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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査47巻8号

2003年08月発行

雑誌目次

今月の主題 プロテアーゼ,プロテアーゼインヒビター 巻頭言

プロテアーゼ,プロテアーゼインヒビターの医学的位置付け

著者: 勝沼信彦

ページ範囲:P.831 - P.832

1. はじめに

 “蛋白分解と制御”の担い手,すなわち“プロテアーゼとプロテアーゼインヒビター”は医学領域と広く,かつ深く関係している.特に病態形成への関与,診断への応用,治療薬開発への貢献は大きい.これらは作用様式と局在場所の関係により生理機能を発揮するものである.すなわち,細胞内で作用する場合と細胞外に分泌されて体液中で作用する群とに大別される.特記すべきことは,細胞内作用型は限定分解,Limited proteolysisとtranslocationにより特定のCascadeを形成して生理活性が制御されており,細胞外作用型は必ず分泌調節因子すなわち,サイトカインやホルモンにより制御されている.

総説

細胞内蛋白質の分解機構

著者: 木南英紀

ページ範囲:P.833 - P.839

〔SUMMARY〕生体反応の調節やストレスに応答するために細胞内においては,能動的に特定の蛋白質やオルガネラを壊している.壊すことによって新しい蛋白質をつくり,新しい細胞環境を生むという生の活動をしている.細胞内における蛋白質の分解は,合成と同様に極めて複雑な装置と仕組みで生命活動にかかわっている.〔臨床検査 47:833-839,2003〕

細胞死とプロテアーゼ

著者: 内山安男

ページ範囲:P.841 - P.848

〔SUMMARY〕 細胞死が実行されるとき,必ず実行因子として働くのはプロテアーゼである.これは,細胞死が積極的に実行されようが,受け身の形で実行されようが同じである.積極的な細胞死(active cell death)は形態的にⅠ型からⅢ型まで分けられ,最も数の多いアポトーシスはⅠ型細胞死であり,リソソームが蓄積する細胞死をⅡ型細胞死といい,それぞれ関与するプロテアーゼが異なる.本総説では,これらを中心に概説する.〔臨床検査 47:841-848,2003〕

癌浸潤,転移関連因子

著者: 真船健一

ページ範囲:P.849 - P.859

〔SUMMARY〕 マトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)の一群は,共同して細胞外マトリックスの分解を行っている.このMMPを活性化する他の活性化MMPやマトリックス・セリンプロテアーゼ(MSP)〔ウロキナーゼ型プラスミノーゲン・アクチベータ(uPA)/プラスミンシステムなど〕,さらにMMPのインヒビターであるTIMPを加えた調節機構は,癌の浸潤・転移,血管新生の中心的役割を果たしている.近年,このようなMMPを効果的に制御しようとする新しい癌治療法も試行されている.〔臨床検査 47:849-859,2003〕

胎盤プロテアーゼとその機能

著者: 三井崇 ,   野村誠二 ,   水谷榮彦

ページ範囲:P.861 - P.870

〔SUMMARY〕 胎盤には多種多様のプロテアーゼが存在する.なかでも細胞表面に存在し,活性部位を細胞外に露出させているアミノペプチダーゼは,胎児胎盤系におけるペプチドホルモンの代謝分解を通してその作用を調節し,妊娠のホメオスタシスの維持に重要な役割を果たしていることから,それら活性の正常からの逸脱が妊娠中毒症や切迫早産といった疾患の一因となると考えられる.近年の分子生物学の進歩により,臨床データの集積と並行して,その基礎となる酵素そのものの生体における機能解析も行われている.また,悪性腫瘍など妊娠以外の領域との関係も徐々に解き明かされつつある.〔臨床検査 47:861-870,2003〕

