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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査59巻4号

2015年04月発行

雑誌目次

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症

著者: 山田俊幸

ページ範囲:P.307 - P.307

 尿酸は一般の方にもなじみが深く,健康診断では注目度の高い検査項目の1つです.しかし,健診直前にビール絶ちをすればいいなどと,誤解されている向きもあります.プロフェッショナルとして,ここで尿酸に関して知識を整理かつ高めておきましょう.本特集では多方面から尿酸にアプローチしました.まず,痛風・高尿酸血症の診療の現況が概説されています.ガイドラインの整備が進んでいることがわかります.次に,遺伝素因を含めた尿酸代謝の機構が紹介されており,何が尿酸値を規定するかについて理解が深まります.最近話題となっている生活習慣病との関わりにも焦点をあてており,尿酸の新しい側面がみえてきます.多くの人が興味をもつ,食事と尿酸の関係について栄養学の立場から解説されています.最後に,尿酸測定の現況と問題点を整理しました.どこでも検査されている尿酸ですが,奥が深いことを感じていただけたら幸いです.

高尿酸血症・痛風診療overview

著者: 寺井千尋

ページ範囲:P.308 - P.312

●痛風の治療は関節炎治療と高尿酸血症の治療からなる.

●わが国の成人男性における高尿酸血症の頻度は20〜26%,痛風の頻度は1.0〜1.5%である.

●痛風関節炎は尿酸塩結晶が自然免疫系を活性化することで生じる.

●尿酸降下治療の目的は痛風関節炎や尿路結石・腎障害など尿酸(塩)沈着による障害の防止である.

プリン体代謝と血清尿酸値が高くなるメカニズム

著者: 細山田真

ページ範囲:P.314 - P.319

●プリン新合成経路の活性亢進もしくはサルベージ経路の活性抑制に伴って,血清尿酸値は上昇する.

●尿酸トランスポーターURAT1の機能亢進により,腎臓での尿酸再吸収が増加して,血清尿酸値は上昇する.

●尿酸トランスポーターABCG2の機能低下により,腸管での尿酸分泌が低下して,血清尿酸値は上昇する.

生活習慣病と尿酸

著者: 辻裕之

ページ範囲:P.321 - P.326

●高尿酸血症は痛風関節炎発作以外にも,高血圧,メタボリックシンドローム,心血管疾患(CVD),慢性腎臓病(CKD),および尿路結石など,数多くの病態と関連している.

●尿酸は高血圧,腎障害および血管障害を直接促進している証拠がある.

●分子レベルで尿酸は抗酸化作用をもち,酸化ストレスを軽減して疾患を防御している可能性も考えられる.

食事と高尿酸血症

著者: 本田佳子

ページ範囲:P.327 - P.331

●過食,高プリン体・高脂質・高蛋白食の嗜好,常習飲酒などの生活習慣を修正する.

●脂質,ショ糖・果糖の摂取コントロールによる摂取総エネルギー量の適正化を図る.

●尿酸産生の亢進を抑制するために蛋白質の過剰摂取を避ける.

●血清尿酸値への影響を最低限に保つ目安量は,日本酒1合,ビール500mL程度である.

●痛風の発作を予防するために就寝前や夜間に水分補給を行う.

尿酸測定の現状と問題点

著者: 高浪勝利

ページ範囲:P.333 - P.337

●わが国における尿酸測定値の施設間差は非常に小さい.

●測定精度を保つためには,標準化体系に従うことが重要である.

●ラスブリカーゼが投与された検体を室温に放置すると,尿酸が速やかに分解されるため,薬剤の添付文書に従った操作が必要である.

