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雑誌目次

論文

臨床検査58巻1号

2014年01月発行

雑誌目次

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査

著者: 山田俊幸

ページ範囲:P.5 - P.5

 2014年の年頭を飾る主題として,診療ガイドラインにおける臨床検査をとりあげました.日本臨床検査医学会からは,「臨床検査のガイドライン」という各病態においてどのような検査を行うべきかの指針が出ておりますが,本特集では臨床の各学会・分野から出されている診断・治療のガイドラインに,どの検査がどのような重みをもって盛り込まれているか,という視点で構成しました.各執筆者には難しいテーマを苦心されてまとめていただき,多くの疾患で臨床検査が重要な役割を担っていることが,改めてわかります.大きな励みとし,かつ責任感を感じて日常の検査に臨んでいただける一助となれば幸いです.

循環器領域

著者: 盛田俊介 ,   建部順子

ページ範囲:P.7 - P.12

●診療ガイドラインは,細分化・専門化された臨床現場において標準的な診断ならびに治療を提供するために活用されている.

●簡便で安全,そして経時的に施行可能なバイオマーカー測定は,循環器領域における診断やリスク層別においてその臨床的有用性は高く,脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)やBNP前駆体N端フラグメント(NT-proBNP),心筋トロポニン,D-dimerなどが診療ガイドラインで取り上げられている.

●生理学的検査や画像診断法に加え,バイオマーカーを有効に活用することで高質な循環器診療を行うことができる.

腎領域

著者: 木村秀樹

ページ範囲:P.13 - P.17

●慢性腎臓病(CKD)の診断基準と重症度分類には尿蛋白/クレアチニン(Cr)比,尿アルブミン/Cr比(ACR)と血清Cr,血清シスタチンC(Cys-C)を用いた推算糸球体濾過量が使用されている.

●血尿に関しては,糸球体型血尿,非糸球体型血尿の判別が重要であり,前者では内科的腎疾患,後者では泌尿器科的腎疾患の精査を進める.

●IgA腎症は腎組織診断が必須であるが,持続的血尿と蛋白尿に加えて血清IgAが高値であればIgA腎症を強く疑うことができる.

●血清中の抗好中球細胞質抗体(ANCA)と抗糸球体基底膜(GBM)抗体の陽性所見は,急速進行性糸球体腎炎(RPGN)の迅速な病理診断と治療につながり,疾患活動性の指標にもなる.

消化器領域

著者: 小方則夫

ページ範囲:P.18 - P.28

●消化器領域診療ガイドラインは多数が存在し,また1ガイドライン当たり膨大かつ詳細な記載がなされている.このなかから臨床検査の役割を抽出し習熟する必要がある.

●診断基準においては,当然のことながら精度管理の向上に努める.

●重症度判定基準においては,結果の診療現場へ早期発信に努める.

●検査結果が診療現場においてどのように活用されるのかという視点をもつことを心掛けたい.

呼吸器領域(肺炎除く)

著者: 諏訪部章

ページ範囲:P.29 - P.33

●呼吸器疾患の臨床検査は,従来の呼吸機能検査や動脈血液ガス分析に加え,最近では新しいバイオマーカー検査や遺伝子検査が臨床応用されてきている.

●バイオマーカー検査として,気管支喘息における呼気中一酸化窒素(NO),間質性肺炎における血中KL-6,SP-A,SP-Dなどがある.

●遺伝子検査として,肺癌におけるEGFR遺伝子変異,ALK遺伝子転座,UGT1A1遺伝子多型などがある.

●バイオマーカーや遺伝子検査は保険収載され,呼吸器関連学会や厚生労働省から発行される診断・治療ガイドラインなどでも取り上げられている.

糖質脂質代謝領域

著者: 松永彰

ページ範囲:P.34 - P.38

●糖尿病の診断に活用される検査としては,血糖値,75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT),HbA1cがある.

●合併症予防のための目標値はHbA1c 7.0%未満である.

●総コレステロール(TC),低密度リポ蛋白(LDL)コレステロール,高密度リポ蛋白(HDL)コレステロールおよびトリグリセライド(TG)が脂質異常症の診断に活用される.

