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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査59巻3号

2015年03月発行

雑誌目次

今月の特集1 検査システムの更新に備える

著者: 三浦純子

ページ範囲:P.209 - P.209

 病院情報システムと検査部門システムはいつの間にか広く日本中に普及していました.それは,あたかも“空気”のように自然であり,一度使い始めたら後戻りできません.例えば,後戻りを想像させる出来事として,システム障害があります.システム障害が短時間でも発生すると,検査オーダや検査予約,会計情報の伝達が紙運用になったり,検査結果の閲覧が電子カルテからできなくなったりして病院中大混乱となり,私たちはシステムの重要さを再認識させられます.いったん導入すると5年から遅くても8年後には必ず更新が必要となり,今のところ逃れる術がありません.何度も訪れるその更新に私たちは常に備えを固めなくてはなりません.どうせなら,更新を業務改善の大チャンスとして捉え,システム先進施設を完成,維持することをお勧めします.本特集がそのお役に立てたら光栄の極みです.

病院情報システムと検査部門システム

著者: 松戸隆之

ページ範囲:P.210 - P.215

●病院情報システム(HIS)は医師の指示情報を伝達するオーダエントリーシステムと診療記録としての電子カルテを中心に構成されている.

●検体検査システムはHIS側からみれば,オーダと検体に対して検査結果と検査実施情報を返す1つの分析装置のようにみえる.

●検査部門内における検体検査システムは,HISからのオーダの取り込みと分析装置への配信,結果の収集と送信を行うほか,精度管理など,各種の業務管理機能を提供する.

●生理検査システムは患者受付と検査の実施管理を基本とし,データファイリングと配信,レポート作成支援機能などが付加されるが,データファイリングはフォーマットが統一されていないためマルチベンダ化が難しい.

検体検査システムの導入による検査室運営の質改善と稼働維持

著者: 三浦ひとみ

ページ範囲:P.217 - P.223

●検査室の質改善のために,さまざまな視点から検体検査システム(LIS)を活用した機能を構築できる.

●LIS導入のためのメーカー選択の際には,はじめに検査室としての要求事項を明確にし,より具体的な提案を依頼することが望ましい.

●導入時の体制では,個別要望の集約と情報共有を行いながら,全体の進捗管理を行うことが重要である.

●セキュリティー対策や稼働後の維持体制なども導入前に確認しておくことが必要である.

病理検査システム—初心を忘れずに

著者: 石田芳水

ページ範囲:P.225 - P.230

●現場主体で,培われた病理システムは進化し続ける.

●病理診断業務に一番大切なことは,患者履歴である.

●切り出し,薄切処理における検体取り違えをバーコード管理システムにより防止する.

●病理レポートの確認漏れによる治療の遅れ防止対策が必要である.

●好みのパーツの組み合わせにより,シンプルで安価な病理システムの提供を可能とする.

生理検査システム

著者: 三浦純子

ページ範囲:P.232 - P.237

●常に次期システム更新を意識する.

●全ての心電図検査をオンライン化する.

●電子カルテから超音波動画や脳波波形も閲覧可能となる.

●3施設のデータを一元化管理している.

●超音波報告書を検査項目別にカスタマイズする.

検査部門システムの更新計画

著者: 白石周一

ページ範囲:P.238 - P.242

●部門システム更新時こそが業務改善のチャンスである.

●更新スケジュールを把握する.

●更新であってもシステム仕様書を作成する.

●保守内容を理解して契約する.

●効率の向上を追求する.

検査部門システムのコスト

著者: 山田千枝子

ページ範囲:P.244 - P.249

●検査部門システムは,複数の異なる機能のシステムから構成されている.

●システム更新計画は,まず,現状の“みえる化”を行う.

●病院全体のシステム更新計画と整合をとり全体最適化を目指す.

●コストダウンのためには,システム構成(サーバー,端末)の見直し,システムメーカーの統一,他部門システムとの機能統合などの検討が必要である.

