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雑誌目次

論文

臨床検査6巻3号

1962年03月発行

雑誌目次

グラフ

松江赤十字病院検査部

著者: 池田博 ,   福庭幸男

ページ範囲:P.151 - P.156

 松江赤十字病院検査部は昭和24年ごろ病理科と称された小現模な検査室をもった時代から意識されない中央化が行なわれていたが,昭和33年11月第2次病舎改築の際,鉄筋4階建病棟の1階を検査室として設計使用されるようになってから,一応中央化が完成したと考えてよいであろう。更に昭和35年4月から検査部は二部にわけられ,第一部は細菌,血清,胃カメラ,病理組織部門,第二部は生化学,一般検査,血液,生理部門を担当することになった。
 現在入院患者数500,外来患者数1日630という綜合病院で島根県の基幹病院と自負するものの,独立採算の枠でしばられ,地方都市の立地条件であるので,現在の設備,内容とも理想とはほど遠いものであるが特に与えられた条件の中で最大の能率をあげ,常に正確な検査成績を報告できるように,あれこれ工夫を重ねているところである。検査室の総面積は延べ227m2人員は医師3名(いずれも兼務),技術員13名(男4名,女9名),昭和35年度の総検査件数123,000,1件当たりの点数は約11.4点である。

試験管のバラツキ

著者: 高橋昭三

ページ範囲:P.157 - P.158

 ①写真にならべたのは,いわゆる小試験管ですが,中に3mlの水をピペットで量って入れてあります。小試験管とはこういうものとお考えの方もありましょうが,底の半球状になった部分といい,太さといい,また長さもこのように違うのが多いのが現状です。むしろ,このような試験管をあきらめて使っているわけです。
 ②この写真は,①と同じものの中に,1本だけ,0.3mlを更に加えたものです。どこに加えたかは,この写真だけではわかりませんが,左から2番目の試験管がそうだということは①とじっくり見くらべれば,はじめてわかると思います。血清希釈にウイルス液を入れたか入れないかというようなとき,このような小試を使うかぎり,加えたという実験者の記憶が確かである必要が生じます。

技術解説

試験紙による尿検査法

著者: 斎藤正行 ,   荒木徳子 ,   古屋清一 ,   平出聰 ,   橋本昌子 ,   香川みち ,   田辺美佐子 ,   猪瀬栄子

ページ範囲:P.159 - P.165

 臨床医学を今日のごとく飛躍的に進歩せしめた原因を考えてみるに,その中での新しい検査法の役割は見逃せない事実である。そして最も日々の診療に結びつく尿検査法のインスタント試験紙による画期的改善は,その簡易・安定・迅速性より精度は一段と向上,検査成績は病状のタイミングに合い,かつ検査対象は数的にも質的にも大きく拡大され,気づかない潜在性病変が広くひろいあげられ,われわれの健康管理に非常な貢献をしている。しかしいくらすばらしいものであっても,それが正しく操作され,最適の場が与えられなければ威力は発揮されないことは申すまでもない。ここでは最もポピュラーの検査項目についての正しい用い方と信頼性(精度)を私たちの実験データーとともに解説して見たいと思う。

自動血球計数器(島津)による赤血球数算定の経験

著者: 原島三郎 ,   相賀静子

ページ範囲:P.167 - P.170

 病院の近代化と中央検査室制度の確立は表裏をなしており,今後ますます中央検査室制度は発展する傾向を示している。中央検査室の機能が充分に認識され利用される場合には,個々の医師が検査に当たっていた従来の小規模なやり方の場合に比し,はなはだ多数の検体の処理が必要となってくる。このため検査目的に対して充分な精度を有して,しかもなるべく簡便で短時間に検査できる方法とか,人手を要しないで多数の検体の処理が可能な自動検査器械の採用が必要となっている。
 血液検査部門でも血球数算定について以上の条件をみたす器械の出現が要望されており,すでに昭和31年に天木,原島1)は光電血球算定器について検討したことがあるが,低色素性貧血例では誤差が大であったため実用化するに至らなかった。ところが最近になってElectronicsのめざましい発達に応じて,数種の自動血球計数器が製作販売されており,その検討会2)も開かれている。著者らは島津製作所製のPES-D型を使用して赤血球数の算定を行なってみたので,その経験について述べることにする。

現像の知識(5)

著者: 宮本五郎

ページ範囲:P.173 - P.180

14.反転現像
 反転現像は一般に撮影したフィルム(または特殊印画紙)をネガ画像として利用せず,そのままポジ画像として利用するための現像である。
 フィルム(または特殊印画紙)にポジ画像を焼き付けてポジ画像をその感光材料に作る場合にも,反転現像が利用される。

オートアナライザーの使用経験

著者: 高原喜八郎

ページ範囲:P.183 - P.194

緒言
 1955年にアメリカのテクニコンインスツルメント会社から発売されて以来,自動分析器オートアナライザー(Autoanalyzer)は,オートメーション化の風潮とあいまって目下各方面に急速に普及されようとしている。聞くところによればわが国においてもすでに14台がアメリカンコマーシャル会社の手によって輸入され,あるいは醸造会社の生産管理に,あるいは大病院の中央検査室で検体の処理にその機能を発揮しており,その高能率性が知られるとともに今後ますますその需要は高まるものと予想されている。
 オートアナライザーそのものの紹介はすでに茂手木,松村氏等の記事があるが,東京医科歯科大学付属病院中央検査室生化学部においては1960年11月に購入以来,筆者らはオートアナライザーによる臨床検査業務に日夜従っているものであって,今回使用者の立場から本器を実際に操作した経験から,説明書に書かれてないような実技上の細かい点に重点を置いて書いてはとのおすすめに応じ,本誌に投稿させていただいた次第です。とりあえず数カ月の体験に基づいてありのままを報告することによって,目下この方面の知見に乏しい本器を現在使っておられる方々,また本器の使用を考慮しておられる人々のお役に立てたい所存です。

