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雑誌目次

論文

臨床検査6巻11号

1962年11月発行

雑誌目次

小特集 ここを注意して下さい

今年の二級臨床病理技術士試験から

著者: 木村義民 ,   影山圭三 ,   阿南功一 ,   福武勝博 ,   鈴木秀郎 ,   長尾透 ,   江部充

ページ範囲:P.779 - P.787

 昨年に引き続き本年もこの小特集をお送りします。二級試験の受験者は質的にも年々向上しているのですが,一方,ちょっとした不注意から失敗する人も相変わらず多く,中には相当反省を要する人もいる点例年のとおりです。特に実地試験においてそれが顕著です。この観点から本欄では昨年よりももっと突込んだところ,たとえば具体的に実例をあげて解説していただくという方針をとりました。受験者諸氏には合否を問わず熟読せられんことを望みます。なお,執筆者の多くが主任試験委員でありますが,この際日本臨床病理学会と直接の関係なくあくまで個人の資格でお書きいただいたので,この点おことわりいたします。

グラフ

顕微鏡操作の基本

著者: 堀内篤

ページ範囲:P.721 - P.728

 わかりきったことだと思ってやっていることが案外まちがっている…….そういうケースがままあるものです。ここに示す操作法も95%までは誰でもしっているかもしれません。しかし、あとの5%も正しいものにしたいものです。顕微鏡を生かすも殺すも、その5%の知識によることがあるからです。

技術解説

顕微鏡操作の基本

著者: 堀内篤

ページ範囲:P.729 - P.731

はじめに
 顕微鏡は高度の精密器械であるから,その取り扱いは慎重に行なうべきである。さらに付属した装置を充分に活用しなければ立派な観察はできない。臨床病理技術士の試験をしてみると,顕微鏡の装置の活用が充分でない人も多いが,もっとそれ以前の基本的な顕微鏡の取り扱い方を知らない人もみられた。従ってここではごく基礎的な事項についてグラフを参照しながら述べてみたい。

白血病細胞検査法(1)

著者: 木村禧代二

ページ範囲:P.733 - P.736

はじめに
 白血病はウィルヒョウ(Virchow)により患者の血液が灰白色の外観を呈するがゆえに命名された疾病名である。しかしこの病気の外部症状の一部はすでに遠くヒポクラテス(Hippokrates)の時代より知られており,またウィルヒョウ以前においても多くの研究者,臨床家は血液の半膿様外観に気づいていた。大切なことはこのような血液の膿様変化が1844年ドンネ(Donné)により白血球によることが確認されたことで,ここにおいて始めて血球と白血病が親密な関係を持つに至った。その後19世紀に至り,この白血球の変化が脾腫,リンパ節腫,骨髄の変化と一定の関係を有することが見出される一方,血球の系統発生に関する知見の進歩に伴い現在のごとく骨髄性,リンパ性あるいは単球性と呼称される白血病の存在が信ぜられるようになった。しかし後述するごとく好中球白血球の母細胞である骨髄芽球,リンパ球の母細胞であるリンパ芽球(幼若リンパ球),単球の母細胞である単芽球(幼若単球),あるいはその他の血球の母細胞との間にはまだ明確な鑑別点が存せず,その決定は多くの手技の総合所見の上になされねばならない。従って白血病の細胞学的分類は常に関係学会の議論の対象として取り上げられている。

糖タンパク質の定量法

著者: 紺野邦夫

ページ範囲:P.739 - P.742

はじめに
 タンパク質とタンパク以外の物質とが結合しているものを複合タンパク質と呼んでいる。結合物質が糖質の場合,これを糖タンパク質と称する。血清タンパク質中にも糖と結合したタンパクが存することは昔から知られていた。そしてその結合の様式についてもいろいろと研究され,また結合の強さに従った分類等も試みられている。また血液中の糖タンパク質の起源,分析,その生理的意義,病気との関係等いまだ解決されてない問題が山ほどあり,それらに関する綜説も多く発表されている。ここではそのようなことには触れず,糖タンパク質,特に血清中の糖タンパク質の定量法について述べることにする。

