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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査53巻8号

2009年08月発行

雑誌目次

今月の主題 漢方薬・生薬と臨床検査 巻頭言

漢方薬・生薬の現状解析

著者: 正山征洋

ページ範囲:P.861 - P.862

 中国において漢の時代に集大成された伝統医学が仏教の伝来とともに日本へ導入され医療の中心として発展・機能してきた.近世になってヨーロッパ医学(蘭学)が導入された時期から,日本で発展してきた中国医学を「漢方」と呼ぶようになった.漢方のように伝統的な医学に則って使用される薬物が伝統薬で,その中で漢方薬が広く知られている.一方,使用方法が地域によって異なっているものは民間薬と呼ばれ,一般に単味で用いて対症療法的である.伝統薬,民間薬に用いられる天然由来の薬物を「生薬」と呼ぶが,それらの中で中国医学とともに導入された薬物が漢薬で,日本独自の薬物,すなわち民間薬と呼ばれるものが和薬であり,ヨーロッパで開発・使用されてきた天然薬物を西洋生薬と称して区別してきた.漢方薬に配合される生薬は植物,動物,鉱物を基原とするがその内植物由来生薬が圧倒的に多いが,動物生薬としては熊胆(ゆうたん:熊の胆囊)や反鼻(はんび:まむし),地竜(じりゅう:みみず)など,また,鉱物生薬として竜骨(りゅうこつ:哺乳類の化石)や牡蠣(ぼれい:牡蠣殻),石膏などが配合される.漢方薬は配合される生薬の種類と量が決まっており,投与に当たっては漢方独自の診断法により患者個々人の「証」と呼ばれる病態などを総合的に把握し「証」を決定して漢方薬が投与される.この点が西洋医学と大きく異なる点で,テーラーメイド医療,全人医療の最たるものである.

 前述の通り生薬は天産品であるがために常に資源の枯渇に悩まされている.同時に生薬の品質の不均一性も漢方薬の効き目に大きな影響を与える重要課題である.例えば,70%以上の漢方薬に配合される甘草(かんぞう)は需要量が大なことは容易に想像できるが,漢方薬に限らず,甘草から抽出・単離した有効成分,グリチルリチンが慢性肝炎やアレルギーの薬として大量に使用されている.また,味噌,醤油を初めとする食品の甘味料として,さらに各種飲料の甘味付けとしての需要も極めて大きい.このため大量の自生甘草が採取され,特に中国では大規模な乱獲が行われたために砂漠化を助長しているとの見解から,2000年に中国国務院より「甘草,麻黄の乱採取防止に関する通知」が内部通達され,甘草の採取・生産・売買・流通に関する規制がなされ,漢方薬や生薬にかかわる者にとって一大パニックが起こったことは記憶に新しい.一方では品質の保証を担保する意味で,日本薬局方においてグリチルリチン含量は2.5%以上と規定されている.また,甘草には300種以上の成分が確認されているのも事実である.以上から,限られた資源を有効利用するためにも品質の分析・評価が必須不可欠となるであろう.本企画の狙いの一つがここにある.

総説

漢方薬・生薬の本当の効き目とは

著者: 津谷喜一郎

ページ範囲:P.863 - P.871

 「漢方は本当に効くのか?」という質問に答える日本東洋医学会の3つの活動を紹介した.「エビデンスレポート」はエビデンスのグレードの高いランダム化比較試験を320件同定し,コメント付きの構造化抄録を作成した.「漢方製剤と診療ガイドライン」は診療ガイドラインから漢方製剤を含む36件を選び,診療ガイドラインとしての質で3段階に分けて示した.「ベストケース」は「劇的」(dramatic)に「効いた」症例を集めるものである.これら3つの活動はエビデンスを「つたえる」ものである.

漢方薬・生薬の品質保証

著者: 合田幸広

ページ範囲:P.873 - P.877

 日本では,生薬・漢方薬は医薬品として明確に扱われているため,薬事法の規制下で品質保証が行われている.本稿では,生薬・漢方薬の品質保証について,日本薬局方関連の話題を中心に概説した.また,実態調査の結果をもとに,生薬の残留農薬の安全性について考察した.

