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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査48巻5号

2004年05月発行

雑誌目次

今月の主題 アルブミン 巻頭言

今なぜアルブミンか

著者: 渡辺明治

ページ範囲:P.499 - P.500

 血清アルブミン濃度が低下した状態を低アルブミン血症と呼ぶが,これには多くの疾患が該当する.栄養素の摂取量や吸収不良による栄養不足,悪液質,消化不良症候群,肝でのアルブミン合成能が低下する劇症肝炎や肝硬変などの肝疾患,まれに先天性無アルブミン血症や異常アルブミン血症がみられる.さらに,アルブミンの体外への喪失・漏出はネフローゼ症候群,糸球体腎炎,糖尿病腎症,蛋白漏出性胃腸症などでみられ,アルブミンの異化の亢進による低アルブミン血症には全身感染症,慢性消耗性疾患,代謝亢進が,アルブミンの体内分布の異常(血管内から血管外への移動)として全身の浮腫,腹水や胸水などの体腔液の貯留が挙げられる.なお,慢性疾患の他にも,出血性・外傷性ショックや熱傷などの急性疾患でも血清アルブミン濃度は低下する.

 血清アルブミン濃度の測定法は時代の変遷をたどって今日わが国ではオートアナライザー(色素結合)法が一般化され,ブロムクレゾールグリーン(BCG)法またはブロムクレゾールパープル(BCP)法が広く使われている.最近ようやく,標準ヒト血清アルブミンが一般化されようとしており,その正常値や低アルブミン血症の定義も明確になるものと期待される.近年,肝疾患例でみられる低アルブミン血症に対して分岐鎖アミノ酸製剤が用いられるようになり,肝での合成能を促進することにより低アルブミン血症が改善する.アルブミン濃度は予後を予測する指標として重視されており,たとえ0.1g/dlであれその増減の臨床的意義は極めて大きい.したがって,そのわずかな変化が正確に検出でき,施設間での測定値の相違を減らすことが急務となった.

総説

血清アルブミンの多面的機能とその解析

著者: 惠良聖一

ページ範囲:P.501 - P.511

〔SUMMARY〕 血清アルブミンは生体内に数ある蛋白質の中でも最も古くから研究され,かつ多面的な生理機能を有することが知られている.近年のX線結晶構造解析法や高分解能NMR法によって,蛋白質の分子構造と生理機能との相関がかなり詳細なレベルで議論されるようになってきた.ここでは主に,搬送体蛋白質としての機能と翻訳後修飾された血清アルブミンの機能特性とに大別して,X線結晶構造解析法で明らかにされたアルブミン構造を中心に,最新の構造機能相関について述べる.〔臨床検査 48:501-511,2004〕

血清アルブミン測定の臨床的意義

著者: 矢田豊 ,   渡辺明治

ページ範囲:P.513 - P.519

〔SUMMARY〕 アルブミンは肝で合成され,血漿蛋白質のなかでも含量が最も多く,血漿総蛋白の約60%を占める.その機能は多彩で,アルブミンは血漿膠質浸透圧の維持や各種物質の輸送において重要な役割を果たしている.血清アルブミンすなわち血管内アルブミンは血管外アルブミンも含めた生体内アルブミンプールの一部であり,血清アルブミン値の解釈には,血管内のみでなくアルブミンの体内分布や代謝動態について考えることも重要である.〔臨床検査 48:513-519,2004〕

