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雑誌目次

論文

臨床検査6巻4号

1962年04月発行

雑誌目次

グラフ

どこを読みますか—目盛りの正しい読み方(1)

著者: 松村義寛 ,   倉科淳子

ページ範囲:P.227 - P.232

ランプスケール(反照電流計)
(写真1と2)
 ごく感度のよい電流計である。指針の代わりに光点が移動する。豆ランプで可動鏡を照らし,光点がスリガラス製の尺度の上を動く。光点の中央に黒線があり(この写真ではごく薄くしか写っていないが),黒線の位置で目盛りを読みとる。

技術解説

血小板算定法

著者: 森田久男

ページ範囲:P.235 - P.237

序言
 血小板は止血機構において重要な役割を演ずるものである。
 すなわちまず血管壁に損傷のおこった場合に,血小板がその破綻個所に集積し,相互に粘着した凝塊を作り,また血管壁断端に粘着する。これがいわゆる血小板血栓であるが,この血小板凝塊はかなり強固なもので,損傷血管壁の応急修復における意義は大きいものと信ぜられる。血友病のごとき凝血障害著明な患者の血管に切創を加えても,いったん容易に止血し(出血時間正常)得るのは血小板血栓の形成されるためと思われる。

直立拡散法—その原理と手技

著者: 工藤祐是

ページ範囲:P.239 - P.243

はじめに
 結核菌の薬剤耐性検査は,現在すべて希釈法によって行なわれている。以前にくらべれば,この方法も濃度段階を減らし,かなり簡略化されてはいるが,最近抗結核剤の種類がふえるにしたがい,労力や経済的な面の負担が大きくなる傾向にある。実際問題として,10種に及ぶ抗結核剤の耐性を,それらの薬剤含有培地を常備して,もとめに応じて円滑に検査することは,ほとんど不可能に近い(これらのうちには方法の確立されていないものもあるが)。
 このような場合,だれでも思いつくのは,腸内菌や化膿菌で,すでに広く行なわれているディスク法であろう。しかし,結核菌はこれらの菌とは大分性質が違い,実際に試みると,そのままでは応用し難い点があるのに気づく。

異染性(metachromasia)とその染色法について

著者: 春日孟 ,   太田邦夫

ページ範囲:P.245 - P.249

いとぐち
 組織や細胞の染色理論は現在のところ,充分に解明できていない。多くの場合,固定された蛋白と色素化合物が結合して,その状態で色素化合物の発色団が具現することによって染色が,その場所にあらわれる。
 一つの組織の中で異なった成分にちがった色調をもたせることは,組織を染色して観察する場合の基礎的な現象であるが,実際に用いられる組織染色は多く重染色であって,一つの色素がある蛋白体をより濃く染め,他の色素が別の蛋白体をより濃く染めることを利用している。二つの色素が同じ程度に一つの組織を染めると,この重なり合いは,あたかも二種の絵具と混合したように,たとえば青と黄色で緑が出るように複合色として出る。このことは日常用いられる組織の染色で経験されるところである。

ケーラー照明法

著者: 上野正

ページ範囲:P.251 - P.255

 最近顕微鏡においてケーラー照明ということが盛んに言われるようになった。また外国の高級顕微鏡も照明装置を内蔵して,ケーラー照明方式を採用していることを宣伝しているようである。しかしこの方法は遠く1893年ドイツのAugust Köhlerによって提案された照明法で新しいものではない。金属顕微鏡においてはこの方法によらなければ,全く観察に耐えないので,かなり前から実施されている。生物顕微鏡方面では最近やっと実用化されるようになったのは,恐らく顕微鏡写真が普及されてきたためと考えられる。事実顕微鏡写真はこの照明法を使用して初めてすぐれたものが得られる。

医学常識

輸血に必要な血液型抗原と抗体(1)

