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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査58巻9号

2014年09月発行

雑誌目次

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する

著者: 山田俊幸

ページ範囲:P.997 - P.997

 関節リウマチの診療は大きく変わりました.治療の進歩により,今後,関節の変形まで至る患者さんは皆無になるとまでいわれています.ただし,強力な治療には必ずマイナスの側面があり,例えばB型肝炎の再燃など,考えてもみなかった事態に直面するようになりました.また,早期にケアすべきとの認識が広まり,早期診断における臨床検査の補助的役割が高まりつつあります.その臨床検査も変わりました.抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)が登場し,リウマトイド因子については定性法の1つであったRAテストがなくなり,自動分析による定量法が主流となってきました.陽性陰性の判断をするわけですから定量値は重要な意味をもちます.以上のエッセンスと,最後に新規マーカーの話題を追加して特集しました.

関節リウマチの理解と診療の変遷

著者: 的塲謙一郎 ,   奥田恭章

ページ範囲:P.998 - P.1003

●関節リウマチ(RA)は全身性炎症疾患である.

●早期診断治療の重要性が増している.

●早期診断に有用となる新たな分類基準が作成された.

●治療はメトトレキサートを中心に,早期より強力に行われる.

●さまざまな合併症を有する疾患であり,治療時には注意が必要である.

関節リウマチにおける診療の進歩と臨床検査の対応

著者: 茂久田翔 ,   杉山英二

ページ範囲:P.1004 - P.1009

●関節リウマチ(RA)の診断は,他疾患を除外することが前提となる.

●RAの診断は,滑膜炎の存在が必須である.関節超音波やMRIなどの画像診断,および,リウマチ因子(RF),抗CCP抗体,CRP,赤血球沈降速度(ESR)などの血液検査を行い,総合的に判断される.

●現在のRAの治療は,免疫抑制療法が主体となっており,日和見感染症〔結核,ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)肝炎の再活性化,ニューモシスチス肺炎(PCP)など〕に注意しなければならない.

リウマトイド因子検査の実際と問題点

著者: 渡辺勝紀

ページ範囲:P.1010 - P.1017

●リウマトイド因子(RF)は,哺乳動物由来IgGのFc領域に結合する自己抗体である.

●関節リウマチ(RA)の診断基準が改訂され,よりRF検査の重要性が増している.

●RF検査のカットオフ値は15IU/mLとするようにガイドラインに明記された.

●RFの特異性や分子構造は多様であり,測定キットによって乖離が生まれる場合がある.

抗CCP抗体検査の実際と問題点

著者: 竹村正男

ページ範囲:P.1018 - P.1025

●関節リウマチ(RA)患者に出現する抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)の測定は,抗CCP抗体検査として表現されている.

●ACPAの有無による予後推測と治療薬選定の可能性が模索され始めているが,その確立は今後の課題である.

●ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PADI)-4の変異がACPAの検査値にどのように影響を及ぼしているかが注目されている.

●2010年ACR/EULAR新分類基準ではACPAの検査値が重要なファクターであり,標準値の設定が必要である.

今後期待される分子マーカー

著者: 田村直人

ページ範囲:P.1026 - P.1032

●関節リウマチ(RA)では早期診断が重要であるが,将来的に抗環状シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)以外の自己抗体測定が,早期あるいはpreclinicalな状態での診断に有用となる可能性がある.

●客観的な疾患活動性指標としてC反応性蛋白質(CRP)は不十分であるが,マルチバイオマーカーの測定の有用性が示されており,また関節破壊進行の予測因子であることも報告されている.

●治療薬選択のためのバイオマーカーは存在せず,今後の発見が期待される.

今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

著者: 三浦純子

ページ範囲:P.1033 - P.1033

 この半世紀のME機器や情報科学分野の進歩はめざましく,“てんかんの診断”に必須の脳波はデジタル記録に変わり,ファイリングやペーパーレス化が進んでいるのは周知の事実です.脳波検査時に患者の様子をモニターで観察し,ビデオと脳波を同時記録することもルーティン化されています.今世紀に入り脳磁図や光トポグラフィも臨床応用されています.2010年にはてんかん発作型国際分類の発作型分類が改訂され,2013年にはてんかんに関係する道路交通法が改正されました.このような状況のなか,本特集は“てんかん”について,①分類,②長時間ビデオと脳波モニター,③光トポグラフィ,④脳磁図,⑤抗てんかん薬の血中濃度モニタリング,⑥遺伝,⑦子どものてんかんと社会生活,⑧交通事故について取り上げました.全てが必読の特集に仕上がっています.