漢方薬・生薬成分は腸内細菌により代謝を受けて効き目を発揮する

著者: 服部征雄

ページ範囲:P.879 - P.884

 漢方薬は経口的に用いられるため,ヒト消化管内で腸内嫌気性菌によって代謝を受ける.特に配糖体は消化管上部では吸収されにくく,大腸まで輸送され,そこで代謝され薬効を現す.ヒト腸内細菌フローラには個人差があり,漢方薬の薬効に個人差を生じやすい.

漢方薬・生薬成分がいかにして作られるかを遺伝子レベルで解析する

著者: 渋谷雅明 ,   海老塚豊

ページ範囲:P.885 - P.892

 代表的な生薬有効成分の一つにトリテルペンサポニンがある.トリテルペンサポニンは,2,3-オキシドスクアレンの閉環反応,酸化反応,配糖化反応により生合成される.これらの3段階の反応を司る各酵素についての遺伝子レベルでのこれまでの研究を紹介し,非天然型のトリテルペンサポニンの創出,薬用植物の品種改良,遺伝子組換え微生物によるトリテルペンサポニンの生産など,今後の可能性について概説する.

各論 〈活性成分探索・解析〉

食用であり薬用である植物の薬理活性成分の探索

著者: 吉川雅之

ページ範囲:P.893 - P.897

 東洋医学では,薬効のある食物(薬用食品)による健康維持(食養)や未病治療(食療)が理想の医療と考えられている.このような薬食同源の視点から3種の薬用食品,ローズヒップ,甘茶,茶花についてメタボリックシンドローム改善に有効な成分を探索し,抗肥満や抗糖尿病作用などを有するフラボノール配糖体(tiliroside),イソクマリン(hydrangenol),トリテルペンサポニン(floratheasaponin類)などを見いだし,それらの活性発現の必須構造や作用機序を解析した.

生薬の抗腫瘍活性を持つ成分の解析

著者: 竹谷孝一

ページ範囲:P.899 - P.907

 伝承薬的に使用されている抗癌生薬,抗腫瘍活性ランダムスクリーニングで選別された高等植物より活性成分が単離・構造決定され,抗腫瘍性,抗癌性が報告されている化合物を紹介するとともに,筆者らの研究室で見いだされた茜草根(Rubia akane, R. cordifoliaの根)からの抗腫瘍活性環状ヘキサペプチド類の最近の研究状況についても紹介する.

珍しい構造を持つ天然薬物の薬理活性成分の解析

著者: 小林資正

ページ範囲:P.909 - P.915

 微量分析技術や機器分析の目覚ましい発展に伴い,薬用植物,海洋生物や土壌微生物から数々の新奇な化学構造を有する天然有機化合物が見いだされてきた.なかでも,抗菌性,抗腫瘍性や薬理活性を有する天然薬物は医薬シーズとして注目されている.活性低分子化合物を利用して化学的観点から生命現象を解明するケミカルバイオロジー研究が,ポストゲノムの重要な研究領域の1つとなっているが,本稿では海洋天然物のケミカルバイオロジー研究を紹介する.

〈相互作用〉

生薬や食品と西洋薬の相互作用解析

著者: 三木晶子 ,   澤田康文

ページ範囲:P.917 - P.925

 薬だけではなく,食べ物あるいは飲料物・嗜好品においても,体に入ればそれぞれの成分が生体のある構成成分を介して何らかの相互作用を起こす危険性を秘めている.本稿では,主に臨床検査の場面で重要だと思われるワルファリン治療下における抗凝固能(international normalized ratio;INRなど)やTDM対象になっている薬剤の血中濃度に影響を与える生薬(ハーブを含む)や食品のうち重要なものを取り上げた.

〈生薬成分の生体防御〉

生薬成分の植物生体防御とのかかわり―黄芩について

著者: 森元聡

ページ範囲:P.927 - P.931

 コガネバナの根を乾燥したものは,黄芩として漢方で汎用されており,様々なフラボンを含有している.なかでもバイカレインは,動物細胞に対する抗酸化作用やアポトーシス誘導による抗腫瘍活性などの有用な薬理活性を示すことが知られている.極めて興味深いことに,コガネバナもバイカレインを抗酸化物質やアポトーシス誘導因子として利用しており,本植物の生体防御機構において極めて重要な役割を担っていることが判明した.

