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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査61巻7号

2017年07月発行

雑誌目次

今月の特集 造血器・リンパ系腫瘍のWHO分類 2016 version

著者: 佐藤尚武

ページ範囲:P.781 - P.781

 2001年に出版された「骨髄系腫瘍およびリンパ球系腫瘍のWHO分類 第3版」は,造血器腫瘍の分類のstandardとなり,広く普及しました.2008年に大改訂が行われ,第4版が発行されました.さらに,2016年にはその一部が改訂されましたが,2016年の改訂は小改訂であり,「blood」誌に発表されたのみで,第5版は出版されていません.

 造血器腫瘍の分類・診断の一翼を担う臨床検査担当者・従事者にとっても,最新のWHO分類の内容を知ることは重要です.しかし,第5版やその訳本が未発行であるため,2016年の改訂内容について検査担当者が十分理解しているとは言い難いのが現状です.そこで,2016年の改訂内容の臨床検査領域における周知を目的として,今回の特集を企画しました.本特集では,新たに追加された分類項目や病型の名称変更,分子遺伝学的知見の追加などが解説されています.血液学検査に携わる方に広く本特集をお読みいただき,最新のWHO分類について理解を深め,検査業務に生かしていただきたいと願う次第です.

資料

骨髄系腫瘍およびリンパ球系腫瘍のWHO分類2016

ページ範囲:P.782 - P.783

Myeloproliferative neoplasms (MPN)

Chronic myeloid leukemia (CML), BCR-ABL1+

Chronic neutrophilic leukemia (CNL)

Polycythemia vera (PV)

Primary myelofibrosis (PMF)

 PMF, prefibrotic/early stage

 PMF, overt fibrotic stage

Essential thrombocythemia (ET)

Chronic eosinophilic leukemia, not otherwise specified (NOS)

MPN, unclassifiable

Mastocytosis

骨髄系腫瘍およびリンパ球系腫瘍のWHO分類(第4版)

ページ範囲:P.784 - P.785

Myeloproliferative neoplasms

Chronic myelogenous leukaemia, BCR-ABL1 positive

Chronic neutrophilic leukaemia

Polycythaemia vera

Primary myelofibrosis

Essential thrombocythaemia

Chronic eosinophilic leukaemia, NOS

Mastocytosis

 Cutaneous mastocytosis

 Systemic mastocytosis

 Mast cell leukaemia

 Mast cell sarcoma

 Extracutaneous mastocytoma

Myeloproliferative neoplasm, unclassifiable

骨髄系腫瘍と急性白血病

骨髄系腫瘍と急性白血病の分類(概論)

著者: 栗山一孝

ページ範囲:P.786 - P.791

Point

●骨髄系腫瘍と急性白血病のWHO分類2016は,臨床的および生物学的研究から臨床的に意義のある成果を取り込んだ2008年版の改訂である.

●本分類は,10個のカテゴリー(2つ新規カテゴリーの追加)と1個の暫定的病型からなる.

●WHO分類は今後も,遺伝子変異を基盤とした新規疾患単位を取り込んでいく可能性が高い.

骨髄増殖性腫瘍

著者: 久冨木庸子

ページ範囲:P.792 - P.795

Point

●第5版造血器腫瘍WHO分類(2016年改訂)では,次世代シークエンシング技術によって明らかになった遺伝子変異の情報が,診断や予後マーカーに組み込まれている.

●骨髄増殖性腫瘍(MPN)では,JAK2,MPL,CALR変異などがその代表である.

●真性多血症(PV)や前線維期の原発性骨髄線維症(pre PMF)の診断基準が変更され,形態学的特徴が標準化されたことによって,診断の信頼性と再現性の改善も図られた.

肥満細胞症,PDGFRA,PDGFRB,FGFR1の再構成またはPCM1-JAK2を有する好酸球増多症を伴う骨髄系/リンパ系腫瘍

著者: 増田亜希子

ページ範囲:P.796 - P.799

Point

●肥満細胞症は,WHO分類2008では骨髄増殖性腫瘍(MPN)の1病型であったが,臨床的に多彩な経過をとるため,WHO分類2016では独立したカテゴリーとなった.病型分類に若干の変更がみられるが,診断基準に変更はない.

