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雑誌目次

論文

臨床検査6巻8号

1962年08月発行

雑誌目次

グラフ

検査技師のための解剖学1

著者: 横地千仭

ページ範囲:P.507 - P.508

脳脊髄と脳脊髄液
 脳脊髄の表面には,最外側に硬膜,最内側に軟膜,その間にクモ膜,合計3枚の被膜がある。クモ膜と軟膜との間にはすき間があって,これをクモ膜下腔といい,ここに脳脊髄液がたまっている。クモ膜下腔のうち,特に後頭部の,小脳と延髄との間の部分は最も広くて,小脳延髄槽といわれ,後頭下穿刺により髄液を採ることがある。しかしそのすぐ下には生命を司る延髄があるので,深く刺すと危険である。
 一方脊髄で髄液を採取するのは左右の腸骨稜を結んだ高さ,すなわち第4,第5腰椎の間が通常選ばれる。その理由は脊椎の間が広くて針を刺しやすいことと,この高さでは脊髄そのものはもはや無くて,これから出た神経束,すなわち馬尾のみであるので,誤って針をつき刺しても危険がないからである。

パラフィン包埋切片標本作製法(1)

著者: 橋本敬祐

ページ範囲:P.509 - P.514

 病理組織学で日常用いる組織切片標本としては,今のところ剖検材料はもとより,外科材料についても,パラフィン包埋切片が最も多く用いられる。にもかかわらず,よい標本をコンスタントに供給することは必ずしも容易ではない。その理由はいろいろあるが,とにかく,与えられた条件(たとえば,経費や設備の問題もあり,固定不良の問題もある)に対して,満足な所見が読みとれるようなよい標本をいつもコンスタントに作り出して行くことが現実には要求されているわけである。病理組織標本の作製法は,その方法自体は昔からあるもので目新しくはないが,上にのべた材料の側の条件は驚くほど幅広く変化するし,従って作製法の各段階も数量的に明示しにくいものがあるので,単にその方法を知って慣れているというだけでは不充分であって,各段階での出来上りを注意深くチェックしながら最終的な結果をよくして行く,いって見れば,本来の意味での「技術」が要求される部門である。

技術解説

好酸球数と好塩基球数の算定法

著者: 田多井吉之介 ,   長田泰公 ,   小川庄吉

ページ範囲:P.515 - P.520

まえがき
 好酸球も好塩基球も白血球中の百分率が小さく,従来は寄生虫症,アレルギー,ある種の白血病などの際の好酸球増多症以外では,あまり大きな臨床的意義をもっていなかった。しかしここ10年来,それまでの塗抹標本に代わって好酸球と好塩基球の血算盤内算定法が使われるようになってから,臨床面での診断的価値が急に増して来た。ことに,副腎機能と好酸球数との関連が明らかになってから,好酸球数算定の機会がふえた。また最近は,甲状腺機能と好塩基球との関係が次第にわかってきたので,好塩基球の算定が必要な場合も多くなるとおもわれる。血液塗抹標本による好酸球と好塩基球の間接的な算定法は,血算盤による直接的な算定法に比べてはるかに精度が落ちるから,ここではいっさい触れないことにする。
 血算盤による直接算定の手技は,白血球数をしらべる場合と同じで,メランジュールを用いて血液を染色液で希釈し,これを血算盤に流しこんで数をかぞえるのであって,好酸球や好塩球を染めわける特殊な染色液を用いさえすればよい。ただし,両細胞とも数が少ないので,血液の希釈を今までの10倍にかえて4.5倍にすることのできる新型メランジュールや,算定室の容積をビュルケル型やノイバウエル型の約5枚分を血算盤1枚におさめた新型が工夫されている。なお好酸球数や好塩基球の推計学的取り扱いについては,拙著「好酸球の動力学」を参照されたい1)