今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

著者: 曽根伸治

ページ範囲:P.251 - P.251

 輸血検査の夜勤は,検査の迅速性および正確性が要求され,臨床検査技師の業務でも非常に緊張する業務です.また,輸血検査は比較的マニュアル作業が多く,検査結果の誤りが重篤な過誤を招く可能性があります.さらに,臨床から輸血に関連するさまざまな問い合わせが多く,通常,輸血業務を担当しない技師には負担が大きい業務です.

輸血:どんなときに,どのように行うのでしょう?

著者: 山本晃士

ページ範囲:P.252 - P.256

●輸血とは血液細胞の移植であり,安易に行うべきではない.

●赤血球輸血の実施にあたってはヘモグロビン(Hb)値だけで決定せず,ほかに有効な治療法がないか検討したうえで判断すべきである.

●新鮮凍結血漿(FFP)の輸血に際しては,凝固検査結果をもとに,実際の出血症状も考慮して実施の是非を判断する.

●血小板数だけから血小板輸血の判断をするのは危険である.

夜勤担当臨床検査技師に必要な緊急輸血・大量輸血の対応

著者: 紀野修一

ページ範囲:P.258 - P.263

●夜勤帯の輸血検査・管理体制には大きな施設間差があるので,施設に応じた夜勤時の対応法を決めておく必要がある.

●緊急に輸血が必要なときにおいても,血液型は検査を2回以上行って確定する.

●緊急に輸血が必要な場合には,未交差のABO血液型同型血,ABO血液型異型適合血の使用を考慮する.

●大量出血が予想される手術では,血液センター,手術部門と情報を共有する.

●大量出血による希釈性凝固障害が疑われる場合には,凝固検査(特にフィブリノゲン値)を迅速に行い,短時間で結果を報告する.

夜勤の輸血の実際,安全な輸血のルール—医師が果たすべきこと

著者: 渡邊直英 ,   半田誠

ページ範囲:P.265 - P.268

●血液製剤は原材料に起因する感染症伝播のリスクがある医薬品である.

●輸血の際はそのリスクとベネフィットにつき十分な説明をし,同意を得る.

●輸血が適正に行われたことを診療録に記載する.

●輸血前後に感染症検査を実施するか,または輸血前後の患者血漿または血清を保管する.

●輸血による感染症が疑われた場合やその他の重篤な輸血副作用は,日本赤十字社および厚生労働大臣に報告する.

夜勤の輸血の実際,安全な輸血のルール—看護師の果たすべきこと

著者: 阪口真紀

ページ範囲:P.269 - P.273

●安全な輸血を実施するためには輸血過誤防止が欠かせない.

●ヒューマンエラーを防止するためにシステムやツールを利用する.

●緊急時の手順,障害発生時のトラブルシューティング体制を整えておく.

●安全な輸血を実施するためには,副作用の早期発見が欠かせない.

輸血の有害事象,対応はどうなっていますか

著者: 藤井康彦

ページ範囲:P.275 - P.279

●輸血当直業務は単に検査を行うのではなく,検査結果に基づいて適切な血液製剤を選択して供給する業務である.

●安全な血液製剤を選択するためには,輸血過誤を含めた輸血有害事象の知識が不可欠である.

●輸血が原因の可能性がある重篤な有害事象が発生した場合は,迅速に原因製剤の回収を行い赤十字血液センターへ報告を行う.

夜勤のための研修—どんな教育が必要か

著者: 曽根伸治

ページ範囲:P.281 - P.287

●臨床検査に特化したISO 15189や輸血業務に関連したI&Aなどの外部認証を有効活用する.

●通常業務のローテーションの一部として,夜勤業務研修を組み込んで行う.

●夜勤業務の定期的な研修やe-learningの実施で,力量の維持や確認を行う.

●臨床からの問い合わせや検査でのトラブルに対応するためにホームページを有効活用する.