●WHO分類2008の“PDGFRA,PDGFRB,またはFGFR1の異常を有する好酸球増多症を伴う骨髄系/リンパ系腫瘍”のカテゴリーには,WHO分類2016では暫定病型として“t(8;9)(p22;p24.1);PCM1-JAK2を伴う骨髄系/リンパ系腫瘍”が追加された.JAK阻害薬に反応するまれな病型である.

骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍

著者: 波多智子

ページ範囲:P.800 - P.805

Point

●環状鉄芽球と血小板増多を伴う骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍(MDS/MPN)が暫定疾患から正式な1病型になった.

●慢性骨髄単球性白血病(CMML)を芽球の比率によってCMML-0,1,2の3群に分類する.

●MDS/MPNの診断において遺伝子変異の重要性が増している.

骨髄異形成症候群

著者: 通山薫

ページ範囲:P.807 - P.812

Point

●骨髄異形成症候群(MDS)の診断と病型分類には,血球異形成判定と骨髄染色体核型異常の存在が重要である.

●2016年の改訂では病型名が一斉に変更となり,“MDS with〜”という表現でほぼ統一された.

●腫瘍関連遺伝子の異常やフローサイトメトリーの結果のみではMDSと診断する根拠にならない.

●SF3B1遺伝子変異の存在は有意義であり,環状鉄芽球増加病型と診断する根拠になりうる.

胚細胞変異を伴う(生殖細胞素因を有する)骨髄系腫瘍

著者: 東田修二

ページ範囲:P.814 - P.815

Point

●胚細胞変異を伴う骨髄系腫瘍は,胚細胞遺伝子変異を素地として発症した骨髄異形成症候群や白血病で構成される.

●比較的若い時期に発症し,家族内に同じ疾患の患者が存在することがある.

●WHO分類2016年改訂で新たに加わったセクションである.

急性骨髄性白血病

著者: 木崎昌弘

ページ範囲:P.816 - P.821

Point

●「WHO分類第4版」における急性骨髄性白血病(AML)の分類は,近年のゲノム解析研究の結果を踏まえて2016年に改訂されたが,大きな変更はなかった.

●新たに“遺伝的素因を有する骨髄系腫瘍:myeloid neoplasms with germ line predisposition”が定義された.

●芽球比率は,全骨髄細胞に占める割合で示すこととなった.この結果,acute erythroid leukemiaと分類されていた症例の一部は,骨髄異形成症候群(MDS)に分類されることになると考えられる.

●CEBPA変異の両アレル変異を伴うAMLとNPM1変異を伴うAMLの亜型がこれまでの暫定的(provisional)な病型分類から独立した病型となり,“BCR-ABL1融合遺伝子を伴うAML”および“RUNX1変異を伴うAML”が新たに暫定病型として加わった.

●AML非特定型(AML, NOS)に分類されるカテゴリーは,形態学的な分類であるFAB分類を踏襲している.

急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫,系統不明な急性白血病

著者: 稲葉亨

ページ範囲:P.822 - P.828

Point

●WHO分類2016年改訂版では,Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫(B-ALL)に含まれる病型は基本的にWHO分類第4版と変わらないが,一部で染色体切断点や遺伝子の表記が変更された.

●反復性遺伝子異常を伴うB-ALLに,2つの暫定疾患単位(BCR-ABL1類似B-ALL,iAMP21を伴うB-ALL)が追加された.

●Tリンパ芽球性白血病/リンパ腫(T-ALL)に2つの暫定疾患単位〔早期T前駆細胞性リンパ芽球性白血病(ETP-ALL),NK細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫(NK-ALL)〕が定められた.

●系統不明な急性白血病は5病型となり,混合形質性急性白血病(MPAL)の一部で染色体切断点や遺伝子の表記が変更された.

リンパ系腫瘍

リンパ系腫瘍の分類(概論)

著者: 伊豆津宏二

ページ範囲:P.830 - P.834

Point

●びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)では細胞起源(COO)に基づく分子学的亜分類を行うことが推奨された.

●いわゆるdouble hit lymphomaに相当するMYC転座とBCL2またはBCL6転座を伴う高悪性度B細胞リンパ腫が疾患単位として定義された.

●一部のリンパ系腫瘍では疾患を特徴付ける遺伝子変異が記載された.他の疾患でも予後や治療効果予測に有用な遺伝子変異のリストが加わった.

