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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査56巻2号

2012年02月発行

雑誌目次

今月の主題 生理活性脂質 巻頭言

生理活性脂質と臨床検査

著者: 矢冨裕

ページ範囲:P.105 - P.106

 脂質の重要な役割として,生体膜構成成分,エネルギー源,シグナル伝達の三つが挙げられることは教科書通りである.生体膜は水や水溶性分子を通しにくい脂質二重層からなり,細胞膜は細胞と外界との境界を形づくる.この境界ができたことにより細胞が誕生したわけであり,脂質は生命の起源といってよい.また,脂質は単位重量当たりの栄養価が高く,人類の歴史において大切なエネルギー源であったが,現代社会では,その過剰摂取によるメタボリックシンドロームが大きな問題となっている.そして,脂質はシグナル伝達においても重要な役割を果たすが,これが本特集の中心である.シグナル伝達には細胞間と細胞内の両側面があるが,本特集では前者,つまり,いわゆる生理活性脂質を取り上げる.生体内の脂質からは様々なシグナル伝達物質が派生し,ペプチド性メディエーターなどとともに,生体における情報伝達に関与する.これらの作用は細胞表面上の特異的受容体を介して,多彩かつ厳密に制御された細胞応答を惹起するが,本特集においても,その最新知見が記述されている.なお,ステロイドホルモンも生体膜脂質であるコレステロールから作られ,やはり生理活性脂質といえるが,本特集では取り上げない.

 生理活性脂質としては,アラキドン酸に由来するプロスタグランジン,ロイコトリエンなどのエイコサノイド性メディエーターが代表的であるが,最近では,スフィンゴシン-1-リン酸,リゾホスファチジン酸などのリゾリン脂質性メディエーターが急速に注目されだしてきている.これらの生理活性脂質の重要性は,そのそう薬への応用を見れば一目瞭然である.シクロオキシゲナーゼのアセチル化による阻害でプロスタグランジンの産生を抑制するアスピリンは,最も高頻度に使用されている抗血小板薬,抗炎症薬である.一方,スフィンゴシン-1-リン酸受容体作動薬であるフィンゴリモド(FTY720)は抗免疫作用を有し,神経難病の多発性硬化症の治療薬として臨床応用されだした.

総論

生理活性脂質とは

著者: 木原章雄 ,   五十嵐靖之

ページ範囲:P.107 - P.116

ターゲット蛋白質を介して直にシグナルを伝達する活性をもつ脂質を生理活性脂質と呼ぶ.生体膜の脂質はグリセロリン脂質,スフィンゴ脂質,ステロールに大別されるが,これらすべてから生理活性脂質は産生しうる.生理活性脂質は器官形成,細胞増殖,細胞運動制御,免疫,血圧調節,炎症,消化管活動を始めとする多様な生理機能を有し,その産生異常やシグナル不全は様々な病態を引き起こす.また,これらの作用を利用した薬も多数開発されている.本稿では,これらの生理活性脂質のうち,グリセロリン脂質,脂肪酸,スフィンゴ脂質由来生理活性脂質について生理・病態機能を概説する.

Gタンパク質共役型受容体と生理活性脂質

著者: 横溝岳彦

ページ範囲:P.117 - P.124

生体内で微量にしか存在せず,半減期も短い生理活性脂質の生理作用は,遺伝子工学の手法を駆使した受容体や産生酵素の研究によってよく理解されるようになってきた.生理活性脂質は細胞膜受容体・核内受容体のいずれかに結合してその生理作用を発揮するが,これまで核内受容体を介してのみ作用すると考えられてきたステロイド由来のいくつかの脂質に対しても細胞膜受容体が同定された.生理活性脂質に対する細胞膜受容体の多くはGタンパク質共役型受容体であり,活性化に伴う構造変化がX線結晶構造解析によって明らかにされた.新規の生理活性脂質・脂溶性リガンドの同定には高感度質量分析機が有効であり,今後の臨床検査への応用が期待される.

