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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査49巻10号

2005年10月発行

雑誌目次

今月の主題 視機能 巻頭言

最新の視機能検査

著者: 松橋正和

ページ範囲:P.1057 - P.1058

はじめに

 科学技術の著しい進展は医学の分野においても例外ではなく,最先端の科学技術が次々に導入され,応用されてきている.これらの事実は,医療の進歩,患者さんにとっての恩恵につながるものであろう.しかしながら今日あるような急速な進歩は,一方で安全性の問題,人権の尊重という観点からの課題をも併せもつものであり,医療関係者は最先端の進歩を捉え,自ら消化して対応していく必要に迫られている,ともいえよう.

総論

緑内障の検査

著者: 金本尚志 ,   三嶋弘

ページ範囲:P.1059 - P.1068

〔SUMMARY〕 緑内障の検査は,その診断に重要であるだけでなく,治療方針を決定する際に重要な役割を果たす.端的に把握することが困難な「緑内障性の視機能障害」を,細分化した複数の検査項目によって評価し,それらの結果を集計して総合的評価を下すことになる.したがって,その検査は多岐にわたり,高度な熟練度を要する検査内容も含まれる.そのため,紋切り型に検査を行うだけでは不十分であり,基本的な検査理論を理解したうえで,検査ポイントを逃さずに,再現性を有する検査結果を導き出すことが必須となる.本稿では,それらの網羅的な検査ストラテジーについて述べる.〔臨床検査 49:1059-1068,2005〕

眼疾患の分子遺伝学的検査

著者: 堀田喜裕

ページ範囲:P.1069 - P.1076

〔SUMMARY〕 眼疾患を対象とした分子遺伝学的検査について,眼感染症と,遺伝性眼疾患に分けて解説する.眼感染症としては,アデノウイルス,エンテロウイルス,クラミジアによる結膜炎や,ヘルペスウイルスによる角結膜炎,桐沢型ぶどう膜炎とその関連疾患などが対象となる.涙液や,前房水から得られたDNAをPCR法で増幅して原因病原体のDNAを同定する.遺伝性眼疾患に対して分子遺伝学的検査が一般化しているのはレーベル病である.その他の遺伝性眼疾患の原因遺伝子に対する知見は膨大になりつつあるが,現状で検査が一般化しているとはいいがたい.一部の研究機関で,角膜ジストロフィ,網膜ジストロフィ,網膜芽細胞腫,眼先天異常,緑内障などの遺伝子診断が主として研究目的で行われている.〔臨床検査 49:1069-1076, 2005〕

乳幼児の視機能検査

著者: 瀧畑能子

ページ範囲:P.1077 - P.1084

〔SUMMARY〕 乳幼児は,視機能の発達も精神発達も著しいため,年齢によって検査の方法を選択しなければならないし,個人差も大きいので得られた数値だけで正常か異常かを判断しにくい.検査結果として数値にはクリアカットに出なくても,検査中の児の態度の観察によって視機能評価が可能なことも多い.また,協力が得られない児であっても他覚的検査を行い,異常を早期発見し,早期に治療開始できるようにしていくことが重要である.〔臨床検査 49:1077-1084,2005〕

各論

眼科写真撮影

著者: 金上貞夫

ページ範囲:P.1085 - P.1089

〔SUMMARY〕 検診などで用いる眼底カメラは臨床検査技師も使用することができる.眼底にはいろいろな疾患が現れるので眼底を撮影することにより病気の早期発見につながり,早期治療が可能となる.無散瞳型眼底カメラは検診の場で用いることを目的に設計された機械である.この稿ではカメラの原理・構造を述べ,その使い方を解説,現在発売されている機種を紹介する.加えて散瞳型の基本的取り扱い方について解説する.〔臨床検査 49:1085-1089,2005〕

波面収差解析

著者: 根岸一乃

ページ範囲:P.1091 - P.1097

〔SUMMARY〕 近年,光学やエンジニアリングの分野で広く用いられてきた波面収差解析の概念が眼科臨床にも導入され,波面収差解析装置が開発された.波面収差解析装置は,眼球光学系の黄斑上から発せられた光が,眼外に出たときの波面を解析する装置で,測定眼の屈折異常ばかりでなく,不正乱視(高次収差)も詳細に解析することが可能である.波面収差解析装置の解析結果に基づいた,新しい眼内レンズの開発や,エキシマレーザーによるwavefront guided手術により,より良い術後視機能を得ることが可能となりつつある.〔臨床検査 49:1091-1097,2005〕