今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

著者: 岩田敏

ページ範囲:P.339 - P.339

 感染制御には感染防止対策と感染症診療の2つの要素があり,それぞれがクルマの両輪として機能しています.いずれの活動を行うにも職種横断的な連携・協力が必要であり,そのなかで検査部門はいずれの活動においても重要な役割を果たしていると思います.2012年4月の診療報酬改定で感染防止対策加算が算定できるようになり,感染制御活動における施設内外での連携が,強く求められるようになりました.さらに,2014年4月の診療報酬改定においては,感染防止対策加算1を取得する条件として,JANISなどのサーベイランスへの参加が義務付けられることになり,検査部門の役割がより一層重要視されるようになっています.また,感染制御活動における連携以外に,感染制御の領域における人材育成や卒前卒後教育においても職種間の連携が求められています.本特集では,感染制御におけるさまざまな連携において,検査部門がどのようにかかわっていったらよいのか,実際の活動を通じて解説していただきます.

感染防止対策加算に必要な連携とは

著者: 三澤成毅

ページ範囲:P.340 - P.346

●感染防止対策加算は,医療機関における感染対策活動に対する評価として設けられた.

●感染防止対策地域連携加算は,地域における人的資源を含む医療資源を相互に効率よく利用するために設けられた.

●感染対策活動の効果を客観的に評価し,連携機関と比較するため各種のサーベイランスを行う必要がある.サーベイランスではベンチマークデータを設定する.

●臨床検査部門では,日常の微生物検査データやサーベイランスを行ってベンチマークデータを集計し,感染制御チーム(ICT)活動へ参加しなければならない.

地域における連携の実際

著者: 村上啓雄 ,   渡邉珠代 ,   深尾亜由美 ,   土屋麻由美 ,   丹羽隆 ,   太田造敏 ,   中山麻美 ,   河合直樹

ページ範囲:P.348 - P.355

●2000年度から「岐阜院内感染対策検討会」を開催し,医療機関,高齢者施設,保健所,自治体との相互情報交換・共有を行ってきた.

●2005年度から岐阜県健康福祉部と連携して,院内感染対策相談窓口・Q&A集の発行,病院訪問実地指導,アウトブレイク時の改善支援,岐阜県予防接種センター,岐阜県リアルタイム感染症サーベイランスなどを継続してきた.

●これらにより極めて円滑に,2012年度からの「院内感染防止対策加算・地域連携加算」算定病院間連携を県全体でコーディネートし,全加算病院から感染制御の質を評価するデータを収集・分析することができ,可視化したデータをフィードバックする体制構築につながった.

●アウトカムとして全加算病院の感染制御チーム(ICT)活動の実態把握・共有ができ,ICTミーティング・ラウンド回数の適正化,アルコールベース速乾式手指消毒薬使用量および血液培養2セット率の有意な経時的増加が達成され,各施設においては自施設の立ち位置・レベルの確認や課題・目標を提示することができた.

人材育成による連携

著者: 國島広之

ページ範囲:P.356 - P.360

●人材育成は医療機関にとっても最も重要な業務の1つである.

●地域連携により,基幹病院の微生物検査技師に加えて,一般の検査技師や検査センターの検査技師のレベル向上も期待できる.

●感染症は地域全体の共通課題であることから,社会への啓発活動が重要である.

アウトブレイク事例における連携

著者: 矢越美智子 ,   谷道由美子 ,   矢内充

ページ範囲:P.361 - P.366

●細菌検査担当の臨床検査技師は,病院感染を監視する姿勢で業務に取り組む.

●病院感染で注意すべき微生物が検出された場合には,感染対策部門に速やかに連絡する.

●異なる職種間で連携するには密なコミュニケーションが重要である.

学生教育における連携

著者: 三鴨廣繁 ,   山岸由佳

ページ範囲:P.367 - P.370

●感染制御は,チーム医療として実施される横断的診療である.感染制御は多職種による活動が大切であるが,耐性菌や特殊な微生物を最初に発見(検出)する臨床検査部門の役割は非常に大きい.

●微生物検査部門を感染制御部内に一体化するメリットは感染に関する情報が有機的に1つの場所に集まることであり,また柔軟な対応を取ることも可能になることである.

●さらに,研修医,医学部学生,薬学部学生,臨床検査を学んでいる学生,看護学部学生などが,感染症治療ラウンドや環境ラウンドに参加することは,次世代の感染制御担当者の育成にとって極めて有意義である.