●LDLコレステロールはFriedewald式で求め,使えない場合は,non HDLコレステロールを用いる.

内分泌領域

著者: 青木智之 ,   常川勝彦 ,   村上正巳

ページ範囲:P.39 - P.43

●内分泌疾患は,ホルモンの過不足を原因とする疾患群である.過不足に伴いさまざまな症状を呈する.

●一般的に行われる血算,総コレステロール,肝逸脱酵素,アルカリフォスファターゼ〔ALP(特に骨型)〕,クレアチンキナーゼ(CK),乳酸脱水素酵素(LD),クレアチニンなどの検査値の異常は甲状腺疾患を疑うきっかけとなる.

●甲状腺疾患の診断のために甲状腺ホルモン値,各種甲状腺自己抗体検査などが行われる.

●甲状腺自己抗体は,確定診断のための重要なツールとなりうるが,非典型例も存在し,細胞診や放射線ヨードの甲状腺摂取率などの追加の検査が必要となることもある.

膠原病,免疫疾患領域

著者: 小柴賢洋

ページ範囲:P.45 - P.49

●膠原病および類縁疾患では,しばしば自己抗体が陽性で,診断や病勢把握に有用である.

●健常者でも時に自己抗体が陽性となる.自己抗体陽性というだけでは疾患とはいえない.

●関節リウマチ(RA)の診断,治療は近年大きく変貌し,早期から積極的に加療して寛解を目指す.そのため早期診断は重要である.

血液・止血領域

著者: 高橋千春 ,   増田亜希子 ,   金子誠

ページ範囲:P.50 - P.54

●造血器疾患・血液凝固異常症の診断・病型分類や治療効果判定に,臨床検査は中心的な役割を果たしている.

●造血器腫瘍の診断においては,血液・骨髄塗抹標本の形態学的所見に加え,フローサイトメトリー(FCM),遺伝子・染色体検査が必要不可欠である.

●特発性血小板減少性紫斑病(ITP)では,Helicobacter pylori感染の取り扱いが定められ,トロンボポエチン受容体作動薬の位置付けが論議されている.

●先天性,後天性血友病Aなどの病態ごとに診療・治療ガイドラインが作成され,血液製剤の投与,選択方法が簡便になった.

感染症領域(肺炎含む,小児感染症除く)

著者: 上原由紀

ページ範囲:P.55 - P.60

●感染症に関連するガイドラインは,臓器・器官別ガイドラインのほか,原因微生物別,感染症の予防や対策に関連するものなど,国内外にさまざまな切り口のものが存在する.

●ガイドラインで診療の流れを知ること,各種の検査項目がどのように用いられており,どの程度の迅速性や正確性を求めているのかを把握することは,診療にいっそう役立つ検査体制の構築に有用と考えられる.

神経・筋領域

著者: 大林光念

ページ範囲:P.61 - P.65

●Parkinson病患者に対する各種臨床検査は,主として予後に影響を与える因子についての評価,治療薬の効果,副作用出現の事前予測,治療薬継続の可否や用量増減の判定を目的に施行される.

●てんかん患者に対する臨床検査は,主として診断のための脳波検査,抗てんかん薬投与量の確認や服薬状況の確認,副作用予防のための薬物血中濃度測定および副作用評価のための各種血液生化学検査が挙げられる.

●脳血管障害は,病型によって治療方法,再発予防方法が異なることから,さまざまな臨床検査を駆使してその診断,フォローにあたる必要がある.

●多発性硬化症の診断に用いられる補助的検査は,脳・脊髄MRI検査に加え,オリゴクローナルIgGバンドやIgGインデックスを含む脳脊髄液検査がある.また,視神経と脊髄を選択的に侵す視神経脊髄炎(NMO)が疑われる症例では,抗アクアポリン4抗体を測定する必要がある.

小児・泌尿生殖器領域

著者: 鯉渕晴美

ページ範囲:P.67 - P.72

●食物アレルギーの診断において,特異的IgE抗体検査が簡便なため頻繁に行われている.しかし,本検査が陽性であることは必ずしも症状惹起を意味しない.

●小児細菌性髄膜炎においては,年齢によって頻度の高い起因菌が異なる.

