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雑誌目次

論文

臨床検査50巻7号

2006年07月発行

雑誌目次

今月の主題 ホルマリン固定パラフィン包埋標本からどこまで遺伝子検索は可能か? 巻頭言

ホルマリン固定パラフィン包埋標本からどこまで遺伝子検索は可能か?

著者: 笹野公伸

ページ範囲:P.713 - P.714

 近年の分子生物学あるいは細胞生物学の進歩には目覚ましいものがあり,科学的に極めてインパクトのある多くの研究成果が発表,報告されている.特に従来かなりの時間,労力が必要であった分子/細胞生物学的技法が機器,試薬の進歩により平易にしかも短時間で施行が可能になってきており,多くの臨床検査に応用され目覚しい成果を上げてきている.もう一つ特記すべきこととして,これらの新しい検索の対象が従来分子生物学あるいは細胞生物学的検索がかなり困難ではないのかと考えられてきた臨床検査対象にも日々拡大されようとしている現況が挙げられるのではないかと考えられる.すなわちRNA, DNAなどの遺伝子および蛋白質の検索対象は従来,血液や新鮮凍結組織などのようにあまり変性がない試料に限られていた.しかし近年の技術,技法の進歩により変性がある程度加わっている実際に病理診断に用いられている試料他が対象になってきている.

 病理診断に従事する者にとっては迅速診断や細胞診などの場合を除くと10%ホルマリン固定パラフィン包埋標本が検査対象のほとんどを占めている.加えて今後ますますその重要性が増してくると考えられるtranslational researchの領域においてもこのことは大きなimpactを有している.すなわち悪性腫瘍の症例などに関してはたとえ分子生物学,細胞生物学的な成果は報告はされていても,従来多くの患者の新鮮凍結標本などの検体が入手困難であったことから予後などの臨床病理学的な因子との関連性をretrospectiveに得るのが困難であり,せっかくの基礎的な知見も十分に患者に還元するのが困難な状況が続いてきたのは否めない.しかし10%ホルマリン固定パラフィン包埋標本を用いることによりこの点がかなり克服される可能性が出てきている.このことは今後癌の領域などのtranslational researchでより多くの10%ホルマリン固定パラフィン包埋標本が研究対象になろうとしていることも示している.

総説

ホルマリン固定パラフィン包埋標本の長所と問題点

著者: 笹野公伸

ページ範囲:P.715 - P.719

 10%ホルマリン固定パラフィン包埋標本は摘出された組織の病理組織学的検査に最も広範に使用されている方法であり,近年の技術の進歩によりこれら標本を用いて患者の遺伝子検索が可能となってきている.retrospectiveな検索ができることや,形態所見との関係も観察することができるためその有効性は極めて高いが,技術的な短所,倫理的な問題点を施行に当たっては十分理解しておく必要がある.〔臨床検査 50:715-719,2006〕

ホルマリン固定パラフィン包埋標本から現在DNAはどこまで抽出可能で検索可能か?

著者: 古川徹

ページ範囲:P.721 - P.730

 ホルマリン固定パラフィン包埋組織標本は最も一般的に入手可能な組織材料であり,それを用いて遺伝子解析をすることはretrospectiveな診断・研究において非常に重要であることは論をまたない.本稿ではホルマリン固定パラフィン包埋組織標本からのDNA抽出法とそれを用いた研究法として基本的な塩基配列解析法から,ヘテロ接合性検索法としてのマイクロサテライト解析,クローナリティや特定遺伝子のメチル化を検出するメチル化解析法,そして,全ゲノム増幅法とそれを応用したゲノムタイピングについて概説した.ホルマリン固定パラフィン包埋標本を材料にしては高分子DNAを対象にした検索は困難であるが,それを補う技術が次々と開発されており,ゲノムタイピングまで可能な現在,その限界は見えていないといえる.〔臨床検査 50:721-730,2006〕

ホルマリン固定パラフィン包埋標本からmRNAはどこまで抽出可能で検索可能か?