網膜電気生理

著者: 近藤峰生

ページ範囲:P.1099 - P.1106

〔SUMMARY〕 光刺激によって網膜の神経細胞は興奮し,電位を生じる.この電位を角膜に置いた電極から記録する検査が網膜電図(ERG)である.ERGには網膜全体の反応を記録する全視野ERGと網膜の局所反応を記録する局所ERGがある.全視野ERGでは明所視機能を反映する錐体応答と暗所視機能を反映する杆体応答を分離することが重要である.局所ERGの記録装置としては現在多局所ERGが市販されており,これを用いると50個以上の局所ERGを一度に記録することができる.〔臨床検査 49:1099-1106,2005〕

HRFとHRT―(Heidelberg Retina Flowmeter and Heidelberg Retina Tomograph)

著者: 木村至

ページ範囲:P.1107 - P.1113

〔SUMMARY〕 HRF(Heidelberg Retina Flowmeter)は,共焦点レーザー検眼鏡とレーザードップラーフローメーターを組み合わせることにより確立された,眼底組織血流測定装置である.同様にHRT(Heidelberg Retina Tomograph)は共焦点レーザー走査技術の進歩によって可能となった,3次元的な視神経乳頭および網膜の形状解析装置である.この2つの役割を担う1つの器械ユニットがHRF/Tとして医療現場に供給されているが,近年になりHRTの機能のみを分離しソフトウェアのバージョンアップを遂げた廉価版ともいえるHRTⅡが登場している.本稿ではこれらの装置の長所・短所を含めた概要に触れ,実際の臨床応用について解説した.〔臨床検査 49:1107-1113〕

FAとIA―(Fluorescein angiography, Indocyanine green angiography)

著者: 飯島裕幸

ページ範囲:P.1115 - P.1123

〔SUMMARY〕 眼科で行う血管造影検査は臨床他科で行われているX線を使用する造影検査とは異なり,造影剤として蛍光色素を用い,照明光と放出される蛍光の波長の差を利用して,造影剤の存在する血管のみを画像化する検査である.FAでは可視光領域の蛍光を用いるので,可視光を遮断する網膜色素上皮よりも前の網膜の血管が造影される.IAではそれよりも長い波長の光である赤外光を用いるので,脈絡膜の造影像を画像化することができる.それぞれの検査の実際,正常像,異常像について解説した.〔臨床検査 49:1115-1123,2005〕

FDT―(Frequency doubling technology perimetry)

著者: 高橋現一郎

ページ範囲:P.1125 - P.1132

〔SUMMARY〕 正常眼圧にもかかわらず視神経・視野に緑内障性変化をきたす正常眼圧緑内障が,わが国では高頻度にみられることが疫学調査で判明した.視神経の緑内障性の変化は視野変化に先行するとされ,より早期発見が可能な視野検査が望まれていた.FDTは,網膜神経筋細胞の中で余剰性が少ないM細胞系を検査することで,視野欠損を効率良く検出できる.機器は軽量で,従来の視野計のような視力矯正や暗室を必要とせず,スクリーニング検査や会社検診などに適していると思われる.〔臨床検査 49:1125-1132,2005〕

眼関連高次機能検査

著者: 鈴木幸久 ,   清澤源弘

ページ範囲:P.1133 - P.1139

〔SUMMARY〕 視機能の処理には,脳の後頭葉が深く関連しているが,眼球運動や瞬目の際にも脳の各部位がかかわっていることが知られている.ポジトロン断層法(positron emission tomography;PET)は放射線を用いて血流,代謝,神経受容体密度などの様々な生理的指標を測定することで,CTやMRIなどでは描出できない機能的な変化を捉えることが可能である.具体的な症例を提示しながら,PETを用いた検査について述べる.〔臨床検査 49:1133-1139,2005〕