構造特性からみたアルブミン―薬物結合サイトと治療設計

著者: 安楽誠 ,   丸山徹 ,   小田切優樹

ページ範囲:P.521 - P.527

〔SUMMARY〕 ヒト血清アルブミン(HSA)は非常に柔軟な立体構造を有し,多様な物質と結合することができるため,栄養物質のような内因性物質や薬物のような外因性物質の運搬,貯蔵,安定化,可溶化,解毒といった輸送担体として重要な役割を担っている.多くの場合,薬物はHSA分子上に存在する少なくとも5つの結合サイトのいずれかに対し,特異的かつ可逆的に結合するが,NOのように34Cysに共有結合することもある.近年のX線結晶構造解析や蛋白工学実験結果から,薬物結合に関与するアミノ酸残基が同定されるようになってきた.一般に,薬物のHSA結合は投与された薬物の体内動態や薬効,毒性にも重要なかかわり合いを有しているため,HSAに対し高い親和性を有する薬物を投与する場合,蛋白結合の変動を考慮して処方設計を行うことが大切である.〔臨床検査 48:521-527,2004〕

ヒトアルブミン疾患モデルとしての無アルブミンラットの系統育成

著者: 朱宮正剛 ,   長瀬すみ

ページ範囲:P.529 - P.536

〔SUMMARY〕 1954年にBennholdが2例の無アルブミン血症患者の報告をして以来30余の症例が報告されている.臨床症状は軽度の浮腫,易疲労性など比較的軽微である.血清アルブミン値の著しい低下にもかかわらず,総タンパク質量は正常で著明な高脂血症を呈する.原因は第4番染色体のアルブミン遺伝子に置換,挿入等による点突然変異,非相同交叉や重複による染色体突然変異が起こりアルブミン生合成が障害されるためである.われわれは1979年にSDラットから無アルブミンラット(NAR)を分離した.NARはラット第14番染色体のアルブミン遺伝子のHIイントロンにおける7塩基対の欠損によりスプライシング障害を起こす.本稿では遺伝的背景の異なる各種無アルブミンラット系統の育成と特性について紹介し,自然発症疾患モデル動物の有用性について述べた.〔臨床検査 48:529-536,2004〕

技術解説

血清アルブミン定量法

著者: 村本良三

ページ範囲:P.537 - P.544

〔SUMMARY〕 血清アルブミン定量法の日常検査法としては,色素結合法であるブロムクレゾールグリーン法とブロムクレゾールパープル(BCP)法,さらに電気泳動法の3法が代表的である.しかし,従来の日常検査法は必ずしも正確度が高い定量法ではなく,誤差要因が多い.四半世紀もの間,問題点を抱えたまま日常検査が行われてきたが,最近BCP法の問題点を解消した正確度の高い測定法が開発された.本稿では,従来法の問題点および新しいBCP法の特長について述べる.〔臨床検査 48:537-544,2004〕

グリコアルブミン酵素法の開発

著者: 高妻卓司

ページ範囲:P.545 - P.550

〔SUMMARY〕 グリコアルブミン酵素法はグリコアルブミンをプロテアーゼで分解し,生成した糖化アミノ酸をケトアミンオキシダーゼで測定する方法である.測定値はブロムクレゾールグリーン法で測定されたアルブミン濃度で除しグリコアルブミン値(%)として表示される.基本性能は良好であり,診療前診断にも応用可能であることから,糖尿病の臨床診断に役立つ検査方法であると考えられた.ただし溶血,低アルブミン検体,一部の高カロリーアミノ酸輸液製剤を投与されている患者検体には注意を要する.また現在グリコアルブミン標準化の検討がなされているところである.〔臨床検査 48:545-550,2004〕

話題

遺伝子組換えヒトアルブミンによる臨床試験

著者: 竹山宜典 ,   大柳治正

ページ範囲:P.551 - P.555

 1.はじめに

 ヒトアルブミン(HAS)は,主として肝臓において合成される分子量約66.5KDの蛋白質で,ヒト血漿中の約60%を占める.血液中でビリルビンや脂肪酸などの多くの低分子と結合して,それらの輸送蛋白質として働くとともに,膠質浸透圧保持に重要な役割を果たしている.その病的喪失や合成低下に伴う様々な病態に対して,医薬品として血漿由来ヒト血清アルブミン(nHSA)が臨床応用され,過去には老人や重症患者への栄養剤としても使用範囲が拡大された.そのため1986年にはわが国での使用量が98トンに達し,厚生省(現 厚生労働省)は過剰使用を戒める目的で,1986年に「血液製剤の使用適正化基準」を,1999年には「血液製剤の使用指針」を発表している.その結果,2002年には,国内使用量は48トンまでに減少している.

