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雑誌目次

論文

臨床検査55巻12号

2011年11月発行

雑誌目次

今月の主題 子宮頸癌の予防と検査 巻頭言

子宮頸癌の予防と検査をめぐって

著者: 坂本穆彦

ページ範囲:P.1381 - P.1382

 子宮頸癌およびその前駆病変は,ヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus;HPV)により引き起こされることが明かにされている.そのため,ウイルス感染の有無のチェックとワクチン接種が子宮頸癌未然防止の有力な手段であることが,今日では広く認識されるようになった.本企画ではこの“ウイルス感染の有無”チェックに焦点を当て,その現状と課題を浮きぼりにすることを目指している.臨床検査の立場からみると,ウイルス感染状態の適確な判定が問われていることになる.婦人科検診では,コルポスコピー検査(コルポ診),細胞診,組織診が要となる手法として従来より重用されてきた.これに昨今では,HPV・DNA検査が加えられている.このうち,コルポ診は婦人科医の手になる臨床的手技であるので除き,臨床検査の一環である後3者について本企画では取り上げることとした.

 ところで,わが国の死因統計によれば,男女とも死因の第1位は悪性新生物,すなわち癌である.癌が死因のトップの座を占めるようになって久しいが,その背景の1つに日本人の平均寿命の延長が挙げられるのが常である.しかしながら,かつては癌よりも上位であった脳卒中や心筋梗塞も,若年者よりも高齢者の頻度が高い疾患である.これらは,その発症や重症化は生活様式への配慮である程度は軽減できるという性質をもつものであり,国民の間で徐々にメタボリック・シンドロームが周知されるようになったことも相俟って,死因に占める割合が減少したものと思われる.

総論

本邦における子宮頸癌検診の歴史

著者: 岡本聡 ,   伊藤潔 ,   新倉仁 ,   八重樫伸生

ページ範囲:P.1383 - P.1390

子宮頸癌検診が一部の地域で行われてから半世紀が経った.その後全国に子宮頸癌検診は拡がり,国策として癌検診事業がスタートした.子宮頸部擦過細胞診による子宮頸癌検診は,子宮癌死亡率減少に対する有効性が証明されている.近年,子宮頸癌検診は新日母分類によってより一層の精度向上が図られている一方で,受診率低迷に悩まされている.その中で無料クーポン券の配布によって受診者数が増えたことは朗報である.今後も子宮頸癌検診の受診率の向上に向け,行政および諸関係団体による積極的な施策の実行が必要である.

諸外国における子宮頸がん検診

著者: 今野良 ,   林由梨 ,   根津幸穂 ,   満下淳地

ページ範囲:P.1391 - P.1398

子宮頸がん検診の効率的なプログラムをデザインするには,その国の検診精度や経済状況,資源の問題などを考慮する必要がある.海外での子宮頸がん検診の実状や臨床試験を紹介し,わが国における検診プログラムを検討する一助としたい.特に,政府が包括的に子宮頸癌予防に取り組んでいるオーストラリアの状況は素晴らしく,有用な情報となる.

子宮頸癌自然史研究の最前線

著者: 吉川裕之

ページ範囲:P.1399 - P.1403

ヒトパピローマウイルス(HPV)感染は子宮頸癌発生に深く関与するが,HPV感染からみると,子宮頸癌に至るのはごく一部であり,むしろ例外的である.HPV感染は必要条件であり,感染をHPVワクチンで予防することで,子宮頸癌の発生を制圧することが期待できる.HPVワクチンが普及していくこの時期においても,HPV感染の自然史の解明が重要である.子宮頸癌発生の自然史としては数段階に分けて考えるのが妥当である.リスク因子がどの段階で作用しているかわかっていないものが多い.前方視的なコホート研究を行うことにより,リスク因子が作用する段階を捉えることができる.

コルポ診・細胞診・組織診・HPV DNA検査―検診;CIN取り扱いのトリアージ

著者: 宮城悦子

ページ範囲:P.1404 - P.1412

2008年に本邦で子宮頸部細胞診報告様式にベセスダシステム2001が正式採用されることがアナウンスされ,検診や日常の診療に定着しつつある.さらに,発癌性HPVジェノタイプの中で,上位13種類の高リスク型HPVのスクリーニングを簡便に可能にしたHPV一括スクリーニング検査は,ASC-US(atypical squamous cells of undetermined significance)症例の運用に重要な役割を果たしている.さらに,ハイリスクHPVジェノタイピング検査が,組織診で確定したCIN1/2の症例に対して,最近本邦で保険適用となった.現在,HPVワクチンへの公費助成の開始や,検診へのHPV検査導入の議論が進むなど,子宮頸癌予防の動きに大きなパラダイムシフトがおとずれている.

