輸入腸管感染症原因菌の効率的な糞便検査
著者:
竹垣友香子
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宮城和文
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古川徹也
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上田泰史
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高橋直樹
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鈴木則彦
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野田孝治
,
廣瀬英昭
,
橋本智
,
中野康夫
,
佐野浩一
,
森松伸一
,
宮田義人
ページ範囲:P.941 - P.945
関西空港検疫所では輸入腸管感染症原因菌の検出検査を実施している.病原菌の分離にはTCBS寒天,ビブリオ寒天,SS寒天およびDHL寒天を用いている.今回,自然排便と直腸スワブからの検出成績と,分離培地上での分離成績を調べ,効率的な糞便検査について検討を加え以下の結果を得た.①下痢原因菌全体の陽性率は自然排便のほうが直腸スワブに較べて約4%高かった.②Vibrio属の場合,特に腸炎ビブリオでは自然排便が直腸スワブの約2倍の陽性率を示した.また,自然排便ではVibrio属全体で約7%の検出率増がみられた.③赤痢菌はいずれの検体においても増菌分離平板よりも直接分離平板のほうが圧倒的に検出率が高いので,特に直接分離に重点を置くべきであると考えられた.④Salmonella属は自然排便の増菌後の分離培養からの検出率が極めて高かったことから,増菌培養に力点を置くべきであると考えられた.⑤Plesiomonas属とAeromonas属の増菌にはpH8.2のアルカリ性ペプトン水が有効であった.また,Aeromonas属の分離培地としてはDHL寒天よりSS寒天のほうが優れていた.⑥Vibrio属の検出率はビブリオ寒天を用いなくてもTCBS寒天のみで98.7%,また,腸内細菌,Aeromonas属およびPlesiomonas属の検出率はDHL寒天を省略しても94.0%を示した.したがって, TCBS寒天とSS寒天だけで検出率をほぼ維持しながら効率的な検査が行えると思われた.⑦すなわち,上記の成績を参考に培養法を組み立てると,全菌種について効果的な糞便検査を行うことができると考えられた.