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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査57巻13号

2013年12月発行

雑誌目次

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理

著者: 佐藤尚武

ページ範囲:P.1547 - P.1547

 血液学検査を専門する立場でいうと,血液細胞形態検査は,検査担当者の主観的な判断の比重が大きいため,精度管理が難しい分野です.それもあって,同じように検査担当者の主観的な判断が重要な役割を果たす病理組織・細胞診検査については,その精度管理に大変興味がありました.そこで今回の特集を組んでみました.

 本特集を通じて,日本病理学会や日本臨床細胞学会,日本臨床衛生検査技師会などの団体が,この困難な課題に精力的に取り組んでいる現状をご理解いただけることと思います.門外漢の身ではありますが,この分野における精度管理への取り組みが,さらに発展することを祈念する次第です.

病理組織診断の精度管理

著者: 和田了

ページ範囲:P.1548 - P.1553

■病理検査・病理組織診断は熟練した病理専門医が臨床検査技師の協力をもって行う特殊業務であるが,適切な臨床情報・検体情報を得ることも重要である.

■病理組織診断の精度管理の原点は,良好な病理標本の作製と診断業務を担う病理専門医自身の継続的・向上的研鑽といえる.

■わが国で慢性的不足状態にある病理専門医を実質的に支える精度管理的手法・部門が病理施設内に必須であるとともに,病理施設外の第三者的・外部的サポート部門の整備が急務である.

細胞診断の精度管理

著者: 土屋眞一 ,   山口倫 ,   前田一郎 ,   越川卓 ,   川本雅司 ,   大橋隆治 ,   増田しのぶ

ページ範囲:P.1554 - P.1559

■精度管理には,業務量やコントロールサーベイなど,学会が定めた細胞診の内部・外部精度管理と,細胞診断そのものに関係する精度管理の2つがある.

■医療に関連する裁判ではガイドライン遵守は当然のことであるが,真の診断精度を国民はじめ司法側に明らかにし,診断にはおのずから限界が存在するという事実を医療側にも認識させる必要がある.

■鑑定人の陳述は裁判の判決を左右する重要な要素であるため,病理診断が関与する係争には“初期状態”での鑑定方式採用が望まれる.

■新しい試みである「悪性の危険度(悪性が含まれる危険性)」を各判定区分から知ることは患者・臨床医にとって病状の把握が容易となり,さらに法曹界・国民にとっても従来の感度,特異度,誤陽性・誤陰性率などの診断精度結果とともに新しい精度管理の指標となるであろう.

日本臨床衛生検査技師会における外部精度管理の現状と課題

著者: 古屋周一郎

ページ範囲:P.1561 - P.1565

■日臨技による外部精度管理調査は,特殊染色を中心とした技術サーベイとフォトサーベイをバランスよく実施していた.

■2011年に技術サーベイが廃止されフォトサーベイのみとなったが,技術サーベイの必要性と問題点を検証する必要がある.

■技術サーベイにおいて,適正なヒト試料調達とサーベイヤーの質を担保することが重要である.

東京都衛生検査所における外部精度管理の現状と課題

著者: 新井冨生 ,   落合和彦 ,   三栗谷久敏 ,   大石向江 ,   佐々木由紀子 ,   草野友子 ,   小林千種 ,   佐藤かな子 ,   住友眞佐美 ,   高木康

ページ範囲:P.1567 - P.1574

■東京都は1982年から東京都衛生検査所精度管理検討専門委員会を設置し,都内に登録されている衛生検査所の精度管理に取り組んでいる.

■都内に登録されている衛生検査所で,病理組織検査は年間約94万件(約70%が消化管の検体),細胞診は年間約257万件(約90%は子宮頸部,子宮内膜,喀痰の検体)が取り扱われている.検体数はここ数年増加傾向にある.

■東京都の精度管理事業の成果は,検体の取り扱い,標本作製,報告様式などで改善がみられるとともに,検査所の労働環境の改善,ダブルチェック体制の構築の推進,事務処理のデジタル化,人員充足率の改善などの形で現れている.

■病理組織検査における課題は,精度管理内容がアンケート調査に偏り,実際の標本の精度管理に至っていない点である.さらに,新しく登場した分子標的薬の適応を決める免疫染色検査の精度管理にも対応していないことなどが挙げられる.

■細胞診に関しては,細胞診専門医と細胞検査士の人的不足は年々緩和されているが,パートによる夜間業務に依存している施設も見受けられ,細胞検査士と専門医の十分なコミュニケーションがとれる体制作りが課題である.

