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雑誌目次

論文

臨床検査57巻2号

2013年02月発行

雑誌目次

今月の主題1 血管超音波検査

ページ範囲:P.111 - P.111

 血管超音波検査は,頸動静脈から末梢動静脈に至るまでの血流動態,動脈硬化度の評価,血栓形成,狭窄部位の局在診断,グラフト形成の判定などcriticalな疾患病態にかかわり,日常診療において大きな位置を占めています.近年,臨床検査技師の専門知識と技術を発揮できる領域として,高い関心を集めています.

 いかなる検査においても,検査結果の質の向上はひとえに標準化の充実にあります.正確に再現性よく病変を特定診断するために標準診断法のガイドラインが血管部位別に作成され,これに沿った検査,計測,解析アプローチの基準統一法の実施も広がりをみせています.さらに依頼医師,専門医師・技師が一丸となって患者の訴えから検査情報まで広く共有することで解析力の深化が期待され,周辺領域の情報システムの整備も急がれます.急速に進化する血管超音波検査の現状,問題点,将来展開について実践医療の視点からレビューしていただきました.

血管超音波検査―最新の進歩

著者: 濱口浩敏

ページ範囲:P.112 - P.119

■血管エコーは全身血管を診る検査である.頭から指先までくまなく評価できる.

■血管エコーを行うには全身の血管解剖を理解する必要がある.

■目的に応じてプローブ,装置設定を選択する.

■技術の進歩により様々な評価ができるようになった.血管エコーならではの技術を理解する.

■まだまだ血管エコーには限界点がある.

血管超音波検査の実践的アプローチ―頸動脈病変の標準的評価法

著者: 浅岡伸光

ページ範囲:P.120 - P.126

■内膜中膜複合体厚(IMT)の計測は,計測誤差を考慮して画像を大きく表示して計測する.

■プラークは,表面性状を平滑,壁不整,潰瘍に分類し,エコー輝度と均一性についても分類する.

■プラークの可動性は,数心拍の間プローブを動かさずに固定して観察する.

■術前評価では,プラークの性状評価,病変の長さや内頸動脈径,術後の経過観察では,術後早期の血栓形成と遠隔期の再狭窄が重要である.

下肢深部静脈血栓症の標準的超音波診断法

著者: 江藤博昭 ,   岡彩子 ,   佐藤洋

ページ範囲:P.127 - P.135

■下肢深部静脈の解剖について理解する.

■深部静脈血栓症(DVT)の好発部位と進展方向について理解する.

■DVT超音波検査の流れについて理解する.

■検査結果の考察と診断について理解する.

下肢動脈超音波検査

著者: 久保田義則

ページ範囲:P.136 - P.144

■視診,触診などの理学所見の診方も含めて,疾患診断の特徴を理解したうえで検査に臨む.

■ガイドラインには,吟味された効率良い検査手順が記されているので,原則的に従う.

■装置の能力を引き出す正しい使い方を知らないと,誤診を繰り返す.

■プローブを交換したら,プリセットも変更する.

腎動脈超音波検査

著者: 山本哲也

ページ範囲:P.145 - P.155

■腎動脈狭窄(RAS)の診断に超音波検査は有用である.

■動脈硬化性病変では両側性の起始部に生じ,線維筋性異形成(FMD)では腎動脈中部から遠位部に数珠状の血管狭窄をきたす.

■腎動脈狭窄(径狭窄率≧60%)は収縮期最高血流速度(PSV)≧200cm/sec,RAR(renal/aorta ratio)≧3.5,狭窄後乱流などから診断される.

アンケート調査からみた頸動脈超音波検査の現状

著者: 小谷敦志

ページ範囲:P.156 - P.161

■65%以上の施設で,最大IMT,プラーク厚計測,プラーク表面・内部性状,総頸動脈血流速度,内頸動脈血流速度,椎骨動脈血流速度などが必須と考えられていた.

■最大IMTと平均IMTの計測法は,日本超音波医学会の計測法を採用している施設が大半だった.

■プラーク表面の潰瘍は,日本超音波医学会の基準を用いる施設が多かった.

■最も重視する内頸動脈狭窄評価法として収縮期最大血流速度による血流評価が約半数を占めた.

血管超音波検査におけるチーム医療

著者: 赤坂和美

ページ範囲:P.162 - P.167

■日常診療の中にこそチーム医療が存在する.

■チーム医療において超音波検査担当者に求められるものは,高い検査技術,さらには依頼医の視点を的確に捉えること,適切な検査室運営である.

