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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査60巻7号

2016年07月発行

雑誌目次

今月の特集1 The SLE

著者: 山田俊幸

ページ範囲:P.697 - P.697

 かつては難病のイメージが強かった全身性エリテマトーデス(SLE)ですが,近年,そのイメージは払拭されつつあります.今回,あらためて,この病気をオーバービューしてみました.臨床像の変遷,成因(特に遺伝素因)の考え方,重要な検査とその方法について知識をアップデートしてください.

 本症は臨床像も多様ですが,検査成績も実に多様なため,検査医学を学習するうえで教育的な課題を与えてくれます.例えば,なぜ補体価が低下するのかを追究していくと,補体の活性化機構というものがわかります.本特集は,そのような視点でも読み込んでいただければ幸いです.

SLE診療の変遷

著者: 北田彩子 ,   岡田正人

ページ範囲:P.698 - P.702

Point

●全身性エリテマトーデス(SLE)は免疫複合体の沈着によって全身のあらゆる臓器に多彩な症状を呈しうる.

●あくまで分類基準は臨床研究のためのものであり,診断は臨床的に行う.

●個々の標的臓器を定めて治療を行う.

●2015年に,わが国でもヒドロキシクロロキンが承認された.

SLEの成因論

著者: 住友秀次

ページ範囲:P.704 - P.708

Point

●全身性エリテマトーデス(SLE)の病因には遺伝的要因と環境的要因の双方がかかわっている.

●遺伝的要因として,単独で強い影響を与える遺伝子は乏しい.

●免疫学的病因には自然免疫〔Toll様受容体(TLR)・インターフェロン〕と適応免疫の双方の異常があり,治療戦略の基盤となっている.

SLEでみられる自己抗体の意義

著者: 中島俊樹 ,   大村浩一郎

ページ範囲:P.710 - P.715

Point

●全身性エリテマトーデス(SLE)では多彩な自己抗体が出現する.その測定は診断や臨床経過の推測に有用である.

●自己抗体ごとに検査特性が異なり,例えば抗核抗体はスクリーニングに,抗DNA抗体や抗Sm抗体は確定診断に向いている.それぞれの特性に応じた使い分けが必要である.

●SLEの診断は臨床症状があることが前提であるので,その症状に応じて必要な検査をオーダーするように心掛ける必要がある.

SLEの診断に関連する臨床検査

著者: 中西研輔 ,   金城光代

ページ範囲:P.716 - P.721

Point

●全身性エリテマトーデス(SLE)患者において,血球減少や抗リン脂質抗体症候群(APS)の合併などの血液学的異常の頻度は高い.

●溶血性貧血と血小板減少が合併した場合には,末梢血塗抹検査で破砕赤血球の有無を確認する.

●補体はSLEの診断や治療効果判定だけでなく,腎炎の鑑別にも有用である.

●膠原病治療中の不明熱では,悪性腫瘍の合併やマクロファージ活性症候群(MAS)を含む後天性の血球貪食リンパ組織球増多症(HLH)を鑑別に挙げる.

SLE関連検査技術の現状

著者: 林伸英

ページ範囲:P.722 - P.728

Point

●わが国にも,間接蛍光抗体法(IF法)による抗核抗体検査の自動システムが導入されている.

●サスペンションビーズアレイテクノロジーは1つの反応系で同時多項目測定が可能であり,疾患標識自己抗体検査をはじめ,さまざまな分析に応用されている.

●放射免疫測定法(RIA法)による抗DNA抗体検査は高親和性の抗DNA抗体を捉えることができ,全身性エリテマトーデス(SLE)の診断と経過観察に重要な検査である.

今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

著者: 岩田敏

ページ範囲:P.729 - P.729

 百日咳ワクチンは,四種混合(DPT-IPV)ワクチンまたは三種混合(DPT)ワクチンとして,ジフテリアトキソイド,破傷風トキソイド,不活化ポリオワクチンとの混合ワクチンの形で,乳幼児を対象にして定期接種が行われてきました.ワクチンの普及によって百日咳の発症例・死亡例は激減しましたが,近年,百日咳に対する感染防御免疫の低下した年長児や成人における発症や,それらの患者から感染したワクチン接種前の新生児・早期乳児期における重症例の発症が問題となっています.

 一方,培養法による百日咳菌の検出には検体採取と分離培養に習熟を要することや,培養法や遺伝子検査による病原体検出は発症後時間が経過すると感度が低下することなどから,百日咳の確定診断は,特に思春期以降の症例において難しくなっています.本特集では,百日咳の診断・治療・予防に関する最新情報について,今この領域で問題となっている点も含めて,わかりやすく解説していただきました.

