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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査5巻10号

1961年10月発行

雑誌目次

グラフ

心臓血管研究所の検査室

著者: 小山晋太郎

ページ範囲:P.609 - P.611

 循環器研究の総合センターとして活動することを目的として設立されたこの研究所では,建物の総面積に対する臨床検査室の面積の比率は大学付属病院や大病院の中央検査室に比較して決して劣らない。設計にあたっては国内はもちろん,外国の研究所・病院の検査室を参考とし,合理性を第一にした。購入すべき器械類はあらかじめ決定され,その設置場所を定め,また患者および検査員の動きにもムダのないように考えられた。
 外来患者は受付から予診室・採尿所・診察室・処置室・心電図室・レントゲン室へと一定の流れにのりて,混乱することはない。一般検査室・心電図室・レントゲン室は1階に,心臓カテーテル室・ガス分析室・基礎代謝室は2階に,その他は全部地階にあり,大部分の患者は1階だけで検査をすますことができる。3階以上の病室の検査材料は専用のリフトで地下に運ばれる。また全館エアコンディッションのため,検査室で発生する熱・蒸気・臭気の排除には特に留意し,それぞれ別個の排気系統を設けた。

ピペットとビュレット—測容の二三の工夫

著者: 北村元仕

ページ範囲:P.612 - P.616

 溶液を分取する化学用体積計のうち,排出操作を上部で行なうものをピペット,下部で行なうものをビュレットという。生化学検査は微量な化学成分の「量」を正確に測定することが主であるから,その操作の中心は検体や試薬を正確にはかりとることになる。したがって,ピペットやビュレットを使いこなすことは生化学検査の基本である。
 生化学検査では[正確に」溶液をはかりとることが第一に要求されるから,洗浄乾燥もその操作も,すべてこの目的にかなうように行なわれなければならない。「正確に」測容することができないと,これはそのまま測定成績の誤差となり,検査はある場合有害無益とさえなる。生化学検査のむずかしさはいわば測容のむずかしさであるが,いっぽう多数の検体を迅速に処理することを必須条件とする検査室では,正統的な操作法にばかり頼ってもおられない現実がある。

展望

臨床検査室の技術員の研究について

著者: 小酒井望

ページ範囲:P.617 - P.620

 「臨床検査室の技術員はどんな研究をすべきだろうか」とか,「医師の研究助手をつとめるだけではつまらない。自分の研究がしたい」とか,あるいは「医師と同じような研究をするのはおかしい。技術員には技術員の研究があるはずだ」とか,最近「技術員の研究」をめぐって,技術員からも医師からもいろいろの意見が出されている。
 病院の検査室は研究の場ではない(国立病院の臨床検査室のように研究検査科と呼ばれているところもあるが,この場合も名称はともかく内容は検査室である)。臨床各科の必要とする諸検査を日常検査として,その一定量を毎日行ない,信頼度の高い検査成績を臨床各科に提供する,診療部門に対するサービス部門である。そして臨床検査室に働く技術員には,自己の分担する検査種目に関する知識を広め,技能を練磨し,常に信頼度の高い検査成績が出せるようにすることが要求される。そして技術員にとっては,研究は本務ではない。これが今までの通念であった。もちろん今後ともその本務は変わらないであろう。

技術解説

パラフィンブロック整理方法

著者: 春日孟

ページ範囲:P.623 - P.625

はじめに
 組織標本はどの機関(病院・大学・研究所の病理関係部門)においても整理方法に留意されるようになって来たが,ブロック材料の整理,特に組織標本作製後のブロック材料の整理保管にはあまり留意されておらず,たとえば,保存されていても,必要に応じて直ちに取り出すのが容易なように保管されている所は少ない。
 プロック材料は(組織標本,プロトコールとともに)形態学部門においては長年月を経て集積された貴重な個々のデーターであり,他の研究部門のデーターと等価な資料である。

光電比色計の使い方

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.627 - P.629

 臨床化学検査が今日のように検体の数多くを取り扱うようになったのは光電比色計が普及したからである。
 従来の化学的定量法は重量法ないし容量法が主力であり,比色法はむしろ傍系とされた。重量法は精密でかつ正確な結果が得られるから今でも標準法としての価値は失われないのであるが,操作は煩雑で細かい注意が必要であって,面倒で気骨が折れる。所定の条件で沈殿を作り,定量用濾紙やグーナるつぼやガラスフィルターなどで濾し別け,沈殿を洗い,強熱し,乾燥してから秤量する。秤量には化学天秤や微量天秤を使うのだから考えただけでも気が遠くなる。

心電計のあつかい方(1)

著者: 長尾透

ページ範囲:P.631 - P.636

 心電計にもいろいろの種類があるが,今日最も普及している熱ペン式直記心電計について,そのとりあつかい方を写真によって見ていただきた.い。現在の心電計は実用上からも,機構的にも非常に進歩し,昔にくらべるとまことにとりあつかいやすくなっている。しかし,われわれの目的は常に正しく美しい波形を記録し,判読に寄与することにある。次にお見せするあつかい方はもちろん一つのあつかい方の見本を示したものであるが,そのあつかい方のそれぞれの方式には一応理由はあるつもりである。そのような意味で日常の心電図記録の際の御参考となれば幸いである。

