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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査6巻5号

1962年05月発行

雑誌目次

グラフ

クライオスタットを利用した迅速凍結切片作製法

著者: 石川栄世

ページ範囲:P.295 - P.299

どこを読みますか—目盛りの正しい読み方(2)

著者: 松村義寛 ,   倉科淳子

ページ範囲:P.300 - P.302

副尺(バーニアスケール)のいろいろとその読み方

技術解説

クライオスタット(Cryostat)を利用した迅速凍結切片作製法

著者: 石川栄世

ページ範囲:P.303 - P.306

I.はじめに
 クライオスタットは1938年に,デンマークのLinderstrφm-LangおよびMogensenによって初めてつくられた。彼らは低温を保つためにドライ・アイスを用いて,凍結切片を作製し,これを組織化学検査に応用した。1951年に至って,Coonsおよびその共同研究者たちは,これにいろいうと改良を加え,冷凍機を備えることによって−16°〜−18℃の低温を保つことに成功した。その後,多数の研究室において使用されるようになったが,最近では小型のポータブル・クライオスタットが米国の一部の病院で利用されるようになり,かなりの好成績をおさめているとの報告がある。もちろん,本法の組織化学研究分野での応用価値は貴重であるが,一方,外科病理方面でも益々その利用価値が認められるようになり,近い将来において,必ず従来の凍結切片法にとってかわる方法として,広く用いられるものと信ずる。

救急検査としてのアミラーゼ測定法

著者: 丹羽正治

ページ範囲:P.307 - P.311

I.救急検査として備うべき条件
 日常の診療の際に急に検査を必要とする場合は従来から少なくなく,すでに何種類かの検査がこの種の救急検査項目として利用されている。元来診療は24時間態勢にあるため,それの基礎となるデータを提供する各種検査も当然24時間態勢にあることが要請され,救急的な検査を行なう機会あるいはその検査項目は今後一層増加するものと予想される。この種のものは検査の性格上,大施設にあっても専門技術者の勤務時間外に医師,インターンあるいは当直技術者など,平生この検査を行なうことに慣れていない人々の手で行なわれたり,あるいは第一線の実地医家などによって行なわれたりする可能性が大きい。
 従ってこれらの救急検査の具備すべき条件として考うべき点は,第一にはだれがやっても測定したときの-ばらつき」の少ないこと,すなわち再現性の良好な検査方法であること。第二には特殊な技術,器具,薬品などを使わずに済むこと,すなわち操作が簡便であること。第三には検査に要する時間が短いこと,などであろう。これらの条件を満たすためにはある程度,検査の正確度が犠牲にされるのもやむを得ない。要するに救急検査として診療に役立つ範囲内の正確性があればよいのである。

トロンボエラストグラフによる検査法

著者: 山崎倢吾

ページ範囲:P.313 - P.318

まえがき
 血液が凝固するということは衆知のことであるが,今までの諸検査では個々の凝血因子についてはかなり正確に測定することができる反面,血液全体としての状態,特に凝固促進状態を判定するのは不可能であった。この状態を判定するには個個の因子の総和として把握し,しかも余り人為的な変化を受けないことを必要とするのであって,この目的のためにHartertがトロンボエラストグラフ(Thrombelastograph,以下TEGと略す)を考案した。
 もちろん凝固促進状態のみでなく,後記するごとく,反応時間,血栓形成時間,形成されたフィブリンの弾力性などにより,各種出血性素因の鑑別診断,進んで抗凝血薬治療の適否および治療効果判定に用いられる。

医学常識

輸血に必要な血液型抗原と抗体(2)

著者: 竹内直子 ,   保木本幸子 ,   大野公子

ページ範囲:P.321 - P.323

IV.Rh式血液型
 LevineとStetsonは1939年に,最近分娩したばかりの婦人の血液から,新しい抗体を発見した。これは後に抗Rho(D)と命名されたものである。彼女がその夫の血液を輸血されることにより溶血性の副作用をおこしたことから,この抗体は,父親から遺伝して胎児の赤血球の中に存在する抗原によって産生されるものであると推定された。
 この抗体は,後にRhesus monkeyの赤血球をウサギに注射することによって作られたRh抗体と特異性において同一のものであることがわかり,この2つの抗体(妊産婦,Rhesus monkey)によって赤血球の食塩水浮遊液と反応させると,供血者の血液の85%の陽性群と15%の陰性群に分けらカた。そしてこの抗血清と陽性反応を呈するものはRh(+),また,陰性反応のものはRh(-)と名づけられた。ひき続いて,同様の抗体がなんらかの症状のある子供を分娩した婦人の血液から発見され,時としては,表1に見られるように,Rh(-)の婦人に発生した抗体のあるものは無差別に選ばれた検査血液に対して異なった特異性を示すものもあることがわかった。Levineその他はM.S.血清(anti-rh’またはanti-C)に対して陰性である血液と強く反応する抗体をRh陽性の血清中に発見し,anti-Rhの反対という意味で,anti-Hrと名づけた。