技術解説

プロテアーゼインヒビターの新検出法―Reverse zymography

著者: 勝沼信彦

ページ範囲:P.871 - P.874

〔SUMMARY〕 微量の粗試料中の各種プロテアーゼに対する特異的インヒビター蛋白を簡単に検出する方法である.原理はエンザイムグラフィーを逆に利用したものである.Gelatin含有SDSプレートに試量をかけて電気泳動したSDSプレートを目的のプロテアーゼで処理すると,プレート中のGelatinは消化されるが,インヒビターの局在するバンドのGelatinのみは残り,染色される.この方法により各種のプロテアーゼに対するインヒビターの分子量も知ることができる.〔臨床検査 47:871-874,2003〕

エラスターゼ1測定法

著者: 祖父江晋 ,   佐藤悦子 ,   針田達行

ページ範囲:P.875 - P.880

〔SUMMARY〕 膵液中の消化酵素の1つであるエラスターゼ1は,血中に移行すると血中のプロテアーゼインヒビターと結合する.このため血中ではアミラーゼのように酵素活性を測定することはできない.従来,血中エラスターゼ1は免疫化学的測定方法であるradio immunoassay(RIA法)により測定されてきた.近年,ラテックス免疫比濁法による測定法が開発され,汎用の自動分析装置により簡便・迅速に測定することが可能になった.〔臨床検査 47:875-880,2003〕

von Willebrand factor-cleaving protease

著者: 藤村𠮷博

ページ範囲:P.881 - P.886

〔SUMMARY〕 近年,血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura;TTP)発症の原因の1つとして,von Willebrand因子特異的切断酵素(von Willebrand factor-cleaving protease)/ADAMTS-13の活性低下が注目されている.すなわち,家族性TTPではADAMTS13遺伝子の異常による酵素活性の先天的欠損があり,また非家族性TTPでは後天的にこの酵素に対するインヒビターが産生されている場合が多く,しかもこのインヒビターはIgGに属する自己抗体であることが示された.すなわち後天性TTPの一部は自己免疫疾患のカテゴリーに入るとの概念が打ち立てられた.

 一方,TTPに類似するも異なった病態とされている溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome;HUS)については,この酵素活性がほぼ正常で,インヒビターも存在しない.これらの結果は,後天性TTPでは血漿交換により自己抗体の除去とADAMTS-13酵素の補充療法を行いながら,他方,免疫抑制剤を投与し,自己抗体の産生を抑えることが肝要であり,一方,家族性TTPの場合には血漿の単独投与で十分であることを示唆している.すなわち,ADAMTS-13活性の測定はこれら疾患の鑑別診断に有用であるばかりではなく,治療法の選択においても必須のものと考えられる.本稿では,本酵素活性測定法の現状について述べる.〔臨床検査 47:881-886,2003〕

話題

歯周病と病原性プロテアーゼ

著者: 山本健二

ページ範囲:P.887 - P.892

1. はじめに

 Porphyromonas gingivalis(以下,ジンジバリス菌)は,歯周ポケットを主要な棲息部位とするグラム陰性嫌気性桿菌で,主要な歯周病原性細菌の1つとして広く認知されている.本菌は非糖分解性であるため,蛋白質分解によって得たアミノ酸をエネルギー源・栄養源として発育増殖する.そのため,本菌は必然的に多様なプロテアーゼを菌体外や菌体表面に産生分泌する1).Gingipainsは本菌が産生する主要なトリプシン様システインプロテアーゼ群で,全プロテアーゼ活性の85%以上を占める主要酵素である2,3).Gingipainsはペプチド結合切断部位の特異性からArg-gingipain(Rgp)とLys-gingipain(Kgp)の2種類に分けられている1,2).両者は多くの場合,協調的に働き,宿主に対しては病原性を,菌自身に対しては生存戦略に必要な生理活性を発揮する.したがって,両者に対する特異的インヒビターは,本菌が関与する歯周病ならびに歯周病関連疾患の新たな治療薬となる可能性を秘めている.

