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雑誌目次

論文

臨床検査6巻12号

1962年12月発行

雑誌目次

グラフ

尿沈渣の見方(2)

著者: 林康之

ページ範囲:P.797 - P.802

検査技師のための解剖学4

著者: 横地千仭

ページ範囲:P.803 - P.804

肘部の静脈
 肘部の静脈は注射に最も多く用いられるのでその走行を知っておくことは大切である。一般に静脈は動脈と並んで走るのが普通であるが,腕とか脚では皮下に独走している静脈がある。これらは皮静脈と名付けられている。
 腕においては手背から起こった静脈は屈側にまわり2本の平行する静脈となって上にのぼり,小指側のものは尺側皮静脈と称し上腕のつけ根のところで深部を走る上腕静脈に合流する。母指側のものは橈側皮静脈といい,三角筋と大胸筋の間を走って鎖骨の下で腋窩静脈に注ぐ。肘部で両者を結んでいるのを肘正中皮静脈といい,深部の静脈とも連絡がある。これらの静脈からカニューレを入れて心臓に到達させることもできる。皮静脈は個人的に非常にいろいろな型があるので下にその割合を示した。

技術解説

ガスクロマトグラフィー

著者: 高橋善弥太

ページ範囲:P.805 - P.809

はじめに
 ガスクロマトグラフィーは最近の測定法の中で最も輝かしい進歩の一つである。この発達は多数の学者の貢献によるものであるが,ペーパークロマトグラフィーで有名なノーベル賞受賞者Martinとその弟子Jamesの業績が特に大きなものである。彼らの論文が出たのは今から10年前であるが,以来ガスクロマトグラフィーは応用化学・生化学方面に著しい勢いで滲透した。その理由は今までに得られなかったほどの高い分離能力,分析速度,オートメーション的性格などにある。

白血病細胞検査法(2)

著者: 木村禧代二

ページ範囲:P.811 - P.816

II.白血病細胞の特性とその検査法(つづき)
B.安定オキシダーゼ反応(SchultzeのNadi反応)
i)試薬の調製
第1液:α—ナフトール液(α—Naphtol液)
 α—ナフトール1.0g,蒸留水100.0mlを混合加熱溶解する。この場合α—ナサフトールが溶け始めるまで熱した後,びんを振盪しながら,2.5%水酸化ナトリウムを滴加するとα—ナフトールはよく溶解する。冷却すると結晶が析出するから,その上清をとり褐色びんにたくわえる。試薬は使用のたびごとにパラフィンにて密閉,氷室に保存しなければならない。

感受性ディスクによる細菌の薬剤感受性検査の実際

著者: 小酒井望

ページ範囲:P.819 - P.822

はじめに
 化学療法の発達・普及に伴い,化学療法剤の選定を目的とした感受性検査は,適正な化学療法を行なうための必須の臨床検査となった。
 ところで臨床検査室で日常業務として行なう感受性検査には,もっぱら市販の感受性ディスクが用いられる。

甲状腺疾患の血清学的検査法

著者: 阿部薫

ページ範囲:P.823 - P.826

はじめに
 最近橋本病をはじめとする各種甲状腺疾患に甲状腺自家抗体,すなわち自分の甲状腺組織成分と反応するような抗体が証明されることが明らかにされ,かかる抗体を血清学的に測定することが広く行なわれ,甲状腺疾患における臨床検査の1項目に加えられるようになりつつある。
 現在使用されている当抗体の主な血清学的検査法は,沈降反応,タンニン酸処理血球による感作血球凝集反応,補体結合反応である。

