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雑誌目次

論文

臨床検査5巻2号

1961年02月発行

雑誌目次

グラフ

京大附属病院中央検査部

著者: 富田仁

ページ範囲:P.67 - P.73

 京大附属病院中央検査部は昭和33年9月1日より発足してからちようど2年になる。どんな検査を真先に,またどんな方法で始めようかなどと思案していたのも,ついこの間のような気がする。大学附属病院の中検というものは,一般病院のそれとは大いに趣を異にしている。下手に運営すると,切角中央化したのがふたたび各科に分散する可能性がある。したがつて開始にあたつて各科よりのアンケートをとり,最も多く希望され,しかも難しい検査を真先にした。すなわち尿中170HCS,17KS定量,腎クリアランス,血清鉄,銅定量,PBI,血清蛋白分屑,電解質等を優先的にしかも技術員も2人宛配分して,京大病院の最高権威にその指導を受け,先ず正確なデータ,信用されるデータを出すように努めた。大抵の検査は未だに各科でもやつていて,中検のデータと比較検討されるため簡易な方法よりも,もつとも正確といわれる方法で測定している。最近ではようやく信用を得たので,簡易化にも努力する反面,やさしい一般検査などもやつており,約8割程度完成の域に達した。現在助教授以下医師6,技官3,技術員40,看護婦1,事務官若干名で,1カ月取扱件数約2万件で約4百万円の収入をあげている。

自動血球計数器

ページ範囲:P.74 - P.74

技術解説

血球計算における試験管法

著者: 小泉明

ページ範囲:P.75 - P.78

1.試験管法はどのようにして生れたか
 血球計算の手技の中で,簡単なようであつて実際上問題が多いのは,稀釈液で血液をうすめさらにそれを混和する過程である。通常この過程が,メランジュールというそのための専用の器具を用いておこなわれているのは,周知のことである。
 血球計算における試験管法というのは,このメランジユールのかわりに,ごくふつうの試験管を用いる方法にほかならない。私の所属する東大の公衆衛生学教室では,1950年にこの方法をこころみ,現在に至るまで集団検診などで血球計算を実施するばあいは,欠かさずに用いている。

病原性好塩細菌の検査技術について

著者: 柳沢文徳 ,   田中香麿 ,   近藤黎子

ページ範囲:P.79 - P.86

 滝川は昭和30年国立横浜病院におけるキウリ浅漬による食中毒より新しい食中毒菌を発見し,その菌種に対してPseudomonas enteritisなる名称を付した。このような菌種による食中毒が各地で発生し,また滝川は同病院の下痢患者から同様な菌株を分離した。この分離菌は糖分解能の態度を除くと,殆んど一致した形態,生物学性状であることから,滝川はこれらの菌群に対して病原性好塩細菌(pathogenic halophilic bacteria)なる言葉を用いている。この発見以来好塩性細菌が衛生細菌学の面で急ににぎやかになつてきたが,好塩性細菌の研究は欧米では古くより研究されており,病原性好塩細菌以外には急に問題視するほどのことはない。編集者より一般的なhalophilicbacteriaについてという注文であつたが,もう少し余裕をみて総括的に書きたいと考えておるので,今回は病原性好塩細菌の範囲にとどめる。
 この病原性好塩細菌の疫学的,細菌学的或は中毒学的な研究はかなり進んできているが,今回は私共の教室で検討してきた本菌の分離培養基を中心に食中毒に際しての検査方法について簡単にふれてみたい。

座談会

自動血球計数器の検討

著者: 天木一太 ,   小沢七兵衛 ,   山口潜 ,   一戸弘邦 ,   T.J. ,   W.B. ,   鈴木栄一 ,   小林佑吉 ,   樫田良精

ページ範囲:P.88 - P.97

 司会最近中央検査室が各病院にできるに従い,血球の計算が中央検査室にだんだん取り入れられるようになりますと,個々のドクターが1人の患者の赤血球数を勘定しているうちは,比較的問題にならなかつたことが,多数の患者の赤血球数を,中央に集め,一括して勘定するとなると,従来の手工業的,小規模なやり方でやるのとは違い,流れ作業,大量生産方式の計算方法が必要になつてくるわけです。それで従来いろいうな器械が工夫され,試作されておりましたが,現在使われている血球計算器としましては,これからいろいろ討論いたします3種類がまず代表としてあげられます。東大でもすでに中央検査室の開設当初に,ドイツのヘリゲのヘモスコープを買いましたが,ノーマルの場合には数が合うけれども,病的の場合にはうまくいかない。要するに自動血球計算器はエレクトロニクスのいろいろな装置が発達するに従い,だんだん進歩すると思います。
それでは天木先生から……