各論 〈検査手技・判定の実際〉

細胞診―検体採取と検体処理

著者: 杉山裕子

ページ範囲:P.1413 - P.1416

子宮頸がん検診として推奨されている子宮頸部細胞診について,採取法と検体処理の点から述べる.検体採取は綿棒より“へら”や“ブラシ”が推奨されている.検体処理法は従来法と液状検体法があるが,いずれの方法も頸がん検診に推奨されている.大切なのは子宮膣部の上皮内病変ができやすい移行帯を含んだ場所から正確に細胞を採取し,状態のよい標本を作製することである.液状検体法が今後わが国で広がってゆくためには消耗品による経費の問題も解決される必要がある.

細胞診―コイロサイトの判定

著者: 岡山香里

ページ範囲:P.1418 - P.1424

子宮頸部細胞診において,“コイロサイト”はHPV感染に特異的な細胞所見として重要視されてきたが,どの成書においても細胞質の空胞所見に重点が置かれており,核所見についてはほとんど触れられていない.しかし,2009年4月にベセスダシステム2001に準拠した医会分類に変更されてから,コイロサイトの判定基準には細胞質の所見だけではなく,LSILに相当する核異型の存在が必須となった.よって現在は,特徴的な細胞質の空胞所見に加え,LSILに相当する核異型を有する細胞がコイロサイトと定義されている.

細胞診―HPV感染細胞

著者: 九島巳樹

ページ範囲:P.1425 - P.1428

コイロサイト以外にも,HPV感染細胞の特徴には錯角化・異角化,スマッジ核,二核・多核細胞,巨細胞などがある.個々の細胞所見について述べたが,コイロサイトを除けば,単独でHPV感染に特異的な所見はなく,また細胞標本上では本来その細胞がHPV感染により変化しているか不明である.したがって種々のHPV-DNA検査によりHPV-DNA陽性とされた症例で細胞標本上に認められる頻度などが検討されてきている.子宮頸部扁平上皮異常の細胞診はコイロサイトを含め,HPV感染に特徴的とされる所見の組み合わせやHPV-DNA検査の併用により行うことが望まれる.病変の有無,予後の予測などに役立つ可能性があり,また,そのような所見がみられた場合には慎重な追跡管理が望まれる.HPV感染による細胞所見の理解にはHPV検査,コルポスコピーあるいは生検組織診断との比較が必要である.

組織診―新しい組織診断基準

著者: 坂本穆彦

ページ範囲:P.1429 - P.1432

わが国の子宮頸部病変の診療に大きな影響力をもつ「子宮頸癌取扱い規約」がこのたび10数年ぶりに改訂されることになった.大きな変更点のひとつに子宮頸部扁平上皮系異型病変の扱いがある.ことに境界病変と非浸潤癌に関する用語・定義に大幅な改変がなされる.従来からの異形成・上皮内癌(CIS)に変わって,CIN(子宮頸部上皮内腫瘍)が採用される.CINは1,2,3の3段階に分けられる.CIN3には従来の高度異形成とCISが含まれる.これらの改訂の意義を理解して日常診療に対応することが望まれる.

ヒトパピローマウイルス(HPV)DNA検査―Hybrid Capture®法,PCR法の特徴

著者: 笹川寿之

ページ範囲:P.1433 - P.1443

HPV-DNA検査は大きくhybridization法と遺伝子増幅法とに分けられる.13タイプの高リスク型HPV(HPV16, 18, 31, 33, 35, 39, 45, 51, 52, 56, 58, 59, 68型)を一括して検出する検査法として,hybridization法をベースにした第2世代Hybrid Capture®2(HC-2)法とPCR法をベースにしたアンプリコア®HPV検査がある.HPV型を判定するHPV genotyping法には遺伝子増幅法のPCR法とLAMP法が用いられている.HPV検査は,使用目的とその限界をよく理解したうえで用いるべきである.