今月の表紙

手をつなごう(ニューロン)

著者: 島田達生

ページ範囲:P.306 - P.306

 孫が通う小学校の運動会を観に行った.子どもたちが互いに手をつなぎ,輪を作って楽しく踊っていた.多くの人と手をつなぐことによって,仲間が増え,和をもってより楽しく仕事ができる.

INFORMATION

第21回第1種ME技術実力検定試験および講習会のお知らせ

ページ範囲:P.337 - P.337

 一般社団法人日本生体医工学会では,ME機器・システムおよび関連機器の保守・安全管理を中心に総合的に管理する専門知識・技術を有し,かつ他の医療従事者に対し,ME機器・システムおよび関連機器に関する教育・指導ができる資質を検定することを趣旨とした第1種ME技術実力検定試験ならびに講習会を下記の要領で開催いたします.


【講習会】

東京会場:2015年4月5日(日) 9:00〜18:00

     定員200名,帝京平成大学池袋キャンパス

大阪会場:2015年4月12日(日) 9:00〜18:00

     定員150名,コングレコンベンションセンター

札幌会場:2015年4月19日(日) 9:00〜18:00

     定員50名,北海道大学大学院保健科学研究院

千里ライフサイエンスセミナー〈脳内環境の破綻としての疾患研究フロンティア〉

ページ範囲:P.355 - P.355

日 時:

 2015年7月8日(水) 10:00〜15:40

場 所:

 千里ライフサイエンスセンタービル 5階

 山村雄一記念ライフホール

 (地下鉄御堂筋線・北大阪急行 千里中央駅 北口すぐ)

検査説明Q&A・4

血液製剤の保存温度と血小板製剤を振とう保存する理由を教えてください.また,保冷庫における保管管理を教えてください.

著者: 岸野光司

ページ範囲:P.371 - P.373

■血液製剤の保存温度

 日本赤十字血液センターより血液製剤が納品された際は,輸血バッグ破損,溶血の有無,細菌汚染による色調変化など外観を確認後,①赤血球製剤は2〜6℃で保存,②血小板(platelet concentrate:PC)製剤は20〜24℃で水平振とう保存,③新鮮凍結血漿製剤は−20℃以下の適正な保存温度で出庫まで専用保冷庫に保存する.

遺伝医療ってなに?・4

GATTACAの現実

著者: 櫻井晃洋

ページ範囲:P.374 - P.375

遺伝を専門とする医師はやはり産婦人科医,小児科医が多いが,筆者はもともとこの世界ではマイノリティーといえる内分泌内科医である.日常での遺伝外来診療も周産期や小児期疾患はその領域の医師に依頼し,自分は遺伝性腫瘍をはじめとした成人疾患を担当することが多い.そんな筆者が半分素人,半分スペシャリストの視点で出生前診断を考えてみる.

 1997年封切りの“GATTACA”という米国映画で描かれているのは受精卵の選択によって生まれてきた“適正者”と自然な出産で生まれた“(欠陥をもつ)不適正者”という社会階層ができている近未来の世界である.つまりこの映画の世界では,現在生きているわれわれは全て“不適正者”ということになる.“不適正者”として生まれ,誕生時のゲノム解析から推定寿命30歳と宣告された主人公が“適正者”にしか許されない職業をめざし,事故にあった“適正者”から生体情報を買い取って本人になりすます.この“適正者”の事故の経緯も彼が住む家の階段のフォルムも非常に象徴的なものだがそれを書くことは自重しよう.興味のある方は明日にでもレンタルDVD店へどうぞ.

元外科医のつぶやき・4

超音波検査

著者: 中川国利

ページ範囲:P.376 - P.376

 超音波検査は患者への侵襲がなく手軽に行える検査であるため,広く普及している.健康診断では検査技師により腹部,心臓,乳房などの超音波検査が施行され,多くの詳細な臨床情報が得られている.特に外科医は腹部所見を容易に把握できるため,聴診器替わりに多用している.有用性の高い超音波検査であるが,その検査装置開発の歴史は浅く,私の医師人生とともに進化した感がする.