技術 〈遺伝子分析〉

生薬の品質評価と遺伝子解析

著者: 水上元

ページ範囲:P.933 - P.937

 生薬の品質確保に当たって最も重要なことは,その生薬が規定された基原生物に由来していることを確認し,また類似の生薬と正確に鑑別することである.生薬の鑑別・同定法としてのこれまでの形態学的,化学的方法は表現形質を鑑別指標とするための本質的欠点が存在しており,実際にこれらの方法では鑑別・同定することが困難な生薬も多数存在している.本稿では生薬の新しい鑑別・同定法である遺伝子技術について解説する.

〈活性成分評価〉

生薬の有効成分に対するモノクローナル抗体による生薬の品質評価解析

著者: 田中宏幸 ,   森永紀

ページ範囲:P.938 - P.942

 特異性に優れ,均質であり,必要なときに必要な量確実に調製できることがモノクローナル抗体(MAb)を活用する利点であり,このことはMAbを活用した品質評価法の信頼性の高さに通じる.われわれはこれまでに約30種類の生薬由来有効成分に対するMAbを作製し,それらを活用した迅速・高感度な生薬品質評価解析法を開発している.本稿では,カンゾウの有効成分グリチルリチンに対するMAbを用いた二種類の免疫化学的分析手法を取り上げ概説する.

漢方薬・生薬の活性評価―有効成分のノックアウトエキスと薬理解析

著者: 正山征洋 ,   宇都拓洋

ページ範囲:P.943 - P.946

 生薬や漢方薬には極めて多数の化合物が含有されており,その中の1成分を除去したエキスを作成することは通常は不可能である.本稿では抗原分子に対するモノクローナル抗体を装着したアフィニティーカラムにより抗原分子をワンステップで単離するとともに,洗浄画分から抗原分子のみが除去されたエキスが得られる.本エキスをノックアウトエキスと命名し,真の有効成分を特定するツールになることを証明した.

トピックス

生薬有効成分をつくる遺伝子のクローニング―甘草のグリチルリチン

著者: 斉藤和季

ページ範囲:P.947 - P.949

1.はじめに

 生薬の有効成分を見たときに誰もが思う疑問は,なぜこんなにも多様な化学成分を植物は作り出すのだろうと言うことであろう.この質問に答えるためには,生薬の基原となる植物のゲノムにコードされている有効成分の生合成遺伝子を同定してその機能を解明することが必須である.

 甘草は七割以上の漢方処方に配合されており,その主要成分であるグリチルリチンには抗炎症作用や肝機能改善作用など多くの薬理活性が報告されている.また,グリチルリチンは甘味付与や味覚矯正の目的で食品添加物として多くの食品や調味料に用いられている.世界の甘草の年間取引額は40億円以上と見積もられており,大きな市場規模を有する.しかし,生産は中国を中心としたユーラシア大陸の東西にまたがる中央部に限られ,供給はほぼ野生植物に依存しており乱獲による資源の枯渇や採取後の砂漠化が危惧されている.それに伴って中国での輸出規制も現実化しつつある.したがって,生薬有効成分はどのような原理で生産されるのかという基礎的な学問的興味と,遺伝子資源の持続可能な有効利用と生産システムの確保,地球環境の保全などの応用的な面から,生産に関与する遺伝子の分子生物学的研究の推進は急務である.

 本稿では,最近筆者らの研究グループで成功した甘草でのグリチルリチン生合成遺伝子のクローニングについて解説する.

漢方の効き目を決める「証」の解析

著者: 櫻井宏明 ,   小泉桂一 ,   済木育夫

ページ範囲:P.950 - P.954

1.はじめに

 西洋医学的には,関節リウマチ,アレルギー,更年期障害といった病名診断に基づく治療が行われているが,漢方医学において,その治療効果をあげるための最も重要な指標は,東洋医学的な病態認識としての「証」である1).例えば,気虚,瘀血,水滞といった病態の診断が行われている.すなわち,本来の漢方治療を行うに当たっては,証に基づく診断は必須なものであり,その診断結果により治療の方針や漢方方剤が決定される(これを方証相対という).しかしながら,証診断には東洋医学の体系を熟知し,長年にわたる経験も必要とされることから,漢方の専門医でなければ診断は困難であると考えられる.西洋医学における血液生化学的検査のような,一般に広く普及した客観的な指標が東洋医学にはほとんどないことが“特別扱い”される大きな原因の1つであり,漢方医学の普及にとって障壁となっていると思われる.