■超音波検査の標準化のために,講習会の利用・認定資格の取得などが有用である.

今月の主題2 血液形態検査の標準化

著者: 佐藤尚武

ページ範囲:P.169 - P.169

 血液形態検査は,臨床検査において標準化の最も困難な分野の一つです.それは検査者の主観的判断が決め手となる検査であるからであり,形態学的検査全般の大きな課題となっています.

 血液細胞形態検査の標準化に向けての取り組みは,すでにかなりの歴史があり,数多くの努力が重ねられてきました.近年,テクノロジーの進歩により,同じ細胞の画像を多数の検査者が観察したり,細胞判定において特徴的な画像をリアルタイムに参照したりすることが可能になりました.これらは,血液形態検査の標準化を力強く推進するツールとして期待されています.

血液形態検査標準化

著者: 土屋逹行

ページ範囲:P.171 - P.177

■再現性のよい細胞同定を目的とする.

■好中球桿状核球と分葉核球の鑑別は核糸の有無がポイントである.

■奇形赤血球の出現は3%を陽性,陰性の目安とする.

■幼若顆粒球,赤芽球の鑑別は主要な鑑別点を重要視する.

■異常細胞の形態表現は定型表現を用いる.

血液形態検査の標準化に向けて―学会および技師会の活動

著者: 坂場幸治

ページ範囲:P.178 - P.187

■日本検査血液学会において血液形態検査の標準化が行われた.

■日臨技精度管理調査および日本医学検査学会での投票カンファレンスにおいて標準化された細胞が出題された.

■血液形態検査の標準化は特定の細胞において浸透していた.

■血液形態検査標準化の全国的な浸透には関連学会の協力と広報活動が必要である.

バーチャルスライドの血液形態検査標準化への応用

著者: 三ツ橋雄之

ページ範囲:P.188 - P.192

■バーチャルスライドは標本スライドのもつ細胞形態の情報を十分に反映することができる画像ファイルである.

■バーチャルスライドの活用法としてバーチャルスライドによる血液形態検査の精度管理サーベイが実施されており,有用性が高いと考えられる.

■バーチャルスライドは血液形態検査の標準化を推進するうえでも極めて有用なツールとなると考えられる.

■バーチャルスライドを利用することで血液形態検査の標準化と精度管理を統一的に進めることが可能と考えられ,検査精度の向上につながることが期待される.

血液像自動分析システムを利用した血液形態検査の標準化

著者: 堀内裕紀 ,   田部陽子

ページ範囲:P.193 - P.201

■血液像自動分析装置CellaVisionⓇ DM96と教育用ソフトウェアCellaVisionⓇ Com-petency Softwareを用いたe-ラーニングプログラムを作成し,精度管理と施設内血液形態検査の標準化を試みた.

■インターネットで利用可能なe-ラーニングプログラムの開発が望まれる.

骨髄異形成症候群(MDS)の国際形態学標準化の動向

著者: 朝長万左男

ページ範囲:P.203 - P.212

■形態学の標準化は定量化を可能とする.

■観察者間の一致率が80%程度あれば臨床上は有用である.

■MDSの異形成はFAB分類以来30年を経て,現在国際標準化が進められつつある.

表紙の裏話

アルツハイマー病にかかわるプロテアーゼ活性調節機構の解明を目指して

著者: 田邉千晶 ,   前田智司 ,   駒野宏人

ページ範囲:P.110 - P.110

 アルツハイマー病は,脳の老化に伴い発症する神経変性疾患であり,臨床症状として,記憶障害・認知機能の低下がみられる.病理学的変化としては,アミロイドβペプチド(amyloid βpeptide;Aβ)の凝集により形成される老人斑,異常リン酸化タウによる神経原線維変化,神経細胞死による大脳の萎縮を特徴とする.

 Aβはアミロイド前駆体蛋白質(amyloid precursor protein;APP)から,プロテアーゼと呼ばれる“はさみ”で切り出されて産生される.筆者らは,Aβを産生するプロテアーゼである,γセクレターゼの活性調節機構を明らかにし,アルツハイマー病初期に起こるAβ産生を抑制することで治療につなげられるのではないかと考えている.