 私が医学生であった1970年代初頭,母校では超音波検査装置を開発しつつあり,将来性が大いに期待されていた.しかし,暗室で腹部にビニール製の水袋を置き,ぼんやりと描出される肝臓の画像を見せられると,臨床応用するまでにはまだまだ時間を要すると思えた.一方,泌尿器科でも経肛門的超音波検査が試みられ,前立腺癌診断にはより早期に応用される感がした.

短報

抗酸菌染色により診断した肺放線菌症の1例

著者: 武田玲子 ,   柿島祐子 ,   溝口徳子 ,   多和田行男 ,   橋井美奈子 ,   藤村政樹

ページ範囲:P.379 - P.383

 一般的に非抗酸性といわれるActinomyces属を抗酸菌染色Ziehl-Neelsen法で検出し,微好気培養により分離・培養・同定し得たActinomyces graevenitziiによる肺放線菌症の1例について報告する.

 患者は61歳,男性.生活保護施設での検診時に胸部単純X線写真で異常陰影を認め,当院を受診した.外来初診時の抗酸菌染色Ziehl-Neelsen法では,弱酸性の分岐した細長い菌が少数みられた.結核菌群核酸増幅検査は陰性,Gram染色は陽性桿菌2+,培養1週間後,追加した炭酸ガス培養のチョコレート寒天培地に立体的なパン屑様の特徴的なコロニーが3+発育した.リボゾームRNA遺伝子解析によりActinomyces graevenitziiと同定した.

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「検査と技術」4月号のお知らせ

ページ範囲:P.319 - P.319

バックナンバー一覧

ページ範囲:P.331 - P.331

書評 トラブルに巻き込まれないための医事法の知識

著者: 篠原幸人

ページ範囲:P.377 - P.377

医療従事者の目から見た,他に類を見ない解説書

 交通事故大国というイメージが強い米国でも,実際には年間の交通事故死者数よりも医療事故死者数のほうが多いだろうと言われている.今から8年ほど前のNew England Journal of MedicineにHillary ClintonとBarack Obamaが連名で,医療における患者の安全性の関して異例の寄稿をしたほどである.

投稿規定

ページ範囲:P.384 - P.384

次号予告

ページ範囲:P.385 - P.385

あとがき

著者: 佐藤尚武

ページ範囲:P.386 - P.386

 今シーズンのインフルエンザは,いつものシーズンより早く流行が始まりました.2009年は新型インフルエンザ〔A(H1N1)pam09〕が流行したので例外ですが,近年では最も早い時期の流行だったと思います.私は12年前に現在の病院に移って以来,感染対策にかかわっています.その関係で,感染症に関する病院の統計資料を作成していますが,年が明ける前に本格的な流行期に入ったのは初めてです.これまでは例年,年が明けてから患者数のピークを迎えていましたが,私が所属する施設では,今シーズンは年末年始の休み期間に患者数のピークを迎えました.そのため,この休みの期間用にストックしておいたインフルエンザの迅速検査キットが底をついてしまい,休み期間中に緊急でキットを入手する必要が生じました.また,このような状況なので,アウトブレイクを起こさないかどうかも大変気掛かりであり,今回の年末年始の休暇は,気の休まることはありませんでした.

 さて,今月号の第1特集は「奥の深い高尿酸血症」です.高尿酸血症が痛風の原因となることは知っていましたが,それ以外にも心血管疾患(cardiovascular disease:CVD)や慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)などさまざまな疾患と関係していることを知り,まさに奥が深いと痛感致しました.高尿酸血症をきたすメカニズムについても新たな知見が得られ,高尿酸血症の遺伝的素因などについても解明が進んでいるようです.テレビコマーシャルでも,最近はプリン体の含有量が少ない飲料が人気を得ており,尿酸値に対する一般人の関心も高まっているようです.その意味で非常にタイムリーな企画といえるのではないでしょうか.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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