第二世代の生理活性脂質リゾリン脂質

著者: 板井恵理子 ,   近藤朋恵 ,   首藤啓明 ,   橋本崇史 ,   青木淳賢

ページ範囲:P.125 - P.136

脂質は生体膜の成分として重要なだけでなく,ある種の状況において膜脂質より産生され,生理活性脂質として機能する.このような脂質は“脂質メディエーター”として知られている.ステロイドホルモンやアラキドン酸代謝物であるエイコサノイドに代表されるような第1世代の脂質メディエーターに加え,近年,単なる脂質代謝中間代謝物としてしか考えられていなかったリゾリン脂質が,第2世代の脂質メディエーターとして注目を浴びている.ゲノムに直接コードされていない脂質メディエーターは,どのように産生され,どのような機能を果たすのだろうか.本稿では,代表的なリゾリン脂質であるリゾホスファチジン酸,スフィンゴシン-1-リン酸,リゾホスファチジルセリンの生理作用を,その産生酵素や受容体と絡めて,最新のトピックスとともに紹介する.

生理活性脂質測定の臨床検査医学的応用

著者: 矢冨裕

ページ範囲:P.137 - P.143

生理活性脂質の作用や(病態)生理学的役割が次々と明らかとなっているが,ヒト生体において,これらの脂質がどのような挙動を示すかを明らかにする臨床検査医学的研究は決して進んでいない.生理活性脂質は扱いが難しく,定量法も標準化されておらず,日常の臨床目的で測定されることはほとんどない.また,保険収載されている項目もない.その中で,アスピリンレジスタンスを評価するための血清トロンボキサン(Tx)B2と,リゾリン脂質性メディエーターであるリゾホスファチジン酸(LPA)を産生するオートタキシン(ATX)に関しては,その測定の今後の臨床検査医学的応用が期待される.

各論

エイコサノイド

著者: 結城幸一 ,   柏木仁 ,   小島史章 ,   牛首文隆

ページ範囲:P.145 - P.150

プロスタノイド,ロイコトリエン,リポキシンを含むエイコサノイドは,ω-6必須脂肪酸の酸化によって生成される生理活性脂質である.内因性に産生されたエイコサノイドは,炎症や組織の恒常性維持において中心的な役割を果たしている.エイコサノイドは,急性炎症のメディエーターとして広く知られていたが,現在,炎症の初期過程から収束過程までの全般にわたり様々な作用を発揮していることが明らかとなっている.本稿では,炎症過程におけるエイコサノイドの役割について概説する.

血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ

著者: 佐藤敬

ページ範囲:P.151 - P.156

血小板活性化因子(PAF)を分解するPAFアセチルヒドロラーゼ(PAF-AH)は血漿リポ蛋白質と複合体を形成しており,脂質代謝異常,動脈硬化性疾患や炎症性疾患において高値となる.これについては様々な病態の結果であると考えられてきたが,その後,PAF-AHを疾患の危険因子とみなし,その阻害剤の第III相臨床試験も行われている.また,アジア人にみられるPAF-AH欠損症は,多くの報告では動脈硬化性疾患の遺伝的危険因子であることが示唆されているが,一部には全く反対の報告もみられ,血漿PAF-AHの臨床的意義は今後の研究成果に待つところが多いのが現状と言える.

スフィンゴシン-1-リン酸

著者: 岡島史和

ページ範囲:P.157 - P.163

高密度リポ蛋白質(HDL)は末梢組織の余分なコレステロールを運び出す働き,いわゆるコレステロール逆輸送をすることから抗動脈硬化性の血漿蛋白質であると考えられている.最近,このようなコレステロール代謝と直接関連しないHDL作用も注目されている.HDL中には強力な生理活性を発揮するスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)が多量に含まれており,血管内皮細胞や血管平滑筋細胞におけるHDLの多彩な作用はS1Pによって仲介されていることが明らかにされてきた.したがって,血中S1P濃度変化は心血管機能調節の重要な要因と考えられる.本稿では,血中S1P,HDL中S1Pと心筋梗塞,虚血性心疾患などの冠動脈疾患との関連を調べた疫学コホート研究の現状についても紹介した.

ω3系多価不飽和脂肪酸由来の生理活性脂質と抗炎症作用

著者: 有田誠

ページ範囲:P.165 - P.170

エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)など,ω3系脂肪酸を栄養として摂取することは,炎症が基盤病態と考えられる様々なヒト疾患に対して有効であると考えられている.また,ω3系脂肪酸合成酵素のトランスジェニックマウスが炎症や組織傷害モデルにおいて強い抵抗性を示すことから,ω3系脂肪酸の抗炎症作用は栄養学のみならず遺伝学的にも示されている.その作用機構については,従来から言われているアラキドン酸カスケードに対する拮抗作用に加え,最近ω3系脂肪酸由来の活性代謝物が生成することが報告され,レゾルビンやプロテクチンと呼ばれている.これらの活性代謝物は,ω3系脂肪酸の抗炎症作用に寄与している可能性がある.

