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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査62巻1号

2018年01月発行

雑誌目次

今月の特集1 知っておきたい感染症関連診療ガイドラインのエッセンス

著者: 岩田敏

ページ範囲:P.5 - P.5

 日常診療の場において標準的な診断・治療を行っていくために,診療ガイドラインが果たす意味は大きく,ガイドラインに従って診断・治療を進めていけば,専門家でなくても一定のレベル以上の診療の質が担保されることになります.感染症診療においてもさまざまなガイドラインが国内外で発出されており,実際にベッドサイドで使用されています.ガイドラインに沿って診療を行う中心となるのは医師ということになりますが,感染制御チーム(ICT)の一員として毎日の業務を行っていくためには,臨床検査技師もガイドラインの内容を理解しておく必要があります.本特集では,最近作成あるいは改訂された,感染症診療を行ううえで重要ないくつかのガイドラインを取り上げ,検査診断と治療の部分に焦点を当てるかたちで,実際にガイドライン作成・改訂に携わった専門家の先生方にまとめていただきました.それぞれのガイドラインのエッセンスがわかりやすく書かれていますので,臨床検査技師にとって必要な知識の整理にぜひ役立てていただきたいと思います.

成人肺炎診療ガイドライン2017

著者: 三木誠

ページ範囲:P.6 - P.15

Point

●肺炎は罹患場所によって,市中肺炎,院内肺炎,医療・介護関連肺炎の3つの肺炎群に分類される.

●市中肺炎に比べ,医療・介護関連肺炎や院内肺炎では耐性菌〔メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA),基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBLs)産生菌,多剤耐性緑膿菌(MDRP)など〕が原因である可能性が高い.

●初診時迅速検査で病原微生物が判明した場合には標的治療を行い,同定できない場合にはエンピリック治療を行う.

●市中肺炎では,敗血症の有無と重症度から治療の場と治療薬を決定し,院内肺炎と医療・介護関連肺炎では,誤嚥のリスク,敗血症の有無,重症度,耐性菌のリスクから治療方針を決定する.

小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017

著者: 尾内一信

ページ範囲:P.16 - P.21

Point

●「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017」は,最新情報にアップデートした改訂第4版である.

●抗微生物薬の適正使用を推進するために,厚生労働省の「薬剤耐性(AMR)アクションプラン」を意識した内容となっている.

●EBMガイドライン形式と教科書的な解説の2つのパートからなり,小児感染症診療を網羅している.

小児急性中耳炎診療ガイドライン

著者: 工藤典代

ページ範囲:P.22 - P.26

Point

●小児急性中耳炎の初診時に,鼓膜所見,臨床症状,年齢条件から軽症・中等症・重症の3段階に分類する.

●軽症には抗菌薬を投与せず3日間経過観察をするが,中等症,重症ではアモキシシリン(AMPC)高用量投与が第一選択となっている.

●細菌検査は極めて重要であり,起炎菌の耐性化を防ぐためにも感受性検査結果に沿った抗菌薬治療が求められている.

日本版敗血症診療ガイドライン

著者: 織田成人

ページ範囲:P.28 - P.32

Point

●「日本版敗血症診療ガイドライン2016」は,欧米版ガイドラインと時を同じくして2017年2月に発表された.

●敗血症の定義が25年ぶりに改定され,全身性炎症反応症候群(SIRS)が診断基準から除外された.

●新しい敗血症の診断には,臓器障害をSOFAスコアで評価することが必須となった.

●敗血症診断のための各種バイオマーカーは,いまだエビデンスが不十分であり今後さらなる検討が必要である.

細菌性髄膜炎診療ガイドライン—成人領域

著者: 亀井聡

ページ範囲:P.33 - P.39

Point

●細菌性髄膜炎(BM)は,数時間で進行する劇症型と数日かけ進行性に悪化する急性型がある.主要症状は頭痛,項部硬直,発熱,意識障害である.

●治療は,わが国における年齢階層別主要起炎菌の分布,耐性菌の頻度および宿主のリスクを考慮し,抗菌薬選択を行う.