—成熟B細胞腫瘍—慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫,濾胞性リンパ腫,マントル細胞リンパ腫

著者: 市川聡 ,   福原規子 ,   一迫玲 ,   張替秀郎

ページ範囲:P.836 - P.840

Point

●慢性リンパ性白血病(CLL)の診断には,異常Bリンパ球数5,000/μL以上であることが必須の所見である.これを満たさないBリンパ球増多は単クローン性Bリンパ球増多症(MBL)と定義される.MBLにおいては白血球数の多寡が重要であり,白血球数の多いMBLはCLLに移行する可能性が高い.また,リンパ節病変のみのMBLも存在する.

●前がん病変と考えられる(in situ)濾胞性リンパ腫,マントル細胞リンパ腫について,それぞれ名称がISFN(in situ follicular neoplasia),ISMCN(in situ mantle cell neoplasm)と改められた.

●小児濾胞性リンパ腫は小児および若年成人に発症し,限局病変であることが多く,予後良好である.小児および若年成人に発症し,ワルダイエル輪,頸部に限局するリンパ腫で,IRF4(MUM1)遺伝子の再構成を伴う一群があり,新たな疾患概念として提唱されている.

●マントル細胞リンパ腫(MCL)は古典的MCLとそれ以外に大別され,後者は白血病化をきたしやすいが比較的緩徐な経過を示すことが多い一群とされる.

—成熟B細胞腫瘍—小細胞型B細胞リンパ腫に関する分子遺伝学的研究の新知見とその影響

著者: 日下部学 ,   坂田(柳元)麻実子

ページ範囲:P.842 - P.846

Point

●次世代シークエンサーの応用によって疾患特有の遺伝子変異が明らかとなった.

●有毛細胞白血病(HCL),リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)で疾患特徴的な遺伝子変異が報告された.

●濾胞性リンパ腫(FL)で遺伝子変異と臨床学的特徴を組み合わせた予後予測モデルが提唱された.

●遺伝子変異の新知見は分子標的治療薬の開発における重要な基盤となる.

—成熟B細胞腫瘍—びまん性大細胞型Bリンパ腫,EBウイルス陽性大細胞型Bリンパ腫,Burkittリンパ腫,高悪性度リンパ腫

著者: 山崎悦子

ページ範囲:P.847 - P.853

Point

●DLBCL, NOSは免疫染色アルゴリズムを用いて,胚中心B細胞型(GCB)型とnon-GCB型に分類する.

●2008年版の“EBV-positive DLBCL of the elderly”は,2016年版でEBV large B-cell lymphomas(EBウイルス陽性大細胞型Bリンパ腫)と改名され,EBV mucocutaneous ulcerは独立した疾患カテゴリーとなった.

●2008年版の“B-cell lymphoma, unclassifiable, with features intermediate between DLBCL and BL”は,2016年版ではMYCとBCL2 and/or BCL6の遺伝子再構成をもつ“high-grade B-cell lymphoma (HGBL), with MYC and BCL2 and/or BCL6 rearrangements”と,再構成をもたない“HGBL, NOS”に分かれた

成熟T/NK細胞腫瘍

著者: 鈴宮淳司

ページ範囲:P.854 - P.862

Point

●診断や予後に関係する遺伝子異常が記載された.

●濾胞ヘルパーT細胞由来のリンパ腫が記載された.

●消化管のT細胞リンパ腫の定義,名称が変更になり,新たにインドレント(緩徐進行)TまたはNK細胞リンパ増殖異常症が記載された.

●皮膚のT細胞リンパ腫に新規のリンパ腫が記載され,一部名称の変更がなされた.

●未分化大細胞リンパ腫(ALCL)に関して,ALK陰性のものが病型に変更され,新たに豊胸術関連未分化大細胞型リンパ腫が記載された.

●EBウイルス(EBV)関連の小児に主に生じるものの名称が変更された.

Hodgkinリンパ腫,組織球性および樹状細胞性腫瘍

著者: 井上健

ページ範囲:P.863 - P.868

Point

●Hodgkinリンパ腫,組織球性および樹状細胞性腫瘍における2016年WHO分類改訂のポイントとして,結節性リンパ球優位型Hodgkinリンパ腫(NLPHL)におけるびまん性病変,ならびにErdheim-Chester病(ECD)の位置付けが挙げられる.

●NLPHLにおいて,T細胞組織球豊富型大細胞型B細胞性リンパ腫(THRLBCL)と区別できない病変を認めた場合は,THRLBCL様の転化をきたしたものと考えるべきであり,予後不良因子となる.