百日咳の疫学—国内外の状況

著者: 神谷元

ページ範囲:P.730 - P.735

Point

●百日咳は,世界的にみてもワクチンでは十分にコントロールできていない.

●海外ではサーベイランスが充実しており,重症化しやすい乳児を守るための対策を実施している.

●国内の百日咳サーベイランスには多くの制約があり,正確な疾病負荷を把握しきれていない.

●わが国の百日咳対策として,追加接種や,成人へ接種可能なワクチンの認可を検討する必要性がある.

百日咳菌の細菌学的特徴と病原性因子

著者: 桑江朝臣 ,   阿部章夫

ページ範囲:P.736 - P.741

Point

●百日咳菌は多くの種類の病原因子(毒素や付着因子)を産生する.

●ほとんどの病原因子はBvgASと呼ばれる制御因子によって制御される.

●咳症状を起こすために中心的な役割を果たしている病原因子は未同定である.

—百日咳の検査診断①—培養・同定法

著者: 岡田潤平

ページ範囲:P.742 - P.747

Point

●Bordetella pertussisの検出のための検体採取には,鼻咽頭洗浄液や鼻咽頭吸引液の使用を推奨する.

●鼻咽頭分泌物を綿棒でサンプリングする場合,不飽和脂肪酸の含有量が少ないポリウレタン製の綿棒,チャコールを含有した保存用培地,あるいはESwabTM(Copan Diagnostics社)を使用する.

●分離培地はBordet-Gengou培地あるいはボルデテラCFDN寒天培地を使用する.

●分離培養の適応は百日咳様の症状が出現してから2週間以内とし,それを過ぎた場合はPCRや血清学的検査を適応する.

—百日咳の検査診断②—遺伝子学的診断法

著者: 下條誉幸

ページ範囲:P.748 - P.755

Point

●国内初となる百日咳菌核酸キットとして,LAMP法による体外診断用医薬品が発売された.

●遺伝子学的検査は最も高感度な百日咳の病原診断の方法であり,百日咳の早期診断と感染拡大防止への貢献が期待できる.

●LAMP法による百日咳菌検出試薬はすでに複数のガイドラインに記載されている.今後,臨床現場で広く利用されるために保険適用が望まれる.

—百日咳の検査診断③—血清学的診断法

著者: 蒲地一成

ページ範囲:P.756 - P.761

Point

●百日咳の血清診断は抗百日咳毒素免疫グロブリンG(PT IgG)抗体の測定によって行われる.この血清診断法は世界の標準検査法となっている.

●血清診断の基準値は各国で異なり,わが国では患者のワクチン歴を考慮した診断基準がガイドラインとして示されている.

●抗PT IgG抗体の誘導には時間がかかるため,血清診断は発症2週間後からの適用が推奨されている.

百日咳の臨床診断

著者: 岡田賢司

ページ範囲:P.762 - P.766

Point

●百日咳の典型的な症状をまとめた.

●軽症な百日咳はワクチン接種児や成人に認められる.

●乳児の百日咳は重症化のリスクが高いが,特徴的な咳は少ない.早期の診断・治療が必要である.

●百日咳の新しい診断基準を提案した.

百日咳の治療

著者: 新庄正宜

ページ範囲:P.768 - P.771

Point

●マクロライド系薬剤は百日咳患者からの排菌期間を短縮する.

●マクロライド系薬耐性百日咳菌はまれであるが,世界の地域によってはまん延している.

●百日咳に対して確実に有効な支持療法・対症療法はない.

百日咳ワクチンによる予防—これまでとこれから

著者: 中山哲夫

ページ範囲:P.772 - P.778

Point

●百日咳罹患者は7〜12歳の学童期から増えてくる.

●7歳時で60%が百日咳毒素(PT)抗体陰性であるが,その後,6年ごとに陽性例が増加してくる.

●百日咳成分を含んだワクチンの追加接種時期の検討が必要である.

●ワクチンによる免疫能の持続とともに,有効な抗原成分の検討が必要である.

心臓物語・4

なぜ心臓は休むことなく動き続けるか?

