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雑誌目次

論文

臨床検査6巻9号

1962年09月発行

雑誌目次

グラフ

パラフィン包埋切片標本作製法(2)

著者: 橋本敬祐

ページ範囲:P.577 - P.582

染色の準備
 色素の選択:我国では昔からドイツ製色素が多く用いられるが,写真は左から順に,Haematoxylinum cryst.,2.Eosin gelb-lich (以上Merck製),3.Eosin,spiri-tlöslich (Chroma製,戦前のGrübler),4.Erythrosin,5.Eosin,blaulich (以上Merck製)の5種。ヘマトキシリンは結晶であるから結晶の大小はあっても品質に大差はない。
 エオジンは,左側の2種(2,3)は燈黄色調が強く,右側の2種(4,5)はこれが弱く青味のある深い赤である。またspiritlöslichはアルコール溶性として用いるがよく,染りもよい。検鏡者の意図するところ,顕微鏡写真撮影上の便宜を考慮して選択するがよい。

検査技師のための解剖学2

著者: 横地千仭

ページ範囲:P.583 - P.584

 鼻腔には正中に鼻中隔があって左右を二分しているほか,側壁から三段の棚(鼻甲介)が突出している。これには吸気に適当な湿気を与えたり,塵を除く目的がある。粘膜には多数の血管が分布しており,炎症を起こすと腫脹し,また分泌物が増加するので鼻閉を起こす。
 鼻腔には,これと細い通路で連絡した空洞すなわち副鼻腔がいくつか存在する。副鼻腔の作用は明らかではない。しかしその内面をおおう粘膜に病変を起こし,中に膿がたまるといわゆる蓄膿症を起こす。

技術解説

グルコースオキシダーゼを用いた血液ブドウ糖定量法

著者: 北村元仕 ,   三上晴子 ,   有松芳子

ページ範囲:P.585 - P.590

はじめに
 グルコースオキシダーゼの名前を知らない人がいたとしても,テステープ(またはクリニスティクス)の名を知らない人はいないであろう。臨床検査室においてテステープの普及はまことにめざましく,われわれはこれが僅々5年前に創始されたという事実すら忘れがちなほどである。このテステープを構成する主成分がグルコースオキシダーゼであることは申すまでもない。
 テステープの新鮮さは,原理的に見れば酵素を用いることの斬新さでもある。生化学研究の対象としての酵素には,すでに長い歴史があるが,この酵素を「試薬」として使用することはいまだそう一般的なことではない。もちろん,一つの例外としてウレアーゼを用いる尿素の定量法は古くからわれわれになじみ深い。新らしいすぐれた術式が次々と登場してくる現在にあってなお,尿素定量法では依然としてウレアーゼ法が標準とされているのも,帰するところ特異的な作用をもつ酵素が試薬として使用されているからにほかならない。

滅菌および消毒法(1)—物理的作用による方法

著者: 林治

ページ範囲:P.593 - P.598

はじめに
 微生物による汚染を問題とするあらゆる領域において,滅菌および消毒法はきわめて重要な基礎的知識および手技の一つである。ところが,知っているようで知られずに案外に混同されている言葉の中に殺菌と滅菌,ならびに消毒がある。
 殺菌作用(bactericidal action)とは,微生物を殺す働きを総括した言葉をいうのであって,これは菌体の機械的破壊,タンパク質の変性など,菌体構成成分の非特異的な物理化学的変化によるものが多い。殺菌作用の強さの程度によって滅菌(sterilization)と消毒(disinfection)とに区別される。

直示天秤の使い方

著者: 奥村明

ページ範囲:P.601 - P.607

 昨今,どこの検査室でも,直示天秤(直視あるいは直読とも呼ばれている)といわれている非常に能率的で正確な天秤がよく見受けられるようになって来ました。一口に直示天秤といいましても定感量型のものと等比型のものとがあって,その上それぞれの目的に応じたいくつかの種類があります。前者の定感量式のものは島津あるいはスイスのメトラー等がそれであって,後者の等比式のものでは稲葉,ドイツのザルトリウス等がそれであります。