 一方,最近プリオン病であるクロイツフェルト・ヤコブ病やパポバウイルスB19のnHSAを介した感染の可能性が指摘されており,これまで比較的安全と考えられてきたnHSAにも感染物質伝播の危険性が指摘されるようになってきた.さらに,血漿分画製剤の自給化が国際的潮流となっているが,使用量が減少したとはいうものの,nHSAの国内自給率は依然として低いことも問題となっている.

 このような理由から,nHSAの代替としての遺伝子組換えヒトアルブミン(rHSA)の臨床応用に期待がかけられ,国内外で開発が進められた.特に,わが国ではミドリ十字(現 三菱ウェルファーマ)によりrHSA開発と臨床試験が精力的に行われ,1997年10月には世界に先駆けて製造承認申請がなされた.本稿では,このrHSA(GB-1507)の概要とともにその臨床試験の進捗状況を紹介し,将来の展望を述べる.

アルブミンのロット差と微量アルブミン標品の作製

著者: 上村八尋

ページ範囲:P.557 - P.561

 1.はじめに

 アルブミンは血漿中に最も多量に存在する蛋白質である.早くから治療を目的とする製剤化の研究がなされたこともあり,ほとんどのメーカーが大規模精製法として60年程前に確立されたエタノール分画法を採用している.小規模精製には,硫安分画法やイオン交換クロマトグラフィー法などが用いられている.

 検査試薬に使うアルブミンとしては,ヒトアルブミン(HSA)の外に各種動物由来のものがある.その中ではウシアルブミン(BSA)が最も多く使われている.しかし,国や学会の定めた品質規格がないため,医薬品に比べ,大きなメーカー差やロット差が認められている.

 アルブミンの酸化,糖化,薬物運搬体としての性状などについては,他の報告を参照していただくとして,本報では,アルブミンの安定性や非特異反応の原因を中心に,HSAやBSAを試薬として使う際の留意点についてまとめた.これらも踏まえて,尿中微量アルブミン測定用の標品を作製したので,その調製方法と物性を報告する.また,希釈誤差や吸着ロスなどの,取り扱い上の問題点についても考察した.

尿中微量アルブミンと高血圧

著者: 斎藤勇一郎 ,   中村哲也 ,   倉林正彦

ページ範囲:P.563 - P.566

 1.はじめに

 高血圧が,心血管病の危険因子であることはよく知られている.心血管合併症は,高血圧患者の予後に影響を及ぼすばかりでなく,医療経済的にも大きな問題である.高血圧治療の目標は,心血管病の予測因子である臓器障害を的確に診断し,心血管病を予防することにある.糖尿病患者では,尿中微量アルブミンが腎障害の重要な予測因子であることが知られているが,高血圧患者では,尿中微量アルブミンと臓器障害の関連についての研究は少ない.

 本稿では,尿中微量アルブミンと高血圧についての,最近の知見について述べる.

口腔健康指標としての血清アルブミン

著者: 葭原明弘 ,   宮﨑秀夫

ページ範囲:P.567 - P.570

 1. はじめに

 1) 歯科における2大疾患

 歯科における2大疾患はう蝕と歯周病である.う蝕は,生体で最も石灰化度の高い歯の硬組織が,限局性かつ進行性に破壊されて生じる疾患である.それは,歯のエナメル質表面が蓄積された有機酸により脱灰することから始まる.脱灰が進むと,二次的にエナメル質の有機性基質が破壊されう窩が生じる(図1).他方,歯周病は,その病変の主体は炎症であるが,萎縮も含まれる.歯周病は,大別して歯肉炎と歯周炎の2つに分けられる.歯肉炎は歯肉にのみ炎症病変が生じたものであり,歯周炎は歯肉に初発した炎症が歯根膜や歯槽骨など深部歯周組織におよび,歯の支持機能喪失につながる(図2).それぞれ,歯,歯周組織等に付着しているバイオフィルム(歯垢)中に生息する病原菌が原因で発症・進行する.