今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

著者: 佐藤尚武

ページ範囲:P.1575 - P.1575

 悪性リンパ腫では,骨髄病変の有無がしばしば予後に大きく影響します.そのため,悪性リンパ腫の骨髄病変の有無をチェックすることを目的として,骨髄像検査が頻繁に依頼されます.細胞異型度の強い場合や,骨髄浸潤の程度が著しく,リンパ球系腫瘍細胞の比率が著増している場合,悪性リンパ腫の骨髄浸潤を診断することは比較的容易です.しかしそうでない場合,悪性リンパ腫の骨髄病変の有無を判定することは,かなり困難な作業です.

 そこで本特集を企画し,各種悪性リンパ腫の骨髄病変を診断するためのポイントを解説していただきました.企画者の期待を上回る内容であり,日常検査の現場においても,本特集は大いに役立つものと期待しております.

濾胞性リンパ腫

著者: 坂場幸治 ,   島﨑英幸 ,   中西邦昭 ,   玉井誠一

ページ範囲:P.1576 - P.1581

■濾胞性リンパ腫細胞は小型~中型でN/C比大,核に切れ込みなどを認める.

■腫瘍細胞は形態学的に正常リンパ球とオーバーラップしていることが多い.

■腫瘍細胞の骨髄浸潤の判定には可能な限りのデータを参照する.

マントル細胞リンパ腫

著者: 久保田浩

ページ範囲:P.1583 - P.1587

■マントル細胞リンパ腫(MCL)はリンパ濾胞のマントル層を構成するB細胞の腫瘍と考えられている.

■骨髄浸潤は60%の症例でみられる.

■骨髄浸潤したMCL細胞はN/C比が大きく,核は不整で浅い切れ込みや彎入がみられ,その形態は多様である.

■MCL細胞の免疫学的表現型はCD5+CD10-CD19+CD23-cyclin D1+である.

節外性濾胞辺縁帯粘膜関連リンパ組織型リンパ腫(MALTリンパ腫)

著者: 増田亜希子 ,   常名政弘

ページ範囲:P.1589 - P.1594

■節外性濾胞辺縁帯粘膜関連リンパ組織型リンパ腫(MALTリンパ腫)は,粘膜関連リンパ組織(MALT)に原発する低悪性度B細胞リンパ腫である.

■腫瘍細胞は小型~中型の成熟リンパ球様であり,しばしば形質細胞への分化を示す.骨髄浸潤の頻度は約20%とあまり高くはない.

■細胞表面マーカー検査では,CD5-,CD10-,CD19+,CD20+であり,軽鎖制限が認められる.

■t(11;18)(q21;q21)/API2-MALT1は,MALTリンパ腫に特徴的な染色体異常である.

■腫瘍細胞と正常小型リンパ球との鑑別が困難である場合も多く,骨髄浸潤の有無については,細胞表面マーカー検査やFISH,染色体分析など,さまざまな検査所見を総合して判断する必要がある.

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫

著者: 池本敏行

ページ範囲:P.1595 - P.1599

■MG染色標本でのびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞鑑別のポイントは,細胞サイズに加え,核形および核クロマチン構造,細胞質の染色性の観察にある.

■骨髄生検による浸潤検索には,組織診断に加えて免疫組織染色が有効であり,浸潤パターンも観察できる.

■表面免疫グロブリン軽鎖の偏りの検索においては,リンパ組織の表面マーカーや免疫組織染色結果,さらに細胞形態を加味して解析することで検出精度が高まる.

■FISH法でB細胞性リンパ腫細胞の骨髄浸潤を検索するには,IgH遺伝子のスプリットシグナルの検出が有効である.

Burkittリンパ腫

著者: 日下拓 ,   田中由美子 ,   宮地勇人

ページ範囲:P.1600 - P.1606

■Burkittリンパ腫(BL)は染色体8q24に位置するMYCと免疫グロブリン(IgHまたはIgL)遺伝子との相互転座に起因する成熟B細胞リンパ腫で,臨床的特徴から風土病型/地域病型,散発型,免疫不全型の3型に分類される.

■BLの腫瘍細胞の特徴はサイズが中等大で均一性があり,核は円形~楕円形でやや大きな核小体を有することである.核クロマチンは微細顆粒状で均一である.細胞質は好塩基性で特徴的な抜き打ち状空胞が目立ち,核分裂像も散見される.

■BLの診断基準は典型的な形態・細胞表面マーカー・遺伝子異常が全てそろったものである.