●細菌性髄膜炎を疑ったらすぐに抗菌薬による治療を開始しなくてはならないので,迅速な検査が求められる.

●前立腺癌診断には直腸診,血清前立腺特異抗原(PSA)測定が重要である.

●PSA基準値の設定については議論されているところである.

●子宮頸がん検診において,ヒトパピローマウイルス(HPV)検査による死亡率低下効果や浸潤癌罹患率低下効果はいずれも報告がない.

●子宮頸がん検診において,HPV検査は細胞診と比較して,感度は高いが特異度が低い.

今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

著者: 岩田敏

ページ範囲:P.73 - P.73

 真菌は,ヒトが生活している環境のなかに広く生息しており,宿主の免疫能が低下した際にしばしば重篤な深在性感染症として発症することがある.また,現代医学のなかで頻用される血管内留置カテーテル関連の血流感染においても,重要な原因微生物の1つとなる.さらに,国際交流が盛んな今日では,輸入感染症としても注目されている.真菌症の診断は鏡検や培養検査が基本となるが,その他にも各種分子生物学的マーカーの測定やPCR法,LAMP法などによる遺伝子診断も,有用な検査法として実用化されている.また,菌種によっては病理組織学的診断が決め手となる場合もある.真菌感染症の治療に関しては,近年抗真菌薬の種類も増えているため,病態や真菌の種類による使い分けが,臨床上重要なポイントとなっている.

 本特集では,深在性真菌感染症の検査診断と治療に焦点を当て,真菌の種類ごとにその特徴とポイントについて解説していただいた.

深在性カンジダ症の診断と治療

著者: 宇野俊介 ,   細川直登

ページ範囲:P.75 - P.80

●深在性カンジダ症とは,Candida属による血流感染を介した深部臓器の感染症で,特に免疫抑制患者や集中治療室(ICU)での患者で起こりやすい.

●診断のための血液培養は必須の検査であるが,陰性であっても必ずしも否定できない.

●1,3-β-D-グルカンなどの血清補助診断マーカーについては近年データが集積されつつあるが,それのみでは確定診断はできず,菌種同定もできない.したがって,血液培養を補完し,検査前確率を上げるために用いられる.

●Candida属は菌種によってほぼ感受性パターンが決まっているため,血液培養や組織培養での菌種同定が重要である.

アスペルギルス症

著者: 武田和明 ,   泉川公一 ,   河野茂

ページ範囲:P.81 - P.89

●侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)は免疫抑制患者に好発する.

●慢性肺アスペルギルス症(CPA)は既存の肺疾患の存在する患者に好発する.

●Aspergillus fumigatusは48℃以上でも発育可能であることから鑑別可能である.

クリプトコックス症

著者: 川上和義

ページ範囲:P.90 - P.96

●Cryptococcus neoformansはハトなどの鳥類の堆積糞中で増殖し,乾燥により空気中に舞い上がった酵母を吸入することで経気道的に感染する.

●糖尿病,腎疾患,膠原病,血液悪性疾患,後天性免疫不全症候群(AIDS)などの基礎疾患がある場合は,細胞性免疫の低下により,肺から中枢神経系に播種性感染し脳髄膜炎を起こす.

●診断は,症状,理学所見,画像所見,血清学的検査,髄液検査,鏡検,培養,病理検査により総合的に行う.

●肺クリプトコックス症では,健康診断により偶然に発見されることも多い.

●血清βグルカンは上昇しないが,莢膜多糖抗原のグルクロノキシロマンナン測定が感度および特異度ともに優れ,補助診断法として有用である.

●臨床診断または確定診断例に対して標的治療を行い,フルコナゾール,イトラコナゾール,ボリコナゾールなどのアゾール系抗真菌薬や,アンホテリシンB,フルシトシンが用いられる.ミカファンギンは無効である.

接合菌症

著者: 大野秀明 ,   荒岡秀樹 ,   梅山隆 ,   金子幸弘 ,   宮﨑義継

ページ範囲:P.97 - P.103

●接合菌症の原因真菌としてRhizopus属,Rhizomucor属,Mucor属,Cunninghamella属の頻度が高い.