●成人では,副腎皮質ステロイド薬併用は転帰不良の軽減と死亡率の減少への寄与が確認されており推奨されている.ただし,外科的侵襲後に併発したBMでは,推奨できない.

細菌性髄膜炎診療ガイドライン—小児領域

著者: 齋藤昭彦

ページ範囲:P.40 - P.43

Point

●小児の細菌性髄膜炎は,予後が悪く,死亡率の高い疾患である.したがって,早期診断と早期治療が最も重要である.

●乳幼児期のインフルエンザ菌b型(ヒブ)と肺炎球菌結合型ワクチンの普及によって,細菌性髄膜炎の患者数は減少している.

●細菌性髄膜炎に対する抗菌薬の初期治療は,児の年齢から想定される起因微生物に効果のある薬剤を髄膜炎に適した高用量で使用する.

●髄液,血液培養の結果から,起因菌とその薬剤感受性がわかったときは,できるだけ信頼のおける,かつ狭域の抗菌薬にde-escalationし,決められた治療期間を完遂する.

●「細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014」は,国内で唯一の小児の細菌性髄膜炎に対するガイドラインであるが,海外のガイドラインと比べ,推奨薬剤の違いなどがあり,今後の検討が必要である.

性感染症 診断・治療ガイドライン—尿道炎を中心に

著者: 安田満

ページ範囲:P.44 - P.49

Point

●本ガイドラインでは17疾患を扱うが,頻度が高く薬剤耐性が問題となっている疾患は尿道炎である.

●尿道炎の診断では,まずは淋菌性尿道炎と非淋菌性尿道炎に大別する.

●淋菌の検出には鏡検法,培養法および核酸増幅法検査があるが,鏡検法は正確かつ最も迅速である.

●淋菌とマイコプラズマ・ジェニタリウムの薬剤耐性化が著しく,治療困難となりつつある.

今月の特集2 心腎連関を理解する

著者: 山内一由

ページ範囲:P.51 - P.51

 身体的健康とは,各臓器が正常に機能し,互いに均衡を保っている状態であると言えます.各臓器は程度の差こそあれ相互に作用し合い,互いに均衡を保っています.各臓器が正常に働かないともちろん臓器間の均衡は保たれませんが,逆に,臓器同士が適切にクロストークしなければ,個々の臓器の機能を正常に維持することはできません.

 身体的健康を網羅的に評価するためには,1つの臓器に着目するだけでなく,臓器間のクロストークを意識した俯瞰的な視点が重要になります.臨床検査,とりわけ,全身を駆け巡った体液が主な検査対象になる検体検査ではなおさらです.

 本特集では,“心腎連関”を取り上げました.身体的健康に最も大きな影響を与えているといっても過言ではない“心腎連関”ですが,その概念が注目されるようになったのは意外と最近のことです.心臓と腎臓の精巧かつ緻密な生理学的連関について理解を深めていただければと思います.

心腎症候群とは

著者: 筒井裕之

ページ範囲:P.52 - P.57

Point

●心不全では高頻度に慢性腎臓病(CKD)を合併する.

●心不全とCKDの合併は心腎症候群と呼ばれ,治療を困難にするだけでなく予後を悪化させる.

●心腎連関の病態形成には,心拍出量低下による腎灌流低下ばかりでなく心不全による腎うっ血も関与する.

●心腎症候群の有効な治療法は確立しておらず,研究のさらなる進展が望まれる.

心臓と腎臓のクロストーク

著者: 熊倉慧 ,   伊藤貞嘉

ページ範囲:P.58 - P.64

Point

●腎臓はネフロンという機能単位を片側に100万個もち,非常に合理的,巧妙に作られた構造をしている.これによって大量の血液を濾過し,さまざまな物質を再吸収して体液の恒常性を保っている.

●血圧は,脳・心臓・腎臓の3者がそれぞれさまざまな機構で制御しており,なかでも交感神経系,レニン・アンギオテンシン・アルドステロン(RAA)系による調節は非常に重要である.