著者: 竹内直子 ,   保木本幸子 ,   大野公子

ページ範囲:P.257 - P.260

I.遺伝学
 遺伝学とは,身体の特徴を受けつぐことを研究する学問である。この遣伝という現象は,1865年イギリスの牧師,Mendelによって初めて発見されたが,彼の植物についての実験は,1900年に再発見されるまで世界に知られずに過ぎた。再発見のあった年,すなわち,1900年よりこの植物,動物の実験を通じてこれら遺伝学の研究は非常に進み,染色体地図の作成まで発展した。そしてまた,人間の遺伝学の領域においても血液型が発見されることにより一層発展したのである。
 血液型学や,免疫血液学をよりくわしく理解するためには,遺伝学の基礎的理解,ならびに細胞学の基礎的概念をつかむことが必要である。典型的な細胞は2つの異なった部分,すなわち,核と細胞質とからなっている。細胞の核の中で主要部分をなす,長い糸状の染色体(Chromosomes)といわれるものがある。この棒状の構造物は2つならんでおり,どの一対をとっても形,大きさが互いに似ていて,各々が独自の特異的な機能をもっている。以前は生命の単位は細胞だといわれたが,今日では,小さな粒子である遺伝子があり,これが遺伝を決定する最も小さい基礎的要素であるといわれる。これらは染色体の上で特別な位置をしめていて,この位置のことを遺伝子座(locus)という。身体の体細胞が分裂してできた2つあるいはそれ以上の娘細胞(daughtercells)はその両親(元の)細胞にそっくりなものができる。このように身体の成長とか,分化を支配している細胞分裂のメカニズムを有糸分裂(mitosis)といい,すべての体細胞は,受精した卵細胞から,有糸分裂の経過を経て発展して来たものである。これらの細胞の性質は二倍体(djploid)で元の両親細胞と同一数の細胞成分,遺伝子,染色体を含んでいる。

座談会

緒方富雄先生を囲んで

著者: 緒方富雄 ,   樫田良精 ,   太田邦夫 ,   小酒井望 ,   丹羽正治 ,   天木一太 ,   松橋直 ,   高橋昭三

ページ範囲:P.262 - P.269

技術士資格認定制度の誕生
 樫田 緒方先生が臨床検査にたずさわる技術者の資格試験をやろうというお考えになり始めたのは,いつごろでしょうか。
 緒方 その決定的瞬間はおぼえているのですが,年月を忘れた。ある日A君が僕の部屋へやってきた。そのときに,検査技術の試験をしてお互いに腕だめししたらどうだという話をした。何年だったかな。

一般臨床検査士資格認定制度への期待

著者: 緒方富雄 ,   樫田良精 ,   小酒井望 ,   丹羽正治

ページ範囲:P.271 - P.274

 前号に要領等を発表致しましたように,日本臨床病理学会では本年から新しく「一般臨床検査士資格認定制度」を設け,認定試験を行なうことになっています。これは大きな朗報として世に迎え入れられることでありましょう。その意義が広く認識され,それに盛り立てられてこの制度がめざましい発展を遂げることを期待してやみません。受験者各位の合格を祈りながらこの座談会をお届けします。

製品紹介

赤外線顕微鏡とその医学への応用

著者: 原島治

ページ範囲:P.277 - P.279

はしがき
 人間の目に見える波長は3,800〜7,600Åの範囲で,普通の顕微鏡ではこの間の波長しか見えない。もし紫外線あるいは赤外線まで見えるようになれば,医学における顕微鏡の利用の範囲はもっと広がることであろう。ここに述べる赤外線顕微鏡は可視光線から13,000Åまでの赤外線が見えるようにしたもので,顕微鏡で拡大した赤外線像をイメージ管という電子管をもちいて可視光線像に変換するものである。倍率は最大約1,000倍が得られる。普通の赤外線写真では有効波長はたかだか9,000Åで,写真にとって現像しないと像は見えないが,本装置では赤外像を直接見ることができ,普通のフィルムで写真をとることができる点に特徴がある。
 赤外線は可視光線より透過度がよく,とくに有機物はよく透す性質がある。従って普通の顕微鏡で見ることのできない試料の内部を観察することができる。またある生物体は特定の波長の赤外線を吸収するので,この模様を顕微鏡で拡大して見ることにより,医学の診断に応用することができる。このほか可視光線を当ててはいけない試料を見るときなど,この装置は便利である。

研究

予染による血清脂蛋白の電気泳動技術に関する研究(2)—分画別抽出法の応用

著者: 宮原洋一 ,   三浦弘人 ,   高木松子 ,   中村美好

ページ範囲:P.281 - P.284

 血清の濾紙電気泳動法において,各分画百分比を出す一般的な方法としては,Densitometerによる直接定量法と,適当な溶媒による抽出法があるが,近年分画ごとに濾紙を切断して抽出する分画別抽出法がすぐれていることが報告されている1)2)3)4)
 前報(本誌6巻3号)ではDensitometerの中でも比較的再現性の良好な,Spincoの自記光度計(Analytrol)によって測定した血清脂蛋白の電気泳動分画法について報告したが,この装置は未だ一般的に広く利用されるほど普及していないので,更に分画別抽出法を利用する方法について検討した結果,血清蛋白と同じ条件で同時に泳動すれば,繁雑な脱色操作もいらず,routineの臨床検査として手軽に行ない得るものと考えるに至った。