日本人のα1-アンチトリプシン欠損症

著者: 笠木聡 ,   瀬山邦明 ,   福地義之助

ページ範囲:P.894 - P.898

 1.はじめに

 α1 -アンチトリプシン(α1 -AT)欠損症は,若年で慢性閉塞性肺疾患(COPD)を生じる常染色体劣性の遺伝性疾患である.欧米白人では約3,000~6,000人に1人という高い頻度で認められているが,わが国ではわずか19家系が報告されているにすぎない.α1 -AT欠損症によるCOPDは欧米でさえ全COPD患者の約1~2%にすぎないが,その肺胞破壊を生じる分子生物学的,生化学的メカニズムを理解することは,α1 -AT濃度正常の一般高齢者におけるCOPD発症機序を考察するうえで重要である.本稿では,わが国における報告例の分析について述べる.

脳アミロイドアンギオパチーとシスタチンC

著者: 山田正仁

ページ範囲:P.899 - P.902

I. 脳アミロイドアンギオパチー(CAA)とは?

 アミロイドは病理学的にはコンゴレッド染色陽性で,偏光顕微鏡で緑色偏光を呈し,電顕的に細線維構造を呈する物質として定義され,βシート構造に富む様々な蛋白がアミロイドとして全身性に,あるいは臓器に限局して沈着し障害を引き起こす(アミロイドーシス).

 脳アミロイドアンギオパチー(cerebral amyloid angiopathy;CAA)は脳血管へのアミロイド沈着症であり,高齢者やアルツハイマー病(アルツハイマー型痴呆)患者でしばしば認められる.軽度のCAAを有する例まで含めると高齢者の約半数はCAAを有しており,非常に一般的な病態である.軽度のCAAは臨床症状と直接は関連しないが,高度なCAAは脳血管障害(脳出血,白質脳症,血管性痴呆など)の原因となる.しかし,現状をみると,剖検でやっとCAAの診断がつく場合も多く,治療法も確立していない.

HIVプロテアーゼインヒビター

著者: 田村文雄 ,   前田浩

ページ範囲:P.903 - P.905

1. はじめに

 エイズ(aquired immunodeficiency syndrome;AIDS)は,T細胞(CD4+)に対するHIV(human immunodeficiency virus)の感染によって起きる後天的免疫不全の状態になる疾患である.1980年代初頭より同疾患が認識されはじめ,HIVの発見および病気の本質が解明され全体像がわかってきた反面,全世界規模で患者が広がっており治療法の確立が急務になった.1987年に本格的な抗HIV薬として,「核酸誘導体系逆転写酵素阻害剤」であるAZT(アジドチミジン:ジドブジン)が登場した.これは,HIV-RNAが逆転写酵素によりDNAに翻訳される過程を阻害するチミジンの誘導体であったが,単剤では十分な効果が得られなかった.その後,1995年から新たな治療薬として,ウイルスの増殖に必要な蛋白分解酵素を阻害するいわゆる「HIVプロテアーゼインヒビター」と,1996年には「非核酸誘導体系逆転写酵素阻害剤」が加わり,その頃よりエイズの治療は大きく変化していった1)

 核酸誘導体系2剤に,HIVプロテアーゼインヒビターまたは非核酸誘導体系逆転写酵素阻害剤を加えた3剤,4剤併用による治療が行われるようになった1996年より,米国におけるエイズ死亡者数が初めて減少に転じたのである.このような早期から強力な治療を行う高活性抗ウイルス療法(highly active antiretroviral therapy;HAART)の導入により,「エイズはもはや克服可能な感染症」とまでいわれた.このHAARTは,“Hit HIV early and hard”といわれ,多剤併用療法により早期から強力な治療を行うものであったが,この「克服可能な感染症」という幻想は,1~2年でもろくも砕け散ったのである.まず,PCRによる高感度の血中ウイルスゲノムの検出法によりHIVを完全に排除することが不可能であることがわかってきたことと,耐性ウイルスや副作用の問題が出現し,最近では治療の開始時期を遅らせるようになってきている.

