樹 ,   平田結喜緒

ページ範囲:P.656 - P.659

 血中のエンドセリン-1(ET-1)やアドレノメジュリン(AM)濃度は,高血圧患者において内皮障害の程度に比例して増加する.一方,一酸化窒素(NO)は高血圧性血管障害に伴って,内皮細胞からの産生が低下している.これら内皮由来循環調節因子の変化は内皮細胞障害の程度を反映したものと考えられる.

脈管作動性物質―ANP,BNP,CNP

著者: 斎藤能彦 ,   岸本一郎

ページ範囲:P.660 - P.665

 ナトリウム利尿ペプチドファミリーの血中濃度の測定は,心臓血管病の診断の臨床検査法の1つとしてその有用性が証明されつつある.本稿では,ANP,BNPの分泌機序を概説した後,特に高血圧性心肥大の臨床検査法としてのBNPの有用性を紹介し,ナトリウム利尿ファミリー遺伝子を用いた遺伝子診断の可能性に関しても言及する.

心機能と血管病変の評価

著者: 三ツ浪健一 ,   寺田雅彦

ページ範囲:P.666 - P.670

 高血圧症の治療の目的は合併症の予防にあり,合併症を早期に正確に評価できることが適切な降圧療法につながる.心機能および血管病変に関する合併症を評価する非侵襲的な方法として,左室肥大には心エコー法およびMRI,左室機能低下にはDoppler法を含む心エコー法,心筋虚血には心筋シンチグラフィおよび心筋31P MRS,大動脈瘤および大動脈解離には造影CT,そして頸動脈の粥状硬化の評価には頸動脈エコー法が有用である.

話題

アンジオテンシン受容体を介する新たな機序での血圧調節―遺伝子操作動物実験から明らかになったAT2受容体の降圧効果

著者: 松原弘明 ,   正木浩也 ,   村澤聡 ,   高橋伯夫 ,   岩坂壽二

ページ範囲:P.671 - P.675

 アンシオテンシンⅡ(Ang Ⅱ)は単独のホルモン系だけで約30mmHg前後の血圧を維持する生体内で最も強力な昇圧系である.Ang II産生系を阻害することは,降圧療法だけでなく腎・心・脳血管障害などの高血圧合併症の進展を阻止する最も有効な治療法であり,大規模介入試験の結果に基づきACE阻害薬が質的高血圧治療の第1の選択薬である.
 Ang Ⅱ受容体には異なる細胞内シグナルを持つ1型(AT 1),2型(AT 2)が存在する.AT 1は血管,肝,腎臓,副腎などに豊富に存在し,昇圧作用・水Na再吸収・心肥大など,これまで知られているAng Ⅱの心血管・腎作用を伝達する.AT 2は胎児期に多く発現するAng Ⅱ受容体であり,生後まもなくその発現は低下し,成人では脳・副腎髄質・子宮筋に存在する.AT 2は抗AT 2作用を持ち,従来にない新たなAng Ⅱ作用を発揮するとされるが不明な点が多い(表1).わが国でもごく最近,臨床導入されたAT1受容体拮抗薬は,その投与により血中Ang Ⅱ濃度は著明に増加し,この増加したAng Ⅱは選択的にAT 2を刺激する.本稿ではAT 1受容体,AT 2受容体の遺伝子操作動物を用いて明らかとなった個体レベルでのAng Ⅱ受容体を介する生理作用について説明する.

一酸化炭素

著者: 盛田俊介 ,   片山茂裕

ページ範囲:P.676 - P.678

1.はじめに──背景
 1987年,Moncadaらが一酸化窒素(NO)を血管内皮細胞由来弛緩因子と同定して以来10余年が経過し,NOはガス状情報伝達物質としての地位を確立した.生体内各所で多彩な生理活性を有することNOと類似した性格を有する可能性を秘めたもう1つのガス状物質が,一酸化炭素(CO)である.COはNOと同様に,グアニル酸シクラーゼの活性化を介して,セカンドメッセンジャーである細胞内cGMP (サイクリックグアノシン-5'-リン酸)濃度を増加させる作用を有している.しかし,現在までのところ,COの生理作用に関しては,Vermaら1)が中枢神経系でのneurotransmitterとしての可能性を示唆した報告以来,心血管系での役割に関する研究はまだ諸についたばかりである.そこで今回ここに,これまでに報告されたCOの心血管疾患,特に高血圧症とのかかわりについて言及する.