座談会

心電計の扱い方

著者: 中曾根慶蔵 ,   古山市造 ,   北村和夫 ,   杉崎輝子 ,   弓納持慶子 ,   長尾透 ,   樫田良精

ページ範囲:P.324 - P.338

 樫田 最近成人病の中でも心臓疾患が非常に世間の注目を浴びております。心臓関係の検査ということになりますと,レントゲンで心臓の大きさをはっきりさせる,それから血圧を見る,同時に心電図をとって心筋あるいは冠状動脈の変化などを見るというのが現在の一般的なやり方であります。そういうわけで心電計の持つ役割が非常に大きくなってきております。現在普通に使われている少し高価な診断用器械を挙げてみますと,第一に普及しているのはレントゲンで,その次は心電計です。今から十何年前までは日本の心電計はまだ優秀な品が少なく,生産も十分でなかったんですが,最近は外国品に劣らない,あるいはそれよりまさるような心電計が各メーカーの努力でできるようになりました。そして,値段も外国品に比べれば安いので,かなり多くの開業の先生も買って自分でお使いになるし,もちろん病院と名のつくところは必ず持っている器械の一つになってぎました。ただし病院などではこの心電計の利用頻度が高いためにお医者さん自らがやることは少なくなってきて,特に訓練された技術者がやるようになっております。すなわち,病院ではレントゲン技師と同じように,心電計を動かす技術者の働きが非常に重要になってきている。ところが,まだレントゲンのように充分な教育機関がない。それで現在はいろいろな方法で独学して,そして目本臨床病理学会の2級の技術士資格試験に「心電図」というのがありますが,その試験を受ける人がずいぶん多い。この試験を知らない方もいろいろと努力して心電計の扱い方などを勉強しておると思います。
 今日は心電計に関係の深いいろいろな方々にお集まりいただいて,独学してる方々がこの座談会を読めぱ,普通の本ではなかなかわかりにくいようなところも手に取るように教えていただけるよう,またお医者さんといえども一般的には心電計については本当は素人なんで,そういう方にも参考になるようなことを話し合ってみたいと思います。

検査室紹介

天神クリニック臨床検査室—小検査室の設計を主体として

著者: 松下正一

ページ範囲:P.341 - P.344

 われわれの天神クリニックは,福岡市の中心街天神ビルの中に診療施設を持ち,内科,外科,放射線科,皮膚科,眼科,婦人科および精神神経科を持つとともに,通院精密健康診断(人間ドック)を行なっています。従来大病院のほかはなかなか設備し得なかった臨床検査室,生理検査室およびレントゲン室を置き,精密な検査成績が得られるという特徴をもっています。昭和35年9月開院以来,実際に使用してみて,その利点や不備な点について,検査室の紹介を兼ねて述べてみたいと思います。

研究

フェノールを用いる血糖の定量

著者: 高木一路 ,   沢渡勝己

ページ範囲:P.347 - P.349

 現在最も広く使用されている血糖定量法に,Somogyi-Nelson法1),Hagedorn-Jensen法2)等があるが,これらはいずれもブドウ糖の持つ還元力を利用したもので,糖以外の還元性物質も同時に測定される可能性がある。また調製する試薬の数も多く,その操作上においてもわれわれ日常の臨床検査の目的にはやや繁雑すぎる欠点がないでもない。
 その後Roe3),高下4),上住,長谷川,金児5)はアンスロン試薬を,百瀬,向井,河辺6)は3,6-ジニトロフタール酸を,柴田,水田7)はO-アミノジフェニルを用いて簡単に血糖の定量を行なっているが,本法は最も簡単な操作による微量比色定量法で,その原理は,糖を強鉱酸と共に熱するとフルフラール環を生じ,これがフェノールと反応しエーテルように結合して,有色物質を生ずる8)ので,この吸光度を測って定量する方法である。

海上自衛隊横須賀地区病院における全肺機能検査の考察

著者: 阿部秀雄 ,   上の薗義一 ,   鎌田康男 ,   奥田淳 ,   井上キミエ ,   降矢百分子

ページ範囲:P.351 - P.352

I.緒言
 臨床的機能検査の中で最も立ちおくれていた肺機能検査も心肺生理学,胸部外科の発達および麻酔学の進歩などと相まって,長足の発展をとげ,それらの新しい知識に基づいて肺機能障害の状態を量的ならびに精細に判定し得るようになった。
 また種々の心肺機能検査は胸部手術前の機能検査として重要であるが,また術後社会復帰の基準として重視されている。私たちは当病院で肺結核外科的療法を行なった者の全肺機能検査について検討を加える。

尿糖カラメル法と半定量法との比較

著者: 玄番昭夫 ,   前田文子

ページ範囲:P.353 - P.355

 近時ベネジクト法に代わってClinitest (Ames Co.製品,ベネジクト法の変法)やGalatest (Denver Co.製品,ニーランデル法の変法)あるいはシノテスト1号(シノテスト研究所製品,ベネジクト法の変法)なる商品名の試薬が用いられ,更にTes-Tape (Lilly Co.製品),Clinistix (Ames Co.製品)のように試験紙による尿糖の定性,半定量が広く行なわれている。いずれも日常検査の簡易・迅速化の要求にこたえるものである。
 しかしこれらの製品を半定量法として用いる場合,どの程度の信頼性を置いてよいかあらかじめ知っておくことが必要である。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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