 本稿では,逆転写酵素阻害剤と並び称せられている主なエイズ治療薬であるHIVプロテアーゼインヒビターについて概説し,その問題点と新規のHIVプロテアーゼインヒビターについて紹介する.

アルツハイマー病

著者: 保戸田二香 ,   石浦章一

ページ範囲:P.906 - P.910

1. はじめに

 アルツハイマー病(Alzheimer's Disease;AD)は,記銘力の低下を初期症状とする進行性の痴呆であり,高齢社会における大きな社会・経済問題の1つとして,その発症機構の解明と医療方法の確立が重要な課題となっている.神経病理学的な特徴として,大脳皮質における神経細胞の脱落と,老人斑や神経原線維変化と呼ばれる繊維状構造物の蓄積が挙げられる.ADは,遺伝的背景がはっきりしている家族性(Familial AD;FAD)と,はっきりしない孤発性とに分けることができる.FADの原因遺伝子として,アミロイド前駆体蛋白質(APP)遺伝子,プレセニリン1,プレセニリン2が,また孤発性ADの危険因子として,アポリポ蛋白E(ApoE)のε4遺伝子型,α2マクログロブリン遺伝子などが明らかになっている.FADの原因遺伝子や変異の種類は複数であるが,老人斑の主要構成成分であるアミロイドβ(Aβ)ペプチドのうち,凝集しやすいAβ42の産生が上昇することは共通である.Aβは,APPからβ-,γ-セクレターゼと称されるプロテアーゼによって切断,分泌されるが(図1),ヒトの脳では主に40アミノ酸から成る可溶性のAβ40が産生される(図2).それよりも2残基長いAβ42は,凝集体の核となってオリゴマーを形成し,神経細胞に対し何らかの毒性を示すことによって神経原線維変化,神経細胞の脱落へと導き,AD発症に至ると考えられている(アミロイド・カスケード説).本稿ではAD医療の可能性について,Aβを取り巻くプロテアーゼとプロテアーゼインヒビターを中心に述べる.

今月の表紙 電気泳動の解析シリーズ・8

γH鎖病(Gamma heavy chain disease)蛋白

著者: 大竹皓子

ページ範囲:P.828 - P.830

1.はじめに

 免疫グロブリンは,2本の相同のH鎖とL鎖が鎖間のS-S結合で結合した4本のポリペプチド鎖の基本構造からなる.H鎖病では免疫グロブリンのL鎖を欠損したH鎖の不完全分子が産生される.1964年にFranklinら1)がγH鎖病を初めて報告し,これまでに100例余の報告例がある.γH鎖病以外にもα鎖病,μ鎖病,δ鎖病についての症例報告がある.

 いずれもL鎖をもたない不完全分子のH鎖が血清や尿中に出現するのが特長で,リンパ増殖性疾患の病態を呈するが,それぞれ特有の病像をもつ疾患とされている.

 ここでは慢性関節リウマチ(RA)の48歳の患者に認めたγH鎖病蛋白像を示した.

コーヒーブレイク

自動化学会のあとさき

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.874 - P.874

 4月中旬には,日本臨床検査自動化学会の第2期会長に筑波大を退官された中井利昭先生が就任され,祝賀会が催される.

 思えば臨床検査関係では最大の規模をもつようになった本学会も,発端は小さい研究会が樫田良精氏(東大)を中心に40年も前に旗上げされたことに始まった.私も当初からこれに参画したが,小さい会場で司会の最中に狭い椅子が不安定で転がり落ちた記憶がある.

シリーズ最新医学講座・Ⅰ 免疫機能検査・32

アレルギー性皮膚疾患の免疫機能検査

著者: 片山一朗

ページ範囲:P.913 - P.920

はじめに

 アレルギー性皮膚疾患においては,皮膚のみを病変の場とする疾患と,全身性の病変が皮膚に及ぶ疾患の2つに分けられる.ここでは,Cooms and Gelの分類に従って代表的なアレルギー性皮膚疾患を紹介し,その免疫学的機能検査に関する最近の話題を簡単に述べさせていただく(表1).