Candida分離用培地としての水野高田培地の検討

著者: 水谷昭夫 ,   鷲津良道

ページ範囲:P.287 - P.289

緒言
 Candida albicansによるMoniliasisについてはすでに1839年Langenbeck,1842年Grubyによる諸種の報告に接するが,その系統的な研究と臨床的観察は1800年代の終りごろからの約20年間にわたるRobin,Sabou,raud,BrumptおよびLangeronに代表される学派により確立されたものと思考される。
 Sabouraud等の確立した真菌学は,しかしながらPure botanical(純植物学的)な立場に立つ一部学派の批判を受け一時の混乱を経験したが,近時抗生物質の広範囲な利用により漸次増加の傾向をたどる真菌症に際して,いわゆるMedical-Mycology(医用真菌学)として再編成されたものは,期せずしてSabouraud等によるものに非常に近いものになったことはわれわれの興味を大きく引くものである。上記のごとき歴史的考察およびSabouraud一派のすぐれた臨床的観察態度を合わせ考えるに,医用真菌学はいわゆる純植物学的真菌学とは明らかに異なったものであるべきで,このゆえにこそ,われわれ臨床検査にたずさわるものが臨床家と手を結び医用真菌学の更なる発展に力を尽くさねばならぬことを痛感するものである。けだし近時めざましく発展した諸化学療法は細菌リケッチャおよび一部ビールス性疾患の治療面に対する絶大なる成果をあげつつあるが,また一方において真菌症の増加をもたらすかのごとくに見えるにもかかわらず,その病原体たる真菌の菌学的研究,菌学的検査法および真菌症の治療法等には今日なお充分な成果があげ得られていないと考えられる。われわれは数多くの真菌症中で最も一般的かつ症例も多いMoniliasisの研究を計画していたところ,今回幸いにも藤沢薬品工業殊式会社より,Candidaの分離用培地としてすぐれた特性を示す水野高田培地の多数の提供を受けたので,以下病的材料中よりのCandidaの分離同定について,われわれの行なった若干の実験の報告をする。

私の工夫

流パラ試験管を使わずに行なう血液ガス,pHの測定

著者: 長谷川博

ページ範囲:P.290 - P.290

 血液ガス,pHなどの測定のため採血し,これをNatelson微量ガス分析器,pH-meterなどにかけるに当たり,注射器から測定ピペットに直接に血液を移すことができれば採血量を100%活用でき,同時に流パラ試験管使用の手間が省け,随分能率的です。私はこの点につき簡単で便利な工夫をしましたので御紹介します。

私の失敗

ロダンイオンを含む胃液の乳酸検出

著者: 小野次郎

ページ範囲:P.291 - P.291

 大分古い話だが,胃液乳酸試験のBoas法について,黄色を呈すれば陽性だと教えられ,型どおり実施すると,幾らか赤味を帯びてはいるが黄色になった。分画採取した胃液全部についてやってみると,ほとんど陽性である。沈渣に桿菌酵母は認められない。しかし乳酸は乳酸醗酵によるのみでなく,血中より胃中にも排出されるといわれる。これだとばかり早速報告してしまった。後で類似反応物質ではないかと不安になり調べてみると,他の有機酸なども同様の反応を呈するとあるが,以前非行少年の喫煙の有無は,唾液を塩化鉄試薬で調べると聞いていたが,唾液中のロダンイオンはロダン鉄となって黄赤色〜赤色を呈し,昇コウを加えれば消える。また喫煙者は非喫煙者よりその量が多いといわれている。ロダンカリウム液でためしてみると,大体15mg/dl以下では赤味の比較的少ない黄赤色を呈し,昇コウを加えると消える(後に数例の空腹時胃液中のロダン量を測定したが,大体15mg/dl以下で,喫煙者に多い傾向があった)。そこで乳酸,ロダン乳酸混液についても同様に実施してみたが,昇コウは乳酸による呈色に影響せず,ロダンによる呈色のみ抑制することがわかった。これを胃液に応用して胃液滴下後昇コウを加えたら,やや白濁したが黄色は全く消えてしまった。
 結局,この胃液から乳酸は検出できず,定性検査に際しては特に類似反応に注意せねばならぬことを痛感させられた。喫煙者は非常に多いのであるから,以来私はこの昇コウ加法を用いている(1〜2%の昇コウ水溶液に10%塩化第2鉄液を滴下して希薄塩化鉄液を作り,これに胃液を滴下する)。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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