内因性カンナビノイドの生理と病態

著者: 丸山征郎

ページ範囲:P.171 - P.176

内因性カンナビノイド,すなわちアナンダマイド(AEA)と2-AGは双方とも大麻の受容体に対する内因性リガンドで,エイコサノイドに属する脂質メディエーターである.AEAは主として神経系(中枢・末梢神経系),マクロファージから合成される.一方,2-AGも諸細胞から合成されるが,特にエンドトキシンで刺激された血小板から合成される.双方とも各種細胞に発現しているCB1/CB2に働き,多彩な細胞生理活性を誘導する.エンドトキシン刺激で放出された大量の内因性カンナビノイドは意識障害や低血圧を引き起こし,エンドトキシンショックの病態を形成する.これらの内因性カンナビノイドはポリミキシンBに結合し,中和される.これがポリミキシンB固相化カラムによる血液浄化療法の作用機序の1つである.

エイコサノイドの高感度一斉定量法

著者: 北芳博 ,   清水孝雄

ページ範囲:P.177 - P.187

多価不飽和脂肪酸の一種であるアラキドン酸の生体内代謝産物であるエイコサノイドには,プロスタグランジンやロイコトリエンなど,病態や生理において非常に重要な意義をもつ生理活性脂質が含まれる.筆者らは,液体クロマトグラフィ質量分析計システムを用いて脂質メディエーター群を高感度に一斉定量する手法を開発してきた.本稿では,脂質メディエーター一斉定量法について概説し,疾患メカニズム解析における新たな手法としての定量的脂質メディエータープロファイリングについて実例により紹介する.

微量脂質成分を測定するための質量分析技術

著者: 田口良

ページ範囲:P.189 - P.197

臨床研究において,質量分析法は脂質代謝物を分析するための非常に重要かつ実用的な手法のひとつになってきている.しかし,ポリホスホイノシタイドや酸化リン脂質のような生理活性脂質代謝物は,通常,臨床サンプル中には非常に微量しか存在しない.本稿ではこれらの微量脂質代謝物を測定するための戦略と,これらの成分を有意なレベルで回収可能な実際的な手法について解説する.

話題

循環器系および免疫系を制御するスフィンゴシン-1-リン酸

著者: 川原敦雄

ページ範囲:P.198 - P.202

1.はじめに

 脂質メディエーターは,増殖因子やサイトカインなどの生理活性蛋白質と異なり,直接遺伝子にコードされていない1).つまり,脂質メディエーターの局在は,生合成や分解などの代謝経路や輸送体による細胞外への放出経路により時空間の制御を受ける.さらに,脂質メディエーターは,標的細胞に発現する特異的な受容体(複数のサブタイプを有する場合が多い)や共役するシグナル伝達系の組合わせにより,多様な器官形成や多彩な生理機能の制御に貢献している.

 本稿では,スフィンゴシン-1-リン酸(sphingosine-1-phosphate;S1P)の循環器系や免疫系における役割に焦点を絞り最近の知見を紹介する.

脂質メディエーターとアレルギー疾患

著者: 本田哲也 ,   椛島健治

ページ範囲:P.203 - P.208

1.はじめに

 生体が刺激を受けると,細胞膜リン脂質よりアラキドン酸が放出され,シクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase;COX)と各合成酵素によりプロスタノイドと呼ばれるプロスタグランジン(prostaglandin;PG)D2,PGE2,PGF2α,PGI2やトロンボキサン(thromboxane;TX)A2に変換される.また,アラキドン酸は,5-リポキシゲナーゼ(5-lipoxygenase;5-LO),ロイコトリエン(leukotriene;LT)A4 hydrolase,LTC4合成酵素などによりLTB4やシステニル(cysteinyl;cys)LTであるLTC4,LTD4,LTE4にも変換される.さらに,スフィンゴシン-1-リン酸(sphingosine-1-phosphate;S1P)やリポキシン,血小板活性化因子なども脂質メディエーターの1つである.