脳波検査法

著者: 本間伊佐子

ページ範囲:P.829 - P.835

はじめに
 最近エレクトロニクスの発達に伴い,いろいろの現象を電気的に記録しようとする傾向が高まっている。ここ数年来脳波はその意義の重要さが認められ装置の普及とともに急速の発展を示した。神経・神経外科,精神科,内科,小児科などの各疾患に対して重要な検査の一つとして広く応用されている。
 しかしその現象が単純でないために,その取り方に決った方式がなく,自分で適当と認めれる方法を適宜に用いている状態である。最近その対策として国際脳波学会で基準となるような脳波検査技術指針が提案されている。わが国でも脳波計についてはメーカーを含めた規格委員会で,すべて同じ性能をもつ脳波計を造ることに一致している。機械の種類,記録の方法,整理などはまだ検査室によって異なった方法が随時に用いられている。しかしその記録所見はその検査室外に出されても通用するものであること,検査技師は他所の脳波計をも理解し,操作できることが望ましい。

レクチュア

梅毒血清反応の進歩

著者: 松橋直 ,   三須清子 ,   北林滋 ,   佐久一枝 ,   本宮成雄 ,   針生和子 ,   佐久間敏夫

ページ範囲:P.836 - P.841

今号の座談会は新しい試みとして,いわば講義風なスタイルでお見せします。これは臨床検査のある領域の進歩というようなことをテーマに一人の先生にお話しいただき,そのあと出席の皆さんから質問を受けるという形式で,その方面の理解を比較的短い時間に,かつ要領よく得るのが目的です。この試みはこれからも時に応じてやっていくつもりですが,今回は「梅毒血清反応の進歩」を題目に選び,東大・松橋直助教授にお話しいただきました。(編集室)

用語解説

クロマトグラフィー

著者: 佐竹一夫

ページ範囲:P.843 - P.843

 クロマトグラフィー(クロマト)は吸着現象を利用した分離法の一つで,物質の単離,精製,確認,定量などに広く用いられている。吸着剤を使用する一番基本的な分離法は(i)溶液中に吸着剤を入れて,特定成分だけ吸着させ(ii)他の成分を含む母液と分離(iii)最後に目的成分を溶出するバッチ法である。この方法は原理は簡単であるが,吸着溶出平衡の関係上分別能率はよくない。そこで(i)吸着剤を管につめたカラムに溶液を流し,吸着を完全におこなうようにしたり(ii)試料を吸着したカラムに溶離液を流して溶出するカラム法が考案された。クロマトはこれをさらに改良した分離法である。
 これら分離にはイオン交換樹脂など,吸着剤以外の固体でも同様使用できるから,「吸着溶出法」というよりも「液相から固相への試料の捕集されかた,脱離されかたの差を利用した分離」というほうがより一般的である。クロマトでは固相はカラムなどの形として固定し移動させないから固定相,この隙間を流れる液相を移動相とよぶ。いま固定相の一部に試料があり,移動相が流れてきたとすると(i)各成分の一部は移動相に脱離して移動し(ii)固定相の新しい部分にふれるとまた捕集されて止まるという現象が何回となく繰りかえされ,試料の移動がおこる。

トピックス

酵素の新命名法

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.844 - P.845

 近年酵素学の進歩は著しく生化学的研究の大部分が酵素の探究であるといっても差しつかえないようである。日に日に新しい酵素が知られ,その性質が検討されている。新酵素が発見せられると命名されるが,従来のやり方ではかなり雑然としたもので,ほぼ慣例には従っているが明確な基準がないため,種々の混乱が招かれた。
 数種の全く別種のものに対して同一の名前がついていたり,同じ酵素であるものに対して異なった名称で呼ばれていることもあった。また酵素の性質がよく知られる前につけられた名称は酵素作用の面から見ると必ずしもふさわしいものでなく,ときには誤解をひきおこすようなこともあった。

検査室紹介

国立立川病院の新しい検査棟

著者: 佐藤乙一

ページ範囲:P.846 - P.851

まえがき
 本誌第2巻第2号で当院検査科を紹介したが,その後あらたに出されてきた整備計画やその実施ともからんで当科は以来3回の移転をした。昭和20年12月1日に元陸軍病院から国立病院に転換以来実に6回目の移転である。
 前回本誌で紹介した際の検査棟にはなお改善すべき個所は少なくなかったのであるが,当面の諸事情からやむを得ず半恒久的なもの—という心がまえで既設の木造モルタル作りのものを改造したのであった。ところがここはその後中央手術棟予定地にきまり,昭和33年10月に取り払われ,後にブロック建の中央手術棟が完成したのである。かくて検査科はせまい院内を暫定的に2回移転し,今度こそは恒久予定で昭和36年5月に当棟に移転を完了した。