著者: 久岡正典

ページ範囲:P.731 - P.735

 mRNAを含むRNAは分解されやすいデリケートな分子であるために,病理検体に代表されるホルマリン固定パラフィン包埋組織を用いて解析することは困難であると一般に考えられてきた.しかし検索が進むにつれ,ホルマリン固定パラフィン包埋組織にもある程度のRNAが残存しており,それを抽出して解析できることがわかってきた.

 本稿ではホルマリン固定パラフィン包埋組織におけるRNAの特徴と,一般の臨床検査施設でも実施可能なRNAの抽出法と解析法とについて解説する.〔臨床検査 50:731-735,2006〕

ホルマリン固定パラフィン包埋標本でどこまでmRNA in situ hybridizationは可能か?―その有効性と問題点

著者: 長塩亮 ,   佐藤雄一 ,   中島孝

ページ範囲:P.737 - P.744

 早期診断や患者個人に合わせた治療が期待される今,これらに関与する分子の探索が患者間や健常者との比較解析などにより急速に行われている.見いだされた分子の機能解析を行う際,その一つの手法として特定の遺伝子のmRNA発現を組織や細胞上で検索することが可能なin situ hybridization法がある.今回,ホルマリン固定パラフィン包埋組織を用いたISH法を環境や手技上の注意点,さらにその応用例も交えて初心者にもわかるように解説する.〔臨床検査 50:737-744,2006〕

各論

ホルマリン固定パラフィン包埋標本-軟部腫瘍でのFISH―その有効性と問題点

著者: 長谷川匡

ページ範囲:P.745 - P.752

 近年,遺伝子解析技術の進歩によって軟部腫瘍に特異的とされる染色体転座が次々と報告されている.これらの染色体転座による特異的融合遺伝子の発見は,軟部腫瘍の発生,進展に関して数多くの知見をもたらし,その一部は,分子病理診断法としてすでに臨床へのフィードバックも始まっている.本稿では軟部腫瘍のホルマリン固定パラフィン包埋標本を用いて,日常病理診断への応用を目的とした融合遺伝子変異の有無を検索するFISH検査の有効性と注意点について解説する.〔臨床検査 50:745-752,2006〕

乳癌におけるHER-2遺伝子異常のFISH解析―有用性と注意点,免疫組織化学との比較

著者: 大塚由希子 ,   津田均

ページ範囲:P.753 - P.760

 乳癌治療の分野において,癌遺伝子HER-2を標的とした抗癌剤トラスツズマブ(商品名ハーセプチン(R))の有効性が証明され,転移性乳癌のみならず手術可能な原発性乳癌の術前術後補助療法にも適応が拡大されつつある.トラスツズマブ治療適応決定のためには,免疫組織化学(immunohistochemistry;IHC)法によるHER-2蛋白の過剰発現または蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法によるHER-2遺伝子の増幅を検査で確認することが不可欠である.多くの場合まず,IHC検査を行い,スコア3+を適応あり,スコア0,1+を適応なしとし,スコア2+の場合にFISH法で再検査を行っている.FISH法はコストや時間がかかり,手技もやや複雑であるが,近年のプロトコール研究の結果見直しでは,IHC法と対比してFISH法が再現性の高さ,治療効果との関連において優れていることが報告され,HER-2検査におけるFISH法の重要性は増していると考えられる.本稿では,FISH法の手順と行うに当たっての注意点,IHC法との比較について概説した.〔臨床検査 50:753-760,2006〕

ホルマリン固定パラフィン包埋標本―乏突起膠腫における染色体1p欠失のFISHによる検出

著者: 横尾英明 ,   金城佐和子 ,   平戸純子 ,   中里洋一

ページ範囲:P.761 - P.766

 グリア細胞系の脳腫瘍は一般に根治が困難であるが,乏突起膠細胞性腫瘍は有効な化学療法のプロトコールが開発されてから有意に予後が改善され,適切な病理診断の重要性が高まっている.乏突起膠腫における染色体1番短腕の欠失は化学療法の治療効果と密接な関連があることがわかっており,ここではFISH法でそれを解析する方法を紹介する.筆者らはプローブなどの主要な試薬を自作することでコスト抑制に留意している.〔臨床検査 50:761-766,2006〕

