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雑誌目次

論文

臨床検査5巻4号

1961年04月発行

雑誌目次

グラフ

国立東京第一病院研究検査科

著者: 大橋成一

ページ範囲:P.199 - P.206

 国立東京第一病院研究検査科は,昭和25年,中央化にふみきり,昨年12月現在の所に引越し,約10年間の歴史をもつている。患者より採取された可検物を取り扱う臨床病理部門の主力は外来と入院部との中間にある5階建てのビルデングの1階の全床を占め,片廊下の南側に西より東に向って,病理,生化学,受付,科長室,血液,一般,血清,細菌検査室の順に並列し,続いてウイルス検査室,血液銀行も,今年度整備される予定である。この地積は430坪で,他に外来診療所に6坪の外来検査室,手術棟には,4.5坪の外来病理検査室がある。
 患者自体を検査する生理検査科は外来棟の2,3階を占め,ここに心電図,脳波,筋電図,物質代謝及び肺機能検査室があり,約150坪の建坪である。

技術解説

細菌検査と位相差顕微鏡

著者: 高橋昭三

ページ範囲:P.207 - P.210

 できてから何年かたつた検査科なら,大ていの細菌検査部門には位相差顕微鏡装置があるようである。これは使いだしたら止められないほど便利なものであるにもかかわらず,大ていの検査室ではお倉入りのようである。その理由は,一応使つてみるが思つたほど便利でない,とか,思つたほどみえない,ということのようである。それは誠にもつともな話であるが,誰も,メチレンブルーで,結核菌をそめ,ガフキー数をきめようとは考えない。しかし,最も多くの場合,メチレンブルーの単染色標本が一応用いられるのは,それによつて,かなりいろいろのことがわかるからである。位相差顕微鏡は,その性質,特性を知つて使えば,単油染色をし,浸鏡検を行う大部分の場合,それを省き得るであろう。又さらにそれよりも,多くのことを教えてくれることがおわかりになるのではないかと思う。むろん,これは極言であつて,単染色のよさは充分に認めねばならないが,それが絶対必要な場合は考えるよりも少い。何よりも,使いなれれば,時には,近視の人が,はじめて眼鏡をかけた時のことが,想像できるであろう。実際的には,位相差顕微鏡がどのような特性をもつかということが,比較的考えられておらず,高級な理論的考察がよく記載されている。私すなわち使用者が,細菌学を専攻する立場から位相差顕微鏡の使用法を考えてみたい。

濾紙電気泳動法の実際(その2)—血清蛋白質の分画法を中心として

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.211 - P.215

6.濾紙電気泳動法の標準操作法
 昭和32年の秋,電気泳動学会内に濾紙電気泳動標準操作法小委員会が設置された。それは,濾紙電気泳動法の操作が病院や研究所によつて,いろいろ相違し,お互いの分析結果を比較検討することのむずかしさがだんだんはっきりしてきたからであつた。チセリウス電気泳動装置がわが国に導入されるや否や,電気泳動学会は率先してまず電気泳動法標準操作法を設定し,全国の研究者がこれに従つて分析したので,お互いの分析結果を比較検討することが可能であつた。濾紙電気泳動法の場合もこれにならおうとしたのである。
 小委員会で考えた濾紙電気泳動標準操作法は第3表に示す如くである。この案は第8回の電気泳動学会総会に於て発表7)されたのである。ところが,ここに驚くべき事実が現われてきた。東京都内の14ヵ所の研究施設にお願いして,同一の血清を試料として,この標準操作法に則つて濾紙電気泳動をして頂き,各自の研究室に備えつけられているデンシトメーターで各分画の定量を行ってもらつたところ,アルブミンの濃度比(%)の変動範囲(最大の%一最小の%)が20%以上もあつたのである。つまり,同じ血清でも,ある研究者はアルブミンが60%だといい,別の研究者は40%だというわけである。こんなに違つては,お互いの成績を比較検討することができるはずはない。

高圧ボンベの取扱い方

著者: 笹本光雄 ,   白鳥和男

ページ範囲:P.217 - P.220

はしがき
 高圧ボンベの取扱いについては,"高圧ガスの製造,販売,貯蔵,移動その他の取扱及び消費並びに容器の製造及び取扱"の規制として,高圧ガス取締法令により,又JIS (日本工業規格)によつて,材料,構造,規格などが定められている。
 言うまでもなくこれらの高圧ガスは,いろいろの用途に使われており,私共の生活上欠かすことのできないものの一つであると同時にその性質上極めて危険性を含んだものであり,取扱いに当つては細心の注意を払つて正しい取扱いによらなければ,取扱い者だけでなく,公共に危害を及ぼすことになるわけである。重大事故の殆んどが不正使用か,不正取扱によるものであることを考えるとなお一層の認識が必要だと思う。

クームス試験

著者: 徳永栄一

ページ範囲:P.223 - P.226

1.クームス試験の原理
 赤血球の血液型に対する抗体の中には,食塩水に浮遊した血球と結合するが凝集を起し得ない種類の抗体がある。こういう抗体を非定型抗体あるいは不完全抗体と味ぶ。クームス試験は非定型抗体の検出法の一つとして始められた術式であるが,現在では血液型抗体のみならず他のいろいろな抗体の検出にも応用されるようになつた。
 クームス試験の原理はつぎのようなものである。抗体は血清グロブリンであるから,非定型抗体によつておおわれた赤血球とは,血清グロブリンの附着した赤血球ということになる。あらかじめ血清グロブリンに対する抗体を他の種類の動物を免疫することによつて作つておき(この抗体がクームス血清である)非定型抗体におおわれた赤血球に加えると,赤血球表面の非定型抗体とクームス血清とが反応し,その結果二次的に赤血球が引きよせられて凝集するに至る。すなわち非定型抗体のみでは凝集反応を起さなかつたものが,クームス血清を加えた結果凝集反応を起すのであつて,これがクームス試験の原理である。クームス試験は一名抗グロブリン試験とも呼ばれる。クームス試験を大別して直接クームス試験と間接クームス試験とする。