研究

薬剤感性検査直接法の検討

著者: 水谷昭夫 ,   鷲津良道 ,   中本学

ページ範囲:P.853 - P.859

緒言
 近年抗生物質が乱用されるにしたがって,病原菌のなかに抗生物質耐性株が著しく増加して来たことは衆知の事実であり,特にブドウ球菌感染症や細菌性赤痢などは,その耐性株増加のため治療に困難を感じている現状である。いうまでもなく,感染症の治療にあたっては,まず,起炎菌の種類,生物学的性状,特に化学療法剤に対する感受性の有無を検し,臨床家は,選び出された薬剤の作用型式,血中濃度,病巣への移行性,患者の一般状態などを考慮に入れて,適当な薬剤を選出して,投与量投与方法を決定しなくてはならない。現在ではほとんどすべての検査室が,病的材料から起炎菌を分離培養し,これを同定し,その病原菌に対して感受性テストを施行するという,いわゆる間接法感受性検査を行なっているために,臨床医家に結果がとどくには最少43時間,普通24×(4〜5)時間の時日を要している現状である。
 もちろん,この間接法感受性検査の結果は治療効果をあげるための最も重要な指標として認められているわけであるが,この方法が絶対的なものであるとは考えられず,まだ改良の余地が残されていると思うし,臨床医家は細菌学的検査の結果が報告されるまでの間患者を放置しておくわけにはいかない。

PAS尿におけるウロビリノーゲン検査の改良法

著者: 高原節子

ページ範囲:P.861 - P.863

はしがき
 1901年,Ehrlichは尿中にP—ジメチルアミノベンズアルデヒドおよび塩酸による赤色反応物質が存在することを発見し,1903年Neubauerは本反応が尿中ウロビリノーゲンに起因すること1)を報告した。
 現在では尿ウロビリノーゲン(以下ウゲと略す)の存在を知るEhrlich反応は簡易肝機能検査法として広く臨床上利用されている。しかしPAS服用者の尿の場合Ehrlichのアルデヒド試薬(以下ア試薬と略す)を加えると黄色または赤燈色の混濁を生ずる。これは肝臓によりアセチル化されたPAS成分が遊離型と抱合型になり尿中に排出され,前者は遊離アミノ基を有するゆえにかかる呈色反応を呈するのである。

毛細管抵抗試験(tourniquet test単独陽性)と悪性腫瘍

著者: 和嶋毅 ,   竹中守人

ページ範囲:P.864 - P.865

 毛細管抵抗試験は出血時間および凝固時間の測定とともに出血傾向を有する患者の診断に日常検査法として愛用されている。私たちはこれらの検査を多数の患者に実施しているうちに毛細管抵抗試験だけが陽性に出る非出血性疾患の症例が多いことに気づいた。そこで原因が何であるか,また,いかなる疾患において毛細管抵抗試験の単独陽性を呈するか調べてみたところ悪性腫瘍を有する者において特にその頻度が高い事実を発見した。これは臨床血液学の検査室で出血性疾患の診断をする場合に常に考慮しておくべき重要な事実と思われるので,ここに私たちの調査成績を報告しようと思う。

私の工夫

PSPテストの混濁について

著者: 香川正博

ページ範囲:P.867 - P.867

 PSPテストの内のChapman—Haisted変法(15分試験法)において,可検物が提出され光電比色計で測定する場合,誰しも困ることであるが,10%水酸化ナトリウム液数mlを加えて呈色させると,可検物によると混濁が出て来る場合が非常に多い。そのため光電比色計では,濁度の影響のため測定困難である。PSPの排出量が非常に少ない場合は(—)の値となることすらある。しかし私の考えた方法で測定すれば,この困難は解除するのではなかろうか。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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