話題

HPVワクチンの現況

著者: 井上正樹 ,   金谷太郎

ページ範囲:P.1445 - P.1448

1.はじめに

 zur Hausenらによって1983年子宮頸部癌組織にHPV(human papillomavirus)16型ゲノムが高率に存在することが報告された1).疫学研究や分子レベルの基礎研究が進められ,HPVが子宮頸癌の原因ウイルスであることが明確となるなかで,HPV感染予防ワクチン開発も進められた.ヒトにおけるHPV-ウイルス様粒子抗原(HPV-virus like particle;HPV-VLP)による抗HPV抗体誘導の試みは,1991年Zhouら2)によるワクチニアウイルスを用いたHPV-16VLPの作製の成功により可能となった.現在,世界120か国以上でワクチン接種が実施されている.

ピア・エデュケーション(仲間教育)の試み

著者: 吉田朋美 ,   福田利夫

ページ範囲:P.1449 - P.1452

1.背景

 “ピア・エデュケーション(仲間教育)”という言葉は,わが国において,いまだ聞き慣れない言葉なのではないだろうか.実際,私も数年前まで触れることのなかった言葉であるし,現時点で,保健学系の学生に対して,この言葉を使っても認知度は低い.しかし実際に学生に対してこのピア・エデュケーション手法を用いた啓蒙を行うと,彼らに対して大きなインパクトを与えることがわかってきた.性感染症,癌,検診など,これらのキーワードを全く身近に感じていない若者を相手に話をするとき,聞く側の若者が心を閉じることなく開いたまま聞いており,心のどこかで共感していること,これが“啓蒙”を行う側の理念として,一番大事だと思われる.

 そもそもピア・エデュケーションの原点は,アリストテレスまでさかのぼるとする考えもあり,長い歴史をもっている.すでに欧米では,1980年代から90年代にかけて,若者の喫煙や薬物乱用に対してのピア・エデュケーションを用いたヘルスプロモーションが効果を示したという論文が多数出されている.また1991年には,HIV(human immunodeficiency virus)予防教育としてピア・エデュケーションの国際的な実情がWHOによって報告され,1993年には若者に対するHIV予防教育の評価を行うプロジェクトがマンチェスター大学内に立ち上げられた.

子宮頸癌検診受診率向上を目指して

著者: 室谷哲弥 ,   小屋松安子 ,   永田順子 ,   小田瑞恵 ,   大村峯夫

ページ範囲:P.1453 - P.1457

1.はじめに

 先進諸外国の子宮頸癌検診受診率はおおむね70~80%前後であるのに対して,わが国ではおよそ20数%と低率である.実際は自己検診を考え25~30%と推定される(表1).

 特に若年層受診率は顕著に低い.受診率が20%以下では死亡率減少効果は少ない.特に25~35歳の10年間の受診率向上が重要であり,今後,受診率を少なくとも50%以上に高める必要がある.受診率の向上は死亡率の激減につながることと考えられる.その他,受診間隔や回数など費用効率の問題,ヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus;HPV)検査を検診にどのような形で取り入れて行くか課題が残されている.

子宮がん検診とHPVに関する検討委員会の活動―「子宮頸がん検診とHPV Q&A集」を刊行して

著者: 藏本博行

ページ範囲:P.1458 - P.1463

1.はじめに

 日本細胞診断学推進協会は,細胞診専門医と細胞検査士を会員とする細胞診断の専門家からなる団体である.細胞診,ことに子宮頸部の細胞診を用いてなされる子宮がん検診を診断している専門集団であるとも言える.

 2007年当時,協会では子宮頸がん検診を取り巻く環境が激変期にあると判断された.

1) 子宮頸がん検診の対象年齢と受診間隔が20歳から,2年ごととなった.

2) 細胞診断の報告様式としてベセスダシステムが欧米で推奨され,わが国でもこれに準じた導入の動きがある.

3) 細胞診の精度向上のため,液状検体を基とした処理法(liquid-based cytology;LBC)がアメリカで多用されている.

4) 子宮頸癌の発癌にヒトパピローマウイルス(human papillomavirus;HPV)が関与している.

5) HPVワクチンが開発され,このワクチンで子宮頸癌を一次予防できる可能性がある.