 2) 歯科疾患と血清アルブミン

 歯科学の分野では,今まで,アルブミンの歯質への影響を評価した基礎的な研究はあるものの1,2),血清アルブミン値を臨床指標として応用することはいまだ一般的ではない.しかし,昨今,歯科疾患と全身的な健康状態との関連を評価する調査のなかで,全身的な健康指標として血清アルブミンを採用し,歯科疾患との関連をみる試みが行われている.われわれは,う蝕や歯周病の発症には低栄養や慢性感染症の存在が影響すると考えており,血清アルブミン値が歯科疾患のリスクマーカであるとの仮説を設定している.

 本稿では,話題提供として,われわれが行った最近の調査について紹介したい3)

今月の表紙 臨床生理検査・画像検査・5

甲状腺疾患

著者: 尾本きよか

ページ範囲:P.496 - P.497

 甲状腺疾患の診断のために触診,血液検査に加え,今や超音波検査は欠かすことはできない.触診で甲状腺の大きさを「七条の分類」を用いて評価することもあるが,必ずしも客観的な方法とはいえない.超音波を使えば大きさに関しても容易に,正確に測定することが可能であり,例えば,峡部の厚さが3mm以上あれば肥厚と判定できる.甲状腺に対して行う画像検査には,超音波以外にCT検査,MRI検査,シンチグラフィなどがあるが,いずれも高額な装置で,放射線被曝の問題があったり,検査に時間や手間がかかるため,ファーストチョイスは超音波検査といえよう.低侵襲的で簡便であるうえに,高解像度の表在用探触子の開発によりその診断能は確実に向上している.さらには,超音波ガイド下に病変を狙った穿刺吸引細胞診を行うことにより,確定診断が可能であり甲状腺の画像診断において最も有用な検査といえる.使用する超音波の探触子は7.5~13MHzの高周波が用いられ,メカニカルセクタ,アニュラアレーや血流情報も得られる電子リニア型などがよく用いられている.甲状腺がびまん性に腫大する疾患の代表として,バセドウ病,橋本病(慢性甲状腺炎)などがあり,一方結節性(腫瘤)病変では良性の濾胞腺腫,悪性の乳頭癌,濾胞癌,髄様癌,未分化癌,悪性リンパ腫などがある.ここでは日常臨床で遭遇することの多いバセドウ病(図1),慢性甲状腺炎(図2),乳頭癌(図3),濾胞腺腫(図4)について超音波写真を提示し説明していく.

コーヒーブレイク

甘草の縁

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.562 - P.562

 向田邦子のエッセイの一節に昆布石鹸というのが出てくる.彼女が英語が解禁になった食糧不足の頃にこの不思議な菓子に出会った記憶である.黒くて四角で石鹸のようだが食べられる妙に気持のそそられる味で,何という名前で原料は何だろうなんて書いてある.その後反響があって,主にアメリカに在住した経験者からでリコリス(Licorice)キャンデーという漢方で常用される甘草を原料とした菓子であると知ったらしい.

 この甘草は私にとっても医者になりたての頃から大きなかかわりがあった.1953年に偶然信州から来院した1人の女性患者(Oさん)がそのきっかけとなった.国内で尿中17-KS測定が私を含めた数か所で始められた頃である.最新の検査と症状からアジソン病と診断されたが,ステロイド薬などみたこともない頃で死に至る病とされていた.いろいろ治療に悩んで文献を漁った末に1950年のランセット誌に胃腸薬として用いられてきた漢方の甘草が長い間に頭痛や浮腫を来たしたという報告がオランダの医師から報告されているのに出合った.