 これらは一般に,細胞表面上に発現しているそれぞれ特異的なG蛋白結合型受容体を介して,その生理的役割を発揮する(表1).脂質メディエーターの受容体は様々な免疫担当細胞に発現しており,それらの免疫系への役割が様々な薬理学的研究から示唆されていた.しかし脂質メディエーターは一般に生理条件下での半減期が短く,生理的機能解析が非常に困難であったため,その役割の詳細は不明であった.近年これらの合成酵素や受容体の遺伝子改変マウスや選択的アゴニスト,アンタゴニストの開発により,免疫・アレルギーにおける生理的病態的役割が明らかになりつつある(表2)1,2)

 以下,本稿では,プロスタノイドの役割を中心に,喘息,アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD,note参照)などのアレルギー疾患における脂質メディエーターの役割の最新の知見を紹介する.

リゾリン脂質と肝臓疾患

著者: 池田均

ページ範囲:P.209 - P.212

1.はじめに

 近年,リゾリン脂質メディエーターであるリゾホスファチジン酸(lysophosphatidic acid;LPA)とスフィンゴシン-1-リン酸(sphingosine-1-phosphate;S1P)の多彩な生理活性と生体内における役割の解明は飛躍的に進んだ1,2).LPA,S1Pについて特徴的である点は,他の生体内メディエーターに比して血中濃度が高く,in vitroの細胞系で作用を及ぼす濃度に非常に近いということである.すなわち,メディエーターとして多彩な作用を有し,血中でも作用を及ぼす可能性が高いレベルで豊富に存在するため,受容体発現量の変化により,その作用のオンオフが調節されている可能性も推定され,実際に受容体アゴニスト,アンタゴニストが疾患治療に応用されつつある.

 いずれにせよ,LPA,S1Pともに様々な疾患への関与が報告されてきており,本稿では,特に肝臓疾患における役割についての報告を概観する.

映画に学ぶ疾患・24

「海洋天堂」―中国の肝炎―

著者: 安東由喜雄

ページ範囲:P.144 - P.144

 母の愛は感情が前面に現れしばしば情緒的であるが,父の愛は現実的で理詰である.

 この差は,母子は,父子にはないミトコンドリア遺伝子で繋がっていることや,性ホルモンの違いが思考,行動に与える影響に加え,人類が長らく培ってきた家族という単位の中でのしっかりした役割分担が遺伝子の間すきに刷り込まれていることによるのかもしれない.

あいまにカプチーノ

トライアスロンに挑戦

著者: 種村正

ページ範囲:P.164 - P.164

 LSD(long slow distance)を続けて1年余り,いよいよトライアスロンに向けてバイクを手に入れることにした.かみさんに相談したところ,安価なものを買ってすぐに止めてしまうより,それなりのものを買って続けられるようにと25万円もするチタンフレームのバイクを買ってくれた.バイク用のシューズ,ヘルメット,空気入れ,お猿さんパンツ(バイクパンツ),ウェア,手袋,サングラス,それからウェットスーツなども含めると,総額は40万円ほどになった.嬉しかったが,これで中途半端には止められなくなった.

 トライアスロンと聞くとスイム3.8km・バイク180km・ラン42.195kmのアイアンマンレースを思い浮かべる人が多いと思うが,実はスイム1.5km・バイク40km・ラン10kmが最も一般的な距離である.2000年のシドニーオリンピックで正式種目として採用されたことで“オリンピック・ディスタンス”と呼ばれている.他にもミニ22.6km,スプリント25.75km,ミドル・ハーフ113km~,ロング180km~といった距離があるが,ミドル以上は地形に合わせた距離になることが多いので,若干バイクの距離が異なってくる.