てんかんの病態生理とてんかんおよびてんかん発作の分類

著者: 野沢胤美

ページ範囲:P.1034 - P.1044

●てんかんは大脳ニューロンの過剰な突発的発射に由来する,反復性の発作を主症状とする慢性脳疾患である.

●シナプス後膜には興奮性シナプスと抑制性シナプスがある.それぞれ,興奮性シナプス後電位(EPSP),抑制性シナプス後電位(IPSP)を発生する.

●てんかんは興奮性シナプスと抑制性シナプスの力関係が突然崩れて興奮作用が優位になった状態である.

●興奮性作用のある神経伝達物質は,アセチルコリンやグルタミン酸である.抑制作用のある神経伝達物質は,ガンマ・アミノ酪酸(GABA)である.

●抗てんかん薬の作用機序は,①電位依存性Naイオンチャネルあるいは電位依存性Ca2+イオンチャネルブロック,②GABA賦活系作用,④グルタミン系抑制作用,⑤炭酸脱水素酵素阻害,⑥シナプス小胞膜蛋白2Aに対する作用がある.

長時間ビデオと脳波モニター

著者: 白水洋史 ,   亀山茂樹

ページ範囲:P.1045 - P.1050

●長期間の継続した脳波測定により,発作および発作間欠期異常波の捕捉率を向上させ,適切な治療に貢献する.

●脳波とビデオの同時記録により,てんかん発作の診断の向上につながる.

●発作起始時の時間・空間的評価がより正確に行える.

光トポグラフィーと外科的治療法

著者: 渡辺英寿

ページ範囲:P.1052 - P.1059

●てんかんの手術による治療法は,薬物で制御できないてんかんの症例に対して行われる.慎重に焦点(発作の原因病巣)を診断すれば大変有効な治療法である.

●焦点診断にはビデオ脳波モニタリングを始め,MRI,シングルフォトン・エミッション・コンピュータ断層撮像(SPECT)などが用いられる.光トポグラフィーも機能診断の1つとして有用である.

●光トポグラフィーは近赤外線を頭皮上から頭蓋内に照射して,直下の脳の神経活動を計測するものであるが,てんかんの焦点診断にも有用であることがわかってきた.脳波モニタリングと同時計測することで非侵襲的に的確な診断が可能である.

脳磁図によるてんかん焦点の診断

著者: 湯本真人

ページ範囲:P.1060 - P.1069

●脳磁図(MEG)が記録する磁束密度は,脳波(EEG)が記録する電位と比べ生体による歪が少なく,てんかんの電気活動の局在を高空間分解能で捕らえることができる.

●MEGでは理論上みえない電源があり,深さにより感度は急速に低下するが,てんかんの診断上は大きな欠点にはなっていない.

●ルーチンのEEG検査のみではてんかん性突発波の検出が困難であり,MEGにより検出可能となる症例が約1割存在する.

●MEG,EEG単独では決定打に欠ける所見も,双方同時に記録し判読することで診断精度が高まる.

抗てんかん薬の血中濃度モニタリング

著者: 鈴木小夜

ページ範囲:P.1071 - P.1078

●薬物血中濃度は,薬物の血中濃度が標的組織中濃度と平衡状態にあり,かつ薬理効果や副作用との間に相関関係が成り立つ場合に薬効強度の代理指標となる.

●抗てんかん薬の指標治療域は非常に狭く,多くの要因が体内動態に影響を及ぼすため,血中濃度モニタリングによる投与量・投与方法の調節(個別最適化)が有用である.

●抗てんかん薬の血中濃度モニタリングは,定常状態における次回投与直前(トラフ)で採血し,目標とする治療濃度域と比較する.

●血中濃度測定値は,個々の患者の臨床症状と合わせて評価しなくてはならない.