●組織球性腫瘍のなかにはリンパ系腫瘍に引き続いて発症するものがある.両者に共通の遺伝学的特徴などから,腫瘍の形質転換の可能性が示唆されている.

●ECDはLangerhans細胞組織球症(LCH)と同様にBRAF遺伝子の変異を伴うことが多いため,若年性黄色肉芽腫などの組織球性腫瘍と区別する必要がある.

Salon deやなさん。・3

縁と三味線とわたし

著者: 柳田絵美衣

ページ範囲:P.780 - P.780

 好奇心旺盛でいろんなことに興味を示す性格の私ですが,大人になってから始めた趣味の1つに“三味線”があります.海外での仕事も多かったため,現地の方々に喜んでもらえること……と考えた結果,音楽なら無条件に楽しめるはずだと思い,和楽器にたどり着きました.学生時代にギターとベースを弾いていたため,弦楽器なら弾けるだろうという安易な発想で始めた三味線……が甘かった.しの笛も少し習い,和楽器の奥深さと難しさを目の当たりにし,和楽器とは“感覚”で奏でるものなのだと知りました.三味線は,感覚を研ぎ澄ますことの大切さや心に共鳴する音色というものを私に教えてくれました.

 そして,とてもすてきな出会いも与えてくれます.神戸時代の私の三味線の師匠はとてもすてきな女性で,優しく,明るく,そして強く,憧れの人でもあります.北海道に行くことが決まった頃に,私が主催したセミナーがありました.そのとき,“懇親会で,神戸の最後の思い出に師匠と舞台で演奏したい”とお願いしたところ快諾してくださり,夢がかないました.最後に“体を大切に頑張りなさい”と,餞別を握らせてくれました.北海道に来てからも,兵庫県の郷土料理を作って送ってくださり,娘のように接していただいています(そのせいでホームシックになりますけど……).

INFORMATION

第39回第2種ME技術実力検定試験

ページ範囲:P.791 - P.791

検査説明Q&A・29

結核菌の塗抹検査およびPCR検査は陰性でしたが,培養検査は陽性でした.感染対策上,どのような対処をすればよいですか?

著者: 永井英明

ページ範囲:P.870 - P.875

■はじめに

 肺結核の診断には基本的に連続3回の喀痰検査が必要です.その3回の検査結果のうち,最も重い結果に基づいて診断や接触者健診などを行うことになっています.したがって,この質問も3回の喀痰検査を行った結果,“喀痰塗抹検査陰性およびPCR検査は陰性,培養検査陽性であった”とします.喀痰は菌検査に適した良好な喀痰が3回採取できたという条件が付くのは言うまでもありません.

心臓物語・15【最終回】

心臓リンパ—上水道と下水道

著者: 島田達生

ページ範囲:P.876 - P.876

 心臓の血管系を上水道にたとえると,リンパ系は下水道に当たる([1]).上水道は多くの人の注目を浴びているが,下水道は全く無視されている.リンパ管の同定は必ずしも容易ではなく,同定法として墨汁および色素注入法,過酸化水素浸漬法,酵素組織化学(5′-nucleotidase),免疫組織化学(D2-40抗体),電子顕微鏡観察などがある.毛細リンパ管とリンパ管は同じ微細構造を示し,菲薄な内皮細胞から縁取られ([2]),基底膜は不連続または欠如している([1]左上).両者の違いは弁の有無で,有していればリンパ管,無ければ毛細リンパ管である.毛細血管において,内皮細胞間はtight junctionによって結合し,物質の通過を許さない.一方,毛細リンパ管の内皮細胞はend to end(端—端)結合であり([1]左上),外圧が加わると,いとも簡単に細胞間結合が離開し,物質の通過を許す.

 休みなく動き続けている心臓に,大量の間質液(組織液)がある.毛細リンパ管に吸収された間質液(心臓リンパ)はイヌでの実験によると1日で約76mL,大量である.古典的な墨汁注入法を心臓に活用すると,注入された墨汁はすぐに毛細リンパ管に吸収される([3]).上述した種々の方法によって,心臓内のリンパ管の分布や心臓内のリンパの流れを知ることができる.心内膜下に注入された墨汁は心内膜の毛細リンパ管(En)に取り込まれ,心筋層(M)から心外膜(Ep)へ流れ,心臓リンパ管(LT)を経て([1],[2]),気管・気管支リンパ節に終わる.心臓のリンパ系は心房よりも心室において発達しており,心外膜側の毛細リンパ管網が最も密である([4]).リンパ管は作業心筋以外の領域,刺激伝導系の洞房結節,房室結節([2]),房室束,脚,Purkinje線維にも分布している.さらに,三尖弁と僧帽弁([2])にもあるが,大動脈弁や肺動脈弁にはない.