■末梢血や骨髄に出現するBL細胞と鑑別を要する疾患には,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL),DLBCLとBLの中間型特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫(intermediate DLBCL/BL),B細胞性急性リンパ性白血病,Ewing肉腫などが挙げられる.

リンパ形質細胞性リンパ腫

著者: 常名政弘 ,   増田亜希子

ページ範囲:P.1607 - P.1610

■リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)は,低悪性度のB細胞腫瘍で,臨床経過は比較的緩やかである.典型例では単クローン性IgM血症を伴うWaldenströmマクログロブリン血症があり,一部M蛋白を伴わないものもある.

■細胞の特徴は,小~中型の成熟リンパ球であり,時に形質細胞に分化を示すこともあるが,その他の低悪性度B細胞リンパ腫との細胞形態での鑑別は困難である.

■一方,日常臨床検査,特に血算測定時において,寒冷凝集素症(CAD)にしばしば遭遇する.基礎疾患には,悪性リンパ腫,感染症,自己免疫性疾患などがあり,特にLPLが合併することが多いとされる.

■日常臨床検査において,血算測定時に寒冷凝集を認め,さらにIgM-κ型M蛋白がみられた場合には,その原因として悪性リンパ腫,なかでもLPLを念頭に置いて検査を行う必要があると考える.

血管内大細胞型B細胞リンパ腫

著者: 小笠原洋治

ページ範囲:P.1612 - P.1617

■腫瘍細胞が毛細血管内腔で腫瘍血栓を形成し,脳・皮膚・骨髄・肝臓・脾臓・肺などに臓器障害をきたすまれなリンパ腫である.

■ランダム皮膚生検により診断がつく場合が多く,特にアジア型の場合には骨髄検査が診断の手掛かりになる.

■腫瘍細胞は成熟B細胞関連抗原を発現した大型の芽球様細胞であり,疾患特有の表面抗原や染色体異常は明らかになっていないが,その集簇性や血球貪食像は診断に役立つ重要な所見である.

節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型

著者: 中村文彦

ページ範囲:P.1618 - P.1622

■骨髄病変の有無は選択する治療方針に大きく影響する.

■核クロマチン構造,核小体,細胞質の好塩基性の程度など,症例ごとの特徴を捉え,骨髄病変の有無を検討する.

■ISH法によるEBER陽性細胞の有無,フローサイトメトリー(FCM)などの結果を参考に慎重に判定する必要がある.

Sézary症候群/菌状息肉症

著者: 河野誠司

ページ範囲:P.1623 - P.1627

■新WHO分類によりSézary症候群(SS)と菌状息肉症(MF)の新診断基準が提唱された.

■MF/SSだけのISCL/EORTC病期分類(2007年)が提唱されているが,骨髄浸潤の有無と予後との関連は今後の検討課題である.

■SSでは,CD7などの汎T細胞抗原が欠失し,CD26陰性やCD27陽性の形質をもつ腫瘍細胞が末梢血・皮膚・リンパ節・骨髄で増加する.

他に分類されない末梢性T細胞性リンパ腫

著者: 松下弘道 ,   田中由美子

ページ範囲:P.1628 - P.1632

■他に分類されない末梢性T細胞性リンパ腫(PTCL-NOS)は,悪性リンパ腫全体の約7%に相当する比較的頻度の高い病型である.

■本病型はヘテロな疾患の集合体であるため,腫瘍細胞の形態学的特徴が症例ごとに異なる.共通した特徴としては,細胞質は好塩基性で,核クロマチンはやや繊細であり,核形態は不整形である.

■本病型では骨髄への浸潤頻度が必ずしも高くないことから,末梢血や原発巣における腫瘍細胞の形態を把握してから骨髄における腫瘍細胞の同定を行うことが重要である.

血管免疫芽球性T細胞リンパ腫

著者: 稲葉亨 ,   西村博志

ページ範囲:P.1634 - P.1637

■血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)は,CD3+,CD4+,CD10+,CXCL13+,PD-1+の表現型を示す濾胞ヘルパーT細胞(TFH)に由来する腫瘍である.

■AITLは病理組織学的にリンパ球,形質細胞,免疫芽球などの多彩な反応性成分を伴う細胞浸潤,濾胞樹状細胞(FDC)や高内皮細静脈(HEV)の増生を特徴とする.

■AITLでは高率に骨髄浸潤を認めるが,骨髄塗抹普通染色標本のみで腫瘍細胞を同定することは一般的に困難であり,骨髄生検標本での特徴的組織所見の検索や,フローサイトメトリー(FCM)や免疫組織化学的手法によるCD10+陽性T細胞の同定が確定診断のために重要である.