 われわれは,近年格段の進歩を遂げた西洋医学におけるプロテオミクス技術を東洋医学である漢方研究に応用し,証診断の客観的な指標となるバイオマーカーの探索を試みた(図1).本稿では,その概要について紹介する.

今月の表紙 帰ってきた真菌症・8

病原性酵母の様々な細胞形態

著者: 田中玲子

ページ範囲:P.858 - P.860

 一般に酵母の細胞形態としては,球形,亜球形(楕円体)の単細胞としてイメージされていることが多い.しかしながら日和見真菌症の原因菌としてよく知られているCandida属菌の多くは,二形性の形態変換(酵母形と菌糸形の相互変換)が病原性と深くかかわっていると考えられている.ここでは,通常の観察ではあまり目にすることがないが,とても特徴的な形態についてCryptococcus neoformansCandida albicansCandida ciferiiの例を挙げて紹介する.また,分類学的には真菌ではないが培養形態が非常に酵母に似ているために,しばしば真菌と誤同定されるプロトテコーシス原因菌のProtothecaも合わせて紹介する.

研究

未治療甲状腺機能低下症における肝機能検査値の異常とサイロキシン治療の影響について

著者: 松本優香 ,   池田直子 ,   鷲尾洋子 ,   峯尾真澄 ,   河本知恵 ,   植田美幸 ,   東真理子 ,   森田新二 ,   網野信行 ,   西原永潤 ,   伊藤充 ,   窪田純久 ,   宮内昭

ページ範囲:P.955 - P.959

 未治療甲状腺低下症患者は健常対照に比し血中T-CHO,AST,ALT,γ-GTP,LDH,CKは有意な高値を示した.ASTは35.7%,ALTは39.3%,γ-GTPは32.1%,LDHは50.0%,CKは60.7%,T-CHOは75.0%の患者で基準範囲以上の高値がみられ,これらの1項目以上が高値を示した症例は82.1%であった.またAST/ALTの比は甲状腺中毒症(バセドウ病,無痛性甲状腺炎,亜急性甲状腺炎)に比べ有意の高値を示した.これらの肝機能検査値の変動は甲状腺ホルモン治療により正常化したことより,肝疾患の合併によるものではなく,代謝状態の変化が大きく影響しているものと考えられた.

学会だより 第98回日本病理学会総会

病理業務のIT化,自動化は病理の将来を救うのか?

著者: 長沼廣

ページ範囲:P.960 - P.960

 第98回日本病理学会総会が2009年5月1~3日に京都市で開催された.多くの病理医・研究者が集まり,発表演題に対して熱い議論を戦わせていた.多くの病理医とは言え,近年は若手病理医の数は少なく,病院病理医の平均年齢は50歳を超えている.学会も病理医不足の危機感を募らせている.今回も病理の将来を考えるシンポジウム・ワークショップが行われ,いくつかの提言がなされた.

 2日目の朝「病理学の学生教育と卒後教育」のシンポジウムが開かれ,大学での病理学教育のあり方,方法について議論された.卒前教育のカリキュラムが大きく変わり,詰め込みより実践が重視されてきている.病理学は医学の基礎的学問として重要でありながら,授業時間が減らされる傾向にある.どうしたら効率よく学生に教えることができるか,大学関係者の苦労が感じられた.試みとして近年普及しつつあるバーチャルスライド(情報化された病理画像)を利用している事例が報告された.顕微鏡実習では学生人数分の顕微鏡,プレパラートを準備しなければならない.バーチャルスライドを使うと顕微鏡や多数のプレパラートが不要になる.学生は自宅でもウェブ上で,画像を見ながら勉強ができる.パソコン世代の若者には打って付けである.お金と時間を節約できるかもしれない.しかし,実際の現場ではまだまだ顕微鏡を使った病理診断が主流である.顕微鏡を見ないで卒業した研修医が現状の病理診断に興味を持つのか疑問である.若い病理医や研修医の教育という視点で,現場のIT化,効率化導入の意義を考慮する時期だと気づかされた.さらに,研究者も病院病理医も,それぞれが病理学の重要性やおもしろさを再認識し,自身が体現することが最も大切であると思った.