INFORMATION

KCJL(近畿心血管治療ジョイントライブ)2013 Co-medical

ページ範囲:P.126 - P.126

 Co-medicalプログラムでは2日間を通して看護,虚血,不整脈の各セッションを行います.Basicな内容から最近のトピックスまで幅広くお届けいたしますので,初心者の方からベテランの方まで満足していただける構成にしたいと考えています.今回は基礎的なレクチャーを交えたAMIのビデオライブを用意しましたので,緊急症例を通して看護師,臨床工学技士,放射線技師の方々による討論を行いたいと思っています.不整脈のセッションでは,毎年恒例となっていますアブレーションに直結する心電図セミナーと,昨年好評であった3DCTを用いた心臓の解剖セミナーを今回も開催いたします.また,新企画として「カテ室びふぉー&アフター(仮題)」を計画中です.例年好評をいただいています冠動脈模型制作も開催いたしますので,模型作りを通して冠動脈の走行をより理解できると思います.皆さまのご参加をお待ちしています.

Advanced Practice

問題編/解答・解説編

ページ範囲:P.213 - P.213

「Advanced Practice」では,臨床検査を6分野に分け,各分野のスペシャリストの先生方から,実践的な問題を出題いただきます.

知識の整理や認定技師試験対策にお役立てください.

異常値をひもとく・2

CKの著しい上昇と運動後の褐色尿の症例

著者: 前川真人

ページ範囲:P.214 - P.219

はじめに

 血清酵素の異常データは,多くは主治医が予測する病態によって生じるものであるが,ときどき予想外の原因によって生じる.そのようなときには臨床検査の担当者の出番である.

 測定系の問題であれば臨床側では全く想定できないため,正しく測定できているかの確認が必要である.患者側の要因による場合,先天性,後天性(獲得性)の2つに大別して考える.先天性の場合,家系検索まで必要となることもある.後天性の場合,血中での修飾による原因が多い.

 何が原因なのかを突き止める,解決の足がかりとして分離分析技術は非常に有用である.ただ大前提として,不可解なデータであると気づくことが大切で,そうした力は日頃から典型的なデータを見ることによって養われる.関連項目との関係をしっかり理解して,提示症例を解析してほしい.

エラーに学ぶ医療安全・2

人間の特性を考慮したヒューマンファクター工学のすすめ

著者: 河野龍太郎

ページ範囲:P.220 - P.224

はじめに

 ヒューマンファクター(human factor;HF)とは,“人的要因”のことである.前回,医療は非常にリスクの高いシステムであることを説明したが,このリスクをできるだけ低くするために有効と考えられるHF工学について,第2回は学ぶ.

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「検査と技術」2月号のお知らせ

ページ範囲:P.201 - P.201

バックナンバー一覧

ページ範囲:P.212 - P.212

書評 医療事故の舞台裏

著者: 徳田安春

ページ範囲:P.226 - P.226

 この本は損害保険会社の顧問医師により書かれたものである.本書で記載されている25のケースはドキュメントファイルと呼ばれ,実際の医療紛争事例を臨場感あふれるドキュメンタリー風のケースシナリオにアレンジしたものであり,なぜ医療事故や訴訟に至ったのかが丁寧に解説されている.数多くの医療事故での紛争を観察した著者ならではのことであるが,賠償金の支払いを巡って医師側に責任があるのかないのかなどについてのポイントがわかりやすく記載されており,貴重な教訓が豊富にまとめられている.

 第一章では,診断での思い込みや見落としなどのピットフォール・バイアスによる診断エラーについてのケースファイルが収録されている.続く第二章では,患者さんや家族に対するインフォームド・コンセントのあり方が問われたケースファイルが記載されている.そして第三章では,検査や治療のための医療手技に関連する事故についてのケースファイルが収録されており,CVカテーテルや内視鏡手技に伴う事故などで争われたものが集められている.

投稿規定

ページ範囲:P.228 - P.228

次号予告

ページ範囲:P.229 - P.229

あとがき

著者: 山田俊幸

ページ範囲:P.230 - P.230

 2013年,どのようにお迎えになりましたか.昨年末は日本人のノーベル賞受賞という慶事がありましたが,世の中は,解散総選挙,トンネル事故,大雪,集団暴力,隣国のミサイル発射など,“騒”のイメージでした.読者諸兄には,穏やか,健やかで大過ない2013年であることをお祈り申し上げます.

 さて,私は昨年1月に本誌の編集主幹という大役を仰せつかりました.新しい編集体制の意向が結実し,初めて世に出たのが昨月1月号です.どのように受けとめられるか不安な気持ちが大きいのは確かですが,小さいながら達成感もあります.ただ編集というものが大変難儀なものであることは実感しました.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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