私のくふう

細菌コロニー数の簡便概算法

著者: 林俊治

ページ範囲:P.571 - P.571

 寒天平板培地上のコロニー数の測定は,細菌検査室における最も日常的な業務の1つである.しかし,肉眼で数えることのできるコロニー数には限界がある.一方,培地上のコロニー数が増えれば,隣接するコロニー間の距離は小さくなる.この原理に基づき,コロニー間の距離からコロニー数を簡便に概算する方法を開発したので報告する.

 もし,隣接するコロニー間の距離が均一であるなら,コロニーは図1のように,互いに正三角形を作るように並ぶ.正三角形を1つ作るためには,コロニーが3個必要である.一方,1つのコロニーは6個の正三角形の頂点になる.つまり,N個のコロニーが存在する場合,そのコロニーによって形成される正三角形の数は6÷3=2より,約2N個となる.

シリーズ最新医学講座・Ⅰ 転写因子・5

転写因子と癌Ⅰ:癌と転写因子の概説と増幅遺伝子

著者: 稲澤譲治

ページ範囲:P.572 - P.576

はじめに

 われわれの体の中では,皮膚や腸管,あるいは骨髄などの細胞は,定められた寿命のもとに活発に古い細胞と新しい細胞が絶えず入れ代わっている.また,物理的な傷や感染症などによって組織がダメージを受けるといった緊急事態の場合には,この変化に応じて,急遽,増殖シグナルのスイッチがONとなり,活発に細胞は増殖して,失われた細胞を補給して組織損傷の修復作業が行われる.これには細胞の増殖とその抑制という制御機構が実に精妙にコントロールを受けて実行される.その結果,再びヒトは健康を取り戻して,以前と変わらぬ生活を営むことが可能になるのである.ここでは,細胞の増殖シグナル経路に働く種々の因子の遺伝子増幅による活性化と癌に関して述べる.

シリーズ最新医学講座・Ⅱ 病理診断に役立つ分子病理学・5

乳癌

著者: 梅村しのぶ ,   長村義之

ページ範囲:P.577 - P.582

はじめに

 病理診断は病変の病理組織形態学的特徴からなされる.細胞,組織形態は,細胞内のすべての事象,遺伝子複製から蛋白合成に至る過程の総和として成り立っている.形態学的特徴には種々の程度の中間段階があること,病因とかならずしも1対1対応ではないこと,疾患概念が変遷することから,かならずしも明瞭な病理診断がなされ得ない,あるいは診断というよりは暫定的なコンセンサスにとどまらざるを得ないという側面が,病理診断の難しさでもありわかりにくさでもある.近年の,種々の疾患,特に腫瘍における遺伝子異常の解明に伴い,より明瞭な病理診断基準,組織分類への期待が大きい.昨今改定されたWHO“Tumours of the Breast and Female Genital Organs”においてもgeneticsについての記載が試みられている.現段階においては,病変と分子病理学的結果との関連性が十分解明されているとはいえないが,本稿においては分子病理学的解析結果の到達点について解説する.

研究

妊娠・分娩・産褥期の唾液中クロモグラニンA

著者: 立岡弓子 ,   高橋真理 ,   前田徹

ページ範囲:P.583 - P.586

〔SUMMARY〕 妊婦は,短期精神的ストレスを受けると自律神経機能が変化する.妊娠・分娩・産褥期における自律神経機能を反映したストレス関連ホルモンである唾液中CgA濃度の基礎データを得るために研究を行った.併せて唾液中コルチゾール濃度の測定を行った.その結果,唾液中CgA濃度は,妊娠期に持続的に非妊時よりもやや高くなり,分娩入院時の精神的緊張状態に高値を示し,分娩による身体的ストレスには反応性が乏しいことが明らかとなった