●接合菌症はコントロール不良な糖尿病,血液悪性疾患,臓器移植,免疫抑制剤,外傷,鉄キレート剤使用などがリスク因子であり,また抗真菌薬使用中のブレークスルー真菌症として注意を要する.

●一般的に接合菌症は電撃的な経過をとり,予後不良な真菌症である.予後改善には早期診断・治療が最も重要である.

●接合菌症の診断は比較的困難であり,有用な診断法は存在しない.臨床的に接合菌症が疑われたら,いろいろな診断法を組み合わせて診断を得るよう努力する.

糸状菌症

著者: 渡辺哲 ,   矢口貴志

ページ範囲:P.104 - P.109

●近年まれな真菌による感染症の増加がみられている.

●原因真菌はそれぞれ特徴的な薬剤感受性パターンを示すことが多い.

●原因菌の正確な同定および薬剤感受性測定が治療上重要である.

輸入感染症としての真菌症

著者: 亀井克彦 ,   渡辺哲

ページ範囲:P.111 - P.116

●輸入真菌症は真菌症のなかでも感染力・病原性とも抜群に高く,特殊な疾患という認識が必要である.

●原因菌の多くはコロニーを見ただけでは一般の真菌と鑑別が困難なことから培養による感染事故が多く,培養に頼らない診断手順をまず考える必要がある.

●疾患に関する知識に加えて,流行地への旅行歴の綿密な確認と診療科-検査部の緻密な連絡が大切である.

Pneumocystis jirovecii

著者: 藤井毅

ページ範囲:P.117 - P.121

●ニューモシスチス肺炎(PCP)は基本的に重篤な疾患であり,救命のためには早期診断および早期治療が極めて重要である.

●ほかの真菌と異なり培養されないため,確定診断は気道由来検体の直接鏡検によって菌体を証明する必要がある.臨床症状や画像所見,血中β-D-グルカン値,PCR法などの遺伝子検査の結果から,総合的に診断されることも少なくない.

●Pneumocystis jiroveciiは,ヒト-ヒト感染することが証明されており,免疫不全患者における院内伝播にも十分な注意が必要である.

今月の表紙

AST aspartate aminotransferase

ページ範囲:P.4 - P.4

 2014年表紙のテーマは“生命の森”.生命活動を支える重要な物質である蛋白質のうち,実際の臨床検査でも馴染みの深い12種類の蛋白質を厳選.その3D立体構造をProtein Data Bankのデータから再構築.大いなる生命のダイナミズムを感じさせるようにそれぞれの蛋白質を配置し,並べたときには蛋白質による“生命の森”を表現します.

INFORMATION

近畿心血管治療ジョイントライブ(KCJL)2014 Co-medical

ページ範囲:P.28 - P.28

 Co-medical Theaterでは各職種の専門性を踏まえて看護セッション,虚血セッション,不整脈セッションを行います.基本から応用まで皆さまに満足いただけるプログラムとなっています.看護セッションでは,カテーテル室に従事する看護師だけでなく退院指導にも役立つつながる看護を企画しています.病棟の看護師,薬剤師,栄養士の方もご参加お願いします.虚血セッションでは,基礎セミナーからデバイスやイメージングまで幅広いレクチャーを予定しています.コメディカルビデオライブでは患者の入室から退室までの流れをいろいろな病院,職種の方々からビデオを交えながらプレゼンテーションをしていただきます.不整脈セッションでは心電図セミナー,心臓解剖セミナー,アブレーション関連ワークショップを予定しています.ぜひ皆さまのご参加をお待ちしています.

Advanced Practice

問題編/解答・解説編

ページ範囲:P.122 - P.122

「Advanced Practice」では,臨床検査を6分野に分け,各分野のスペシャリストの先生方から,実践的な問題を出題いただきます.

知識の整理や認定技師試験対策にお役立てください.