話題

電子カルテと眼科検査

著者: 三方修 ,   綾木雅彦

ページ範囲:P.1141 - P.1145

1.はじめに

 カルテの電子化の流れは,1988年当時の厚生省が通知した「診療録の記載方法について」でワープロなどでの記載が可能となり,また1994年に「X線写真等の光磁気ディスクなどへの保存について」の通知により,医用画像の光磁気ディスクなどの保存が規定された.そして,1999年4月,「診療録の電子媒体による保存について」という通知により,診察から会計まですべてのことを一元的に管理する電子カルテシステムが可能となった1).その後,「診療録等の保存を行う場所について」「診療録の外部保存に関するガイドライン」や,税制面では2003年に「IT投資促進税制」による設備投資減税の適応などが出され,電子カルテへ移行する病院が増えている.

 それに伴い,電子カルテシステムを扱う会社は現在,公立や大学病院などを扱う大手から,開業医レベルの小規模のシステムを扱う会社まで,様々な会社が存在している.それらの電子カルテも多種多様であるが,ほとんどが内科をメインとしたシステムが多く,眼科という特殊な科には,使用しづらいものが多いようで,眼科検査は独立して,眼科ファイリングシステムを組んでいる病院が当院を含め多いようである.

 眼科検査の電子化の流れは,1980年代前半のパソコンの普及により,検査画像を解析,定量化することが可能となり,1994年の医用画像の保存規定により,眼底写真や細隙灯顕微鏡写真のファイリングシステムから始まっている.しかしながら,当時のデジタル撮影技術のレベルからいって,ごく最近まで,診療に使用できるレベルではなかった.写真以外の検査機器は独自の方式で検査,解析,保存,プリンターなどが,All in Oneで完結する機器が多く発売されて現在に至っている.

視能訓練士法施行規則の改正と国家試験

著者: 臼井千惠

ページ範囲:P.1147 - P.1151

1.はじめに

 視能訓練士(Orthoptist)は,1971(昭和46)年に制定された「視能訓練士法(以下,法)」に基づく眼科領域における国家資格をもった医療技術者である.主な業務は,眼科臨床で視機能検査や斜視あるいは弱視などの両眼視機能矯正訓練であるが,有資格者数が他の医療関係職種と比べて極めて少ないため,病院内の医療従事者間でさえ知名度が低い職種である.

 今回,『視機能』の話題として「視能訓練士法施行規則の改正と国家試験」を述べるにあたり,まず世間にあまり知られていない「視能訓練士」について臨床での業務内容を「視能訓練士法」に基づいて解説し,それに引き続き本題である国家試験などの話題について述べたいと思う.

今月の表紙 染色体検査・4

造血器腫瘍における染色体検査の意義

著者: 市村剛

ページ範囲:P.1054 - P.1056

1.はじめに

 染色体検査は,先天性染色体異常の解析と造血器腫瘍を代表とする後天性染色体異常の解析に多く実施されている.造血器腫瘍では再現性の高い染色体異常が150種類以上報告され,病型や予後と深い関係があることが明らかにされている.(http://www.infobiogen.fr/services/chromcancer/Anomalies/Anomliste).このデータを基に代表的な疾患特異的染色体異常をまとめたのが表1である.新WHO分類では疾患特異性の高い染色体異常,または遺伝子異常を有する病型が独立した疾患として分類され,染色体・遺伝子解析の重要性はますます高まっている.このため造血器腫瘍の染色体検査は確定診断・治療方針の決定・予後判定に必須の検査となっている.今回は染色体検査の中で汎用化されている造血器腫瘍のG-band法の意義と検査結果の解釈について要約する.

コーヒーブレイク

佐渡ヶ島慕情

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.1124 - P.1124

 新潟には40年近く前から大学検査部を軸にして県医師会,県技師会の協同で臨床検査センター協議会が年2回もたれ,私も永年顧問を務めている.今年の3月に70回集会があり,今迄は悉く精度管理,学術研修が主体であったが初めて篠笛の狩野泰一,津軽三味線の福居典美の両名手を揃えてデュオコンサートが企画された.お二人の発案で,大雨,台風,大地震から立ちあがるべく“元気だしてゆこう! 新潟”のスローガンで半日を享受した.