内因性ジギタリス

著者: 後藤淳郎 ,   山田薫

ページ範囲:P.679 - P.683

1.はじめに
 血圧調節機構のうち腎臓によるNa排泄と体液量の調節が長期的な血圧レベルの決定には最も重要であり,本態性高血圧症においても,その病因に腎臓が寄与する証拠が得られている.正常腎では血圧が上昇すると腎からのNa,水の排泄が増加し,体液量を減少させ,血圧を正常に戻すという圧―Na利尿機構が存在しており,腎Na排泄能は腎灌流圧に強く依存している.高血圧が持続するためには,この腎圧―Na利尿曲線が右方に偏位していることが必要条件である.
 体内へのNa貯留,体液量の増加によって血圧上昇がもたらされる過程に関与することが想定される生理活性物質が内因性ウアバインあるいはジギタリス様物質であり,ジギタリスを代表とする強心ステロイド構造を有することは間違いなく,本論文では内因性ジギタリス(endogenous digi-talis;ED)として表現する1~3)

今月の表紙 血液・リンパ系疾患の細胞形態シリーズ・18

類白血病反応

著者: 栗山一孝 ,   朝長万左男

ページ範囲:P.606 - P.607

 類白血病反応(leukemiod reaction)とは,基礎疾患を有し,その反応として血液像が白血病類似の所見を呈することである.慢性骨髄性白血病類似の血液像,すなわち顆粒球,特に成熟好中球の増加とともに幼若型,骨髄芽球の出現を伴う場合が最も多い.ときに,急性骨髄性白血病のように白血病裂孔を認めることもある(図1).このような骨髄性の類白血病反応は,重症感染症などでも認められるが,臨床的には癌細胞の骨髄浸潤が最も鑑別を要する病態である.この骨髄性類白血病反応の血液所見にさらに赤芽球の出現を伴う場合を特にleukoerythroblastosisと呼び,癌の骨髄浸潤あるいは骨髄線維症に伴う髄外造血によることが最も多い.図2に示すのは,骨髄線維症に巨脾を伴った症例に認められたleukoerythrob-lastosisである.赤芽球の出現と同時に増加している好中球は異形成が強く認められる.
 異型リンパ球が出現するリンパ性類白血病反応は,非常に広範なウイルス感染症で認められる.図3に示すように形質細胞類似,単球類似そしてリンパ芽球様に正常リンパ球が形態変化をきたしたのが異型リンパ球である.典型的な異型リンパ球増多をきたすのは,EVウイルス感染症である伝染性単核球症である.発熱と頸部リンパ節腫脹と異型リンパ球増多を臨床所見の特徴として認める.また,リンパ芽球様異型リンパ球は成人に比較して小児でより多く経験され,急性リンパ性白血病との鑑別は慎重を要する.一方,リンパ球増多は認めるが増加しているリンパ球は形態学的には正常リンパ球と思われる症例も少なくない.この場合は,慢性リンパ性白血病との鑑別も念頭に置く必要がある.また,リンパ球の胞体にアズール顆粒を認める顆粒リンパ球(granular lympho-cyte; GL)の増加を認めることがある.ウイルス感染症に伴う免疫反応と考えられる場合もあるが,同種骨髄移植後に一過性に認められることも知られている(図4)