著者: 島田達生

ページ範囲:P.696 - P.696

 どっくんどっくん,どくどく.心臓の声が聞こえる.ふと右手で左橈骨動脈を触れてみた(脈診).脈の乱れがあった.途中に弱い脈が入り,はっきりとした脈拍数が捉えきれない.不整脈を自ら体験した.心臓は一般的に1日に平均100,000回動いている.71年間,雨の日も風の日も休むことなく,そのように動いていた私の心臓.考えてみるとすごい.動きのリズムがちょっとくらいおかしくても不思議ではない.専門医の門をくぐり,24時間Holter心電図検査を受けた.寝ているときの脈は正常だが,起きているときは常に二段脈の不整脈が出ていた.診断名は上室性期外収縮であった.加齢によるものである.

 さて,なぜ心臓は休むことなく動き続けることができるのであろうか? 不思議だ.同じ横紋筋である骨格筋と心筋の形態の差を電子顕微鏡で迫ってみた.筋原線維を構成する明帯(アクチンフィラメントのみからなる)と暗帯(アクチンフィラメントとミオシンフィラメントが交互に配列している)の微細構造は,両者とも全く同じであり([1],[2]),Z帯の位置に横細管がある([2]).さらに,カルシウムを貯蔵している筋小胞体が網状をなして,筋原線維を包囲していることは共通の特徴である([3],[4]).しかしながら,筋原線維と筋原線維の間の筋形質に両者の大きな差異がみられる.[1]の骨格筋線維をみると,Z帯を挟んで小型で類円形のミトコンドリアが列をなしてリボン状に配列している.一方,[2]の心筋線維では,筋原線維間に配列するミトコンドリアはかなり大型で,筋節(Z帯からZ帯まで)の長さに匹敵している.拡大像で,ミトコンドリアのクリスタは極めて発達している([3],[4]).凍結割断した心筋組織を走査電子顕微鏡でみると,筋小胞体やミトコンドリアが立体的にみえる([4]).

第38回第2種ME技術実力検定試験

ページ範囲:P.728 - P.728

検査レポート作成指南・11

細菌検査編

著者: 柳沢英二

ページ範囲:P.780 - P.785

 臨床微生物検査では,感染症の起因微生物の検出,薬剤感受性試験,菌交代現象の確認および耐性菌の検出,病院内感染の予防など,臨床への情報発信が重要視されている.臨床医はそれをもとに総合的に診断をするが,報告書の記載の仕方によっては誤った判断をする場合がある.例えば,塗抹検査ではグラム陽性球菌,桿菌,グラム陰性球菌,桿菌だけを記載するのではなく,白血球を観察し,多核白血球なのかリンパ球か抗酸球かなどの判別を,また,抗菌薬の作用で菌が膨化しているか,貪食像はみられるかなどを報告書に記載することにより臨床医が総合的な診断ができるようにすることが重要である.

 微生物検査を専門として行っている臨床検査技師は常に,検体からみられる情報を正確に臨床医へ伝達することを念頭に置いて報告書を作成することが重要である.つまり,信頼が高く付加価値のある検査成績を報告できるよう努力することである.本稿では細菌検査報告書の作成に当たって,臨床に役立つコメントを中心に指南する.

検査説明Q&A・18

—レセプトではじかれる検査項目の組み合わせや依頼回数を教えてください[4]—細菌検査編

著者: 松本竹久

ページ範囲:P.787 - P.789

■はじめに

 通常,患者が病院や診療所などの医療機関を受診した場合は医療費が発生します.その医療費の一部は患者が窓口で支払いますが,残りの医療費については医療機関が,健康保険事業の運営主体である保険者(市町村や健康保険組合など)に請求を行います.その医療報酬の明細書が診療報酬明細書(レセプト)になります.医療機関はレセプトを作成し,医療費の保険負担分の支払い請求を国民健康保険団体連合会や社会保険診療報酬支払基金へ提出します.その後,レセプトはそれぞれの機関での審査を経由して,最終的に保険者に送られます.

 レセプトには診療行為ごとに詳細な条件が設定されており,適さないレセプトについては審査ではじかれてしまい,保険者へ医療費を請求できなくなります.臨床検査においてもレセプト算定の条件が詳細に設定されています1)

 本稿では,そのなかでも,細菌検査の塗抹・培養同定・核酸同定検査の主だった項目にかかわるレセプトで,はじかれる検査項目の組み合わせや検査依頼回数を紹介します.

 各検査において,レセプトではじかれる検査依頼回数は,多くの場合は設定されていません.検査依頼に妥当な理由があれば多くの場合は算定されますが,妥当な理由がないにもかかわらず,何度も検査を行えば当然レセプトではじかれています.主な細菌検査依頼項目で併せて実施しても主たるもののみの算定となる検査を表1に,レセプト条件での注意点を表2に示します.