髓液の横田反応について

著者: 横田万之助

ページ範囲:P.227 - P.229

はじめに
 この反応が考案,発表されてからすでに11年余になつたが,検査法として記述されているのは医学書院内の「臨床検査の実際」のみである。ここに機会を与えられたのでそれを更に補足し,その後の新らしい利用範囲などを記してみたいと思う。

座談会

髄液検査の諸問題

著者: 明石哲二 ,   松橋直 ,   舛田初江 ,   横田万之助 ,   清野昌一 ,   天木一太 ,   高橋昭三 ,   樫田良精

ページ範囲:P.230 - P.240

 樫田 今日は一般検査の一つとして,髄液検査を取り上げいろいろ検討したいと思います。髄液の採取は医師の領域でありますが,通常看護婦あるいは技術員がこれを介助しますから,採取介助の知識は一応知つてないといけないと思います。

医学常識

生殖器のはなし(II)—生殖器の病気

著者: 鈴木秀郎

ページ範囲:P.241 - P.244

§ はしがき
 今月は生殖器の病気について申しあげます。生殖器は男と女で全く違つていますから,病気も勿論異ります。ただ病気をおこす原因は性病(梅毒,淋疾,軟性下疳,第4性病),結核,悪性腫瘍などのようにある程度共通したものがあります。また生殖器と泌尿器とは本来その臓器の仕事が全く異つているにもかかわらず,位置的に密接な関係があり,とくに男子では尿道は生殖の仕事にも,排尿の仕事にも共通に使われます。したがつて名称の上でも泌尿生殖器として一緒によばれ,病気もある程度一緒に扱われます。
 例によつて生殖器の病気を表にしてあげておきました。

検査室と臨床との話合い

C反応性蛋白試験をめぐつて

著者: 松崎七美 ,   小俣喜久子 ,   佐藤乙一

ページ範囲:P.247 - P.249

<C.R.P.試験の優れた点>
小俣 最近C反応性蛋白試験(略称C.R.P.T)というのが細菌感染症やロイマチスを始め組織の崩壊を伴う病気の診断や治療過程のメヤスとして盛んに用いられるようになりました。しかしこの検査法が新しいだけに,どのような場合にはどうなるか,どんな意味をもつているのかがなかなか日常診療でいそがしくとびまわつている臨床家にははつきりとわかつていないうらみがあります。「陽性ならば何か意味があるだろう」位に考えている人もないとはいえないと思います。そこで今日は臨床面のことについては松崎医長,そして検査面のことについては佐藤主任,臨床面と検査面のかけ橋的役目を私がうけもつて話しあい,C.R.P.Tの理解を深めたいと存じます。ただ,血清学専門学者がいないので,その道での基礎的なことについてはいろいろ文献もでているので,そちらで勉強していただきたいと思います。松崎先生,臨床家として最近C.R.P.Tを相当突込んで指導研究されてきましたが,最初になにか総論的なことをひとつ……
 松崎 医局集談会での発表や,協和薬品,和光さん等から出されている文献集を熟読し,これは面白い検査法だ,ひとつ検査科とタイアップしてやつてみようと思いたちました。ちようどその頃検査科でも相当研究がすすめられていました。

研究

1958〜1960年夏期において検出された病原細菌の薬剤耐性

著者: 広野サト ,   丹波みち ,   湯浅暉子 ,   鈴木フサ子 ,   吉川美津子

ページ範囲:P.251 - P.253

 1958年5月に虎の門共済病院開院以来,細菌検査室ではその検査項目の一つとして感性検査を行つてきた。この3力年(1958-1960)の記録を集計し,細菌の薬剤に対する傾向をしらべたのがこの報告である。

蛋白微量測定法の研究(その1)—<尿中蛋白測定に色素を用いる方法>

著者: 向出惇

ページ範囲:P.255 - P.256

緒論
 今日有効な尿蛋白測定法の一つとして「ズルフォサリチル酸法」以下「S法」が多く利用されているが「S法」はその性質上,ムチン,酢酸体,樹脂酸,アルブモーゼ,尿酸などによる類似反応は避け得られぬ処である。そのため日常診療および集団検査の際に相当の不便を感じて来た。私は1937年Feiglにより紹介された「Tetra-Brom-phenolphthalein-ethylester-K塩」(以下「TBK」)を用いる方法を種々の条件について実験を行なつた結果本法は操作は簡単で迅速に処理でき,かつ微量の試料(約1滴)で実施できることを認めた。本論文の要旨は昭和35年5月20日第9回衛生検査学会に発表した。

第3回2級臨床病理技術士資格認定試験について—受験者のために

著者: 緒方富雄

ページ範囲:P.259 - P.260

 2級臨床病理技術士資格認定試験は,今年も7月半ばすぎに第8回の試験が予定通り行われます。この試験が過去7年間にかがやかしい実績をあげ,その権威に対する声価のゆるぎないものであることはいうまでもありません。
 今回の受験者のみなさんも,この試験の意義を十分に理解して,優秀な成績をあげられるよう期待します。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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