異常値をひもとく・13

尿蛋白試験紙陰性検体の尿についてセルロースアセテート膜電気泳動像から腎障害部位を予知する

著者: 芝紀代子 ,   久保田亮 ,   坂爪実

ページ範囲:P.124 - P.129

はじめに

 初診患者の検査の1つに尿試験紙による尿検査がある.そのなかに蛋白も含まれ,30mg/dLを(+)と判定し,それ以下は(-)~(±)としており,さらなる検索は行われていない.いわゆる(-)~(±)とされる10数mg/dL程度の蛋白の出現は全く無視してよいのか,という疑問が生じた.そこでセルロースアセテート膜(以下,セア膜)電気泳動を行ったところ,予想通りに多種多様な尿蛋白分画がみられたことが本研究の発端である.

次代に残したい用手法検査・7

梅毒検査―緒方法

著者: 日高裕介

ページ範囲:P.130 - P.138

はじめに

 梅毒の免疫血清学的検査法は,カルジオリピンを抗原とする梅毒血清反応(serological test for syphilis;STS)法とTP(Treponema pallidum)菌体成分を抗原とするTP抗体測定法がある.近年は,RPR(rapid plasma reagin)カード法やTPHA(TP hemagglutination test)法などの用手法的検査から,自動分析法であるラテックス凝集免疫法(latex agglutination immunoassay;LAIA)や化学発光酵素免疫測定法(chemiluminescent enzyme immunoassay;CLEIA)へと移行する施設が年々増えてきている.そのようななかで,緒方法を理解し,実際に検査を行える技師は少なくなってきている.補体結合反応(Wassermann反応)を原理とする緒方法は,免疫反応における三大要素ともいえる抗原・抗体・補体の反応を,目で見て実際に確認することができる,数少ない古き時代のよき方法である.

樋野興夫の偉大なるお節介・1【新連載】

医師の2つの使命

著者: 樋野興夫

ページ範囲:P.140 - P.141

 思えば,2003年「吉田富三(1903-1973)生誕100周年・山極勝三郎(1863-1930)生誕140周年」を全国で展開したのが,記憶に新しい.日本国は「化学発がんの創始国」であり,山極勝三郎と吉田富三が築いた「癌化の本流」がある.山極勝三郎&吉田富三の命題は,「今日の命題でもあり,将来の命題でもある」.これが「山極勝三郎&吉田富三」の現代的意義であろう.「発がん病理学者の風貌と胆力」の見せ所である.「発がん病理学」を極めることは,「森を見て木の皮まで見る」ことであり,マクロからミクロまでの手順を踏んだ「丁寧な大局観」を獲得する「厳粛な訓練」の場でもある.「潜在的な需要の発掘」と「問題の設定」を提示し,新しいことにも自分の知らないことにも謙虚で,常に前に向かって,時代の要請感のある「新鮮なインパクト」をあずかる「広々とした発がん病理学の本流」を目指したいものである.

 本稿では,「山極勝三郎生誕150周年&吉田富三生誕110周年」を記念して,「過渡期の指導原理と新時代の形成力を求めて」を語ってみたい.

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書評 ひとを育てる秘訣

著者: 泉尾雅子

ページ範囲:P.6 - P.6

指導経験の浅い指導者も自信がもてるようになる書

 本書は,著者が雑誌「看護管理」に連載していたコラム「ひとを育てる秘訣」を大幅に加筆しまとめたものです.新人看護師を育てていく過程で,比較的経験の浅い指導者が遭遇する疑問,問題点に対しての著者ならではの解決法,教訓が示されています.見開きページごとに一つのテーマが取り上げられ完結しています.

 本書の特徴の一つは,新人看護師の指導秘訣(全部で48個)を春・夏・秋・冬と指導時期に合わせて4つの季節に分類していることです.たとえば,「春」編の中の1つ“内容を絞り込んで復唱させる”では,新人看護師は何度も同じことを聞いてくる.これに対して「1回の指導につきポイントを3つ以内に絞り込み,説明が終わったら復唱させて理解度を確認する」などの具体的なアドバイスが示されています.「秋」編の“覚悟を強さに変える”では,「新人看護師の指導が半年経過し,指導に煮詰ったら,一息おいて,少し頭を整理しましょう.自分が教えたいことと,相手が学びたいことのズレを見極め,今,患者や家族に何をすべきか実行する.覚悟をもって指導者役割を果すことにこだわる」ことを薦めています.経験の浅い指導者はもちろん,ベテラン看護師にとっても有益で具体的なアドバイス,秘訣が詰まっていて,しかも,どのページから開いても素直に頭にはいる内容が盛り込まれています.ざっと目を通した後,季節ごとに読み返すのをお薦めしたいと思います.