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Technologyn編

p15遺伝子

著者: 小川誠司

ページ範囲:P.684 - P.687

はじめに
 p15遺伝子は癌抑制遺伝子の候補として染色体9p21領域に見いだされた遺伝子の1つである.染色体9p21領域は急性リンパ性白血病,膀胱癌,脳腫瘍など種々の悪性腫瘍で高頻度に欠失する領域であり,また家族性悪性黒色腫(FM)の家系のリンケージ解析から同症の責任遺伝子座がマップされていた領域である.同領域に存在する欠失の標的遺伝子を単離する目的で,多数の腫瘍細胞株における染色体9p21領域のホモ接合性欠失の検討が行われた結果,これら腫瘍細胞株における最小の共通欠失領域に存在する構造遺伝子としてMTS1およびMTS2が単離された1).MTS1遺伝子は,これに先立って細胞周期の調節因子として精製単離されていたサイクリン依存性キナーゼ阻害因子(cyclin dpendent kinase inhibitor:CKI)の1つ,p16(p161NK4A)蛋白をコードしていることが明らかとなり,さらにこのMTS1と高い相同性を有するMTS2もその後の検討から,もう1つのCKI,p15(p151NK4B)蛋白をコードしてることが示された2).これらの蛋白は細胞周期のG1→S期に働いて,CDK4(ないしCDK6)に結合しその活性を阻害することにより細胞周期の停止を誘導する(図1).現在,いくつかの理由から染色体9p21の欠失の標的癌抑制遺伝子はp16であるとの考えが広く受け入れられているが,p15遺伝子についても細胞周期のG1→S期の移行を抑制する重要な機能分子であること,種々の悪性腫瘍で高頻度にホモ接合性欠失を認めること,さらに近年プロモーター領域のメチル化によりp15遺伝子のみが不活化を受けている例も示されており,その癌化への関与が推定されている3)
 本稿では特にp15遺伝子の悪性腫瘍における異常とその検討方法について概説する.

Application編

多発性嚢胞腎

著者: 太田樹 ,   花井順一

ページ範囲:P.688 - P.695

はじめに
 多発性嚢胞腎(polycystic kidney disease; PKD)は,多数の腎嚢胞の形成と腎実質の萎縮および線維化を伴い,進行性に腎機能が低下し末期腎不全に至る疾患である1).1997年末現在,わが国では透析患者全体の約3.2%(5,521人)を占めている2)
 PKDは,常染色体優性遺伝型多発性嚢胞腎(auto-somal dominant polycystic disease; ADPKD)と常染色体劣性遺伝型多発性嚢胞腎(autosomal ressecivepolycystic kidney desease;ARPKD)とに分類される3)

トピックス

組織切片を用いたin situ PCR法

著者: 武田理

ページ範囲:P.696 - P.698

1.in situ PCR
 細胞レベルでの遺伝子の解析には現在in situhybridization(ISH)が一般的に広く用いられている.かつては放射性同位元素を用いなくてはならず,操作や解像度に問題があったが,非放射性プローブと免疫化学的手法により,比較的容易に免疫染色と同程度の解像度を持つシグナルが検出できるようになった1).しかしながら,ISHの検出感度は特別なシグナル増幅法を用いない限り2)細胞当たり10~20コピーの遺伝子の存在が必要で,数コピーの遺伝子の検出には不適当なものである.こうした極めて低コピーの遺伝子を細胞レベルで解析する方法として,微量のDNAの存在を検出する方法であるpolymerase chain reaction(PCR)を組織切片上で行い,細胞レベルで標的の遺伝子を増幅し,検出を行うin situ PCRが近年行われるようになっている.このin situ PCRには,細胞内の特定の遺伝子部分を増幅しながら標識を行い,その標識部分を免疫化学的に検出を行うdirect in situ PCRと,標識を行わずに増幅を行った後,その増幅産物をISHにより検出するindirect in situ PCRがある3).前者は,増幅反応を行った後すぐに検出を行うことができ利便性があるが,ときとして目的とする標的以外のシグナルがバックグラウンドとして現れる.後者は,増幅産物をプローブにより検出するため,偽陽性の危険性は低いが,ISHの過程が加わるので操作面,条件検討面で繁雑である.