GISTの病理組織検体を用いたc-kit, PDGFRαの遺伝子検索―免疫組織化学との比較

著者: 廣田誠一

ページ範囲:P.767 - P.772

 GIST(gastrointestinal stromal tumor;消化管間質腫瘍)では,その腫瘍化にc-kit遺伝子またはplatelet-derived growth factor receptor α(PDGFRα)遺伝子の機能獲得性突然変異が関係している.これらの遺伝子変異の検索は,形態的・免疫組織化学的に診断の困難なGISTの確定診断や,分子標的薬イマチニブによる治療効果の予測に有用なことがある.最も入手しやすいホルマリン固定パラフィン包埋病理検体を用いた遺伝子検索により,確定診断や治療に役立てる必要がある.〔臨床検査 50:767-772,2006〕

ホルマリン固定パラフィン包埋標本―病理組織検体を用いた感染症病原体の分子生物学的検索においての有効性と問題点

著者: 下村龍一 ,   堤寛

ページ範囲:P.773 - P.781

 感染症の病理診断には改善の余地が残されており,いっそうの発展が期待される分野である.病理標本中の病原体を対象とした遺伝子検索手段としては,現在ISH法が主力である.病理標本を用いたISH法は,固定条件などにより結果が安定せず,これまで難しい印象がつきまとっていた.高感度のPNAプローブと,高感度増感系であるCSA法の組み合わせにより,実用に耐えうる再現性の高いISH法が可能となりつつある.〔臨床検査 50:773-781,2006〕

話題

病理組織検体で蛋白質の網羅的解析(proteomics)はどこまで可能か?

著者: 青柳憲和

ページ範囲:P.783 - P.787

 1.はじめに

 次々と様々な生物のゲノム情報が解明され,mRNAの網羅的発現の様子(トランスクリプトーム)の解析も進んでいくなかで,ゲノム情報の最終的な表現型である蛋白質の総体(プロテオーム)を網羅的に解析すること,すなわちプロテオミクスが注目を集めている.プロテオミクスは生命科学の新たな学問分野としてだけでなく,クリニカルプロテオミクスや疾患プロテオミクスなどと呼ばれる,臨床医学や薬理学,創薬のための高度医療技術としての応用が期待されている1~3)

 プロテオミクス解析では,試料から蛋白質・ペプチドを抽出するステップが非常に重要である.これまでのところ主に血清や生検検体などのような可溶化しやすい試料で研究が進められているが,これを世界中の研究機関で標準的に用いられている,10%ホルマリン固定,パラフィン包埋標本(formalin-fixed, paraffin-embedded;FFPE)で実施することができれば,重要な解析対象となるであろう.しかしながら,ホルマリンによる固定では分子内および分子間で共有結合的にクロスリンクが起こるため,蛋白質や核酸といった巨大分子は容易には抽出されにくいことが障壁となっていた.一方で,DNAやmRNAについては,近年の免疫組織化学染色における抗原賦活法(antigen retrieval;AR)技術4)の発展に伴い,FFPE標本から取り出すことが病理の現場で行われるようになってきている.

 本稿ではFFPE組織検体から蛋白質を抽出して質量分析計で解析する手法について最新の報告5~10)を紹介する(図1,表).

病理組織検体を用いた遺伝子検索における自動染色機器の有効性と問題点

著者: 鈴木貴 ,   笹野公伸

ページ範囲:P.789 - P.792

 1.はじめに

 病理組織検体を用いて細胞特異的な遺伝子発現状態を検討することは病因や病態を詳細に理解するうえで必須である.これらは染色体やDNA,転写産物としてのmRNA,最終産物である蛋白質など種々のレベルでの異常が原因となる.分子生物学的手法によっても検索可能であるが,多彩な細胞によって構成される組織を一塊として解析するのでは不十分であり,細胞局在を踏まえて解析することが重要となる.一般にDNAやmRNAの組織内局在はin situ hybridization法によって検討され,特定の蛋白発現は免疫組織化学による解析が用いられる.