●脳・心臓・腎臓は低酸素,低血圧でも機能を維持するためにstrain vesselと呼ぶ低還流に耐えうる血管構造をもつが,高血圧下では障害されやすく,その障害は微量アルブミン尿として表現される.微量アルブミン尿が存在している場合は,無症候でありながら,脳や心臓の血管にも障害が発生している可能性がある.

●腎障害の存在は心血管障害を起こしやすく,さらに心血管障害が進行すると腎障害をより悪化させる.このようにして心臓・腎臓は病態形成に相互に関連している.

酸化ストレスと心腎連関

著者: 藤生克仁

ページ範囲:P.66 - P.71

Point

●われわれは効率的なエネルギー産生のために酸素を利用しているが,酸素利用の欠点として生体に害を及ぼし,多くの疾患の原因となる活性酸素種が生じている.

●酸化ストレスとは活性酸素種と活性酸素種を除去する抗酸化物質・抗酸化酵素のバランスが崩れ,活性酸素種が細胞に害を及ぼしてしまう状態を示す.

●心腎連関においては,心不全によって活性化されたレニン-アンギオテンシン系によって腎臓でミトコンドリア機能低下が生じ,酸化ストレスが発生するため腎疾患の惹起・悪化が生じる.

糖尿病と心腎連関

著者: 中司敦子 ,   和田淳

ページ範囲:P.72 - P.77

Point

●インスリン抵抗性や糖尿病は心腎症候群を形成する主要な病態である.

●正常アルブミン尿の範囲であっても,微量アルブミン尿は心血管疾患や死亡リスクと相関する.

●微量アルブミン尿の出現は全身の血管内皮機能障害を反映し,潜在的な臓器障害の存在を示唆している.

貧血と心腎連関

著者: 今井圓裕

ページ範囲:P.78 - P.83

Point

●慢性心不全,慢性腎不全は貧血を合併することが多い.

●慢性心不全では鉄欠乏状態にある患者が多く,鉄剤の投与によって心不全は改善する可能性がある.

●慢性腎不全ではエリスロポエチンの相対的欠乏による貧血が多い.

●エリスロポエチンを使用した貧血治療はヘモグロビン(Hb)11.0g/dL未満で開始し,Hb13.0g/dLを超えないように注意する.

心腎連関の臨床検査

著者: 難波俊二

ページ範囲:P.84 - P.89

Point

●急性腎障害(AKI)を早期の段階で捉える臨床検査は予後の改善に役立つ.

●尿毒素の1つであるインドキシル硫酸(IS)は,慢性腎臓病(CKD)の危険因子である.

●敗血症の早期診断マーカーは患者の生命予後を左右する.

検査説明Q&A・33

輸血直前の確認,通常の輸血速度,輸血を行う患者の観察は,どうしたらいいですか?

著者: 寺井美峰子

ページ範囲:P.90 - P.93

 輸血に関して,輸血部に寄せられる(または寄せられることが想定される)質問をとり上げて解説する.

Crosstalk 地域医療×臨床検査・1【新連載】

地域医療と臨床検査の交点

著者: 小谷和彦

ページ範囲:P.94 - P.94

 昨今,“地域医療”が話題になっている.この話題性の背景には,わが国での少子・超高齢社会の進展に対応した地域医療の整備が喫緊の課題となっていることがある.地域医療とは,地域社会の構成員とともに総合して創り上げるケアである1)が,この意味が,まさに全国津々浦々の“地域”で問われはじめている.

 これに即して,地域の実情に合わせた医療体制創りの一環で,‘地域’医療構想(医療圏内で医療機能を分化および連携して整備する構想)や‘地域’包括ケア(住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられるような住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する仕組みや活動)なるものが登場してきた.さらに,医療崩壊,医師不足,医師偏在のような話題も,地域医療の課題として報道されることがあり,“地域医療”は必然的に注目される時世である.