 これらの新しい方法が次々とわが国に導入されるのは必至であろう.これまでのわれわれの業務は大きく様変わりするのか,あるいは頸部細胞診を用いた子宮頸がん検診は役目を終えてしまうのであろうか.われわれ細胞診断の専門家にとっては無視できない,気になることであった.

 そこで,これらの諸問題を検討して最適の知見と対策法を会員に啓発する目的で「子宮がん検診とヒトパピローマウイルス(HPV)に関する検討委員会」が発足した.

緊急連載/東日本大震災と検査【最終回】

静脈血栓塞栓症

著者: 榛沢和彦

ページ範囲:P.1464 - P.1469

はじめに

 災害医療について臨床検査技師,臨床放射線技師(両方合わせて検査技師と呼ばせていただく)の方達から,「何をすればよいのかわからない,自分たちだけでは何もできない」という声を聞くことがある.しかし検査技師という立場は医師と患者または看護師と患者の間,さらに看護師と医師との間をとりもつ(検査情報も含めて)重要な位置にあることを再認識していただきたい.それから言うまでもなく医療はチームで行うものであって,医師だけでは何もできない.看護師や検査技師とチームになって初めて可能になる.それは災害医療も同じである.非常事態こそ,こうした連携が重要になるし,医師は検査技師に期待していることを理解していただきたい.そして一度でよいから,震災直後でなくてもよいので,災害医療ボランティアを経験してもらいたい.そうすると色々と見えてくるものがあり,きっと「何をすればよいのかわからない」という声はなくなるに違いない.

 本稿は様々な医師,検査技師,看護師達と一緒に行ってきた災害医療活動の報告である.この中から何をすべきかを探ってもらえればと思う.リーダーシップは医師がもつべきという考えもあるかもしれない.しかし以下に述べる検診において検査技師がリーダーシップをとって行っていたものも少なくない.本稿ではまずこれまでの震災における深部静脈血栓症(deep venous thrombosis;DVT)検査結果などについて述べ,最後に東日本大震災のDVTについて述べる.

今月の表紙 代表的疾患のマクロ・ミクロ像 非腫瘍・11

特発性間質性肺炎のマクロ・ミクロ像

著者: 小松明男 ,   坂本穆彦

ページ範囲:P.1378 - P.1379

 肺の炎症には,肺胞腔にみられる肺胞性肺炎と肺胞壁にみられる間質性肺炎とがある.後者には特発性間質性肺炎,非特異性間質性肺炎,特異性器質化肺炎,急性間質性肺炎,膠原病に伴うものなどが含まれる.

 特発性間質性肺炎は多彩な組織像・増悪と寛解の繰り返しを特徴とする進行性非可逆性病変である.初発症状がよくわからない場合が多いため,推測が入ることは否めないが,一般的にはおそらく疾患が発生してから4~5年の経過で死の転帰を取ることが多いのではないかと考えられている1).また稀にであるが,急性増悪することもある2).また遺伝的に好発する傾向がみられる場合3),neurofibrosis, pulmonary veno-occlusive diseaseとの関係がある場合も報告されている4)

映画に学ぶ疾患・21

「ヒアアフター」―臨死体験と脳の変化

著者: 安東由喜雄

ページ範囲:P.1444 - P.1444

 映画「ヒアアフター」(クリント・イーストウッド監督)は冒頭の地震・津波のシーンが余りに衝撃的で,件の東日本大震災で被災した方々の心情を慮ってか,2月に封切られ,3月中旬,突然上映中止となった.しかし,この映画には伝えるべきメッセージが明確にあり,また語るべき映画だと思うので,この連載で紹介することにする.

 マリーはパリで暮らす美人テレビキャスターで,テレビ局の看板の報道番組のアンカーマンとして活躍している.そんな彼女は,恋人とバカンスを過ごすため,東南アジアの美しい海岸沿いの,ある町に来ていた.海沿いの商店街で買い物をしていた彼女は,突然地震に遭遇し,大きな津波に呑みこまれる.波の中で必死にもがくうちに彼女は仮死状態になるが,幸いにも救い出され,人工呼吸の後生還する.しかしその時から,生死をさまよったときに見た映像が頭を離れなくなる.帰国後,彼女の精神状態に異変が起こる.番組登板中にもその映像が突如出現するようになり,次第にエスカレートしていく.ついに番組の進行にまで支障をきたした彼女は,しばらく休暇を取ることにする.どうして自分がそうなってしまったのかわからず途方に暮れるマリーであったが,自分が臨死状態の中で見たものは一体何であったのかを知ろうと蠢く.