聖路加病院における巡回採血の実際

著者: 石川さき子

ページ範囲:P.608 - P.610

はじめに
 普通血液の形態学的検査,すなわち血色素量測定,血球数算定,血小板数算定および塗抹標本の作製等に関しては,毛細管血(耳朶または指頭)よりの採血によって行なわれているので,聖路加病院の試験室で実際に行なっている耳朶採血について少しく述べてみようと思う。

医学常識

輸血に必要な血液型抗原と抗体(4)

著者: 竹内直子 ,   保木幸子 ,   大野公子

ページ範囲:P.613 - P.615

V.ABO式,Rh式以外の血液型
 1900年にABO式血液型が発見されて以来,その他の多くの血液型が,妊婦や何度も輸血を受けた受血者の血清中に,不規則性抗体として次々に見い出され,分類されている。時としては,明らかに抗原による抗体産生の刺激がないにもかかわらず,その抗原に対応していると思われる正常抗体も報告されている。
 抗体が次々と発見されることにより,血液型の形態も明らかになり,少なくとも9ないし11の血液型が認められている。その他,決定的な血液型に属するとは思われないような,ごく少ない抗原に対する抗体もある。この個々の個人的な抗体があるという例においては,充分に感受性のある個体に,ある抗原を注入すると,そこに抗体を作り得ることで示されているものである。

座談会

血糖検査の諸問題

著者: 中山光重 ,   北村元仕 ,   春日誠次 ,   松村義寛

ページ範囲:P.616 - P.621

 血糖の検査は特に機能検査にとって重要な意義をもちますが,その方法はかなりむずかしい問題を含むようで,48〜50ページの報告に示すように今回の調査でもバラツキが最も多くみられました。この調査全体については別に座談会を設けますが,本号ではこのデータを一方に眺めながら血糖検査の諸問題を語っていただきました。

用語解説

血糖Blood sugar,Blutzucker

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.617 - P.617

 全血中の糖質量の意である。正常では糖質の大部分(約90%)はブドウ糖であるから,血中ブドウ糖と同意義と見なしているが,病的状態や授乳時の婦人ではブドウ糖以外の糖質たとえば乳糖,果糖,ガラクトースなどが含まれる場合もある。
 糖の定量分析には糖質の遊離アルデヒド基による還元作用を利用するか,あるいは脱水反応によるフルフラール誘導体生成を利用するのでブドウ糖以外の糖質も含めて定量される。

Hagedorn-Jensen法

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.619 - P.619

 水酸化亜鉛の比較的うすい液を用いて煮沸凝固を併用した除タンパク法によるものであるから,チオネインやグルタチオンは除かれていない。
 除タンパク濾液に対して炭酸ナトリウムによる弱アルカリ性中でフェリシアン塩の一定量を煮沸する。糖質の還元作用により,当量のフェロシアン塩が生じ,フェリシアン塩は減少する。フェロシアンは空気酸化を受けないので逆酸化は起こらない。

Somogyi-Nelson法

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.620 - P.620

 水酸化亜鉛の量は前者とほぼ同じであるがややアルカリ性を強くし室温で除タンパクを行なっている。
 除タンパク濾液を炭酸重炭酸緩衝液あるいはリン酸緩衝液中で第二銅イオンと反応させ糖質による還元を行なわせる。その結果亜酸化銅が生ずるが,亜酸化銅は酸素にふれると第二銅に戻る性質がある。これが逆酸化であって逆酸化が起こるとせっかく生じた亜酸化銅が消失することになるから測定ができない。

海外だより

Mount Sinai Hospital血液検査室での検査法

著者: 寺村公子

ページ範囲:P.633 - P.637

 2月にお手紙をいただいて以来,早く"検査法"を書いてお送りしなければと気になっておりますうちに半年が過ぎてしまいました。4月の終りにブリッジポートの病院に移って参りましたので慣れるまで落着かず,やっと筆を取った次第です。
 Mt. Sinai HospitalのClinical Hematologyにおいての検査法はわれわれが日本でやっている方法とほとんど同じですが,特に目立って変わっている点や,私が1年やって良いと思った方法,または気がついたことを書いてみようと思います。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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