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雑誌目次

論文

臨床検査5巻3号

1961年03月発行

雑誌目次

グラフ

血液銀行

著者: 村上省三

ページ範囲:P.135 - P.140

 日本赤十字社輸血研究所は1951年10月赤十字輸血事業の一部として開設されたものであり,当時各種資材はアメリカ赤十字の無償提供によつた。現在の建物はお年玉はがきの寄金によつて建設された。年間採血量は約15,000単位(1単位200cc)であり,血液銀行としては小型の部類に属する。

血球の見分けかた

著者: 服部絢一

ページ範囲:P.141 - P.143

〈写真説明〉

技術解説

血球の見分けかた

著者: 服部絢一

ページ範囲:P.145 - P.150

1.いとぐち
 血球の鑑別上の注意という題で何か書くようにとの依頼で,血球にも種類があり,また末梢血と骨髄血で老若さまざまであり,何を対称に選ぶか迷つたが,何を書いてもよいとのことであるから,本回はもつとも手近かな末梢血中の赤血球と白血球に限ることとした。
 塗抹標本上の血球を観察するさい,まず大事なことは上手に作られた塗抹標本上で適当な場所を選ぶことである。血球観察の第1歩は塗抹標本の作り方にあると云つても過言ではない。成書の記載に従い,何回も練習して理想的な標本を作れるよう習熟すべきである。塗抹面の観察部位は,個個の細胞が重ならずに充分伸びきつた部位が適している。うまく引かれた標本では,中央か,または横軸の1/3で穂先きに近いところがその部位に当る。穂先きは押し潰されたようになつて,観察に適しない。

濾紙電気泳動法の実際(1)—血清蛋白質の分画法を中心として

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.151 - P.157

1.いとぐち
 最近,病院の中央検査室で濾紙電気泳動法(paper electrophoresis)の行われるようになつた箇処がだんだん増加しつつある。この小論文は,何故このように濾紙電気泳動法が急に関心をもたれるようになつたのかといういきさつと,濾紙電気泳動法の実際の操作法を解説したものである。
 実はこの種の解説については,既に本誌の第2巻1)に3回にわたつて詳細に説かれていることであり,また,小林茂三郎助教授の名著2)もあるので,私としてはいささか躊躇したのであるが,その後の変化もあり,分画の定量方法について新しい方法を紹介3)した責任**もあるので,執筆をあえて承諾したものである。

問答式解説

第3回国家試験をまえにして—予想とそれをめぐる問題

ページ範囲:P.158 - P.163

 問 今年の衛生検査技師法の国家試験は大体いつごろあるのでしようか。
 答 お役所の関係を調べてきたのですが,今度は,新しく指定された養成所あるいは学校卒業生を対象とする関係上,卒業時期と見あつて,なるべく早く試験をやつてくれという要望が非常にあつたらしく,従来10月にやつていた試験を繰上げようということに内定したようです。大体5月の中旬頃を予定しているということをきいて参りました。

臨床化学検査成績のバラツキ

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.165 - P.166

 本誌4巻9号554頁に掲載した調査と同様なことを繰返えした結果を報告する。
 検査を依頼した施設は下の6ヵ所であつた。

医学常識

生殖器のはなし(1)

著者: 鈴木秀郎

ページ範囲:P.169 - P.172

 生殖器はこれまでのべた臓器といろいろな点で異つています。まず第1にこれまでのべた臓器は個体の生命を維持する為に欠くべからざる器官ですが,生殖器は個体の生命の維持には関係がなく,種属の生命の維持に必要な器官です。第2にこれまでの臓器は性によつて何等変りありませんが,生殖器は男と女とでは全く違つています。
 もつともヒトが健康な生活を続けてゆく為には生殖器もまた健全でなければならないことはいうまでもありません。

新しい検査法

3,6—ジニトロフタル酸による血糖の微量定量(有機分析第31報)

著者: 百瀬勉 ,   向井良子 ,   河辺節子 ,   鈴木順子

ページ範囲:P.173 - P.175

 近時血液を試料とする臨床検査の項目が増加するにつれて,微量の血液または血清を用いて血糖を定量しようとする試みが多く見られる。斉藤氏1)は最近この方面の文献を多く紹介され,また氏自身も一つの方法を提案されたが,このほかにもベルリン青による比色法2),5—オキシテトラロンによる螢光光度法3)などがある。
 前報4)で私どもは0.1mlの血液または血清を試料とし3,6—ジニトロフタル酸法で血糖を定量すると,きわめて簡単な操作によりHagedorn-Jensen氏法とほとんど同じ精度で定量できることを報告し,またこの方法は試料を0.05mlとしても行い得ることをつけ加えた。今回さらに試料を少くし,0.02mlを用いる定量法につき検討したところ,特別の器具を用いることなく普通の比色管により分光光度計で吸収度を測定することによつて,日常の臨床検査に応用することのできる方法を確立したのでここに報告する。