膿の細菌検査法

著者: 永井吉造 ,   佐伯勝男 ,   細谷省吾 ,   林宏

ページ範囲:P.745 - P.750

はじめに
 創傷処理方法の進歩,各種抗菌製剤の発達にともない,化膿性疾患は著しく処理しやすくなった。しかしながら,他方では抗菌製剤に対する耐性菌の増加や,ブドウ球菌による病院内感染の問題がある。
 適正なる抗生物質や抗菌剤の使用により,これら薬剤に対する耐性菌の発生を減少せしめ,疾患の治癒を早めなければならない。このため膿をはじめ各種細菌検査が必要である。すべての細菌を同定することは不可能であり,その必要もないが,臨床上必要な程度には迅速に検査し,その細菌の性状を明らかにしなければならない。このためには,材料の採取法に注意し,病巣によって多く検出される分布を統計的に知り,培地,培養条件をきめることが大切である。

Kitで行なう血清検査

著者: 鈴木秀郎

ページ範囲:P.753 - P.758

はじめに
 中央検査施設では常に多数の検体を取り扱わねばならない。ところが検査件数の増加は常に技術員の補充を上回っているので,毎日山積する仕事においまくられる状況である。そのためには検査法が簡単で,時間を要せず,しかも結果が確実で信頼のおける検査法が切実に要望される。
 最近このような要望にこたえて,試薬,検査用具,陰性陽性対照などを一揃いとした簡易検査法の製品が幾種類か販売されるようになった。本稿ではこれらの簡易検査法につき,原理,検査方法,意義などについて簡単に解説する。

医学常識

輸血に必要な血液型抗原と抗体(6)

著者: 竹内直子 ,   保木本幸子 ,   大野公子

ページ範囲:P.761 - P.763

VI.抗クロブリン試験(Coombs test)
 抗グロブリン試験は,1945年に再発見されて以来,免疫血液学における近年の大発見であることが認められている。この試験によって多くの新しい血液型が発見・記載され,また実用面においても,多くの生命がこの試験の感度が増すことによって救われているのである。この試験の改良に尽力した(Coombs, Mourant, RaceはRh式抗体を見い出すためのより感度の高い方法が必要だという要求にこたえたのである。当時,ABO式やRh式血液型の不適合だけでは説明のできない溶血性疾患をいろいろな人たちが経験したり,また抗—Rh抗体と明らかにわかっている場合でも,検出することができなかった例などがたくさんあったのである。これらの検査の記載にあたり,新しい血液型であるKell式血液型を彼らの例の中から載せたことは大変意義のあることである。
 この試験の原理は簡単なものである。3名(Coombs,Mourant,Race)の研究者たちは,抗体はグロブリンであるから,精製されたグロブリンを動物に注射してやれば,グロブリンに対して,また血漿や血清のグロブリン部分に対して抗体を作るであろう。そしてまた,もし抗体が赤血球に吸着されているならば,赤血球に付着したヒト抗体として動物血清による抗ヒト血清との反応として示されるであろうと考えたのである(この場合の赤血球は反応の指示薬の役目をするに過ぎないのである)。

座談会

小検査室で働く人に聞く

著者: 北林滋 ,   針生昌子 ,   佐久一枝 ,   本宮成雄 ,   佐久間敏夫 ,   三須清子 ,   樫田良精

ページ範囲:P.764 - P.775

 迅速正確というすべての検査室に共通な課題にこたえるべき工夫が検査室それぞれになされているようです。特に小検査室の場合,それが集約された形で端的に現われることになりましょう。小検査室という言葉ですが,ここでは病院の規模とは別の面から考えてみました。御出席の皆さんはいずれも東京都内のそういう検査室に勤務される方です。

研究

濾紙による尿ウロビリノーゲン定性試験

著者: 水田亘

ページ範囲:P.790 - P.791

 限られた人数で対数的に増加する検査物を処理するため検査の簡便迅速化が切にのぞまれている。検尿部門においても,タンパク,糖,アセトン,ビリルビン等の定量ないしは定性反応のための濾紙,錠剤がすでに製品化され,従来の古典的な試験管法に漸次とってかわりつつある。著者らは前にFishelらの濾紙によるスルホサリチル酸尿タンパク定性法1)について追試発表2)し,以来約2年間この方法をroutine testに使用し能率および精度の面で好結果を得ている。今回は同じくFishelらの方法1)により尿ウロビリノーゲンの濾紙による定性試験法を追試し,EhrlichのAldehyde反応と比較し,更に一部ウロビリノーゲン陽性尿について半定量法と比較し,濾紙法は試験管法に劣らない精度を有することを知った。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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