Crosstalk 地域医療×臨床検査・2

地域の歴史は診断の糸口

著者: 寺裏寛之

ページ範囲:P.95 - P.95

 地域医療に携わる総合医になりたいという思いで自治医科大学に入学した私は,今,地域医療を謳歌している.卒業後の人事で,岩手県県南のある地域病院において,総合診療内科医として働いている.医学生の時代には,地域医療に従事する総合医になるために,コミュニケーションの大切さを教育された.さらには,地域の文脈を踏まえて診療することの大切さも教え込まれた—これは,地域志向アプローチといわれている1)

 ある日のこと,救急外来に60歳台前半の男性が40度の発熱を主訴に来院した.患者の生活背景は? 考えられる病態は? 必要な検査は? 治療の選択は? 患者と会話しながら,想像を働かせつつ診療を組み立てた.

Salon deやなさん。・8

人生は航海だ!

著者: 柳田絵美衣

ページ範囲:P.96 - P.96

 東京へ引越しすることが決まったのは,2017年の秋のことだった.

 「これからもずっと味方だから.嫌になったらいつでも戻って来ればいい.だから,今は前に進め!」 北の大地に来たばかりの私を常に気に掛けて悩みを聞いてくれたり,札幌検査技師会主催の研修会の講師に指名してたくさんの人たちと交流をもたせてくれたりした友人が,旅立つ私の背を温かくかつ強く押してくれた.

Essential RCPC・1【新連載】

健診で蛋白尿を指摘された59歳,男性

著者: 山田俊幸

ページ範囲:P.98 - P.101

症例

59歳,男性

寄生虫屋が語るよもやま話・23

セロファンテープの効能を考える—蟯虫

著者: 太田伸生

ページ範囲:P.102 - P.103

 文部科学省の学校保健安全法施行規則の改正によって,蟯虫の検査は2015年度で終了となった.誰もが思い出すセロファンテープ法による蟯虫検査であるが,今後,学童の記憶から徐々にフェードアウトしていく運命である.中央部が青色に着色されたセロファンテープを,起床時に肛門に当てて,肛門周囲に産卵された蟯虫卵を検出する方法を“テープ法”,“セロファンテープ法”,“スコッチテープ法”などと呼んでいた.法改正の後,私たちの業界でもいろいろなことが起こり,ここしばらくは混乱が続くであろう.というのも,このセロファンテープの供給が継続できないことになったからである.

 蟯虫は別名pin warmとも呼ばれる体長1cm内外の腸管寄生線虫であり,虫卵を経口的に摂取して感染した後,成虫は腸管回盲部に定着寄生する.腸管粘膜侵入性もなく,宿主免疫応答も軽微であるため,感染者はほとんど自覚することはない.雌虫は宿主の夜間就眠中に肛門に出てきて産卵し,肛門周囲の違和感によって手指で触る際に虫卵で汚染され,それが再び経口感染するが,その他に感染者の衣類や手指の接触を介して他者に感染が及ぶこともある.そのような感染パターンのため,感染者は未就学児童や小学校低学年学童が多く,また,同居家族にも感染が及ぶ傾向がある.疫学的には住居内の1人当たりの専有面積と反比例するとされ,集合住宅居住者に多いなど,都市型寄生虫感染症である.セロファンテープ法であるが,ご承知の通り,2日連続検査が行われる.この方法に限らず,検便検査の感度は決して高くなく,蟯虫検査のセロファンテープ法でも,2日法では約半数が偽陰性となることが知られており,9割程度の診断効率を得るには5日連続検査が必要である.最近の都市部学童の蟯虫陽性率は0.3%前後であることからすると,日本国内では学童の200人に1人程度の感染者がいることになる.

INFORMATION

近畿心血管治療ジョイントライブ(KCJL)2018

ページ範囲:P.57 - P.57

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「検査と技術」1月号のお知らせ

ページ範囲:P.1 - P.1

バックナンバー一覧

ページ範囲:P.15 - P.15

次号予告

ページ範囲:P.65 - P.65

書評 ENGアトラス—めまい・平衡機能障害診断のために

著者: 廣瀬源二郎

ページ範囲:P.97 - P.97

神経内科医に必須のENGアトラス

 めまい・平衡障害患者を取り扱う医師にとり,眼球運動異常を診断することは非常に重要である.今回,めまい・平衡障害分野の名医として広く知られている著者が,半世紀にわたる経験を基に自身で重要な眼振症例を注意深く記録として残されたものを広く公に発刊されたのが本書であり,まさに渾身の著作である.