アルブミン・グロブリン比定量法

著者: 島尾和男

ページ範囲:P.523 - P.527

はじめに
 血清のアルブミン・グロブリン比(A/G比)は字のとおりに,血清中のアルブミンとグロブリンの濃度の比で,血清タンパク質をなにかある方法でアルブミンとグロブリンに分けて,それらを定量することにより求められるが,測定操作の便宜上,ふつうは血清総タンパク濃度とアルブミン濃度またはグロブリン濃度を測定してA/G比を計算する。
 A/G比を測定するために血清タンパク質をアルブミンとグロブリンに分ける方法としては,古くは(Rowe (1916))硫酸アンモニウムの半飽和で塩析されて沈殿する分画をグロブリン,半飽和硫酸アンモニウムの上清中のタンパク質をアルブミンとする方法が用いられていたが,硫酸ナトリウムによる塩析を用いて血清タンパク質を系統的に分画するHowe (1921)の方法が考案されてからは,久しくこの方法がA/G比測定の標準法として用いられ,おびただしい量の測定値が求められた。

座談会

ディスク法による耐性検査の諸問題

著者: 小酒井望 ,   徐慶一郎 ,   桑原章吾 ,   金沢裕 ,   天木一太 ,   高橋昭三

ページ範囲:P.530 - P.545

 高橋 今日はディスク法による耐性検査に関する諸問題というようなテーマでいろいろお話をお伺いしたいと思います。最近の中央検査部の細菌検査室では,現在のところ耐性検査にディスク法の占める割合が非常に大きいと思われます。このディスク法というのは一般細菌に大体適用されているわけですけれども,非常に簡単なために検査が行なわれやすいわけです。そのために非常に多くの薬剤について非常に多くの例数に行なわれるわけですが,簡単にその結果が出るということのために,むしろ乱用されている可能性がありはしないかとそう考えられるのです。ディスク法というものはそれが適正に行なわれれば非常にいいものだと思うのですけれども,検査室というのは言うならば工場のようなものでありますから,手をぬくということも行なわれるのじゃないか,またそういうことが無意識に行なわれているのじゃないかということが考えられるわけです。本日はディスク法の正しいやり方とか,正しい判定の仕方,正しい評価の仕方,そうしたことについて御意見を伺いたいと思います。最初にディスク法というものの歴史といったようなものを簡単にお話しいただきたいのですが。

用語解説

ディスク法

著者: 高橋昭三

ページ範囲:P.531 - P.531

 ディスク法感性検査法で現在日本で最も多く用いられているのは,3濃度ディスク法と,1濃度ディスク法の2種です。
 まず,寒天平板をつくり,それに菌または菌を含む検査材料をなるべく平等に接種します。

研究

アミラーゼ測定法の検討

著者: 田中俊彦 ,   盛山愛子 ,   上妻道子

ページ範囲:P.549 - P.553

はじめに
 膵臓および唾液腺から分泌されるデンプン水解酵素であるα—アミラーゼは,通常血液および尿中にはきわめてわずか存在する。著しいアミラーゼ活性を示す疾患として急性膵炎が知られているが,一般に膵管の内圧を高める胆石症,胆道疾患,あるいは唾液腺疾患,胃潰瘍による穿孔性腹膜炎等に際してもアミラーゼ活性度は上昇する。特に血清アミラーゼは急激に増加して発病後12〜24時間で最高に達し以後は次第に下降するので,その極期を促えて迅速にアミラーゼ活性度を知るには,半定量的な簡便法が必要であり,正確な活性度,経過の追求には精度の高い定量法が望ましい。
 通常測定法には,アミラーゼを基質液(一定濃度のデンプン溶液)に作用させ,加水分解によって生じた還元糖の量を測定するか,あるいは一定時間後のデンプン減少量を測定してアミラーゼ活性値としている。

第9回(昭和37年度)臨床病理技術士(二級)資格認定試験—筆記試験問題模範解答および講評

著者: 日野志郎 ,   木村義民 ,   影山圭三 ,   阿南功一 ,   福武勝博 ,   鈴木鑑 ,   阿部正和 ,   長尾透 ,   江部充

ページ範囲:P.556 - P.569

二級臨床病理技術士および一般臨床検査士資格認定試験についての総評
 二級試験は今年第9回をむかえ,7月14日から16日までのあいだに行なわれた。準備から後始末まで例年のことながら暑いなかを,事務所のかたがたならびに試験委員の皆さまのご尽力により大過なく終了することができたことに感謝している。
 今年度の成績は表1のようになった。従来の成績は,本誌5巻10号664P.(昭和36年10月)に記されているから参照されたい。脳波の受験者がいちじるしく増加したことは,この方面の検査が一般的になってきたことを示すものであろう。全般的にみると合格率はほぼおなじようなところにある。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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