今月の表紙

武運が開けた,いざ出陣(精細管)

著者: 島田達生

ページ範囲:P.208 - P.208

 NHK大河ドラマ“軍師官兵衛”のなかで,“軍師・黒田官兵衛の山崎の戦い(天王山の戦い)と明智光秀”の場面が放映された.「敵は本能寺にあり」という明智光秀の一声で明智軍は織田信長を討った.その知らせが,備中(岡山)にいる黒田官兵衛に届いた.軍師官兵衛は,毛利と和睦を行いつつ,秀吉に光秀を打つべしという書状を送った.「武運が開けた,いざ出陣」という官兵衛の号礼のもと,黒田の軍勢は一気に姫路を経て京に向かった.これが黒田官兵衛の中国大返しである.

INFORMATION

第26回日本末梢神経学会学術集会 メディカルスタッフ・レジデント実技セミナー

ページ範囲:P.249 - P.249

日 時:

 2015年9月19日(土) 10:05〜12:15

会 場:

 ホテルブエナビスタ(JR松本駅より徒歩7分)

 〒390-0814 長野県松本市本庄1-2-1

千里ライフサイエンスセミナーJ1「粘膜免疫システムの解明と免疫疾患」

ページ範囲:P.287 - P.287

日 時:2015年5月11日(月) 10:00〜16:40

場 所:千里ライフサイエンスセンタービル 5階 山村雄一記念ライフホール(大阪府豊中市新千里東町1-4-2,地下鉄御堂筋線/北大阪急行千里中央下車)

検査説明Q&A・3

輸血セットにはどのような種類があり,血液製剤への取り付けと輸血方法はどのように行うのですか?

著者: 岸野光司

ページ範囲:P.288 - P.290

■輸血セットの必要性

 患者に輸血を実施するにあたり,血液製剤専用の輸血セットを用いることが重要である1).その目的は,血液製剤の保存中に各細胞成分が破壊され,大小の凝集塊や血漿中の凝固因子によりフィブリン塊などが形成されるため,これらを血液製剤専用の輸血セットを用いて除去し安全な輸血を実施する必要がある.

元外科医のつぶやき・3

思い出深い感染症患者

著者: 中川国利

ページ範囲:P.291 - P.291

 抗菌薬や抗ウイルス薬などが次々と開発され,感染症はすでに過去の病気と思いがちであるが,いまだ感染症は時に牙をむく.外科勤務医としてかかわった患者のなかで,いつまでも記憶に残る感染症症例を紹介する.

 結核はかつて国民病といわれ,若者の死因の第1位であった.しかし,現在では罹患者は少なく,いわんや手術を要する例はごくまれである.だが,いまだ東南アジアでは結核がまん延し,来日した若者のなかにも重篤な結核が発症することがある.嫁のきての少ない東北地方の農村には,フィリピンなどからの来日花嫁が多い.その花嫁が,大量下血を主訴に緊急入院した.胸部写真では浸潤性陰影を,大腸内視鏡検査では出血を伴う多発性潰瘍を認めた.また喀痰や便からは結核菌を認め,しかも妊娠6カ月であった.そこで緊急に帝王切開を,引き続き結腸右半切除を施行した.両親や友達と離れ,言葉も通じない異国で,結核に罹患しながらの帝王切開と大腸切除,そして子育て.マスクを着けガラス窓越しにわが子を見守る母親に,エールを贈った.

遺伝医療ってなに?・3

20万円<3万円?

著者: 櫻井晃洋

ページ範囲:P.292 - P.293

Google検索で“遺伝子検査”という言葉を検索してみると,医療機関に行かずに簡単に遺伝子を調べてくれるというサイトが驚くほどの数でヒットする.いずれも唾液やこすり取った頬粘膜を専用の容器に入れて返送するもので,実に手軽である.判定する項目も癌や生活習慣病のリスクはもとより,飲酒傾向,薄毛,目の色(遺伝子より鏡のほうが正確では?),性格分析など,実にさまざまな項目が並んでおり,料金も項目数によって数千円から数万円程度であるから,安くはないものの手の届かないほどのものでもない.解析項目のなかには“乳癌のなりやすさ”というのもある.今や乳癌は日本人女性の7%が生涯のうちに罹患するcommon diseaseであるから,切実な関心をもつ人も多いだろう.第1回に女優のアンジェリーナ・ジョリー(以下,アンジー)が,遺伝子診断の結果をもとに予防的乳房切除術を受けたことに触れたが,遺伝性乳癌卵巣癌症候群の原因遺伝子の検査は,わが国では現在20万円ほどの費用がかかる.病院に行く手間もかかるし採血だってちょっと痛い.これに対してインターネットの検査は数万円で,乳癌リスク以外の数百にも及ぶ項目も判定してくれるなら,そちらのほうが断然お得,と思う人がいても不思議ではない.いや,そのように思うほうが自然だ.実際に筆者はそうした質問をすでに何度も受けている.“乳癌”と“遺伝子検査”というキーワードを共有する両者の違いについて,一般市民のどれくらいが正確に理解できているだろうか.