 福居氏は津軽三味線では2年連続女性チャンピオンに輝いた人で,舞台姿もスラリとしていたが懇談会で真近に坐ると目を奪われる美人であった.狩野氏は外国公演が永いが,1987年から暫く佐渡の劇団「鼓童」のメンバーとして島暮しもした方で,篠笛を主に能管,尺八,三味線,打楽器など多才で,お二人の迫力に魅せられた.狩野氏と隣席になり雑談したが,佐渡の文化にも傾倒している様子がよく判った.

シリーズ最新医学講座 臨床現場における薬毒物検査の実際・8

確認分析法(臨床現場におけるLCの活用)

著者: 小山和弘

ページ範囲:P.1153 - P.1157

はじめに

 地下鉄,松本サリン事件,和歌山のヒ素入りカレー事件を契機として1998(平成10)年に一部の救命救急センターに薬毒物分析機器が整備された.一方で,近年自殺者が増加し,それとともに救命救急センターに搬入される自殺未遂による急性薬物中毒患者も直線的な増加が見られている(図1).急性薬物中毒患者の多くは数日で回復する軽症とされるが,中には重症な症例もあり同様に年々増加している.急性薬物中毒患者の治療においては中毒薬物の血中濃度測定が直接の指標であり,特に,重症中毒患者においてはどのような薬物のどの程度の中毒であるかは治療の選択,評価のためには欠かせない情報である.おそらく,今後も急性薬物中毒患者は増えてゆくと考えられ,その治療のための検査である薬毒物分析は一層重要性が増してゆくと考えられる.

 一方で,われわれの身の回りには膨大な数の化学物質が存在する.病院や薬局で扱う数千種類の薬剤,洗剤などの家庭用化学物質,農薬や除草剤など,数え挙げればきりがない状態である.さらに,年々新たな治療薬,新たな除草剤など増える一方である.すべて測定が可能ではなく,むしろ測定できないほうが多いのが現状である.

 測定器械の問題として,現在,サンプルを入れるとある程度,自動で中毒物質を分析してくれるHPLCベースの測定機器も存在するが,その測定感度の低さ,日本特有の多剤併用療法からくるピーク同士の重なりなどから事実上血清中の薬物分析などは不可能に近く,胃液など濃度の高いサンプルの定性分析用にとどまっている.

トピックス

EC-SODと生活習慣病

著者: 大野秀樹 ,   木崎節子 ,   中野法彦 ,   桜井拓也 ,   大河原知水 ,   鈴木敬一郎

ページ範囲:P.1158 - P.1161

1. はじめに

 スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は,スーパーオキシド(O2・-)を過酸化水素(H2O2)と酸素分子(O2)に不均化する酵素である.O2・-は多くの活性酸素の源になっているので,SODは抗酸化酵素システムの最上流に位置しているといえる.哺乳動物には3種類のSODが存在する.すなわち,細胞質に存在するCu, Zn-SOD,ミトコンドリアに特異的にみられるMn-SODに加えて,1982年,Marklund1)がヒト肺から発見した分泌型細胞外SOD(EC-SOD)である.先に発見されたCu, Zn-SOD,Mn-SODについてはすでに膨大な報告があるが,EC-SODは精製や分別定量の煩雑さなどの理由で,酵素の性質や生理的・臨床的意義はまだ十分に知られていない.しかしごく最近,生活習慣病と関連して,EC-SODに関する報告が飛躍的に増加してきた2)

筋強直性ジストロフィーの分子生物学的発症機構

著者: 笹川昇 ,   石浦章一

ページ範囲:P.1162 - P.1165

1.はじめに

 1992年に筋強直性ジストロフィー(Myotonic Dystrophy;DM)の責任遺伝子が同定されたとの発表は,世界に多くの衝撃をもたらした.DMは脆弱X症候群やハンチントン病などとともに,世界で初めて発見されたトリプレット・リピート病のひとつであり,患者ではCTGトリプレット・リピートの伸長が見られる.DMは優性の形式で発症する遺伝病だが,その遺伝子変異が通常では考えられない非翻訳領域に存在していたのである.DM研究は初期の混迷した時期を経て2000年あたりから急速な進展を見せ,最近ようやく発症機構解明の手がかりが得られようとしている.本稿では最近のDM研究の成果を分子生物学的な立場から解説する.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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