てんかんと遺伝

著者: 山川和弘

ページ範囲:P.1079 - P.1084

●てんかんは遺伝的背景の寄与の大きい疾患であるが,浸透率の低さや新生変異などにより認識されにくい.

●多くのてんかん原因遺伝子が同定されている.

●変異導入てんかんモデル動物の解析により,発症機構が明らかにされつつある.

小児科領域のてんかんと社会生活

著者: 須貝研司

ページ範囲:P.1085 - P.1092

●小児科領域のてんかんでは,発作症状と脳波所見が特徴的なてんかん症候群が多く,年齢により特定のてんかん症候群が起こる.

●てんかん症候群により治療法はある程度決まり,発作予後も発達予後も著しく異なる.

●日常生活,学校生活をあまり制約なく送るには,てんかん症候群の診断と発作症状の把握およびその連絡,危険な発作か否かの評価,好発時間と頻度,発作時の対応の事前相談,誘因の除去,が大切である.

てんかんと交通事故

著者: 松浦雅人

ページ範囲:P.1093 - P.1098

●一般に,てんかんのある人による事故は,全ての交通事故の0.25%で決して多くなく,てんかん患者の交通事故のうち発作による事故は11%で,さらに発作による事故のうちの15%は,最初の発作,すなわち避けられない発作による.

●わが国の交通事故統計では,運転中の内因性疾患による事故率が0.04%と低く,そのなかではてんかん発作による事故が比較的多いが,いずれも欧米の報告と乖離しており,実態を反映していない可能性がある.

●2013年6月に改正道路交通法が成立し,病状の虚偽申告の罰則強化や医師による任意の通報制度などが新設され,2014年6月から施行予定である.

●2013年11月に自動車運転死傷行為処罰法が成立し,薬物や病気を原因として死傷事故を起こした場合に,最高懲役刑15年の準危険運転致死傷罪が新設され,2014年5月から施行される予定である.

今月の表紙

CK creatine kinase

ページ範囲:P.996 - P.996

 2014年表紙のテーマは“生命の森”.生命活動を支える重要な物質である蛋白質のうち,実際の臨床検査でも馴染みの深い12種類の蛋白質を厳選.その3D立体構造をProtein Data Bankのデータから再構築.大いなる生命のダイナミズムを感じさせるようにそれぞれの蛋白質を配置し,並べたときには蛋白質による“生命の森”を表現します.

INFORMATION

中級者のための病理技術STEP UP講習会

ページ範囲:P.1084 - P.1084

主  催:日本臨床検査同学院 病理学・細胞診部会

担当責任者:小松京子(日本臨床検査同学院・理事)

開催場所:〒173-0081 東京都板橋区大谷口30-1

     日本大学医学部 組織実習室(B2)

開催日時:2014年8月23日(土) 13:00~18:15

     2014年8月24日(日) 9:00~15:30

     詳細はホームページをご覧ください。

千里ライフサイエンスセミナーF3―免疫・感染症シリーズ第5回〈話題のウイルス感染症の正体とその対策〉

ページ範囲:P.1084 - P.1084

日 時:

 2014年10月24日(金) 10:00~16:10

場 所:

千里ライフサイエンスセンタービル 5階山村雄一記念ライフホール

Advanced Practice

問題編/解答・解説編

ページ範囲:P.1100 - P.1100

「Advanced Practice」では,臨床検査を6分野に分け,各分野のスペシャリストの先生方から,実践的な問題を出題いただきます.

知識の整理や認定技師試験対策にお役立てください.

異常値をひもとく・20

好中球増多症(骨髄腫による)

著者: 中村小織

ページ範囲:P.1101 - P.1106

はじめに

 末梢血液を測定して白血球数(white blood cell count:WBC)が一般的に10,000/μL以上増加を示した場合,白血球増加症といわれる.主に好中球増加を認める場合が多いが,リンパ球や好酸球の場合もあるため,白血球の分画を確認する必要がある.好中球増加症は細菌性感染,炎症,組織傷害や造血器疾患を含めた悪性腫瘍,副腎皮質ステロイド薬投与などの薬物,ストレスなどさまざまな要因によって引き起こされる.慢性的な好中球増多を示す造血器腫瘍は,主に慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia:CML),慢性好中球性白血病(chronic neutrophilic leukemia:CNL)が挙げられる.また重症感染症では,幼若顆粒球の出現(左方移動)を伴うことがある,特に反応性にWBCが50,000/μL以上に増加した場合を類白血病反応といい,重症感染症や腫瘍の骨髄転移,顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor:G-CSF)産生腫瘍などでみられる1,2).本稿では,白血球増加を伴った症例3例を提示し,患者背景を踏まえつつ,データ解析と合わせて検査結果を読み取る.