ホスホリパーゼA2の構造・機能

著者: 小野隆 ,   有田斉

ページ範囲:P.698 - P.701

 ホスホリパーゼA2(Phospholipase A2;PLA2)はグリセロリン脂質の2位のアシル鎖を加水分解する反応を触媒する酵素の総称である.特に生体膜からのPLA2によるアラキドン酸の遊離,リゾリン脂質の産生は,エイコサノイドや血小板活性化因子(PAF)の生合成の律速段階となっている.PLA2は酵素学的性質,分子量,アミノ酸配列およびその局在性に基づいて,分泌型PLA2(sPLA2),細胞質型PLA2(cPLA2),Ca2+非依存型PLA2(iPLA2)に大別され1,2),近年新規のPLA2が次々と見いだされている.そこで本稿では,哺乳動物のPLA2のファミリーについての構造的特徴および推測される機能について要約することにする(表1).

質疑応答 微生物

Helicobacter pyloriは胃癌を起こすか

著者: 神谷茂 ,   N生

ページ範囲:P.702 - P.703

 Q Helicobactor pyloriが胃癌を引き起こすか否か,研究者間で議論が分かれており,ますますこの関連性に対する研究に関心が高まっているようです.これまでのH.pyloriと胃癌発生との関連性の研究の経過と今後の課題についてお教えください.

機器・試薬

医療・臨床検査に有用な液体クロマトグラフィーは

著者: 松下至 ,   NK生

ページ範囲:P.703 - P.706

 Q 血液中のオリゴペプチドを分離したいと考え,ODS (octa decyl cilica)カラムによるイソクラティック分析を行ったところ2つのピークはきれいに分離しましたが,目的物質であるもう1つのピークのクロマトグラムにショルダーが見られます.そのショルダーのピークを目的ピークと分離するにはクロマトグラフィーはどのように行えばよいかお教えください.

資料

血液レオロジー測定装置(MC-FAN)による全血を用いた血小板凝集能の評価

著者: 周新平 ,   星恵子

ページ範囲:P.707 - P.711

 血液レオロジーをみるために開発されたMC-FANは,一定最の試料の通過時間を測定することによって血小板凝集能が確認でき,顕微鏡下で直接血小板の凝集する様子も観察できる新しい測定装置である.この方法の最大の利点は全血を用いて行えることで,より生理的な条件下での血小板凝集能を捉えることができる.また,ADP,コラーゲンの濃度は少なくとも比濁法で用いる1/10の量で済み,感度にも優れる測定法である.

階層化分析法AHPを用いた検査試薬の選定―製品Aにすべきか製品Bにすべきか,それが問題だ

著者: 稲田政則 ,   五十嵐富三男

ページ範囲:P.712 - P.717

 検査試薬の性能が高まり,各試薬メーカーの製品に大差がなくなりつつある現在,臨床検査室にはどのメーカーの試薬を採択すべきかという意思決定問題が生まれ始めた.性能比較だけでは解決が困難な問題に,人間の主観的な評価を取り入れたAnalytic Hierarchy Process (AHP:Satty, 1980)による意思決定支援が期待された.このAHPの有用性は,Triglyceride測定試薬の選定問題を通して確認された.

コーヒーブレイク

シネマにふける

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.711 - P.711

 昨年は黒澤明,三船敏郎はじめ戦後日本映画を世界的に高めた人々が相次いで死去し,一時代の終わりを感じさせた.「サヨナラ,サヨナラ,サヨナラ,またお会いしましょう」の淀長さんも逝った.戦前から映画好きでは人後に落ちなかったわが身を振り返ると,大きな楽しみをもらった映画と映画人には感謝に堪えぬものがある.
 心に残る映画というのは多分に当方の受け入れ態勢によることが多く,たまたまマッチして心情に染み込んだものが多い.ジャリ(腕白)時代に観た大河内伝次郎主演の「丹下左膳」や「国定忠次」などには文句なしに吸い込まれ,3分の2世紀たった今も燦然と輝く日本映画の傑作と思わざるを得ない.京都嵐山付近に残る大河内山荘を訪れたときは懐旧の情に涙がこぼれるほどであった.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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