書評 基礎から学ぶ楽しい学会発表・論文執筆

著者: 若林チヒロ

ページ範囲:P.44 - P.44

著者が長年蓄積してきたノウハウを惜しげもなく伝授

 疫学研究の方法を解説した,「楽しい研究」シリーズ第一弾『基礎から学ぶ楽しい疫学』は,「黄色い本」として辞書代わりに活用している人も多い.第二弾として今回出版された「青い本」では,研究の発表方法を一から学べるようになっており,やはり長く使い続けることになるであろう.疫学や公衆衛生学をリードしてきた研究者であり,医学生や保健医療者の研究指導をしてきた教育者でもある著者が,長年蓄積してきた学会発表や論文執筆の方法を惜しげもなく伝授してくれている.さらに,学術誌の編集委員長を務めてきた経験から,査読者の視点や意識まで解説してくれている.2年間に及ぶ連載をまとめただけあって,ノウハウが詰まった濃い一冊である.

 この本はコメディカルや大学院生など研究の初学者向けに執筆した,と著者は書いている.発表する学会の選び方や抄録の書き方,口演での話し方からポスター用紙の種類まで,至れり尽くせりで効果的な学会発表のノウハウが示されており,確かに初学者が「基礎から」学べるようになっている.しかしこの本は,キャリアのある臨床家や研究者が,よりインパクトのある発表をしたり,より採択されやすい論文を執筆したりするためにも,十分に適している.「基礎から,かなり高度なレベルまで」学べるようになっているのである.

バックナンバー一覧

ページ範囲:P.49 - P.49

「検査と技術」1月号のお知らせ

ページ範囲:P.72 - P.72

書評 がん哲学外来コーディネーター

著者: 杉山徹

ページ範囲:P.74 - P.74

優しいがん医療の入り口に

 優しいがん医療(患者中心のがん医療)に必要なことは何でしょうか?

 患者はチームの一員であり,医療チームと患者は対等な関係です(パートナーシップの確立).この理解が共有できないと,患者中心の医療を目指すチーム医療は機能しません.チーム医療は仲良し医療ではなく,患者が参加しないと何も進歩しません.患者は医療を知り,エビデンスを創るということも理解してほしいと考えます.

 しかし,樋野興夫先生が序でお書きになっておられるように,「がん」と診断・告知された時から患者は大きな壁のなかに囲まれてしまう.「がん」という言葉で多くの患者はまず死を意識する.患者はどこの病院でどんな治療を受けるのか,同時にどこに行けば情報が得られるのか,大きな悩みとなります.がん対策推進基本計画が制定され,拠点病院ではがん相談支援室が設置され,種々の事務的な情報提供が可能となっていますが,そこに行きつけない患者もいます.溢れるインターネット情報で混乱する患者もいます.

投稿規定

ページ範囲:P.142 - P.142

次号予告

ページ範囲:P.143 - P.143

あとがき

著者: 山内一由

ページ範囲:P.144 - P.144

 読者の皆さまにおかれましては,希望に満ちた新年をお迎えのことと存じます.

 昨年,「臨床検査」は装いを新たにリニューアルしました.55年以上にも及ぶ本誌の伝統を継承しつつ,読者のニーズに応え,ニーズを先取りする雑誌へと変貌させる作業は想像以上に大変で,今なお手探りの状態が続いていますが,編集主幹の山田俊幸先生の強力なリーダーシップと編集室の方々の多大なるご尽力のおかげで,57巻全巻を無事発刊することができました.安堵するとともに,ここに2014年の第1号をお届けできることを大変喜ばしく思っております.同時に,身が引き締まる思いでもあります.読者の皆さまの厳しい目にさらされ,お寄せいただいた多くのご批判に真摯に耳を傾け,それに応え,よりよい情報誌へと磨きあげていく努力が,2年目以降,強く求められてくるからです.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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