 病理組織学的検査における免疫組織化学の重要性は改めて述べるまでもないが,例えば乳癌におけるHER2遺伝子増幅をFISH(fluorescent in situ hybridization)で解析することが医療保険で認められるようになるなど,in situ hybridizationに関しても臨床検査の現場で用いられるようになってきている.しかしin situ hybridizationや免疫染色は比較的熟練を要する手技であり,施行者の技術や経験によって結果が左右されることになりかねない1,2).このため再現性や標準化のさらなる向上が望まれる.そのためには良好な組織標本の作製や,プローブや一次抗体の適切な選択とともに,染色過程を正確に実行することが重要となる.近年の目覚ましいコンピュター技術の進歩により,染色過程を機械的に厳密に制御することが可能となり,in situ hybridizationや免疫組織化学の自動化が現実のものとなってきた.そこで本稿ではこれらに関する自動化および半自動化機器の現状を紹介し,その有効性と問題点とについて概説する.

CISH(chromogenic in situ hybridization)の有効性と問題点

著者: 熊本裕行

ページ範囲:P.793 - P.797

 1.はじめに

 近年の分子生物学の進歩を背景に,形態学を主とする病理組織診断においても,形態変化の所見のみではなく,その基盤となる遺伝子や蛋白質などの変化の理解が求められるようになってきている1,2).CISH(chromogenic in situ hybridization)は,蛍光色素や放射性同位元素を使わずDABやBCIP/NBTなどの発色原(chromogen)を用いて,組織標本上でDNAやmRNAを検出するin situ hybridization(ISH)であり,通常は蛍光色素を用いてDNA観察を蛍光顕微鏡下で行うFISH(fluorescence in situ hybridization)と対比されることが多い3~5)

 本稿では病理組織検体を用いたCISHにより,病因・病態形成の理解を通じ診断や治療方針などの臨床応用が可能と思われるものについて概説する.

病理組織検体におけるレーザーマイクロダイセクションの応用

著者: 中西陽子 ,   根本則道

ページ範囲:P.799 - P.802

 1.はじめに

 分子生物学の発達により,分子レベルでの疾患の分類,疾患の理解が進み,多くの病態が明らかとなりつつある.個人の遺伝子多型や遺伝子プロファイルは癌の発症や薬剤への効果などに影響を及ぼすこともわかってきた.様々な知見を診断や治療に適用していくためには,信頼性の高い核酸解析結果を得ることが求められる.病理組織標本には,様々な細胞が混在している場合が多い.例えば腫瘍の実質と間質であったり,異型細胞と正常細胞,あるいは組織型の異なる腫瘍が混在していることもある.調査の対象とする細胞がどのような分子生物学的背景を持つのかを正確に解析するためには,標的細胞を形態学に基づいて単離し回収することが重要であり,レーザーマイクロダイセクション(laser microdissection;LMD)法が威力を発揮する.

今月の表紙 細胞診:感染と細胞所見・7

Pneumocystis jirovecii(ニューモシスチス・ジロヴェッチ)/Pneumocystis carinii(ニューモシスチス・カリニ)

著者: 籏ひろみ ,   海野みちる ,   坂本穆彦

ページ範囲:P.710 - P.712

 真菌に近い微生物Pneumocystis carinii(P. carinii)は2001年の国際会議において真菌と分類されること,名称もラット由来(原型)をPneumocystis cariniiとして残し,ヒト由来のものはPneumocystis jiroveciiと改めることが提唱された1).なおjiroveciiはチェコの寄生虫学者にちなんで命名された.本稿では旧名のP. cariniiではなくPneumocystis jirovecii(P. jirovecii)を用いる.

 間質性肺炎を起こす主な病原体として知られているP. jiroveciiは,正常では不顕性であるが,免疫不全状態に宿主が陥ると増殖,活性化して致命率の高いびまん性間質肺炎を発症させる典型的な日和見病原体として有名である2,3).免疫不全状態の原因としては,自己免疫疾患,臓器移植時の免疫抑制剤の大量投与,癌,白血病,悪性リンパ腫などの種々の悪性腫瘍に対する抗癌剤,抗生剤,免疫抑制剤の大量投与,後天性免疫不全症候群(AIDS)の患者,などが挙げられる.特にAIDSでは,患者の半数以上がP. jiroveciiを併発しているといわれている4)

シリーズ最新医学講座・Ⅰ 法医学の遺伝子検査・7

ABO式血液型遺伝子の解析

著者: 鈴木廣一

ページ範囲:P.803 - P.811

 B型とO型の両親からA型の子どもは生まれるか?