INFORMATION

The Asia Pacific Meeting of Vasculitis and ANCA Workshop―2012―アジア太平洋 血管炎・ANCA国際会議2012

ページ範囲:P.1457 - P.1457

日 時:2012年3月28日(水)夕方~3月31日(土)

場 所:東京コンファレンスセンター(品川)

千里ライフサイエンス国際シンポジウム―2012 Senri Life Science International Symposium on "Cutting-edge of Autophagy Study"

ページ範囲:P.1463 - P.1463

日 時:2012年1月20日(金) 9:30~17:10

場 所:千里ライフサイエンスセンタービル(大阪府)

千里ライフサイエンスセミナーC4―「ストレス応答の分子メカニズム」

ページ範囲:P.1483 - P.1483

日 時:2011年11月14日(月) 10:00~17:00

場 所:千里ライフサイエンスセンタービル(大阪府)

シリーズ-検査値異常と薬剤・19

―投与薬剤の臨床検査値への影響―抗炎症薬

著者: 片山善章 ,   澁谷雪子 ,   米田孝司

ページ範囲:P.1470 - P.1482

抗炎症薬

 抗炎症薬は非ステロイド系抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drug;NSAID)とステロイド系抗炎症薬(steroidal anti-inflammatory drugs,糖質コルチコイド)とがある.副腎皮質ステロイドホルモンと同様の抗炎症作用を示すが,ホルモン様の作用がなく,副腎皮質に対し影響しない薬物群を総称する.本稿では主なNSAIDおよびそれ以外の鎮痛,解熱薬を取り上げた.

学会だより 第12回日本検査血液学会学術集会

まずは末梢血を観よう!!

著者: 樋口美奈

ページ範囲:P.1484 - P.1484

 「血液学と臨床検査のハーモニー」というメインテーマのもと2011年7月17日(日)・18日(月)の2日間,第12回日本検査血液学会が倉敷市で開催された.参加人数は1,417人!! 学生も大勢参加しており活気のある学会であることがうかがえた.

 今回の学会では,「形態診断のためのケースカンファレンス」は4症例のバーチャルスライド画像をあらかじめWeb上で公開し,観察する方式であった.そこから推測する疾患名を4択の中から選び登録し,当日会場で集計結果が発表されることになっていた.もちろん会場でも終日実際の標本を自由に鏡顕することができ,10台ある顕微鏡は常に一杯であった.1枚のスライドからいかに沢山の情報を読み取るかが鍵とあって,熱心に鏡顕する人達で長蛇の列になり,延べ300人近い人が訪れる盛況ぶりだった.そして2日目に行われた解説では,日頃遭遇するであろう症例であることから,見逃してはいけないポイントに重点が置かれた.リンパ腫の症例解説後には,標本に怪しいと思われる細胞が1個でもあった場合どうするかに議論が及んだ.確定はできないがなんだか気になるといったことは時々ある.やはり日頃から臨床医といつでも情報交換できる環境を築いておくことが大切と結論づけられた.バーチャルスライドはしばらくWeb上で閲覧できるらしく,もう一度ゆっくり復習することができる.

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「臨床検査」増刊号のお知らせ

ページ範囲:P.1376 - P.1376

欧文目次

ページ範囲:P.1377 - P.1377

「検査と技術」増刊号のお知らせ

ページ範囲:P.1380 - P.1380

「検査と技術」11月号のお知らせ

ページ範囲:P.1424 - P.1424

次号予告

ページ範囲:P.1432 - P.1432

投稿規定

ページ範囲:P.1485 - P.1485

あとがき

著者: 片山善章

ページ範囲:P.1486 - P.1486

 今月の主題「子宮頸癌の予防と検査」を読み,ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus;HPV)ワクチンに関することが印象に残った.

 1984年に発行された大熊一夫氏の書籍「癌はここまでわかった―がんウイルスの正体を暴いた人々の記録(朝日新聞社)」のX章「子宮癌の犯人を求めて熾烈な捜索レース」の内容を一部紹介しながら子宮頸癌の歴史を振り返ってみたい.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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