資料

高濃度サリチル酸ナトリウムを使用したウレアーゼ・インドフェノール法による尿素窒素の定量:学生実習への使用

著者: 鴨下信彦 ,   為本浩至 ,   富永眞一

ページ範囲:P.790 - P.795

 尿素をウレアーゼでアンモニアに分解した後に,青色のインドフェノール色素に変換するウレアーゼ・インドフェノール法は,尿素窒素定量法として長い歴史をもち,初学者の印象にも残る呈色反応である.臨床検査室の測定が酵素法に変わり,インドフェノール法を扱う製品と書物が消えていくなか,教育に携わる筆者らは,学生自身が実習で尿素の定量を行う目的で,原法のフェノールを高濃度サリチル酸ナトリウムに変えた測定系を再構築した.

寄生虫屋が語るよもやま話・7

先生,実習が始まります!—糞線虫症

著者: 太田伸生

ページ範囲:P.796 - P.797

 糞線虫という寄生虫がある.学名であるから仕方がないが,あまり奇麗な名前ではない.動植物の学名の命名者の多くは理科系の人間だからか,デリカシーに乏しいのかもしれない.2015年のノーベル医学・生理学賞の受賞対象にもなったマラリアの特効薬であるアーテメーターであるが,その材料になる植物の学名もクソニンジンと,ご本人(?)には大変気の毒である.糞線虫というが,名前と違って美しい外観の虫で,私たちの業界にも根強いファンがいるし,研究室の妙齢の美女先生の研究テーマでもある.彼女が二言目には“フンセンチュウが,……”と語り始めるので,上司としては縁談に差し支えることを少しだけ懸念している.人間の体内にいる糞線虫は全部雌である.その生殖のからくりには不明の点も多く,くだんの美女先生の研究テーマである.ご本人は日がな雌虫ばかり相手にしているとますます縁遠いかとも思うが,それをいえばセクハラと訴えられるのもこの時勢で,用心には余念がない.

 小さくて美しい糞線虫であるが,臨床医学的にはやや面倒なことを起こす.寄生線虫の仲間は原則としてヒト体内では増殖しない.糞線虫は人間の小腸で幼虫を産み,通常はそのまま糞とともに体外に出ていく(図).しかし,人間の側が少しだけ体調がすぐれない場合はそのまま体内にとどまって発育し,成虫になる.自家感染といわれる現象である.その結果,一度感染するとエンドレスに人間の小腸の中に居座り,何十年にわたって家主と交友関係が持続することが多い.免疫状態が低下した人では自家感染の程度が特に激しくなり,体中に糞線虫が充満する播種性糞線虫症も起こってくる.喀痰にも幼虫がたくさん排出されるなど,場合によっては致命的である.

元外科医のつぶやき・19

病理結果を踏まえて

著者: 中川国利

ページ範囲:P.798 - P.798

 前立腺癌で手術を受けてから4カ月後の指定日に,切除標本の病理結果を聞きに外来を受診した.病理結果は,生命保険の診断書に記載されていたように,pT2c, pN0, cM0のstageⅡであった.泌尿器科の教授は,“術前は手術で取り切れるか心配でしたが,病理学的には問題ありませんでした.放射線療法ではなく,手術を行って正解でした.私も責任が果たせてホッとしました”と語った.一方で,“切除断端への浸潤はなく,リンパ節転移も認めませんが,病理学的にpT2cの中間リスクですので,再発する可能性はあります”と,執刀医の立場として付け加えることを忘れなかった.この姿勢は私自身も外科医時代にとってきたことであり,よしみを感じた.

 “リンパ節はサンプリングですか”との問いに,教授は“いいえ,左右の内腸骨・外腸骨・閉鎖腔リンパ節の全てを郭清しました.実は開腹手術より腹腔鏡下手術のほうが的確に郭清することができます”と,自信の一端をのぞかせた.成書には,ロボット補助下手術や腹腔鏡下手術による拡大リンパ節郭清には限界があると記載されている.しかしながら,達人にとっては拡大視効果のため開腹手術より容易であり,元外科医の私自身も腹腔鏡下手術のほうが的確に行うことができた.

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「検査と技術」7月号のお知らせ

ページ範囲:P.703 - P.703

バックナンバー一覧

ページ範囲:P.721 - P.721

書評 —記述式内膜細胞診報告様式に基づく—子宮内膜細胞診アトラス

著者: 長村義之

ページ範囲:P.799 - P.799

即時に応用可能なアトラス

 子宮内膜細胞診を臨床検査として日常的に実施しているのは,国際的にもわが国だけであり,日本での細胞診従事者は,この分野で世界のリーダーとして位置付けられてきた.