 診察時に肉眼観察で眼球運動異常の有無を捉えて診断するのがわれわれ一般の臨床医である.その際重要な症例はビデオ記録として残すのが一般的である.それに加えてさらに他覚的定量的分析記録として角膜網膜電位差を応用した眼振図(ENG)を残し,後々に種々の定量的検討を加えることでめまい病態を把握することができるわけである.光学法や強膜サーチコイル法に劣るとはいえ,注意深くENGを記録することは患者側の負担も軽く臨床的には十分すぎる眼振検査法である.

書評 日常診療に潜むクスリのリスク—臨床医のための薬物有害反応の知識

著者: 山中克郎

ページ範囲:P.105 - P.105

日常診療で頻用する薬の副作用を詳細に分析

 上田剛士先生(洛和会丸田町病院救急・総合診療科)は数多くの文献から重要なメッセージを抽出し,わかりやすい表やグラフにして説明してくれる.評者と同様,『ジェネラリストのための内科診断リファレンス』(医学書院,2014年)を座右の参考書としている臨床医は多いであろう.これは臨床上の問題点に遭遇したとき,そのエビデンスを調べる際に非常に重宝している.

 『日常診療に潜むクスリのリスク』は薬の副作用に関する本である.高齢者はたくさんの薬を飲んでいる.私たちは気が付いていないのだが,薬の副作用により患者を苦しめていることは多い.「100人の患者を診療すれば10人に薬物有害反応が出現する」(序より),「高齢者の入院の1/6は薬物副作用によるもので,75歳以上では入院の1/3に及ぶ」(p.5より)という事実は決して看過すべからざることである.「Beers基準」や「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」は存在するが,高齢者への適切な処方への応用は不十分だ.

あとがき

著者: 山内一由

ページ範囲:P.108 - P.108

 新年あけましておめでとうございます.2018年第1号をお届けします.本年もup to dateな情報を満載した雑誌を提供できるよう,編集委員一丸となって頑張りますので,どうぞよろしくお願い申し上げます.

 まずは新年のごあいさつを申し上げましたが,現在は2017年11月もまだ初旬.一生懸命,きたる2018年に思いをはせながらも,筆が進みません.ほとんど白紙状態の原稿を前に頭を抱えること約2時間.パソコンから窓の外に目を移すと,西の空は夕焼けの鮮やかなオレンジ色と,迫りくる宵闇の紫紺が実に見事なコントラストをなしています.いつ見てもセンチな気分にさせられる景色です.日曜日の夕方,いわゆるサザエさん症候群も相まって,すっかり書く気を失ってしまいました.パソコンを落とし,帰り支度を急いでいたところ,ふと,“前にもこんなことがあったような……”という感覚.“デジャヴだな”と納得しながら,オフィスの電気を消したまさにその瞬間,私の頭のなかの豆電球がパッとともりました(漫画でよく描かれるアレです).灯かりをつけ直すやいなや,本棚から本誌2017年1号を取り出し,裏表紙からページをめくって「あとがき」へ.やっぱりそうです,2017年1号の「あとがき」も私が担当でした.相変わらずの拙い文章を目にし,昨年も今日と同じように11月の夕暮れ,この「あとがき」に頭を悩ましていたことが鮮明に思い出されてきました.デジャヴなんかではなかったのです.“もしかして”と思い,さらにさかのぼって1号の「あとがき」をチェックしてみますと,2014年と2015年も私が担当です.思いがけない発見がきっかけで,なぜだかやる気スイッチが入った私.いそいそとパソコンを起ち上げ直し,いざ執筆.しかし,過去と似たような内容になってはいけないという思いが強く,やる気とは裏腹,かえって筆が進まなくなってしまいました.自分の引き出しの少なさを嘆いているうちに,外はすっかり宵闇に包まれてしまっていました.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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