座談会

臨床検査から見た現用試験管の問題点

著者: 有宗堅之 ,   松村義寛 ,   天木一太 ,   松橋直 ,   高橋昭三 ,   樫田良精 ,   橋本宏治

ページ範囲:P.196 - P.206

 樫田 昨年の6月号に載せたガラスの話の座談会でも試験管について少し話し合いをしていますが,きょうはもう一度試験管を中心にいろいろ検討してみたいと思います。
 特にきょうは工業技術院の御担当の有宗さんにおいでいただきました。現在この日本工業規格,いわゆるJISの中に化学分析用ガラス器具の規格表があります。それで一応試験管のサイズがきまっております。先ほど申した6月号にもその抜萃が出ていますが,その抜萃では昭和28年に制定と書いてあります。現在私の手元にある割合に新しい印刷物には昭和33年4月26日制定とあります。JIS規格というものは3年ごとに更新する機会があって,そのとき異議がなければそのまま確認という制度になっております。

製品紹介

機械製試験管について

著者: 橋本宏治

ページ範囲:P.207 - P.207

 初めに機械製試験管の製造工程を述べてみますと,これは全く手加工試験管の工程と同じことでありまして,ただ人の手で行なう工程を機械が仕上げるのであります。まず仕上り試験管の約2倍の長さに切断されたガラス管を,試験管製造専用機に入れます。ガラス管は自動送りによって,まず両端の口をガス炎で焼き,リップ付の場合は型を当てて成型します。次いで中央部分をやはりガスで熱し,適当な時期に引き離すと同時に両端より空気を圧入し試験管の底の部分を成型します。この間マーク印字機によりマークをつけますが,目盛り付試験管の注文の場合は目盛りも同時につけることもできます。成型加工の完了した試験管は自動選別機で一応選別し,不良品は下へ落ち良品はそのままベルトに乗ってサマシ窯へ入って行きます。窯から出たものはひずみ検査機の上を通り2名の女子工員が再度選別します。あとは段ボールケースに50本ずつ入れ,18ミリの場合は1,000本を1カートンにして発送しております。以上の工程でフルに稼働しますと,手加工の場合とは比較にならぬくらいの量産が可能なのであります。

研究

予染による血清脂蛋白の電気泳動技術に関する研究(1)

著者: 宮原洋一

ページ範囲:P.209 - P.211

 血清脂蛋白を電気泳動的に分画するのに従来一般に行なってきた方法は,血清蛋白の場合と同じく,泳動後に乾燥を行なってから種々の好脂肪染色性色素で染色し,Ethanolもしくは流水で脱色操作をする方法1)であるが,脂蛋白の場合には結合色素まで一部脱色してしまったり,backgroundの脱色が不完全である等の難点があって再現性を低下させている。
 1955年にMcDonaldがアセチル化したSudan Black Bにょって脂蛋白をあらかじめ染色し,それを濾紙上に塗布して泳動する予染法を発表して以来この方法の研究がなされ,わが国でも伊藤氏らの報告2)があるが,一方Sudan Black Bそのものを使う予染法もMcDonald3)によって発表され,Kanabrocki4),Larkey5)によって改良されている。

私の工夫

pH-meterガラス電極部の半自動的な洗浄法の工夫/突沸防止

著者: 長谷川博 ,   相見諭

ページ範囲:P.212 - P.212

 CambridgeのPortable type pH-meterを使ってStadie typeのガラス電極セットにより血液pHを測定しておりますが,雷気回路がhigh impedanceなためか湿気,電磁誘導などの影響をうけやすく,標準緩衝液(pH6.86および4.05)を各1回吸引してメーターを調整し,排液洗浄後に検体のpHを測定し,更に元の標準緩衝液で再現性を確認するという厳密な方法で,測定誤差を0.02以内にとどめることは容易なことではありません。
 私は機械のバランスがくずれない間に迅速な測定を反復できるよう,半自動的な洗浄装置をつけてみたところ,能率が非常に向上しましたので御紹介します。

ASLOの測定に予備試験を加える工夫

著者: 西山一男

ページ範囲:P.213 - P.213

 私どもの検査室では,ASLOの測定にRantz-Randall法を使用していますが,正規の系列を全部実施すると,ストレプトリジンの対照を加えて6.5ml(13本)の診断用リジンが必要となります。標準血清を対照に加えるときは更に多量の診断用リジンが必要です。
 至近範囲を予備試験で予測し,必要範囲のみを実測する方法を試みて見ました。量的の部分を全部半量にして理想的な予備測点を求めるため,初め100,125,333,500,625Toddで比較検討しましたが,結局125,625Toddを用いるのが理想的であることに到達しました。

認定試験

第9回(昭和37年度)2級臨床病理技術士資格認定試験について

著者: 緒方富雄

ページ範囲:P.215 - P.219

受験者のみなさんに
 二級臨床病理技術士資格認定試験は,今年も7月半ばにその第9回の試験が行われます。
 受験者のみなさんが,この権威ある試験に優秀な成績をあげられますよう期待します。

第1回(昭和37年度)一般臨床検査士資格認定試験について

ページ範囲:P.220 - P.222

一般臨床検査士資格認定制度(昭和37年制定)
 近年とみに増大した近代的医療機関における一般臨床検査の重要性にかんがみ,日本臨床病理学会はここに一般臨床検査士資格認定制度を制定する。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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