 本書は,日本臨床細胞学会で作成した全身26領域の「細胞診」の中で,婦人科・泌尿器の「記述式内膜細胞診報告様式」にのっとって,これまでに蓄積された知見を網羅して作成され,「背景」「定義」「診断基準」を明記したアトラスとなっている.「診断基準」はわれわれが慣れ親しんでいる子宮頸部細胞診報告様式(ベセスダシステム)の判定基準と同様に活用できるよう工夫されており,使いやすい.また,直接塗抹法のみならず液状化検体細胞診(LBC)にも言及されており,いずれの施設においても即時に応用が可能である.内膜細胞診におけるLBCの利点も強調されている.

書評 内科診断学 第3版

著者: 長谷川仁志

ページ範囲:P.800 - P.800

「国際認証評価時代における医学教育の質保証」のために,全ての医学生・医師にとって必携の一冊!

 日本で「医学教育の国際認証評価時代」の動きが本格的に始まってきている2016年2月に,待望の『内科診断学 第3版』が発刊された.8年ぶりに大幅改訂された中身を見て,まさにこのテキストは医学科1年生からの臨床実習前教育から診療参加型臨床実習時,さらには生涯教育まで,すなわち初学者から指導医まで,症候・病態ベースで統合すべき日本の医学教育改革を実現化するバイブルと言えるテキストであり,内科系のみではなく,全国の全ての医学生,医学部教員,医育にかかわる機関の各科指導医の皆さんにお勧めしたい一冊であることを実感した.

 その理由としては,1)始めの「診断の考え方」(第Ⅰ章)と「診察の進め方」(第Ⅱ章)で医療面接における情報収集スキルの重要性と臨床推論のエッセンス(検査前確率,尤度比など)と信頼を確立するために必要なコミュニケーションンスキルなどについて,カラー図表が駆使されて初学者でもわかりやすくまとめられていること,2)続いての「症候・病態編」(第Ⅲ章)で,発熱,全身倦怠感,めまい,頭痛,胸痛から精神領域の救急まで,何科の医師としても実践対応が可能になるよう修得すべき約100の必須症候・病態について,患者の訴え方,医療面接,身体診察,確定診断のポイントなど臨床各分野横断的な統合教育を展開するために適した内容で,幅広く網羅されていること,3)購入者は,本文を収載した付録電子版も利用でき,いつでもどこでもネットを介して読むこともできるようになったことが挙げられる.特に,1)2)については,医師の資質・人間力を養う「プロフェッショナリズム教育効果」も高く,この観点からも有用であることを強調しておきたい.

書評 医療レジリエンス—医学アカデミアの社会的責任

著者: 安藤潔

ページ範囲:P.801 - P.801

現在われわれが直面している問題への絶好のオリエンテーション

 われわれが医療現場で経験している過去10年のさまざまな変化が,どのような原因によるものなのか? それは日本における特殊な変化なのか,世界共通のものなのか? これらの変化にわれわれは今後どのように対応してゆけばよいのか? そのために医学アカデミアが果たす役割は何か?

 このような疑問を持つ読者にとって,本書は絶好のオリエンテーションを与えてくれるであろう.「超高齢社会」「健康格差」「福島原発事故」「グローバルヘルス」「ビッグデータ」「医療技術評価」「コンパクトシティ」「ソーシャルキャピタル」「総合診療専門医」などのテーマが本書で扱われている.

次号予告

ページ範囲:P.803 - P.803

あとがき

著者: 河合昭人

ページ範囲:P.804 - P.804

 本号が発刊されるころは,日本は梅雨入りしているでしょうか? 日本には四季が存在し,その季節ごとに楽しみであったり憂鬱であったりと,人々を一喜一憂させています.むろん梅雨といえば,後者のほうが多いことが簡単に想像できます.しかし,“恵みの雨”という言葉もあり,雨が降らないと困ってしまう人がいるのも事実です.

 私の友人たちに私の印象を尋ねると,多くの友人は“雨男”と答えるでしょう.最近の趣味であるキャンプでは,雨の降らなかった日がないといわれ,息子の運動会は順延に次ぐ順延……大きな行事ではほとんどが雨でした.しかし,そんな私も晴天のときがありました.私の結婚式と息子の入学式です.このときばかりはお天道さまも,私の普段の品行方正な行い?から太陽を目覚めさせてくれたに違いありません.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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