INFORMATION

第26回(平成23年度)臨床検査精度管理奨励会研究報告会

ページ範囲:P.170 - P.170

日 時:2012年2月4日(土) 14:00~17:00

場 所:東京都・日水製薬株式会社 本社ビル3F会議室

千里ライフサイエンスセミナー「がんの浸潤・転移と微小環境」

ページ範囲:P.226 - P.226

日 時:2012年2月24日(金) 10:00~17:00

場 所:大阪府・千里ライフサイエンスセンター5F

    ライフホール

シリーズ-標準化の国際動向,日本の動き・2

CLSIの動向

著者: 濱﨑直孝

ページ範囲:P.213 - P.215

1.はじめに

 IFCCに続いては,米国における臨床検査の標準化と質的改善を目指して活動している米国臨床検査標準協議会(Clinical and Laboratory Standards Institute;CLSI)を紹介する.CLSIは,1968年にNCCLS(National Committee for Clinical Laboratory Standards)が非営利団体(Nonprofit Organization)として設立され,2005年に名称をCLSIに変更し今日に至っている.米国でのNCCLS設立を契機として,ヨーロッパ各国で同様の委員会が設立され,それらを統合する共同体としてヨーロッパ臨床検査標準協議会(European Committee for Clinical Laboratory Standards;ECCLS)ができ,このような動きは日本などアジアの国にも波及し,日本では,1985年に日本臨床検査標準協議会(Japanese Committee for Clinical Laboratory Standards;JCCLS)がそう設されている.

 本シリーズ第一回で紹介した国際臨床化学連合(International Federation of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine;IFCC)の設立は1952年であり,NCCLSはそれから約15年遅れての設立であるが,IFCCとNCCLS(CLSI)とが世界の臨床検査関係の標準化に果たしている役割は大きい.

検査の花道・2

夢の途中

著者: 前田ゆかり

ページ範囲:P.216 - P.217

はじめに

 私は1960年代生まれの薩摩おごじょ,大学3年の息子を筆頭に大学1年,小学6年の息子が3人もいる普通のおばさんです.身長150cmほどの私ですが,息子たちは全員筋肉隆々のラガーマンです.主人も細胞検査士で,家族とラジオをこよなく愛してやまない人です.

 私の検査技師人生は福岡の大学卒業後,地元鹿児島の保健センターに就職し,1年後細胞検査士として働き始めたところからスタートします.

シリーズ-検査値異常と薬剤・22

―投与薬剤の臨床検査値への影響―消化器系作用薬Ⅱ

著者: 片山善章 ,   澁谷雪子 ,   米田孝司

ページ範囲:P.218 - P.223

1.アモキシシリン水和物

 白色から淡黄白色の結晶または結晶性の粉末である.水またはメタノールに溶けにくく,エタノール(95)に極めて溶けにくい.構造式は図1に示した.

 主な代謝物は大部分が未変化体で排泄される.

 臨床検査値への影響および副作用は表1に示した.

学会だより 日本臨床検査自動化学会第43回大会

第43回日本臨床検査自動化学会に参加して

著者: 村上正巳

ページ範囲:P.224 - P.224

 日本臨床検査自動化学会第43回大会は,「臨床検査の未来~安心・安全・評価に支えられた先進性の追求」をメインテーマとして,矢冨裕大会長(東京大学大学院医学系研究科臨床病態検査医学)のもと,パシフィコ横浜の会議センターと展示ホールにて10月6日(木)~8日(土)に開催されました.6日には,例会・大会プログラム委員会,理事会,評議員会,遺伝子・プロテオミクス技術委員会,拡大編集委員会,自動化学会・振興会合同懇親会,7日には,総会,茂手木研究助成金研究成果報告,平成23年度第18回論文賞受賞講演,科学技術委員会,POC推進委員会,血液検査機器技術委員会が開催されました.

 特別講演は,岡野光夫教授(東京女子医科大学先端生命医科学研究所)による「細胞シート再生治療を支援する自動培養三次元化システム」と題して,細胞シートによる新しい再生治療の可能性について講演いただきました.4つのシンポジウムのテーマは,「今,求められる安全確実な採血」,「個別薬物療法を支える臨床検査」,「肝臓病における臨床検査の最前線」,「自動血球計数器の可能性を追求する」であり,それぞれ臨床検査において重要な課題について活発な討論が行われました.