座談会

日本衛生検査技師

著者: 高椋卯吉 ,   冨川栄一 ,   樫田良精 ,   堀越晃 ,   太田邦夫 ,   高橋昭三 ,   松村義寛

ページ範囲:P.638 - P.645

 司会本日はお忙しいところをお集りいただきましてありがとうございました。日本衛生検査技師会が新しく発足いたしましたが,これはもともと日本衛生検査協会というのがありまして,それとまた別に日本臨床病理技術士会という会があったのですが,このように二本建になっているのはいろいろ不都合だ—ちょうど衛生検査技師法の国家試験が行なわれて今年で3回目になり,合格者もだいぶ多くなってきたことであるし—というようなことから,大同団結して一本にまとまったお祝いの座談会というものであります。そこで,この日本衛生検査技師会が成立してきたいろいろな歴史的なお話しからお伺いしようと思います。高椋さんあたりから,そのいきさつをずっとお話しになっていただけませんか。

新しい検査法

抗酸菌のナイアシンテスト

著者: 高橋昭三

ページ範囲:P.647 - P.648

 1952年ごろ東北大抗酸菌病研究所で,今野博士はINAH定量に用いるための試薬を結核菌の培養にかけたところ,人型菌のみがき「れいな黄色になることをみた。これが,ナイアシンテストの発見されるいとぐちになったということである。
 ナイアシンはビタミンB群の1メンバーであり,その欠乏は皮膚疾患をおこすといわれている。抗酸菌の中では,ヒト型結核菌が,それを多量に(もちろん比較的な話である)産生するが,他の抗酸菌はたかだかその1/20くらいしか産生しない。また菌体中に含まれるナイアシンについても同じようなことがいえる。それで,菌体内または抗酸菌の培養濾液中のナイアシンの定量または定性(半定量)試験を行ない,ナイアシンの多少または有無をしらべると,ヒト型菌か他の抗酸菌かを鑑別することができる。これをナイアシンテスト,または発見者の名にちなんで今野反応というのである。この事実は広く世界に認められ,ヒト型菌と他の抗酸菌の区別,特に非定型抗酸菌との鑑別に用いられている。

血清リポ蛋白の分画別抽出法

著者: 橘敏也 ,   桑原啓子

ページ範囲:P.649 - P.653

 動脈硬化症との関連において,血清リポ蛋白の臨床的意義については近時大いに注目されてぎた。しかしながら,現在その測定法上の問題がその臨床的研究の大きな隘路となっている。
 血清リポ蛋白の測定法としては,超遠心器を用いるGofman法が最も標準とされているが,そのいかにも膨大な装置と高級な手技は第一線臨床家の手軽に利用しうるものではない。Cohnのエタノール分画法も複雑な化学的操作を要し,これも多忙な臨床家のものではない。

研究

キレックスによる無胃管胃液酸度測定の経験

著者: 伊藤とみ子 ,   吉武陽一 ,   竹原重敏

ページ範囲:P.655 - P.656

 われわれの病院では従来胃液検査には胃管による分画採取法(カフェイン法)を用いてきたが,本方法は患者にとって多少とも苦痛を与えること,あるいは検査に時間のかかることなど日常臨床において幾多の欠点があった。しかるに最近胃管を必要としない胃液酸度測定法が考案され,各方面でその価値が検討されつつある。われわれも同様の目的で当病院入院中の患者につき「本法を行ない,従来の胃管法の成績と比較しその成績を日本衛生検査協会熊本県支部学会で発表したが,今度再び24名の患者について対照尿,発色法などについても二三の検索を行なったのでここにその成績を報告する。

硫酸亜鉛試験についての二三の検討

著者: 山辺昭代 ,   牧野義彰

ページ範囲:P.657 - P.660

 Kunkelの硫酸亜鉛試験については,標準液の混濁度,試薬のイオン強度,PH,血清と試薬の混合に際しての温度等,種々の因子の影響が論じられている。われわれはこれらの二三について検討したのでここに報告する。
〔試薬〕
1)0.2NH2SO4溶液

昭和36年度第8回2級臨床病理技術士資格認定試験—模範解答および講評

著者: 高木文一 ,   大黒勇 ,   橋本敬祐 ,   阿南功一 ,   天木一太 ,   村上省三 ,   阿部正和 ,   長尾透 ,   江部充

ページ範囲:P.663 - P.673

総評
 第8回臨床病理技術士資格認定試験(2級)は今年も夏の暑い盛りの7月22日〜25日にわたって行なわれた。衛生検査技師法による国家試験が回をかさねつつあるにもかかわらず,本年度の応募者は今までの最高記録をつくり,延べ1,163名に達した(実際に受験した者は1,032名)。
 その理由は前回の平福委員長の総評にも述べられているように,国家試験制度におけるいろいろの足らない面あるいは受験資格制度による病院の実際に適合しない点等の他に,既に8年の歴史を経たこの試験に合格して,各職場でその能力を十分にのばしておられる臨床病理技術士諸兄姉の活躍に負うところが大きいと思う次第である。諸外国の例をとってみても,また実際に考えてみても,臨床病理技術士というような実際に技術をもってその業とする方々の資格の認定には,その技術を身につけ,かつ,それらの方々を監督しつつ共に働く者がその資格を認定するというのが当然であり,またその資格をとられた方々が十分に能力があるということは,今までの本試験の実績が,そしてまた本試験を合格された技術士の方々の日常の活動が実証しているといえるであろう。この意味でこの試験が年とともにその水準を高めつつ,かつ応募者が減少しないことは,まことに本試験にたずさわる者として嬉しく感ずる次第である。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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