樋野興夫の偉大なるお節介・9

言葉の処方箋:能力を人のために使う―効能100%,副作用なし

著者: 樋野興夫

ページ範囲:P.1108 - P.1109

 2014年6月10日(火)日本テレビ「news every.」で18時15分ごろ(約20分間)「がん哲学外来=心を救う言葉の処方箋」が放映された.「TVでがん哲学みました.大いに感銘しました」,「やっぱりがん哲学はいいなあと,しみじみ感じました」,「先生の“ことばの処方箋”は,治療費無料で,効能100%,副作用なしですね!」,と反響の大きさに驚いた.続編も企画されているようである.


 思えば,筆者は,2005年開設の順天堂医院「アスベスト・中皮腫外来」で,動揺された患者さんと面談を行った.「不安に押しつぶされそうなとき,穏やかにその気持ちを受け止めて,聴いてくれて,アドバイスをもらえたら,とても救いになります」との貴重な体験をさせていただいた.それが,2008年の「がん哲学外来」開設につながった.医療現場における「対話」の重要性の気付きであった.

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「検査と技術」9月号のお知らせ

ページ範囲:P.1032 - P.1032

バックナンバー一覧

ページ範囲:P.1044 - P.1044

書評 ―誰も教えてくれなかった―乳腺エコー

著者: 尾羽根範員

ページ範囲:P.1051 - P.1051

「何となくおかしい」が理論的に裏付けられる書

 何ともインパクトのあるタイトルの書である.乳房超音波を解説しようとすると,どうしても疾患を列記してその画像所見の特徴は……となる.いきおい検査もその所見に適合する画像を見つけようとする.検査の導入や総合的な解説としてはそれで間違いではないのだが,本書はそれと全く違う方向から切り込んでおり,まさに『誰も教えてくれなかった乳腺エコー』である.

 高分解能の装置を駆使して,普段最も多く見ているであろう正常乳腺の構造を,その画像の成り立ちから徹底的に解説を加えている.正常構造を知ってこその異常所見であるということを痛感させられ,それが小さな病変や鑑別困難な症例を見分ける道だと著者は説いている.

投稿規定

ページ範囲:P.1110 - P.1110

次号予告

ページ範囲:P.1111 - P.1111

あとがき

著者: 岩田敏

ページ範囲:P.1112 - P.1112

 6月13日(日本時間)のブラジル対クロアチア戦で幕を開けたサッカーのワールドカップ2014ブラジルも,幸い大きな混乱もなく,ドイツの優勝で幕を閉じました.残念ながらわが日本はついに1勝もできずに予選リーグで敗退してしまいましたが,選手の皆さんには,今回の悔しさをバネに,いっそうのスピードと肉体的・精神的パワーを身に付けて,4年後のロシアではぜひ優勝を狙っていただきたいと期待しております.ワールドカップサッカーが終わると今度はゴルフの全英オープンが始まり,スポーツファンにとっては寝不足が少しも解消しないまま,蒸し暑い毎日を過ごさざるを得ない日が続きます.一方,国内ではおなじみのセミたちの声とともに,夏の全国高校野球選手権大会の地区予選が始まり,甲子園を目指して,各地で熱い戦いが始まりました.高校時代に野球をやっていた筆者にとっては,夢中で白球を追っていた頃を思い出し,心が熱くなる時期でもあります.日中は明らかに40℃以上になるようなグラウンドの中で,大した水分補給もせずに,よく1日中走り回ることができたものだと,いまさらながら感心しています.現在は熱中症にならないよう,水分を補給しながら朝のウオーキングを続けるのが,無理せずにできる唯一の運動となっておりますので…….

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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