日本臨床検査自動化学会第43回大会に参加して

著者: 南木融

ページ範囲:P.225 - P.225

 日本臨床検査自動化学会第43回大会は,矢冨裕先生(東京大学大学院医学系研究科臨床病態検査医学)が大会長となられ,「臨床検査の未来~安心・安全・評価に支えられた先進性の追求」をメインテーマとして2011年10月6日(木)~8日(土)の3日間,パシフィコ横浜において開催されました.開催前日までは寒い日が続いていたので多少厚着の服装で来ましたが,学会が開催された3日間はとてもポカポカ温かく快晴に恵まれました.3月11日の大震災から7か月がたちましたが,まだまだ大きな影響を受けている施設も数多くあると聞いております.このようななか300題を超える一般演題のエントリーがあり,参加者も2,000人を超え,展示会への来場者を含めると5,224人にのぼり,盛大に学会が行われました.矢冨大会長をはじめ,学会の運営に携わった方々にはさぞかし大変なご苦労があったのではないかと,改めて感じました.

 シンポジウムでは,「今,求められる安全確実な採血」にとても興味があったので聴講しました.神経の解剖学的な観点から,採血時の神経損傷の可能性を低減するための血管の選択・穿刺法・正中神経を簡便に推測する手技や,超音波プローブを用いた血管・神経の可視化による採血など最新の情報や,採血の不備に起因する異常値についての対処法など様々な情報を得ることができました.採血は臨床検査技師の誰もが行う日常業務の1つですが,神経損傷などリスクの大きい行為であり,誰もがより確実により安全に採血を行うには,解剖学的知識や検査学的知識が必要であることを再認識しました.そして会場は満員で,立って聞いている方も多く,皆とても真剣に聞いているという印象を受けました.

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「臨床検査」増刊号のお知らせ

ページ範囲:P.102 - P.102

欧文目次

ページ範囲:P.103 - P.103

「検査と技術」増刊号のお知らせ

ページ範囲:P.104 - P.104

「検査と技術」2月号のお知らせ

ページ範囲:P.150 - P.150

書評 病態のしくみがわかる 免疫学

著者: 佐藤譲

ページ範囲:P.188 - P.188

 免疫学の教科書を久しぶりに手にして,まず手ごろな大きさと重さに親しみを感じた.関修司先生と安保徹先生が編集された『病態のしくみがわかる 免疫学』である.

 目次に目を通し,ページをパラパラとめくると30余年前の世界が鮮やかによみがえってきた.今春亡くなられた恩師熊谷勝男先生(東北大学名誉教授)の研究室である.当時,熊谷先生(東北大学歯学部微生物学講座教授)の元には学内外から免疫学と熊谷先生の洒洒落落で明るいお人柄に惹かれて,多くの若手研究者が集まり熱気にあふれていた.後年その中から10数名の教授が誕生した.安保先生は熊谷教室のそう生期からのメンバーである.安保先生がアメリカ留学から帰国後,関先生も加わった.毎晩,酒を片手にNKTや胸腺外分化Tリンパ球をさかなにした熱い議論が夜半まで続いた.時に大発見を祝い,時に落胆したシーンが思い出される.安保先生と大学の同期の私は,当時,自己免疫性糖尿病(1型糖尿病)モデルのNODマウスの研究のために内科学教室から熊谷教室に通っていた.安保・関グループが連発する大発見の祝杯を何度楽しませてもらったことか.

次号予告

ページ範囲:P.202 - P.202

バックナンバー一覧

ページ範囲:P.226 - P.226

投稿規定

ページ範囲:P.227 - P.227

あとがき

著者: 山内一由

ページ範囲:P.228 - P.228

 昨年まで,姉妹紙「検査と技術」の編集委員を務めさせていただいておりました筑波大学の山内です.本年から「臨床検査」を担当させていただくことになりました.はなはだ微力ではございますが,読者の皆様が求めるタイムリーな企画を考え,55年の歴史を誇る本誌の発展に寄与できればと存じております.どうかよろしくお願い申し上げます.

 さて,今月号の主題は「生理活性脂質」です.ポストゲノム研究の進展により,生命現象のひとつひとつが,複雑で巧妙な分子ネットワークの表現型であることが詳らかになってきました.生理活性脂質も多彩な生命応答調節機能を担う重要な生体成分であり,ポストゲノム研究のターゲットとなっています.本号の総論をご執筆いただいた先生方の業績や,総論の中で引用されている多くの論文の著者が日本人であることからもおわかりいただけるように,生理活性脂質研究における日本人研究者の貢献は極めて多大です.日本人研究者の先見性と研究能力の高さゆえの成果と言っても過言ではありません.本研究領域でご活躍されている研究者の方々に敬意を表します.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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