研究

アプロチニン入り採血管でのグルカゴン保存安定性

著者: 菊池唯史 ,   北村忠弘 ,   難波光義

ページ範囲:P.878 - P.883

Summary

 グルカゴンは血中に分解酵素が混在するため,血漿分離時および検体保存時の安定性に問題があるとされている.今回,新規グルカゴン検査法の導入を契機に,従来のアプロチニン入り採血管での保存安定性を調べた.全血のまま室温に1時間,続けて冷蔵6時間の計7時間以内に血漿分離し,速やかに凍結すれば,グルカゴン値の変動は許容範囲であることが明らかとなった.

寄生虫屋が語るよもやま話・18

もの言えぬ日本人—中国でのフィールドワーク

著者: 太田伸生

ページ範囲:P.884 - P.885

 いくばくか政治が絡む話であるので,慎重な書き出しである.ただし,もう四半世紀以上前の話であるので,時効成立と勝手に考えて筆を進めたい.時は文化大革命が終了してさほど時間がたっていない中国・湖南省である.省の寄生虫病研究所から女性研究者(Y先生)が当時の勤務先の研究所に短期滞在して日本住血吸虫症の共同研究にあたったことがあり,意気投合して日本からも訪問することになった.私の上司を団長にして,総勢4名で湖南省の研究所を訪れて交歓を図ることになったのが1988年の11月である.当時の私の勤務先は国立の研究所で,対外的には大学の研究者よりも派遣先で厚遇してもらえたものであるが,それでも社会制度が違えば勝手が違ったという話である.

 成田空港から中国民航の便で北京に入り,保健省を表敬訪問して湖南省に向かう予定であった.機材は当時でさえ少々時代がかったボーイング747-SPで,女性客室乗務員は全員がズボン姿であったのには驚かされた.空港から北京市中心部までの道は暗く,ガタガタ舗装であった.北京の街中は時節柄,白菜を満載したトラックや馬車で溢れ,纏足の女性も見掛けるなど,現在の北京からは想像もできない光景であった.保健省では日本の川崎医大の医療秘書科卒の女性が対応してくださったが,今回の中国訪問の目的を団長から伝えるうちに,彼女の表情が少し硬くなってきた.“湖南省政府の正式な許可はお取りですか?”と聞かれ,わが団長は想像していなかった質問にキョトンとしている.“正式許可書なしには何もできませんよ”と言われたものの,きてしまった以上は手ぶらでは帰れない.翌日は空路,湖南省に飛んだのである.

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「検査と技術」7月号のお知らせ

ページ範囲:P.777 - P.777

バックナンバー一覧

ページ範囲:P.834 - P.834

次号予告

ページ範囲:P.869 - P.869

あとがき

著者: 河合昭人

ページ範囲:P.888 - P.888

 千葉県というと何を思い浮かべるでしょうか? 海があり内陸には小さいながらも山もあり,首都圏にあって自然が豊かで,海の幸や山の幸などたくさんのおいしいものがあります.東京からのアクセスも電車網が発達しており,東京駅から1時間もあれば一部の観光名所に行くこともできます.何といっても車の便ではアクアラインではないでしょうか.神奈川と千葉を結んで都内の渋滞を回避し,首都圏の交通網の重要なラインの1つとなっています.

 冒頭の質問ですが,観光名所といえば,真っ先に思い浮かべるのは舞浜にある“夢の国”ではないでしょうか? 私もこの“夢の国”には家族ともども大変お世話になっています.子どもたちにとっては“夢の国”ですが,われわれ親としては“夢の国”というよりは,財布がいくらあっても足りない“支出の国”です.その他にも落花生であったりサーフィンであったり,いくつか思い浮かべることができるでしょう.プロスポーツも盛んです.野球,サッカー,バスケットなど千葉を本拠地に活動しているプロスポーツがいくつもあります.そのなかでも野球は一番大きな団体ではないでしょうか? そのスタジアムがある幕張は,東京からも近く観戦しやすい場所にあります.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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