研究

嫌気性培養装置(Anaerobic Jar)の考案製作とその実際応用

著者: 山県宏

ページ範囲:P.177 - P.178

 嫌気性菌の培養法ならびに培養装置器具などについての考案は文字通り枚挙にいとまがないが,実際問題としてその実施操作は意外に煩雑困難であり,高度の技術と熟練した経験を必要とすることが嫌気性菌検索のルーチンワークにほとんどまつたく実施されない根本理由の一つとなつていると思われる。
 筆者は1957年ウエルチ菌食中毒の研究に着手して以来,簡便正確かつ価格低廉な嫌気性培養装置(瓶)(Anaerobic Jar)の不可避的必要性に迫まられて鋭意努力を重ねた結果,従来のいずれの装置器具に比しても優るとも劣らぬJar(炭酸ガス培養にもそのまま使用可能)の考案製作に成功し,以後日常の試験研究に使用して充分満足な成績を得ているので報告する。

日常の臨床検査としての脂肪負荷試験

著者: 富田仁

ページ範囲:P.179 - P.182

 現今のclinical routine workは主として早朝空腹時もしくは安静時に行われている。併しそれだけでは充分とは言い難く,潜在性の状態までも発見することは到底出来ない。ここに種々の負荷試験が発達して来た。GTT,ITT,ACTH試験,運動負荷試験等枚挙に暇がないが,負荷試験の最も欠点とする所は,長時間を要し繁雑であることである。この欠点さえ除けば負荷試験も充分routine workとして採用し,正確な臨床診断,予後判定に役立てることが出来る。この様な目的のため脂肪負荷試験を企画した。脂肪負荷試験は未だclinicalroutine workとしてはなく,研究の範疇に属するものとして,脂肪負荷後の血中総脂肪,総脂酸,コレステロール,燐脂質等の測定,或いは放射性同位元素を用いこの脂質代謝の研究等多くのすぐれた研究がある。著者は脂肪食後に出現する血清の溷濁つまりchylomicron (主として中性脂肪)のみを測定して見ても,臨床的に清浄因子clearing facterの間接測定ともなるので有意義と考え,脂肪食後の血清の濁度測定を考えていた。イタリーのRossi&Rulli1)2)が,640mμの波長の光における血漿の吸光度を以てchylomicronを測定しているのを知り,一定の脂肪食負荷後の血清の濁度測定を臨床検査の一つとした。

検査室紹介

血液銀行—(日本赤十字社輸血研究所)

著者: 村上省三

ページ範囲:P.183 - P.186

血液銀行の生れるまで
 輸血の歴史をひもといてみると,輸血にもいくつかの特筆すべき業績があつて,エポックを画しながら発展してきていることがよくわかる。第1は何といつても1616年に発見され1628年に発表されたWilliam Harveyの循環の理論である。これによつてはじめてその可能性が生れたといえよう。第2のエポックは動物や人間への輸血の実用である。動物から動物へは1665年イギリスのRichard Lowerが,動物から人間へはフランスのJean Baptist Denisが,そして最後に人間から人間への輸血が,ずつとおくれて1818年にイギリスのJames Blundellによつてはじめておこなわれたといわれている。ことにJean Baptist Denisが子ヒツジの血液をある青年に輸血して,救命し得たことは今被でも高く評価されている。しかしこの時代は,勿論血液型の知識もなく,さらに滅菌,消毒の観念もなく,また器具も極めて幼稚不完全のものであつたので,これら先人の不撓の努力も,血管内溶血,感染等に見舞われることが多く,労多くして功すくないものであり,一部では輸血そのものに対する不信の念すらも生えつける始末であり,ある人にいわしむれば輸血は脳腫瘍の手術よりもむつかしいとされていた。

私の工夫

結核菌培養時におけるキャップについて

著者: 坂本雅是 ,   遠藤秀代

ページ範囲:P.187 - P.188

 従来結核菌等のように培養に長期間を要するものにあつては,培地の乾燥をふせぐためキャップには特殊な工夫を必要としてきた。
 そのためいろいうな欠点を持つている。つぎに方法別に欠点をあげて見ると。

読者の頁

臨床検査技術士の給与

著者: 佐藤乙一

ページ範囲:P.189 - P.192

1.まえがき
 昨年の8月,人事院が政府にたいして勧告した公務員のあたらしい給与表が,総選挙後の臨時国会において,12月22日の閉会日にやつと一部修正の上成立した。これで一応7年振りのベース・アップは行われたのであるが,いろいろの世論や批判はあつた。しかしこれはひとまずおいて,臨床検査科にはたらく検査技術士の給与についてのべてみたい。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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