様々な立場で考える「医療関連死に対する病理学・法医学の役割と医療のあり方」

著者: 坂田一美

ページ範囲:P.961 - P.961

 5月1~3日に京都で第98回日本病理学会総会が開催されました.初日冒頭のシンポジウムで,「医療関連死」が取り上げられました.市中病院に勤務する病理医にとっては非常に身近な問題であり,今回はこのシンポジウムについて紹介します.このシンポジウムは①医療安全調査委員会の構想とモデル事業(山口 徹,虎の門病院),②「医療関連死」病理医の立場から(黒田誠,藤田保健衛生大学),③「医療関連死」法医の役割(山内春夫,新潟大学),④死後画像の死因調査における有用性(飯野守男,大阪大学),⑤医療関連死調査における死後画像の有用性(高澤豊,東京大学),⑥放射線科医にとっての死後画像(富樫かおり,京都大学)の6人のシンポジストの発表からなっています.これらを前半(解剖関係)と後半(死後画像関係)にわけて紹介します.

 前半は「医療関連死における病理および法医の立場から」の話でした.現在,「医療事故の発生予防・再発防止」およびその透明性を高めるためにモデル事業(2005~2010年)が行われています.これは内科学会を中心に37学会の協力を得て,10都道府県で展開され,現在ホームページ(URL=http://www.med-model.jp/jigyou.html)上に57事例が掲載されています.しかしこのモデル事業の実施に伴い,「少ない病理医と法医医師」の問題が浮き出てきました.また,病理と法医が連動した形での医師教育が重要な課題となっていることも合わせて報告されました.病理解剖自体が減少しており,若い病理医自身の解剖経験が少なくなってきており,若い病理医にも臨床経過との相関を常に確認しながら診断することの重要性を十分指導しなければなりません.病理と法医の連携がすぐにとれて,解剖したいときに解剖できる体制を整備し,真相究明と公開性,公正性,中立性,迅速さといったニーズに答えていくことが求められています.

Coffee Break

私がゴルフをしない(できない)理由

著者: 佐々木禎一

ページ範囲:P.898 - P.898

 私はゴルフの経験がなく,現在も全くせず,むしろできないと言ったほうが正しいと思う.よくその理由を聞かれるが,「先輩からゴルフをするなら金と暇が無ければ駄目だと言われたから」と答えている.さて本論に入り今回は私とゴルフとの付き合いについて述べてみよう.

随筆・紀行

北の大地

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.926 - P.926

 最近テレビで放映された倉本聰さんの作「風のガーデン」は見応えがあった.何年か前の作「北の国から」も仝じ北海道を舞台にしたドラマで,日本中を感動に包み,出演した俳優たちもこれを機に新境地を拓き,現在も人気を持続している.

 風のガーデンはいかにも富良野らしい澄みきった地にある美しいガーデンを吹き抜ける涼風の如く,感動的な物語である.そのうえに主演の緒形 拳の熱演と,彼がこれの完成を待っていた如く他界したという挿話も私たちの心を打った.

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あとがき

著者: 濱﨑直孝

ページ範囲:P.964 - P.964

 今月号の主題として「漢方薬・生薬と臨床検査」を取り上げた.現在,わが国の医学・医療の主体は西洋医学であるが,「漢方」(中国医学)も根強くまた脈々と続いている.最新の科学を基礎とするわれわれには,試行錯誤の蓄積や経験を体系化した「漢方」は科学的根拠が不十分で馴染みにくい面がある.一方,現代医学の限界と行きすぎに対する反省から,欧米でも「漢方」の効用を見直し注目するようになって久しい.実際に米国では真っ先に鍼治療を承認され,今では漢方薬の薬効分析が治療薬開発の一端を担っている.臨床検査関係では,京都で2002年に開催された第18回国際臨床化学会(18th International Congress of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine)で取り上げているし,成書としてはアメリカ臨床化学会(AACC)から「Effects of Herbs and Natural Products on Clinical Laboratory Tests」(Narayanan S, Young DS, eds.)などが出版されている.西洋科学の視点から「漢方」を“科学的”に分析し医療へ役立てようとの試みである.

 このような視点から本号の企画を(前)日本生薬学会会長・正山征洋先生(長崎国際大学・薬学部教授)にお願いした.巻頭言では正山先生が「漢方薬」「生薬」の定義をまず明確にされ,さらに効果判定の基準となる「証」について述べられている.本号は「漢方薬・生薬の品質保証」,「漢方薬・生薬の作用機序」,「活性成分の分析」,「遺伝子分析」「“証”についての解析」などから構成され,西洋医学の尺度を用いて漢方医学の解説を試みている.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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