シリーズ最新医学講座・Ⅱ シグナル伝達・8

細胞極性を決定するシグナル,aPKC-PARカセット

著者: 水野恵子 ,   大野茂男

ページ範囲:P.921 - P.927

はじめに

 細胞内の様々な小器官や生体物質は,細胞質や膜に均一に存在するわけではなく,空間内に片寄った局在を示す.これを細胞極性と呼んでいる1,2).細胞の極性は,細胞そのものの形や機能発現に必須である.形態形成のある時期や成体において,細胞の極性化に伴う不均等分裂が起きることが知られている.細胞の極性化は細胞固有の問題ではなく,親細胞,あるいは細胞外からの極性化シグナルを受けて正確に形成されることが必要である.細胞極性の乱れが個体の病態や形態形成の破たんを引き起こすことが知られるにつれ,細胞の極性制御のメカニズムに注目が集まっている.この数年の研究により,様々な細胞極性化の場面で進化的に保存された1つのシステムが機能していることがわかってきた.本稿では,そのaPKC-PARカセットの発見と,最近明らかになりつつある上皮細胞の極性化過程におけるaPKC-PARカセットの機能について述べたい.

トピックス

抗リン脂質抗体 Antiphospholipid antibody

著者: 松田重三

ページ範囲:P.929 - P.934

1.はじめに

 抗リン脂質抗体は全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;SLE)にしばしば出現する自己抗体で,動静脈血栓症や習慣流産発症の重要なリスクマーカーとして知られる1~4)

 本稿では,抗リン脂質抗体の最近のトピックスを,特に新しい抗リン脂質抗体として注目されている抗プロトロンビン抗体に焦点を当てて述べる.

研究

総合的左心機能指標TEI indexの加齢による変化について

著者: 山口康夫 ,   福田信夫 ,   宍戸誠 ,   高橋幹博 ,   篠原尚典 ,   酒部宏一 ,   名田晃 ,   田村禎通

ページ範囲:P.935 - P.939

〔SUMMARY〕左室TEI indexは収縮能と拡張能を統合した総合的左心機能を反映する指標とされている.しかし,その加齢性変化については明らかにされていない.今回筆者らは,左室TEI indexの加齢による変化とその機序について検討した.その結果,TEI indexは加齢とともに高値を示し,その原因は主として加齢に伴う左室弛緩障害を反映した左室等容拡張時間の延長によると考えられた.また,TEI indexを臨床応用する際には年齢による影響を考慮する必要があると考えられた.

Bacillus Alkaline Proteaseを用いたホルマリン固定臓器の廃棄処理装置

著者: 小林忠男 ,   植田正己 ,   西野俊博 ,   村松美津江 ,   森谷鈴子 ,   加藤進 ,   野澤康平

ページ範囲:P.941 - P.945

〔SUMMARY〕ホルマリン固定臓器の廃棄を目的として,臓器処理装置の開発を企てた.脱ホルマリン処理された固定組織は酵素(Bacillus Alkaline Protease:耐熱性アルカリプロテアーゼ)とともに組織分解減容装置(Pathological Waste Converter;PWC)に投入し約20時間後分解物を取り出した.1回に使用した固定組織は食肉用豚肉(心臓,肝臓,子宮)5.3~5.7kgで分解工程は以下のとおりである.まずホルマリン固定組織を補助材である木チップ,水酸化カルシウム,水道水と併せて投入,脱ホルマリン処理後(60℃,4時間)酵素処理として耐熱性蛋白分解酵素を投入し(60℃,6時間),乾燥処理(60℃,10時間)を行った.最終処理物は2.2~2.4kgで減量率は39~44%であった.また,最終分解物は何れも肥沃土状から顆粒状を示し良好に処理されていた.この結果より本装置は病理検査などにかかわる臓器廃棄の減量化に向けて有効な方法を提供すると考える.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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