未分化大細胞型リンパ腫

著者: 東田修二

ページ範囲:P.1638 - P.1640

■未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)は細胞障害性T細胞に由来する成熟T細胞腫瘍である.

■骨髄浸潤を伴う症例の骨髄塗抹標本では,異型性が強い多様な形態の大型核を有する大型細胞として認められる.

■フローサイトメトリー(FCM)でのCD30陽性所見やFISH検査でのALK遺伝子のスプリットシグナルが診断に有用である.

Hodgkinリンパ腫

著者: 米山彰子

ページ範囲:P.1642 - P.1646

■Hodgkinリンパ腫の骨髄浸潤の診断には,RS細胞やHodgkin細胞を見いだす.

■リンパ節中の腫瘍細胞の比率は低く,骨髄浸潤においてもRS細胞やHodgkin細胞は少ない.

■Hodgkinリンパ腫の骨髄浸潤の診断にフローサイトメトリーは有用性が低い.

■リンパのスタンプ標本中の腫瘍細胞と比較して骨髄浸潤を判断することも有用と考えられる.

表紙の裏話

好塩基球のルネサンス

著者: 吉川宗一郎 ,   堀口華代

ページ範囲:P.1546 - P.1546

 免疫学は,白血球をさまざまな手法により分画化し,新たな免疫細胞を同定・解析することで飛躍的に発展してきた.分画化するための最も古典的な方法は,塗沫標本をアニリン色素によって染色するもので,19世紀の終わりにPaul Ehrlichによって開発され,これにより数種類の免疫細胞が同定された.このとき発見された免疫細胞が,筆者の現在の研究テーマである“好塩基球”である.

 血液検査では必ずといっていいほどお目見えする“好塩基球”であるが,実際その細胞をよく知らない(もしくは存在自体も知らない!)読者がほとんどではないだろうか.それもそのはず,免疫細胞のなかでも非常に数が少なく,ほかの細胞と特徴に大きな違いが見いだせなかったことが災いし,つい最近までいったい何をしている細胞なのかほとんどわかっていなかったのである.

INFORMATION

第11回大阪臨床検査ISO15189研究会

ページ範囲:P.1581 - P.1581

日時:2013年12月7日(土)14:00~19:00(13:30開場)

会場:大阪医科大学 新講義実習棟3F 301号室

   (http://www.osaka-med.ac.jp/others/campus_map/index.html)

   JR「高槻」駅より徒歩約8分,阪急京都線「高槻市」駅より徒歩約3分

   アクセスマップ:http://hospital.osaka-med.ac.jp/access.html

千里ライフサイエンス国際シンポジウムE6

ページ範囲:P.1599 - P.1599

日時:2014年1月31日(金)10:00~17:00

場所:千里ライフサイエンスセンタービル

   5階ライフホール

   大阪府豊中市新千里東町1-4-2:地下鉄御堂筋線/北大阪急行千里中央下車

呼吸機能検査研修会 第20回琵琶湖セミナー

ページ範囲:P.1617 - P.1617

期日:2013年12月7日(土)・8日(日)

会場:ホテルラフォーレ琵琶湖

   滋賀県守山市今浜町十軒家2876

   Tel:077-585-3811

Advanced Practice

問題編/解答・解説編

ページ範囲:P.1647 - P.1647

「Advanced Practice」では,臨床検査を6分野に分け,各分野のスペシャリストの先生方から,実践的な問題を出題いただきます.

知識の整理や認定技師試験対策にお役立てください.

異常値をひもとく・12

免疫学的測定法による腫瘍マーカー検査で考慮すべき偽陽性反応とその解析法

著者: 新井智子 ,   塚田敏彦

ページ範囲:P.1649 - P.1655

はじめに

 腫瘍マーカーの多くは,正常細胞に存在する成分が癌化に伴う発現亢進によって量的変化をきたしたものを測定対象としているため,健常人にもカットオフ値以下のレベルで抗原が存在する.したがって,微量に存在する抗原の代謝が何らかの原因で遅延した場合や,良性疾患などで細胞増殖を認めるような場合には,悪性腫瘍を発症していなくても血中濃度の上昇をきたす.さらに,臨床検査で測定される腫瘍マーカーは,ほとんどが免疫学的方法で測定されているため,使用している抗体の種類や認識するエピトープによっては,交差反応や非特異反応によって目的抗原以外の物質が測り込まれてしまうことも少なくない.このような腫瘍マーカー測定における偽陽性は,同一検体を複数の測定試薬で測定した場合に測定値の乖離として発見されたり,担当医からの臨床所見と合致しないといった問い合わせなどで発見されることが多い.