研究

濾紙電気泳動技術に関する研究—第2報 われわれの行なつている基本操作法と,そのうらづけ

著者: 佐藤乙一 ,   橋本文雄 ,   大竹敬二 ,   近藤昭二 ,   吉田寛

ページ範囲:P.99 - P.105

I.まえがき
 前報において,濾紙電気泳動の開始から,完了にいたるまでの操作のうち,とくにroutineとして,日常検査を行う場合の注意すべき点を,研究結果にもとづいて報告したので,今回は,われわれが毎日行なつている,いわば,"われわれの標準操作法"ともいうべきものを述べ,さらに,なぜその方法を採用するようになつたかについて,そのうらづけを発表する。
 前報から,今回の報告にかけて発表しているもののなかには,泳動学会の標準法や,この道の専門学者がすでに発表している研究を否定したかにとられる部分もあるかも知れないが,そのようなおおそれた気持は毛頭ない。ただ,泳動学会の標準法は,数ある各式の泳動装置万般に通ずる基本的なものであるのと,また,各専門家が,発表されているもののなかで,泳動操作に関するものは,そのほとんどが,ある特定の器械についてのみの研究であつたことをまず心にとめてこの研究を御検討いただきたい。そこで,いま,あらためていうまでもなく,複雑な器械になればなるほど,おなじ目的のために作られた器械でも,型や式がちがえば,そのつかいかたや,諸条件がちがうものである。泳動装置についても,また例外ではない。そういう意味で,われわれがこの発表するにあたつて,本意ではなかつたが,現在使用中の泳動装置名,製造元までを前報においてあきらかにしたのである。たとえおなじ様式の器械においても,一器ごとにそのクセや特長,欠点はある。

血糖および尿糖の新定量法とその精度(有機分析第30報)

著者: 百瀬勉 ,   向井良子 ,   河辺節子

ページ範囲:P.107 - P.111

 血糖および尿糖の定量法には多くの方法が発表されており,そのうち数種は実用的な方法として成書に記載されている。わが国で現在もつともよく使われている方法は血糖定量にHagedorn-Jensen法1),尿糖定量にBenedict法2)であろう。この両法はいずれも滴定法であつて操作は簡単でないが,ともに信頼度が高く誤差が比較的小さいのでよく用いられるわけである。私どもは最近発見した試薬3,6-ジニトロフタル酸を用いる血糖および尿糖の定量法を発表した3)。この方法は血液は0.1mlを試料とし,除蛋白後発色させて光電光度計により吸収度を測る簡単な方法であるが,同じ除蛋白剤を用いて試験して見るとHagedorn-Jensen法とよく一致する値を与える。また尿ではきわめて稀釈したものを試料とするので,蛋白尿でも前処理の必要なく定量できる特徴をもつている。今回この定量法の精度をHagedorn-Jensen法およびBenedict法の精度と推計学的に比較研究したので,その結果をここに報告し参考に供したい。

血清蛋白質分画図の直接および分画別抽出による定量方法の比較検討

著者: 林田明 ,   岸勇

ページ範囲:P.113 - P.117

 濾紙電気泳動による血清蛋白質分画は,資料が非常に少量で済むこと,装置がTiselius法に比較して安価であり,また操作が簡単であること,その上染色方法を換えることにより糖蛋白質,脂蛋白質も容易に測定できる,などの幾多の利点により最近の臨床検査方面においても多く利用されるに至つた。
 血清蛋白質分画図の定量法については現在もなお種々の方法が唱えられているが,要は正確であり,簡単であることが第1条件となることはいうに及ばない。

検査室紹介

本学臨床細菌検査室の現況および最近の検査の統計的観察

著者: 川名林治 ,   豊岡重孝 ,   中村国雄 ,   小原和子 ,   松本一郎 ,   金子克

ページ範囲:P.119 - P.123

〔1〕
 臨床医学において種々なる感染症の正確な診断,予防,治療をおこなうために,確実かつ速やかな臨床細菌学的な検査が,われわれに臨床家より要求される。
 私達はすでに本学の臨床検査について報告をおこなつたが1)・2),その後,本学の拡充工事も一応の完成をみて,臨床検査はすべて,中央臨床検査部に統合され,細菌検査もその一つのセクションとして運営されるにいたつたので,今回は,最近の検査室の実態とその検査の内容について簡単に報告する。

検査室メモ

臨床化学分析談話会抄録

著者: 玉井和子 ,   長岡文

ページ範囲:P.125 - P.126

螢光法による血清アルブミンの微量定量
 Betheil, J.J.:Fluorometric microdetermination of human serum albumin.Anal.Chem.,32,560, 1960.
 従来血清アルブミンの定量は,電気泳動法,塩析法,メタノール法等により先ずアルブミンとグロブリンを分離してから行われていた。しかしこれらの方法は操作が繁雑で,しかも時間がかかるので臨床検査の日常検査としてはあまり適当でない。

私の工夫

濾紙片を用いてのチール・ネルゼン染色

著者: 山本五郎

ページ範囲:P.129 - P.129

 結核菌,または喀痰のチール・ネルゼン染色の場合,普通には,チール液を濾紙で濾過して,載せ硝子に満載し,加温染色することになつているが,この満載する意味は加温によつて遊離したフクシンのいわゆる「カス」を,表面張力によつて,標本面に附着させない点にあると考えられる。
 私は,あらかじめ塗抹面より,一廻り位大きいめの濾紙片(約2×2.5cm)を作つておき,染色時,載せ硝子の塗抹面の上に覆せ,この上に直接,チール液を,濾紙片が一様に湿つて,余分が周囲に,にじみ出る程度に(約4〜5滴)滴下して,加温染色(乾燥してきたら,さらに1〜2滴追加する)しているが,濾過と染色を同時に行うことの他に,チール液の節約(費用にして,約1/2〜1/3)となり,染色具合も,これまでの方法と大差なく,具合がよい。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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