 生まれた赤ちゃんのABO式血液型(以下,ABO)が,両親とあわないのではないか,つまり親子関係が存在しないのではないかということで,裁判所を通じて鑑定を依頼されたことがある1).B型(母)とO型(父)の両親の子は通常,B型かO型であるが,生まれた子はA型であった.考えられることは,この父は真の父でないか,病院での取り違えか,父がBombay表現型か,ABOの遺伝法則上のなんらかの破格かである.この事例の謎解きを軸に,ABO式血液型遺伝子の解析について紹介する.

シリーズ最新医学講座・Ⅱ 耐性菌の基礎と臨床・6 主として院内感染で問題となる耐性菌・5

真菌(基礎編)

著者: 槇村浩一

ページ範囲:P.813 - P.817

 はじめに

 わが国において院内感染として問題となる真菌症とは,重篤かつ致命的な日和見型深在性(内臓)真菌症にほかならない.本症は内因性(Candida属,Pneumocystis jiroveciiなど)または外因性(Aspergillus属,Cryptococcus属,接合菌綱など)の比較的病原性が低い真菌による感染症であり,一般的には免疫抑制下,または高度な侵襲を伴う医療行為に伴って発症する.

 深在性真菌症の発生頻度は経年的に増加傾向にあり,とりわけ白血病剖検例では,その25%に本症発症が認められる1).本症管理上,抗真菌化学療法に重要な役割が期待されている.しかし,いまだに抗細菌薬が効かないという意味において“真菌”自体が“耐性菌”扱いを受けがちなうえに,その“真菌”のなかにも菌種・菌株によって特定の抗真菌薬に対する感受性が異なる状況は,十分に説明されていない.そのために現行の限られた抗真菌薬や,保険報酬が認められた抗真菌薬感受性測定法が有効に使われていない状況も垣間みられる.

 深在性真菌症診断・治療上のガイドラインも作成され2),真菌症対策の臨床的重要性が広く認識されつつある現状に鑑みて,真菌症起因菌の耐性,すなわち薬剤感受性の現状について改めてまとめてみたい.

真菌(臨床編)

著者: 掛屋弘 ,   宮﨑義継 ,   河野茂

ページ範囲:P.819 - P.824

 はじめに

 耐性真菌感染症は,わが国の臨床現場では,一般細菌におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)やペニシリン耐性肺炎球菌(penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae;PRSP),β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性菌(β-lactamase-negative but ampicillin resistant; BLNAR)感染症のような問題としては取り上げられていない.しかし,欧米ではHIV感染症や免疫不全症患者に伴うアゾール耐性カンジダ症の治療が問題となっている.わが国の最近の調査によれば,幸い耐性真菌の蔓延はみられないものの,耐性真菌の頻度は低率であるが存在しており,移植医療などの増加に伴い,近い将来臨床的問題へ発展する可能性を含んでいる.

 本稿では,現在わが国で使用されている抗真菌薬の特徴およびその自然耐性および獲得耐性真菌について述べる.また2003年に行われたわが国の多施設サーベイランスの結果を概説し,その結果をもとに耐性真菌を考慮したエンピリック治療について論述する.

コーヒーブレイク

シネマの行方

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.787 - P.787

 最近はテレビに時間をとられることが多い.スカパー110+BSデジタルなるものに加入したら,最初は時代劇くらいと思っていたのがついついおびただしい数の番組に見入ってしまう.行末がどうなるかと案じられる.

 そもそもは幼いころ田舎町のオンボロ劇場に週1回くらい巡回上映される雨の降るようなチャンバラ活動写真がきっかけとなった.たまに近くの一寸大きな町まで兄姉に連れて行ってもらい観て帰るのも何よりのご馳走だった.大河内伝次郎という俳優が乾雲坤龍という2本の妖刀を巡って活躍する丹下左膳や,秋深い信濃路を落ちてゆく国定忠治に少年の魂は吸いとられてしまった.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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