研究

聴性脳幹反応(ABR)の生理的変動要因の検討

著者: 荒川恭子 ,   高安健人 ,   横田進

ページ範囲:P.295 - P.299

 誘発電位は各種の生理的要因に影響を受け,体温低下はその生理的要因の1つである.本研究では,体温低下の要因となりうる欠食や寒冷刺激による血流動態などの生理変化が聴性脳幹反応(ABR)各波の潜時に影響するか否か検討した.冷水負荷によりABR各波の潜時は有意に延長し,摂食後の潜時は欠食時と比較して有意に短縮した.日常遭遇する自然刺激において脳内の興奮伝導が変化している可能性が示唆され,臨床検査においても患者の状態を十分に精査して評価する必要があることがわかった.

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書評 トラブルに巻き込まれないための医事法の知識

著者: 宝金清博

ページ範囲:P.216 - P.216

医師の視点から,実例に沿って法律を解説した稀有な一冊

 メディアを見ると,医療と法の絡んだ問題が目に入らない日はないと言っても過言ではない.当然である.私たちの行う医療は,「法」によって規定されている.本来,私たち医師は必須学習事項として「法」を学ぶべきである.しかし,医学部での系統的な教育を全く受けないまま,real worldに放り出されるのが現実である.多くの医師が,実際に医療現場に出て,突然,深刻な問題に遭遇し,ぼうぜんとするのが現状である.その意味で,全ての医師の方に,本書を推薦したい.このような本は,日本にはこの一冊しかないと確信する.

「検査と技術」3月号のお知らせ

ページ範囲:P.273 - P.273

バックナンバー一覧

ページ範囲:P.299 - P.299

投稿規定

ページ範囲:P.300 - P.300

次号予告

ページ範囲:P.301 - P.301

あとがき

著者: 佐藤尚武

ページ範囲:P.302 - P.302

 この編集後記は午年から未年に移行する年末・年始の期間に書いています.東京地区は比較的穏やかな年の暮れと年明けを迎えていますが,全国的にはなかなかの荒天に見舞われているようです.普段は雪の便りをあまり聞かない四国でも,大雪による集落の孤立などが報道されています.このところ毎年のように異常気象を感じさせるニュースが世間を騒がせていますが,年の初めにあたって,今年1年が平穏に過ぎることを願わずにはいられません.

 さて,今月号の第1特集は「検査システムの更新に備える」です.検査システムに限らず,病院のシステム化,コンピュータ化は現代医療においては必要不可欠な要素になっています.これは50年ほど前にはほとんど考えられることのなかった問題で,現代医療において激変した点の1つです.そして恐らく,現在は医療のシステム化の過渡期にあると考えられます.さらに50年ほどが経過すれば,医療システムはより洗練されたものとなり,人の労力は大きく軽減され,また医療の効率化や安全性は大幅に向上しているでしょう.しかし現在は,残念ながらまだそこまで到達していません.システム化に携わったことのある方はご存じでしょうが,システム化に多大な労力と費用を要するにもかかわらず,なかなか満足のいくシステムが構築されていないのが現状です.本特集は,そのような現状において検査システムを更新する際のknow-howが詰め込まれています.これまであまり焦点が当てられてこなかった内容であり,臨床検査の現場において役立つ点が多々あると考えますので,是非通読していただきたいと思います.これが将来の,より完成された医療や検査システムへの道標になるものと信じています.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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