活動性肺結核症例における血中抗酸菌抗体(TBGL・LAM)測定の有用性―喀痰検査法成績との比較および両抗体の併用効果

著者: 奥田勲 ,   小原千秋 ,   坂本修 ,   田中司 ,   長谷川達朗 ,   緑川清江 ,   渡邉勝美 ,   太田和秀一 ,   手塚俊介

ページ範囲:P.587 - P.591

〔SUMMARY〕 活動性肺結核症例を対象に血中抗酸菌抗体(TBGL・LAM)の検出意義を検討した結果,両抗体ともに①塗抹陰性症例の迅速検査法として有用であること②入院時抗酸菌非検出症例における検出は,特にその臨床的意義が大きいことが確認された.しかし両抗体で異なる成績を呈する症例も散見されたことから,これら乖離症例における検出率の改善には,現状では両抗体の効率的併用が有効であると考えられた.

LPS刺激によるTNF-α産生能の新しい簡便測定法

著者: 小林幸司 ,   稲垣孝司 ,   阿部佳子 ,   栗山澄 ,   西村典子 ,   小宮山豊 ,   高橋伯夫

ページ範囲:P.593 - P.597

〔SUMMARY〕 Toll様レセプターを介した自然免疫系の機能を簡便,迅速に評価する手法として,LPS刺激による全血でのTNF-α産生能の新しい測定法を考案し,その測定条件と性能について検討した.

 本法は,採血からTNF-α産生反応までの操作をほぼ閉鎖系で処理できるため,簡便・迅速でエンドトキシン汚染の恐れが少ない方法である.

 TNF-α産生反応の最適培養条件は,LPS濃度が100EU/mlで,培養時間が4時間であった.従来の分離単核球や希釈全血を用いる方法よりも約1/1,000量のより生理的なLPS濃度での反応であり,培養時間も24時間から大幅に短縮できた.

 本法の同時再現性の変動係数は約3%であり,健常者31例の個体間差の変動係数は,約30%と良好な性能であった.

 以上,本法は自然免疫系の機能を研究するための新しいツールとして役に立つことが期待される.

学会だより 第15回日本臨床微生物学会

日常臨床に即した臨床微生物学会

著者: 本田孝行

ページ範囲:P.598 - P.598

 第15回日本臨床微生物学会は,2004年1月24・25日の両日,茨城県つくば国際会議場で催された.地方に住んでいる者にとって知らない土地へ行けるのはうれしいが,松本から土浦までは半日がかりで,本当に遠くへ来たという感じがした.ひたち野うしく駅で電車を下りてバスで30分,荒地のなかに筑波学園都市が見えてきた.数十年前に造られた町であるので,古いのか新しいのかわからない.会場は国際会議場なので申し分ないが,交通の便が悪くややもったいない施設のようにも思えた.

 最近の医学会総会は華美に走り,会場費も毎年高くなる一方で,プログラムには学会のステータスかのように外国人の招待講演が連なる.臨床微生物学会のプログラムには外国人の名前がなく,参加費の8,000円も得をした気分にさせられた.特別講演,教育講演,シンポジウムの内容をみても実践に即した演題ばかりで,日常の微生物検査に役立つ学会という意図が随所にみられた.並列なので聞けないのが残念な講演も多かった.

迅速・情報・コミュニケーション―よりよい微生物検査を目ざして

著者: 柳沢英二

ページ範囲:P.599 - P.599

 第15回日本臨床微生物学会総会が,1月24,25日の2日間にわたり国際都市つくば国際会議場で,一幡良利会長(筑波技術短期大学衛生学・公衆衛生学教授),郡 美夫副会長(千葉市立青葉病院臨床検査科)のもと開催された.会員数2,400名を超える学会で今回の参加者数は1,000名を超え,この学会に対する会員の期待感の大きさを感じた.

 今学会は,総会長講演,特別講演(2題),教育講演(2題),シンポジウム(6題),特別企画(1題),ワークショッブ(6題),一般演題(146題),モーニングセミナー(1題),ランチョンセミナー(6題),イブニングセミナー(2題),市民公開講演と毎年ながら朝8時から夜7時半までよりよい微生物検査をめざして,開催期間中くつろぐ時間がないほど内容が濃い学会であった.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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