 本稿では,筆者らが経験した腫瘍マーカー検査における偽陽性について紹介し,その解析法および偽陽性の回避法を示しながら,可能な範囲で偽陽性のメカニズムをひもといてみたい.

エラーに学ぶ医療安全・12【最終回】

安全な検査を目指して

著者: 河野龍太郎 ,   筑後史子 ,   田村光子

ページ範囲:P.1656 - P.1662

はじめに

 1年を通して続けてきた連載も,いよいよ最終回となった.第1回の冒頭で述べたように,この連載では,安全管理への“考え方”を身に付けていただき,読者の皆さんが自分自身の力で,それぞれの問題に対処できるようになることを目標とした.行程を終えてみて,目標は達成できただろうか?

 今回は,連載の内容をおさらいしながら,安全な検査とは何かを考えてみたい.

次代に残したい用手法検査・6

血清補体価Mayer法

著者: 堀井隆

ページ範囲:P.1663 - P.1667

はじめに

 血清補体価の測定は50%溶血法が広く用いられているが,現在では操作が簡便な汎用自動分析装置を用いた測定法が主流となっている.マニュアル法は緩衝液の調整や感作赤血球を作製するなど操作はかなり煩雑であり,日常検査で行うことはない.

 本稿では,Mayer変法(1/2.5スケール)について述べる.

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書評 基礎から学ぶ楽しい学会発表・論文執筆

著者: 川村孝

ページ範囲:P.1588 - P.1588

楽しく,まじめで,人なつこい.

そんな著者の人柄あふれる入門書

 前著に続いて楽しい本である.本文を補足する記述はすべて脚注もしくはコラムの形になっている.この付随的な記事がないページはほとんどなく,多いところではページの半分を超える.その分,本文は本筋のみで構成され,見出しの適切さもあって論旨は大変明快である.このような構成をとっているため,著者は安心して脱線ができるのである(著者の中村氏は名だたる鉄道マニアなので「脱線」という言葉は嫌うだろうが).

 楽しい本だが,内容は大まじめである.アカデミアの世界で求められる考え方のイロハから説き起こし,CONSORTやSTROBEなど国際的な指針,倫理問題や著作権にも言及している.さらにエディター経験を生かし,図表やスライドの作り方から一文の長さに至るまで,ほぼ余すところなく記載されている.学会発表や論文執筆の初学者は,本書を(もちろん脚注でなく本文を)丁寧に読み込んで実践すれば,かなりの水準に達することが期待できる.すでにある程度の経験を持っている方々には,弱点補強のよい指南書となろう.

「検査と技術」12月号のお知らせ

ページ範囲:P.1606 - P.1606

バックナンバー一覧

ページ範囲:P.1622 - P.1622

投稿規定

ページ範囲:P.1670 - P.1670

次号予告

ページ範囲:P.1671 - P.1671

あとがき

著者: 岩田敏

ページ範囲:P.1672 - P.1672

 今年2013年は台風の当たり年のようです.このあとがきを書いている最中にも,はるか南の温暖化した海上には,大型で強い勢力の台風27号があり,その後方にはさらに猛烈な勢力をもった台風28号が控えているという状況です.明日から札幌に学会で出張する身としては,台風の今後の動きがとても気になるところであります.2つの台風が近い距離で隣り合った場合,どこかのロボットのように合体してより強力になるのかという気もいたしますが,どうもそうではなさそうです.台風が隣り合った場合,お互いに干渉し,予測のつかない複雑な進路をとるというのが,実際のところのようです.この気象予報士泣かせの現象のことを「藤原の効果(Fujiwara effect)」というそうです.1921年に,当時の中央気象台所長だった藤原咲平が,このような相互作用の存在を提唱したため,この名があるとのことです.ちなみにこの「藤原の効果」,どのような現象なのか調べてみると,中間点を中心に2つの台風が反時計回りに互いを追いかけるように回転したり,片方の台風がまず移動し,その後ろをもう片方の台風が追いかけていったり,2つの台風が並行して移動したり,小さいほうの台風が大きな台風に吸収されたり等々,実にいろいろなパターンがあることがわかります.2013年の台風27号と28号が,これからどのような動きをするかにより,小生の札幌行きの運命が決まりそうなので,何とか運のよいほうに効果が出るよう,気象の神様にお祈りしようと思います.

「臨床検査」 第57巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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